August 22, 2019

「三体」(劉慈欣著/早川書房)

●ようやく読んだ、話題沸騰中の中国発本格SF小説「三体」(劉慈欣著/早川書房)。ふだんならまずSFなんて読まないような人も夢中になるという世界的な大ベストセラーで、オバマ元大統領も大絶賛とか。なにしろ、原文は中国語なのに、英訳版がヒューゴー賞長篇部門を受賞したというからびっくり。まさかアジア圏の小説が、本家本元のヒューゴー賞をとるとは。舞台は中国だし、登場人物も中国人というエンタテインメントが、アメリカでここまで受け入れられるということがスゴい。これが三部作の第一作なんだそうだが、三部作合わせて本国版は合計2100万部、英訳版が100万部以上の売上を記録しているそう。
●実は読み始めはしんどかった。なにしろ文化大革命によって科学者が粛清されたり、体制側に寝返ったりという痛ましい場面で始まるので、「そういうのを読みたいわけじゃなかったんだけどなー」と頭を抱えていたのだが、この場面を過ぎると、一気に本格SFになる。いまどき英語圏ではまず書かれないような古典的なテイストのSFで、あるところは著者が敬愛するクラークを思わせるし、あるところは奇想天外なトンデモ系の話になっている。題名は天体力学における「三体問題」に由来。三重星系における文明が出てくる。アイディア豊富で、大風呂敷の広げ方が痛快。音楽にたとえるなら、このご時世に堂々たるロマン派の大交響曲が発表されて、しかもそれがよくできていた、みたいな感じか(というと佐村河内守みたいだが、実際遠くはない)。
●ひとつ大爆笑したのが、小説内に登場するVRゲーム「三体」における、「人力コンピューター」。よくこんなことを思いつくなと思った。
●登場人物の多くは中国のエリート科学者なので、人名など日本人には読みづらいかもしれないが、読んでいる内に特に気にならなくなる。あまりあらすじを知らずに読んだほうがおもしろいはず。

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