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December 3, 2021

シェイクスピア「ハムレット」の対決シーン

●シェイクスピア作品を題材とした名曲は数多いが、意外と有名曲に恵まれていないのが「ハムレット」だと思う。「ロミオとジュリエット」「マクベス」「夏の夜の夢」などはオペラでも器楽でも有名作品があるのに対し、「ハムレット」はこれといった人気作がない。作品が書かれていないわけではなく、オペラであればトマの「ハムレット」、器楽曲ならチャイコフスキーの幻想序曲「ハムレット」、リストの交響詩「ハムレット」、ショスタコーヴィチの「ハムレット」等々、数はたくさんあるのだが、どれも人気曲とは言いづらい。「生きるべきか死ぬべきか」とか「尼寺へ行け!」などオペラ化すれば名場面がいくつもできそうなものではあるのだが。ちなみにトマのオペラ「ハムレット」は結末が原作と違っていて、ハムレットが生き残って王位に就いたりするそうなのだが、この話でいくらなんでもそれはないだろうという気はする。
●で、先日「ハムレット」(松岡和子訳/ちくま文庫)を読んでいて、なんとなく釈然としなかったのが終場でハムレットとレアティーズが剣術試合をする場面。レアティーズはひそかに切っ先に毒を仕込んでおり、これでハムレットを刺すわけだが、その後、「もみ合ったあと、二人の剣が取り替わる」場面があって、今度はハムレットがレアティーズを刺す。毒が回るまでの間にレアティーズは真相を明かし、ハムレットは王を殺して復讐を果たす。でも「剣が入れ替わる」ってどういうことなんすかね。文字で読むともうひとつイメージがわかない。
●そこで実際の上演ではどう処理しているのかなと思い、YouTubeで丸ごと観られるハムレットを検索して、該当箇所を見てみた。以下の映像だと、ハムレットがレアティーズに背後を取られた後、自分の剣を落としてレアティーズの手から剣をもぎ取って、その後、落とした自分の剣をレアティーズに渡すという形になっていた。どうなんだろう、こういう流れって剣術としてありうるのかな……。なんか背後を取られるのが不自然な気もするけど。別の映像では両者とも剣を落としてしまい、ハムレットがたまたまレアティーズの剣を拾い、もう一方を相手に渡したというパターンもあった。演出次第なんだろうけど、動作として自然で、なおかつ観客に剣が入れ替わったことを明確に伝えるのはそれなりに工夫がいるのかも。