March 6, 2002

「グローリアーナ」

●マイケル・ムアコックの「グローリアーナ」(東京創元社)読了。これは傑作。マーヴィン・ピークの「ゴーメンガースト」三部作に捧げられた、世界幻想文学大賞受賞の歴史ファンタジー。架空のエリザベス朝、架空のロンドンを舞台に、孤高の女王たるグローリアーナの物語を描く。大滝啓裕の訳文が圧巻。原文の文体は知らないが、こんなに美しい文なのか。ムアコックは「エルリック・サーガ」をはじめとする一連のヒロイック・ファンタジーをだらだらと一通り読み、読んだそばからどんどん内容を忘れてしまっているのだが、「グローリアーナ」はこのシリーズに属する話ではない。ただ、多重世界という概念はここでも採り入れられてはいる。ファンタジーとはいえ、基本的にはリアリズムに即した話なので、宮廷を舞台とした陰謀劇、歴史小説としても読め、しかも「きゃー、クワイアさま、すてきー」的なキャラ萌えも許される。
●サンリオ文庫休刊時に刊行予定にあがっていた遺産ということなので、待っていた人は10年以上待たされたということになる。読み終えてしまって寂しいので、サンリオから出ていたオールディスの「マラキア・タペストリ」でも再読するか。あるいはなぜかこれまで手が伸びなかった「ゴーメンガースト」を読むか。でも世の中的には「指輪物語」だよな(笑)。(03/06)

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