News: 2014年7月アーカイブ

July 29, 2014

夏の音楽祭、進行中

●もう始まっているものを並べてみる。
●バイロイト音楽祭。今年もoperacastに放送予定あり。夜型人間を脱却した自分には、眠すぎてもはや1幕だけ聴くのも大変。ついさっきまで放送していた「ワルキューレ」第1幕(キリル・ペトレンコ指揮)を軽く聴いて、その先はあきらめる、今年も。
BBC Proms 2014。ここはオンデマンドで聴ける上に、4週間も載せておいてくれるのがありがたい。といっても、油断しているとあっという間に4週間くらい経ってしまうわけだが。映像は日本からアクセスできず。
●ミューザ川崎のフェスタサマーミューザKAWASAKI2014オフィシャルブログ。今年も開幕、首都圏のオーケストラによる音楽祭。これから何公演か足を運ぶ予定で、楽しみ。今回、この音楽祭のタブロイド誌に須栗屋敏先生が「あなたにオススメのコンサートを教えてくれちゃうぞ!」的な二択占いを寄稿している(ネット上にはないみたい)。意外としぶとく生き残っている須栗屋敏キャラ(笑)。しかもこんな日の当たるところで。

July 27, 2014

練馬文化センターでラモー「プラテ」

●24日は練馬文化センターでラモーのオペラ「プラテ」。まさかこんな会場でバロック・オペラの上演があるとは。この公演の成り立ちをぜんぜん知らないのだが、なんと、ジョイ・バレエストゥーディオというバレエスタジオが主催しているんである。しかもこれは同団体による2012年の日本初演の再演。なので客層も含めてかなりバレエ寄りの公演ではあるんだけど、音楽のほうのキャストもしっかりしていて、ピットに入るのは野澤知子指揮の古楽アンサンブル・プラテ(メンバー表には他団体でおなじみの名前多数)、プラテ役にはエミリアーノ・ゴンザレス・トロ、ジュノン役にマチルド・エティエンヌを招聘。大いにアウェイ感のある公演だったんだけど、音楽はもちろん、視覚面も含めて思い切り楽しんだ。愉悦に満ちたラモーの音楽にどっぷりと浸る。
●物語は天上の神様たちのコメディ。最高神であり雷の神様ジュピテルと風の女神ジュノンが夫婦ケンカをして地上の天候は嵐続き。そこでうぬぼれ屋のカエルの女王プラテをだましてジュピテルとニセの結婚式を開いて、ジュノンを嫉妬させておいて、最後は笑い話で丸く収めようというお話。もてあそばれるプラテがかわいそうすぎて、しんみりしてしまう(笑)。まあ、ストーリーは添え物のようなものではあるんだけど、あまりにトロが芸達者なので。カエルって、フランス語でも「クワッ!クワッ!」って鳴くんだ。字幕が投影式で読みづらかったのは惜しい。
●この日、ちょうど開演前からゲリラ豪雨が始まって、休憩中も雷が鳴っていた。まるで物語に合わせたかのよう。終演すると雨がすっかり止んでいたのは、ジュピテルとジュノンの仲直りの証拠。
●ところで今年は北とぴあ国際音楽祭でも「プラテ」が上演されるんすよね。まさか、一年で「プラテ」が2回上演されるとは。片や練馬区、片や北区というのもなんだかぐっと来る。

July 24, 2014

KKBOXと日本のストリーミングサービス

●オールジャンルの音楽ストリーミングサービスというと、今のところワタシはソニーのMusic Unlimitedを使用しているのだが、台湾発で日本国内ではKDDIが資本参加しているKKBOXというサービスもある。KKBOXはアジアで1000万ユーザー、課金ユーザー200万人を持つというから十分に大手のサービスだが、ぜんぜん知らないという方も少なくないだろう。ワタシもよく知らなかった。でも、CEOのクリス・リン氏のインタビュー(AV Watch)を読むと、なかなか興味深い。形態としては似てるけど、考え方の面で欧米の最大手Sportfyとの違いも見えて、もしかするとストリーミングサービスというのはグローバル一辺倒ではなくて、アジアならアジアのローカルな方法論があるのかも、と思えてくる。
●で、そのインタビューでリン氏が日本の市場について語っている部分がおもしろいので引用しておこう。

