July 29, 2012

ダニー・ボイルの開会式とブラジルU23vsエジプトU23@ロンドン・オリンピック

●オリンピックの開会式だなんて、どれほど退屈なセレモニーかと思っていたら、今回は違った。演出はダニー・ボイル。当ブログではおなじみ、「28日後……」「28週後……」といった「全力疾走するゾンビ」によって現代社会に渦巻く憤怒と怨嗟を容赦なく描き出したあの監督だ。セレモニー冒頭は「イギリスの田園風景」から始まった。これは「28日後……」のセルフ・パロディ? そこに疾走するゾンビの群れを期待したが、そんなわけはなく、その代わりにダニエル・クレイグ扮するジェイムズ・ボンドが女王陛下をエスコートしたり、サイモン・ラトル指揮ロンドン交響楽団が「炎のランナー」を演奏すると(ホントは演奏してなくてフリだけってのは事前に報道があったっけ)、キーボードをMr. ビーンのローワン・アトキンソンが担当していて、ラトルとMr. ビーンで一芝居あったりと、大変愉快なものであった。
●さすが。もし東京五輪が実現したら、だれが演出するんだか……。
●だが本当に見るべきは開会式ではなく、ブラジルなんである。ブラジルU23vsエジプトU23。ああ、ブラジル! 胸が裂けるような思いで「ブラジル!」と叫ぶしか。
●サッカーファンは勘違いしていた。この前のEUROとその前のワールドカップとその前のEUROと、ずーーっとスペインが世界一美しいサッカーをプレイしていて、なおかつ世界最強という夢のサッカーを実現していたのだ、と。そりゃ、スペインは美しいっすよ、でも楽しかった? 特に楽しくはなかった、ポゼッションによって失点をゼロにするサッカーだから。楽しいのは? 「ブラジル!」。たとえU23でも「ブラジル!」
●つなぐサッカーとかいってもスペインとブラジルじゃぜんぜん別物。なんでU23でもこんなに楽しいかといえば、やはり即興性。選手間でボールを回しながら「行くか?」という無言のコミュニケーションが成立すると、ギュン!ギュン!ギュン!とギアチェンジしてスピードアップ、怒涛の波状攻撃が始まる。でも、なにか気が削がれると、臆面もなく「あー、もう守備めんどくさいわ~」のチンタラサッカーを始める。
●ブラジルはマルセロとかフッキ(かつてJリーグで活躍した)がいて、マーケットへの売り込みに必死なネイマールがいる(パトとガンソはベンチ)。エジプトU23も鍛えられた好チームで、技術もある。でもブラジルは前半だけで3ゴールを奪う。得点はラファエウ、レアンドロ・ダミアン、ネイマール。スペクタクルそのもの。そして後半は夏休みに入ってエジプトに2ゴールを奪われた。1点差になってから、ようやくマジメにプレーして3-2で勝利した。楽しい。戦術的なクラブのサッカーではなく、代表のサッカーを見るんだったら断然これ。ブラジルは変わることなく王国だった。

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