amazon
April 16, 2024

「交響曲 名盤鑑定百科」(吉井亜彦著/亜紀書房)

●実物を手に取って一瞬、虚を突かれたが、よく考えてみるとこういったディスクガイドは今だから意味があるのかもしれないと思ったのが、「交響曲 名盤鑑定百科」(吉井亜彦著/亜紀書房)。先月発売ばかりの本だが、これは1997年に春秋社から刊行された「名盤鑑定百科 交響曲篇」を出発点に、その後なんどか改訂された後、版元を変えて復刊されたもの。交響曲100曲について著者が計6000枚もの膨大な数のディスクを聴き、それぞれに短い一言レビューを寄せている。さらにディスクには推薦や準推薦といった評価が添えられる。著者の名前を「レコード芸術」誌の音楽評論で目にしていた人は多いと思うが、いろんな点でかつての「レコ芸」文化を受け継いだ一冊。同曲異演のなかから推薦盤を選ぶという発想そのものが「レコ芸」の文化だろう。
●世の中からCDショップが次々と減り、従来名盤とされたディスクも品切になり、中古でしか手に入らない音源ばかりになって、どうなるのかなと思っていたら、SpotifyやApple Musicが勢力を増し、本格的なストリーム配信時代が訪れた。すると、過去から現在までの膨大な数の音源が廉価ですべて聴けるようになり(聴けない音源もあるけど、それはともかく)、今のリスナーはサービス契約初月から一生かけても聴ききれないコレクションを等しく手にすることになった。となると、あまりに音源が膨大すぎるがゆえに、なにを選ぶか、ガイドが必要になる。それがプレイリストだったりするわけだけど、交響曲みたいな大曲だとまだまだ本のガイドは有用だろう。以前は限られたお金をうまく使うためにガイドに頼ったけど、今は時間をうまく使うためのガイドが必要なんだろうなと感じる。