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December 19, 2013

「書くことについて」(スティーヴン・キング)その2

書くことについて●(承前)一昨日に続いて、スティーヴン・キングの「書くことについて」(田村義進訳/小学館文庫)。序盤の自叙伝部分のおもしろさは述べたが、文章読本の部分ももちろん興味深い。特に小説の書き方について、くどいくらいにストーリーが第一に大切であるといい、逆にプロットなんか考えるな、と言っている。キングに言わせれば、プロットを練るのとストーリーが自然に生まれるのとは相矛盾するというのだ。「ん、ストーリーとプロット、なにが違うの?」と思われる方もいるかもしれない。ストーリーは物語で、プロットは筋立てだ。キングのイメージではストーリーは化石の発掘みたいに慎重に「探し当てる」ものなんである。じゃあ、プロットは?

プロットは削岩機のような馬鹿でかい道具だ。削岩機を使えば、固い土から化石を取りだすのは簡単だろう。だが、そうすると化石は粉々になってしまう。削岩機は粗暴で、無個性で、反創造的である。私に言わせれば、プロットは優れた作家の最後の手段であり、凡庸な作家の最初のよりどころだ。

と、プロット頼みの小説に対してなかなか手厳しい。「ストーリーは由緒正しく、信頼に値する。プロットはいかがわしい」とも。
●キングがどれだけストーリーに重きを置いているか、まったく別の章ではこんなことも書いている。

 なんらかの問題意識やテーマにもとづいて書くというのは、駄作のレシピである。優れた小説はかならずストーリーに始まってテーマに終わる。テーマに始まってストーリーに行き着くことはまずない。ごくまれな例外はジョージ・オーウェルの「動物農場」くらいのものだろう。

 そりゃあ、キングはジャンル小説で成功を収めて、エンタテインメントの大巨匠になった人物だからそうだろうとも、と思わなくもないが、これはなかなか考えさせられる。この本はかなり率直に創作技法を明かしてくれていて、言われてみれば、ああ、あの作品はそうだったのねと納得できるポイントがいくつかある。