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November 25, 2025

さくらホールコンサート「一夜限りの若者たちの祭典2025」 中島結里愛、沢田蒼梧、米田覚士

渋谷 さくらホール
●21日は渋谷区文化総合センター大和田開館15周年記念さくらホールコンサート「一夜限りの若者たちの祭典2025」へ。先日、ブザンソン国際指揮者コンクールで優勝を果たした米田覚士の指揮。若手奏者からなる大和田祝祭管弦楽団のコンサートマスターを林周雅が務め、ピアニストの中島結里愛、沢田蒼梧が出演。プログラムは前半がバツェヴィチの弦楽オーケストラのための協奏曲、ショパンのピアノ協奏曲第2番(中島結里愛)、後半がショパンのピアノ協奏曲第1番(沢田蒼梧)。つまり、オール・コンチェルト・プログラム。米田覚士はコンクール優勝から帰国して最初の公演。全席完売。この日のプログラムノートを書いていたので、注目の公演に足を運ぶことができた。
●最初のバツェヴィチの弦楽オーケストラのための協奏曲は指揮者なしで。弦楽器の編成は8型で、林周雅のリードにより緊密なアンサンブル。新古典主義のスタイルで書かれ、初演時には「20世紀のブランデンブルク協奏曲」と呼ばれた作品。耳なじみがよく、スマート。ポーランドのバツェヴィチ、東欧圏の先駆的な女性作曲家という文脈で演奏機会が増えているっぽい。続くショパンも編成は8型で、これくらいの中ホールで協奏曲を聴ける機会は貴重。本来、こういうサイズ感の音楽なのかなとも感じる。中島結里愛は先日のショパン・コンクールで最年少の15歳で出場した高校1年生。この年齢だと若手というより、まだ子どもにしか見えないわけで、全力応援モードになる。磨き上げられた見事なショパンで、ただただ眩しく、可能性に満ちあふれている。アンコールにショパンの練習曲「木枯らし」。
●後半、ピアノ協奏曲第1番でソロを務めた沢田蒼梧は、前回2021年のショパン・コンクールで名大医学部在学中ながら2次予選まで進んで脚光を浴び、その後、医師になって音楽家との二刀流を実現している稀有な存在。本当にお医者さんとして働いている。医師と音楽家、どちらかだけでも並外れているのに、両方の人生を送っているわけで、その深い喜びは本人にしかわからないものだろう。異質な経歴に注目が集まるのは避けられないが、ステージにあがれば真の音楽家以外の何者でもない。パッションにあふれ、音楽に生命力と躍動感がみなぎっていて、一期一会の演奏を客席に届けようとする気迫が伝わってくる。こんなにショパンの協奏曲に引き込まれたことはいつ以来だろう。この演奏そのものが、なぜ医師を続けながら音楽活動もしているのかという疑問に対する答えになっていた。オーケストラも好演。びっくりするほどうまい。アンコールにショパン「子守歌」。
●始まる前に開館15周年の区長挨拶があった。
●前半の舞台転換で米田覚士が場つなぎのトークに登場したのだが、自然体のトークがあまりにおもしろすぎて衝撃。ブザンソン優勝者にして、このトーク力。逸材。

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