ドミノ・ピザ
November 6, 2011

METライブビューイング2011/12シーズン、「アンナ・ボレーナ」で開幕

アン・ブーリン●METライブビューイング2011/12シーズンの最初の作品はドニゼッティ作曲の「アンナ・ボレーナ」。題名役はアンナ・ネトレプコ。デイヴィッド・マクヴィカーによる新演出、指揮はマルコ・アルミリアート。ドニゼッティへの関心が薄くて、この作品を初めて見たんだけど、あらすじを読んで気がついた。「アンナ・ボレーナ」って、アン・ブーリンのことだったんだ! 映画「ブーリン家の姉妹」でナタリー・ポートマンが演じていた、あの女性。えーと、たしか怖い女性じゃなかったっけ。フォースとともにあらんことを。
●が、ドニゼッティの「アンナ・ボレーナ」で描かれるのは、「ブーリン家の姉妹」よりももう少し後の話だ。アンナ・ボレーナはエンリーコ(って、ヘンリー8世のことなんすけどね、イタリア語だから)の妻なんだけど、エンリーコはもうアンナの侍女セイモー(=ジェーン・シーモア)とできてて、セイモーと結婚するためにアンナを罠に陥れて、告発し、処刑する。そのアンナの最期までがこのオペラの題材。これだけ見るとアンナは犠牲者とも思えるわけだが、前史を考えれば思い切り自業自得でもあり、同情の余地はあまりない。
●エンリーコ(=ヘンリー8世)は、もちろん超絶冷酷無比なバカタレっぷりを気持ちよく発揮。小姓のスメトン、アンナの昔の恋人ペルシ、アンナのお兄さん、みんな「死刑!」って、なにそれ。つまりこれって、全登場人物がそろいもそろって最初から最後まで不幸な話なんすよね。王妃になるセイモーもひたすら苦悩する辛気臭い女なので。お前くらいはパーッ!と喜べと言いたくなるが、この人も結婚後しばらくしてエドワード6世を生んで死ぬ運命にあるのだよな、このオペラの幕が下りた後の話として。
●で、音楽面ではアンナ役のネトレプコ(この人もアンナだ)が圧巻。ネトレプコはもうびっくりするくらいロシア的ふくよかさを身につけていて、食堂でどんぶり飯を盛ってくれるオバチャン感が全開なのであるが、おそらく難所につぐ難所であるだろうヘビーな大役を堂々と歌い切った。このオペラって山場だらけなんすよね。あまりにアンナが強烈なので、他の役がかすみそうだけど、しかし男声陣も好演。ペルシ役のテノール、スティーヴン・コステロがいい。伸びやかで、甘い。あと、オケはいつものように切れ味鋭くて、うらやましい。ドニゼッティがこんな聴かせどころの豊富なオーケストレーションをしていたなんて……。煽り立てられる悲劇。ヴェルディを予感させる。
●METライブビューイングのお楽しみ、幕間インタビューでは当時を忠実に再現したという衣装デザインの話がおもしろかった。ネトレプコは幕間は出たくないということで、幕が開く直前にピーター・ゲルプ総裁がじきじきにインタビュー。このときネトレプコの顔に「不機嫌」って書いてあった。話をするのがイヤだったというより、もうアン・ブーリンに半分なっていたんだと思う。アン・ブーリンって、とにかくイヤな女だし。
●上映は11月11日(金)まで。全国各地で公開しているけど、どこも1日1回上映で、夜に上映があるのは東京と大阪の一ヶ所ずつのみ、あとは午前中から上映なので、それなりの気合が必要。でもオペラは実演だろうがDVDだろうが映画だろうが、みんな気合が必要なものだから。気合っていうか、フォース。

トラックバック(0)

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.classicajapan.com/mtmt/m--toraba.cgi/1823

このブログ記事について

ひとつ前の記事は「秋の公園散歩2011~昭和記念公園編」です。

次の記事は「平安、汝とともにあれ。ヴァンフォーレ甲府vsマリノス戦」です。

最新のコンテンツはインデックスページへ。過去に書かれた記事はアーカイブのページへ。

ショップ