 日本の音楽業界は、他国ほど急速に売上げが低下していません。アメリカも含め、他の国々はCDの売上げが恐ろしく短期間で落ちていきました。だからそうした国々の音楽業界の人々は「急いで他のボート(ストリーミング・ミュージック)に乗り換えなきゃ!」と感じたわけです。
 しかし日本の音楽業界のボートは、沈んでいるわけではない。いまはまだ、ちょっとした水漏れがある程度です。なので中の人々は、一生懸命パッチあてをしている。しかし、水漏れが止まるわけではなく、いつかは沈むんです。遅かれ早かれ、ストリーミング・ミュージックサービスがなければ、音楽の売上げは落ち続けるだけだ、と理解するでしょう。だからいつかは「わかった。どれでもいい。KKBOXでもSpotifyでもレコチョクでもいいから、ストリーミング・ミュージックへと楽曲を提供しよう」ということになる。

●最近、「CDが売れない」みたいなことがオートマティックなフレーズとして口から出てきがちなんだけど、外から見ると逆なんすよね。日本は依然としてCDが売れてしまっている。以前ここでレポートしたベルリン・フィルの自主レーベル記者会見でも「(アメリカやイギリスと違って)日本とドイツではいまだにCDを買う人がたくさんいる」みたいな話が出ていたっけ。
●インタビュー中では、日本でCDがまだ売れ続けているのはストリーミングサービス側で十分なコンテンツがそろっていないから、という前提が共有されている(もちろんここでのコンテンツはみんなが聴きたい邦楽の話であって、洋楽、ましてやクラシックなど眼中にないだろう)。別に日本人はポリカーボネートの円盤を信仰しているというわけではない、たぶん。

July 22, 2014

インバル&都響のマーラー交響曲第10番クック版

●21日は「都響スペシャル」でインバル指揮東京都交響楽団によるマーラーの交響曲第10番クック補筆全曲版(サントリーホール)。前日、同じプログラムの公演がSNSで大好評を博していたのを目にしていたのだが、期待通りのすばらしい公演となった。この曲を実演で聴けること自体が貴重だが、これだけ高機能、高解像度の演奏で聴けるとは。一般参賀2回。
マーラーの切手●それにしてもマーラーの第10番は一筋縄ではいかない作品だなとますます実感。この曲、初めて知った時点では第1楽章アダージョのみの作品だったので、未完の作品であり、前作と近い雰囲気を持った交響曲第9番Bのような曲だと思っていた。マーラーの交響曲の創作史のとらえ方にはいろんな考え方があって人それぞれだと思うけど、自分は第7、8、9をワンセットとして見て(「大地の歌」は番外扱いで)、第7番はパロディ的自己言及的なポストモダン交響曲、第8番は究極まで肥大化させた大編成スーパー・ロマンティック交響曲、第9番は古典主義の極致として3点セットと見るのがすっきりしていて好きなんである。ところが第10番がクック補筆による(不足はあるとしても混ぜ物のほとんどない)完成された作品として目の前にあらわれてしまった。
●で、この完成された第10番を聴いても、やはり交響曲第9番Bという印象は強い。終楽章のクライマックスだって第9番の相似形のように感じる。第9番が4楽章制の古典的交響曲の系譜の終着点とするなら、第10番はアーチ形の5楽章制交響曲の系譜の終着点とでもいうか。でもその一方で、第9番と第10番はある角度から見ると似た楽想を共有してるけど、別の角度から見るとまるで違うコンセプトにも思える。第10番のほうは過去作品からの引用的なものが多い。フィナーレの衝撃的な大太鼓は第6番のハンマーをいやでも連想させる。でも衝撃音が2度か3度なら悲劇の表現だけど、第10番のように何度も続くとそれはやがてパロディになり強制的に笑いを誘発させる。聖と俗、真摯さとユーモア、悲劇と喜劇など二項対立的な要素の共存はマーラーの音楽そのものだけど、それにしても第10番はどこまで額面通りに受けとっていいんだか。アルマとの関係を重んじればパーソナルで引き裂かれるような愛の交響曲でもあるけど、一方では個人的愛を超越した彼岸的交響曲でもある。そして、一曲一曲が「世界全体を描く」大きな作品であるだけに、マーラーの生涯を通した交響曲の創作全体が「メガ交響曲」としてまた一つの作品となっているかのような思いもいっそう強まる。

