
●16日はミューザ川崎、18日夜はサントリーホールでクラウス・マケラ指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団。思うところがあり、同じプログラムを2度聴くことに。両日で印象の違う部分もあるにはあるが、基本的な手触りは変わらず、練り上げられたツアーのプログラム。前半がリヒャルト・シュトラウスの交響詩「ドン・ファン」、後半がマーラーの交響曲第5番。弦楽器は通常配置。このオーケストラではいつものように、なぜかファゴットとクラリネットの位置が逆。前半の「ドン・ファン」は明瞭で爽快。オーボエを筆頭に名手たちが妙技をくりひろげる。
●後半は一言でいえば、宝石のようなマーラー。あらゆる角度から見て美麗で、輝かしい。個の高い力量を生かして、細部まで磨き上げられ、アイディアも豊富。瞬間瞬間の壮麗さと緻密な表現力に感嘆する他ない。テンポは遅めで、前へ前へと進むのを拒むかのように、一歩ずつ立ち止まって精妙な音響構築物を築く。熱い魂の叫びではなく、ぜいたくな音の饗宴。キレがあり明快で、健康的。大ブラボーを叫ぶ人もいれば、マーラーに求めるのはこれじゃないという人もいるだろう。ともあれ、終演後の客席の反応は熱狂的で、もちろん、マケラのソロ・カーテンコールあり。マケラは袖からそっと出てきて、舞台の端で拍手を受ける。意外と控えめな様子。
●マーラーの交響曲はいろんな角度から聴けるのが魅力。傑作は重層的に楽しめるもの。自分の基本線は第5番という番号ゆえの「苦悩から歓喜へ、なんちて」。交響曲についての交響曲、メタ交響曲。葬送行進曲化した運命の動機で始まって、歓喜のパロディで終わる。パロディだからこそ最後は真の熱狂が必要。
●一年でいちばんコンサートの多い時期だが、またしても日本代表戦が重なってしまい、ニッポンvsボリビアは後日、録画観戦することに。さすがに結果は目に入った。
November 20, 2025