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July 14, 2017

ショーソンと「アルテュス王」とワーグナーと その2

●(承前)以前に書いた記事への補遺を忘れないうちに。ショーソンのオペラ「アルテュス王」では、王妃ギネヴィア(ジェニエーヴル)を巡るアーサー王(アルテュス)と騎士ランスロットの対立と和解、アーサー王の死が描かれる。で、「アーサー王伝説万華鏡」(高宮利行著/中央公論社)を読んでいたら、ショーソンはドビュッシーに対して、こんな手紙を書いているっていうんすよ。

 わたし自身について申しあげれば、第3幕をふたたび、今度はさほどの面倒もなく取り上げました。今書いているものには満足しています。はっきりと脱ワーグナー化していると思います。

じゃあ第3幕だけを聴いてみたらどんな感じがするだろうと思って試してみると、やっぱり自分には思い切りワーグナーの強い影響が感じられてしまって、むしろワーグナーの呪縛の強さを思い知らされるばかり。ただ、音を聴いているだけなので、物語面ではまた別の見方もあるのかも。東京で上演されないものだろうか。
●上記のショーソンがドビュッシーに宛てた手紙が書かれたのは1893年の10月または11月だとか。この年の夏に、ドビュッシーはメーテルリンクから「ペレアスとメリザンド」オペラ化の許しを得ている。ここから実際に「ペレアスとメリザンド」が初演に至るまでには9年もかかることになる。ドビュッシーはアンチ・ワーグナー的な視点から「ペレアスとメリザンド」の物語に惹かれたそうなんだけど、一方でこの話って容易に「トリスタンとイゾルデ」を思い出させるのがおもしろいところ。