April 26, 2012

ノリントン指揮N響のベートーヴェン他

●25日はノリントン指揮のN響定期Bプロ(サントリーホール)。前半はベートーヴェン2曲。序曲「コリオラン」に続いて、河村尚子ピアノでピアノ協奏曲第4番。楽器配置がおもしろかった。ピアノは蓋を取って、演奏者の背中がお客さんに向くように配置される。指揮台はない。弾き振りのような配置なので、客席のあちこちから「弾き振りなの……?」という声が聞こえたが、河村さんが指揮するはずもなく、なんとノリントンはピアノの奥、すなわちフルートとオーボエの前というオーケストラのど真ん中に立った。基本姿勢はそこから斜めにコンマスを向くというスタイル。ノリントンをオケが360度囲んで、しかもサントリーホールなのでお客さんがさらにオケを360度囲むという、不思議な図が誕生。あまり弾きやすそうには見えないけど、指揮者vsピアノ、指揮者vsオケといった二項対立的光景を剥ぎ取る構図として視覚的に新鮮。端麗なピアノと「ピュアトーン」仕様のオケという流儀の違いにもかかわらず親密な雰囲気に。
●後半はブラームスの交響曲第2番。弦楽器を増やして、木管をまたも倍管に。巨大空間のNHKホールだけではなくサントリーでも同じようにするのか。もっとも倍管にしても音圧が倍になるわけではないので、空間の大きさはあまり関係ないのかも。こちらも弦楽器はノン・ヴィブラート、対向配置、コントラバスは木管の後ろに横一列。総体として日頃聴きなれない響きのブラームス。他プロのベートーヴェン交響曲に比べればノリントンの特異な解釈は少なめで、終楽章の高揚に盛んなブラボー。
●20日はNHKホールでノリントン指揮N響定期Cプロ。こちらはAプロ同様にオケの背後に反響板を5枚並べての演奏。聴く位置が違うとどうなるかなんともいえないんだけど、この反響板の効果は相当あったのでは。編成によっては今後も使ってほしいくらい。前半がベートーヴェンの序曲「レオノーレ」第2番、ベートーヴェンの交響曲第4番、後半がティペットの交響曲第1番(初めて聴いた)。20世紀英国でベートーヴェンの衣鉢を継いだ交響曲作家としてのティペットという組合せ。ベートーヴェンの4番は快演。ノリントンならではの驚き満載。客席に向かって「どうだい、これ、いいでしょう?」という両手を広げる得意のポーズも健在。第2楽章のテンポの速さは一瞬なにが起きたのかと思うほど……だったが、帰宅してシュトゥットガルト放送交響楽団との録音を確かめたら、同じように速かったのであり、すっかり忘れていただけであった。
●演奏会の最後、カーテンコールが終わって客席が明るくなった後も、ノリントンは舞台袖で退場する楽員を一人一人迎える。まるでフットボール・チームの監督みたいに。前半にスペクタクルなゴールを重ねて2-0で勝利したテリー・ヴェナブルズ、的な。

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