●27日は東劇でMETライブビューイング、ベッリーニの「清教徒」。演出はチャールズ・エドワーズ。METでは50年ぶりとなる新演出だとか。名作とされるわりに実演で聴く機会の少ない名作だが、このオペラのストーリーはどれくらい知られているだろうか。舞台は17世紀、内戦下のイギリス。清教徒側の娘エルヴィーラは王党派の騎士アルトゥーロと愛し合っており、これから結婚式を挙げようというところで、アルトゥーロは捕らわれていた王妃を助け出すために彼女を花嫁に変装させて逃亡する。アルトゥーロに裏切られたと思ったエルヴィーラは発狂する。このふたりの関係に、エルヴィーラに想いを寄せる清教徒側のリッカルドの思惑がからむ。こうして書いていてもわかりやすく書くのはなかなか難しいと感じるのだが、台本ははなはだ粗削りで、自分が劇場監督だったら赤字で真っ赤にして突き返すと思う。が、ベッリーニの音楽はきわめて洗練されており、優雅。抒情的な楽想が無尽蔵にわき出てくるといった様子で、なるほど、ショパンが魅了され、影響を受けたのはこれかと思う。物語より音楽が圧倒的に優位にある。
●歌手陣はエルヴィーラ役のリセット・オロペーサ(オロペサ)が圧巻。声の超絶技巧をたっぷりと。アルトゥーロ役のローレンス・ブラウンリーは、先日の新国立劇場「リゴレット」で公爵役を歌ってくれたばかり。声の甘さ、高音域での余裕が印象的。指揮はマルコ・アルミリアート。録音だから正確にはわからないけど、たぶん歌手にやさしくオーケストラをコントロール。演出はチャールズ・エドワーズ。全般にシリアスすぎるのと、独自のアイディアであるエルヴィーラを画家とみなす趣向が無理筋だと思ったが、舞台美術は荘重ですばらしい。あのエンディングはどう解したらいいんでしょうね。ハッピーエンドを嫌ったのか、どうか。
●これでベッリーニの三大傑作、「清教徒」「ノルマ」「夢遊病の女」をすべてMETライブビューイングで観たことになる。映画館なので、ライブとはまったく違ったリラックスしたモードで観に行けるのが大吉。
April 1, 2026