January 8, 2020

「ミゲル・ストリート」(V・S・ナイポール著/岩波文庫)

●年末年始、たまたま続けて強烈な辺境性を宿した新旧ふたつの物語を読んだ。ひとつはV・S・ナイポールの「ミゲル・ストリート」(小沢自然・小野正嗣訳/岩波文庫)。ノーベル賞作家が1959年に書いたデビュー作で。昨年、文庫になった。イギリスの植民地だった頃のトリニダード島の街が舞台で、登場する男たちはだれもかれもダメ男と変人ばかり。ろくに働いていない男だらけで、やたらとラム酒を飲み、子供と奥さんを殴る。どうしようもない連中だが、どんな変人でも共同体の一員として受け入れてしまう南国的な大らかさがあって、だれも飢える者はいない不思議な街。
●おかしな話が満載だが、とりわけ印象的だったのは「機械いじりの天才」の章。クルマをいじられずにはいられないオジサンが、修理するといってはクルマを壊してしまう。わからないのなら触らなければいいのに、どうしてもいじってしまう。なんだか身につまされる。目次を見た時点でわかるように、最後に主人公は教育を受けるためにこの街を後にする。どこか故郷を「見捨てる」ような話の閉じ方が、この連作短編集の肝なんだと感じる。(つづく

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