July 17, 2014

映画「マレフィセント」

●映画「マレフィセント」を見てきた。これは「眠れる森の美女」モノなので、チャイコフスキーとの名作バレエとの関連からも必須科目のような気がして。「眠れる森の美女」そのものにも様々なバリエーションがあるが、この映画はオーロラ姫に呪いをかける魔女マレフィセントを主人公として、彼女の視点から描いた物語になっているところが秀逸。なぜマレフィセントは、オーロラ姫を眠りにつかせるにいたったのか。その背景がしっかり描かれていて、現代的な視点でも納得のゆく「真実の愛」の物語になっている。つまり、「眠れる森の美女」という物語のすぐれた新演出とでもいうべきか。マレフィセント役はアンジェリーナ・ジョリー。美しくて邪悪。
●ダークファンタジーではあるけど、なにしろディズニー映画なので安心感は半端ない。設定の妙に対してプロットは意外性に乏しいようにも感じるが、それでも見てよかったと思える傑作。90%マレフィセント視点で見るべき映画なんだけど、大人の男性が見る場合はステファン王にも共感を寄せたい。あの「翼」を後生大事にしまっておくあたりにコレクター気質を見た。
●上の予告編では、チャイコフスキーのおなじみのあの曲が、この映画にふさわしい雰囲気のアレンジで歌われている。

July 15, 2014

ロリン・マゼール(1930-2014)

●昨日、ワールドカップ決勝戦が終わった直後、ロリン・マゼールの訃報が。7月13日、肺炎による合併症のためアメリカ・バージニア州の自宅で逝去。体調不良が伝えられていたが、年齢をほとんど感じさせない人だったので、またすぐに復帰するものだと思っていた。最後に生で接したのは一昨年のN響定期だったか。80代になってさすがに歩き方などはゆっくりしていたが、強烈なオーラは健在だった。
マゼールのレスピーギ●マゼールはたぶん録音でもっともよく好んで聴いている指揮者のひとりなので、思い入れが強すぎてなんと言うべきかわからないが、彼の音楽になぜ引きつけられるのかを言葉で表現すると、きっとネガティブな言葉がたくさん並ぶことになる。端的にいえば「華麗なる変態性」なんだけど、それに加えて有り余る才能を持てあましている感というか、サッカークラブにたとえると(←なんだそれは)きわめて潤沢なリソースを有しながら結果主義を徹底できず予算の無駄遣いをしながら6位くらいでリーグ戦を終えてしまうクラブが強い愛着を誘発するのに似ているというか。ウィーン・フィルと来日した際のマーラーの交響曲第5番を放送で聴いたのがきっかけとなって聴くようになったんだけど、その後ディスクを聴いていちばんスゴい!と思うのは、その多くが最初に知った時点より過去に遡ったものばかりで、クリーヴランド管弦楽団時代とさらにその前の録音を聴いて震撼し、ウィーン・フィルとの演奏に多少の違和感を感じつつも納得し、その後は予測不能なまだら模様を描く軌跡を追いかけることになり、じゃあもういいかなと思うと、突然まばゆい光彩を放つ。
●雑誌のインタビューなどを読んでも、言っていることが立派すぎて、ぜんぜんおもしろくない。実際にやってることは痛快このうえないのに、そんなお題目を並べられてもなあ、みたいな。
マゼールのマーラー●指揮棒の持ち方が独特なのもカッコよかったし、風貌にも才気が滲み出ていた。ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートを指揮したときのシャープで鮮やかなウィンナワルツを放送で聴いて、こんな曲でも自分の思い通りにしてしまうんだと驚愕した。そうえいば、N響で「ボレロ」を指揮したとき(伸縮自在のマゼール節が炸裂した)、演奏が終わった後管楽器奏者たちをひとりひとり立たせる場面で、なぜか肝心のトロンボーンを忘れて袖に引っこんでしまい、次にあらわれたときに人差し指を一本立てながら「ゴメン、一人忘れてたわ~」みたいなポーズをとっていたのを思い出した。この人でも「うっかりする」ことがありうるんだ。
●ご冥福をお祈りいたします。

