March 9, 2006

フランク:交響曲ニ短調、最強ロマン伝説

フランク 交響曲●たまたまネットラジオから聞こえてきて何年ぶりかで聴いて、その濃厚なロマンティシズムにうっかり卒倒しそうになってしまったのだ、フランクの交響曲ニ短調。ワタシは確信した、完璧な古典派交響曲がベートーヴェンの第5番であるとするならば、完璧なロマン派交響曲はフランクをおいてほかにない。曲全体を支配する冒頭主題は、旋律というよりはただの動機で、それ自体単純で一見冴えないヤツであり、しかも鬱屈しており粘着質で、反復される。ロマンティシズムは粘着質でなければならない。第2楽章はイングリッシュ・ホルンの旋律が気だるく、憂いを帯びている。ロマンティシズムには憂いが必須である。ドヴォルザークの「新世界」に先んじてイングリッシュ・ホルンを使っている点でも高ポイントゲット。続く楽章は終楽章であり、スケルツォはない。ロマンティシズムに諧謔は不要である。コラール風の主題をトランペットが輝かしく奏するとき、納得するのだ、ロマンティシズムは壮麗なものでなければならない。ビバ、ロマン。ラブ、循環形式。ワタシは深く感動し、震える肉体全身ロマン体となりながら、なぜフランクは交響曲をたったこれ一曲しか書いてくれなかったのかを呪った。セザール、あんただけだぜ、こんなにラヴリーで粘着質なロマンティック・シンフォニーを書けたのは。ベートーヴェンみたいに9曲、いやせめてブラームス並に4曲くらい書いてくれたっていいじゃないか。
●しかし史実を確認して気づく、フランクの交響曲作家としての遅咲きぶりはブラームスをもはるかに超越し、初めての交響曲ニ短調は66歳での完成であり、超最晩年、還暦どころじゃねえ、ワタシを震撼させたのは緑寿ロマンティシズム、すなわち齢重ねても達者にロマンってことである、あっ緑寿ってのはデパート用語か、でも66歳キリがいい、もしちょうど666歳なら獣寿かなっ!とくだらないことを思いつきながら、お気に入りの一枚をCD棚から探し出して、もう一度聴こうとするフランク、ロリン・マゼール指揮ベルリン放送交響楽団で。

トラックバック(0)

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.classicajapan.com/mtmt/m--toraba.cgi/575

このブログ記事について

ひとつ前の記事は「黒い穴」です。

次の記事は「街はリアルウィルスで充満している」です。

最新のコンテンツはインデックスページへ。過去に書かれた記事はアーカイブのページへ。

ショップ

国内盤は日本語で、輸入盤は欧文で検索。