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October 14, 2026

アレクサンダー・ガジェヴ カレイドスコープ 第2夜 リサイタル ~5台のピアノ弾き比べ

アレクサンダー・ガジェヴ カレイドスコープ 第2夜 リサイタル●13日は東京オペラシティでアレクサンダー・ガジェヴのリサイタル。「アレクサンダー・ガジェヴ カレイドスコープ」と銘打たれた2夜にわたるシリーズで、第1夜が室内楽、第2夜が5台のピアノを用いたリサイタル。第1夜は都合がつかなかったので、第2夜のみ足を運ぶ。ガジェヴのリサイタルはそれだけでも十分に興味をひくものだが、5台のピアノを弾き比べるという貴重な機会。使用楽器は、ベーゼンドルファー290インペリアル、プレイエル(1843年製)、ファツィオリF278、カワイSK-EX(Shigeru Kawaiの最上位モデル)、スタインウェイD-274。ベーゼンドルファーとスタインウェイはホール所蔵の楽器、プレイエルはタカギクラヴィア所蔵。各楽器の調律師名もクレジットされていた。
●プログラムの演奏曲順が当初予定より変更されていた。前半はまずベートーヴェンのピアノ・ソナタ第21番「ワルトシュタイン」から(ベーゼンドルファー)。前へ前と猛進する荒ぶるベートーヴェン。ベーゼンドルファーの出番はこの一曲のみ。角が取れ、重厚な響き。続いてはショパン(プレイエル)。ショパンの演奏曲は事前に発表されず、当日のお楽しみという趣向で、いずれも歴史的楽器であるプレイエルによる演奏。マズルカ第47番イ短調op.68-2。その後、リストの「巡礼の年 第1年 スイス」から「ジュネーヴの鐘」「嵐」(カワイ)、ショパンのノクターン第4番ヘ長調op.15-1(プレイエル)、高揚感にあふれたドビュッシー「喜びの島」(カワイ)と続く。カワイの音色は芳醇。甘やかで、高音域にわずかに鼻にかかるようなセンシュアルな雰囲気あり。
●シンプルに音のエレガンス、軽やかさ、優雅さでいえばプレイエルが突き抜けている。この楽器とショパンの音楽が不可分の関係にあったと言われたら、納得するほかない。どうしてこのスリムな音色の楽器が、重く太い響きのモダンピアノに取って代わられ、しかもそれが標準化したのか。歴史の不思議に思いを馳せずにはいられない。なんとなくだけど、ショパンが求めた音色から遠ざかる方向で楽器が発展したからこそ、ショパンは万人の音楽として愛され、深められたという気がする。
●後半は武満徹「雨の樹素描Ⅱ オリヴィエ・メシアンの追憶に」と即興演奏をファツィオリで。武満を華やかな印象のあるファツィオリで弾く発想はおもしろい。ショパンの前奏曲集から(プレイエル)、現代スペインの作曲家ギレム・パロマーの3つの夜曲、シューマンのピアノ・ソナタ第1番(以上スタインウェイ)。おしまいのシューマンが聴きもの。ソナタではあるけど、幻想曲風でもあり交響曲風でもあり、行き先の見えないまま彷徨するような趣がシューマンならでは。ガジェヴに似合う曲。この曲、以前にシフ、アレクサンドル・カントロフでも聴いたと思うが、リサイタルの最後に置かれているのは初めてかも。こうして並べて聴くと、スタインウェイはこれぞわたしたちの時代のスタンダードと感じる。あちこちを巡って、本拠地に帰ってきた感。
●アンコールにグリーグの「抒情小品集」第1集からアリエッタop.12-1、シューマンの「子供の情景」から「詩人は語る」。これがおしまいの曲と思いきや、ガジェヴは白いミニピアノを抱えて登場(カワイ ミニピアノ1142)。かわいい音でブラームスの子守歌の一節。

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