
●現在オペラシティのコンサートホールが休館中なので、演奏会のついでにアートギャラリーに立ち寄るというわけにはいかない。が、「アルフレド・ジャー あなたと私、そして世界のすべての人たち」をぜひ見たかったので初台へ。アルフレド・ジャーはチリ出身で、ピノチェト独裁政権を逃れてアメリカに渡ったニューヨーク拠点のアーティスト。非常にメッセージ性の強い作品ばかりで、とりわけ社会の不均衡や政治的集団的な暴力を扱ったものが多い。

●で、これは音楽ファンにも気になる作品だと思うのだが、「彼らにも考えがある」(2012)。手前の丸いオレンジ色は別の作品で(スマソ)、後ろのライトボックスに OTHER PEOPLE THINK と書かれているのが本作。これはジョン・ケージ生誕100年を記念して作られた作品で、ケージが15歳の頃にハリウッド・ボウルでのスピーキング・コンテストのために書いた演説文にちなんでいる。ケージの意図はともかくとして、この作品では「彼らにも考えがある(自分たちだけじゃなくて)」っていうニュアンスが込められている、らしい。文面からは別の受け止め方もありそうだが。

●こちらは「ゴールド・イン・ザ・モーニング」と題されたシリーズの一作。これだけ見てもなんにもわからないが、ブラジル北東部セーラ・ペラーダで金鉱が見つかって、一獲千金を求めて大勢の人々がやってきた。粗末な道具で過酷な労働に勤しむ人々を、撮っている。自発的な労働であるはずだけど、労働者への条件は厳しく、そこには明白な搾取の構造がある、ということを言っている。そう聞くと、じゃあこれはアートなの、素直にジャーナリズムじゃないの、っていう疑問はわく。アートとして読み取ろうとすればいろんな解釈も可能であるにせよ。

●日本を題材とした作品もふたつほどあった。これは「明日は明日の日が昇る」(2025)。ふつうの高さから見ると、床のライトボックスに日の丸があるのが見える。でも、近づいてのぞき込むと、上に星条旗があることに気づく。日米の非対称性がここに。ほかに「ヒロシマ、ヒロシマ」という大掛かりな作品も。

●いちばんいいなと思ったのはこれ。「写真はとるのではない。つくるものだ」(2013)。これは展示の入り口に置かれていて、ポスターが積みあがっている。で、ぜんぶ見た後で、帰りに一枚持ち帰ることになっている(ちゃんと輪ゴムまで用意されている)。減った分は、またスタッフが補充して、立方体に近い形状が保たれるようになっているようだ。喜んで一枚もらって帰った。写真はとるのではなく、つくるもの。みんな、知っている。
February 12, 2026