●Jリーグが開幕。といっても、通常のリーグ戦ではない。8月からの秋春制移行にともなって、今年前半は短期決戦の変則的な「Jリーグ百年構想リーグ」を開くことになった。J1は東西に分けて、地域リーグとしてそれぞれでホームアンドアウェイの総当たりをして、その後、東西同順位のチーム同士で戦って最終順位を決定する。対戦相手が限られているため、あまりワクワクするものではないが、目を引くのは90分で決着がつかない場合はPK戦をするという点。90分で勝てば勝点3、PK戦で勝てば勝点2、PK戦で負けても勝点1がもらえる。初期Jリーグを思わせる懐かしい方式だ。
●現代フットボールでは、勝てば勝点3、引き分けなら勝点1がスタンダード。これは試合の価値が、引き分けでは低くなることを意味する。勝敗がつけばその試合の価値は勝点3だが、引き分けなら両者合わせて勝点2にしかならない。クラシックなサッカーでは勝ったら勝点2、引き分けなら勝点1とシンプルだったので、いかなる試合にも勝点2が割り振られ、全試合が等価だった。で、今回の百年構想リーグでは、引き分けた場合にPK戦の勝者に2、敗者に1が配分されるので、合計の勝点は3。クラシックなサッカーと同じで、引き分けても試合の価値は下がらないのだ。だから数理的には引き分け狙いの戦術の優位性が高まる。とくに個の力で劣るチームは、スコアレスドローを狙ってリスクの少ないサッカーをするのがお得だ。
●となると、つまらない試合が増えそうだが、そこはJリーグもしっかり考えているようで、この大会では降格がない。弱いチームが降格を恐れて引いて守る必要はないのだ。負けても降格しないのなら、おもしろいゲームをしてお客さんを呼んだほうが利益になるかもしれない。
●昨季、マリノスは終盤にボール非保持のサッカーに徹して、残留を勝ち取った。だが、大島監督は今季、アタッキングフットボールへの回帰を掲げている。開幕戦はホームで町田相手に自滅して2-3で敗北。ボール保持率は59%と高かったが、なにせ前半に自分たちのミスだけで3失点したのだから、どうにもならない。そもそもポステコグルー監督以降のアタッキングフットボールとは、個の力で相手を上回っていることが前提になっていた。今のマリノスは、町田との開幕ゲームでも明らかなように、個の力で劣勢なのだ。ただでさえ戦力が足りなかった昨季から植中朝日まで失ってしまった。この戦力でアタッキングフットボールなどやれば、どれだけ失点することか。
●だが、大島監督は圧倒的に正しい。だって、降格がないのだ。フットボールの愉悦を犠牲にして、昨季の終盤みたいなサッカーを続ける理由はひとつもない。3点獲られたのは悔しいが、2点獲れたのはよいこと。思う存分、ハイリスクなサッカーにチャレンジして、ファンを熱くしてほしい。
February 10, 2026