July 8, 2014

調布音楽祭2014

調布音楽祭 2014
●6日は調布音楽祭2014へ。会場は調布駅すぐそばの調布市グリーンホールと調布市文化会館たづくり。調布市と公益財団法人調布文化・コミュニティ振興財団が共催する音楽祭で、総合プロデューサーに鈴木優人さん、監修に鈴木雅明さん(鈴木父子は調布が地元なんだそうです)、マネージメントをバッハ・コレギウム・ジャパンが担う。期間は7月4日から7日までの3日間。最終日しか足を運べなかったが、盛況だった。手作り感のある地域密着型の音楽祭というスタイルで、都心にはない雰囲気の、でも東京ならではの音楽祭になっていたと思う。
●この日は「地元音楽家によるオープンステージ」と「桐朋学園大学音楽学部学生・卒業生によるミュージックカフェ」を駆け足で巡って、最終公演のBCJによるバッハ「ブランデンブルク協奏曲」全曲演奏会を聴いた。BCJ公演はもちろんのこと、無料企画の「オープンステージ」と「ミュージックカフェ」が充実しているのが吉。「ミュージックカフェ」は飲食自由、軽食と飲み物の販売あり、年齢制限なし(小さい子供連れでも可)、入退室自由、パイプ椅子というカジュアルなスタイル。この気楽さと、一方でステージ上の若者たちが発散する清新なエネルギーという組合せがとてもいい空気を作っていて、来年はもっと入り浸りたくなる。ただ、飲食している人は案外少なくて、普通の演奏会と同じように聴いているお客さんが多め。ともあれ、コーヒー飲めるのはありがたい。
●BCJのブランデンブルク協奏曲は6番から1番へと逆順で。第3番の第2楽章でサプライズがあったり、聴きどころ満載だったが、圧巻は第2番のトランペット、ギィ・フェルベ。グルグル巻きのタイプのトランペット。孔はいくつ空いているんすかね。鮮やかな技巧で吹き切った。輝かしくて、まろやか。

July 2, 2014

東京オペラシティで大野和士指揮フランス国立リヨン歌劇場管弦楽団

●30日は大野和士指揮フランス国立リヨン歌劇場管弦楽団へ(東京オペラシティ)。ルーセルの「バッカスとアリアーヌ」組曲第2番、ラヴェルの「ラ・ヴァルス」とバレエ音楽「ダフニスとクロエ」全曲という、一曲ごとにクライマックスが訪れるような華やかなプログラム。ホールの空間いっぱいに響きが充満したせいもあってか、フランスのオーケストラという先入観から予想されるものとは少し異なる、濃厚で芯のあるサウンドを満喫。「ラ・ヴァルス」のグロテスクな美しさがよく伝わってきた。「ダフニスとクロエ」は一大スペクタクル。フルートが冴えまくっていて、猛烈にうまい。こんなソロイスティックな笛を聴かせる人がオペラのオーケストラにいるものなんだろか……と思って、メンバー表を見たら、上野星矢とクレジットされていた。今回だけの客演なんすかね? もう感服。合唱は同歌劇場の合唱団でこちらも好演。熱気が渦巻くラヴェル。
●アンコールにフォーレ「ペレアスとメリザンド」から「シシリエンヌ」、ビゼー「アルルの女」から「ファランドール」。会場はわきあがって、大野和士のソロ・カーテンコールが2回。
●大野&リヨン歌劇場はこの後、今週末からBunkamuraでオッフェンバックの「ホフマン物語」を上演する。ますます楽しみに。演出はロラン・ペリー。
●ややこしいのだが、今月はさらにフランス国立リヨン管弦楽団の来日ツアーもあって、うっかりすると混同しそうになる。こちらの指揮はスラットキン。フランス国立リヨン歌劇場管弦楽団とは別の団体だ。同じ街の2つのオーケストラが同じ月に日本に来ているのは珍しいけど、これって偶然そうなるもの?

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