ドミノ・ピザ
April 25, 2018

「ハロー、アメリカ」(J.G.バラード著/東京創元社)

●J.G.バラード著の「ハロー、アメリカ」(東京創元社)を読了。かつて「22世紀のコロンブス」(1982年)の題で刊行されていた小説が、ネットフリックスで映像化決定ということで、原題そのままに「ハロー、アメリカ」として復活。これはかなりヘンなテイストの小説だと思う。前衛とコメディの融合とでもいうべきか。
●舞台設定はすこぶる魅力的だ。22世紀の未来、すでにアメリカ合衆国は資源の枯渇と気候変動で崩壊し、無人の砂漠の大陸となっている。一方、ヨーロッパには配給制で人々が静かに暮らす退屈な世界が残っている(いかにも少年時代を上海で過ごしたイギリス人バラードらしいヨーロッパ観)。しかし、そんなヨーロッパからアメリカを目指す若者がいた。イギリスを出港してアメリカを目指す探険隊に密航者として乗り込んだ若者が主人公。それぞれに思惑を持ってマンハッタン島に到着した探検隊のメンバーは、砂漠にアメリカン・ドリームを夢見て、西を目指す。
●夢と狂気は紙一重、滅んだアメリカを西へと旅する人々を描くタッチはバラードの真骨頂。「ハイ-ライズ」で描かれた高層マンションのリッチな住民たちが次第に狂って野蛮になってゆく姿と共通するものがある……と思っていたら、途中から予想外の展開を見せて、シニカルなコメディに変わってしまって唖然。でも、これは笑えるし、ある意味でバラードらしからぬ明るい話ともいえる。バラードの長篇としては70年代の「ハイ-ライズ」や「コンクリート・アイランド」より後、90年代の「楽園への疾走」や「コカイン・ナイト」よりも前。後に書かれる「洗練された終末感」を予告しながら、華やかなパーティを開いてみせたというか。廃墟となったアメリカへ向かう探検隊の船がアポロ号って名付けられているのとか、相当おかしい。

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