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November 26, 2025

キリル・ペトレンコ指揮ベルリン・フィルのシューマン、ワーグナー、ブラームス

ペトレンコ ベルリン・フィル
●23日はミューザ川崎でキリル・ペトレンコ指揮ベルリン・フィル。プログラムは前半がシューマンの「マンフレッド」序曲、ワーグナーの「ジークフリート牧歌」、後半がブラームスの交響曲第1番というドイツ音楽プロ。つい先日、パヤーレ指揮N響で聴いたばかりの「マンフレッド」序曲をまたも聴くという偶然。ベルリン・フィルが弾くとシューマンのオーケストレーションもぜいたくなごちそうに。弦は対向配置。稠密な質感による異次元のサウンドが出てくる。途中、トランペットが舞台袖に退出して、「英雄の生涯かよっ!」と思ったら、少しだけ裏から吹いて、またすぐに舞台に戻ってきた。スコア上にそんな指定はないと思うけど、これは「マンフレッド」のストーリーと結びつけた解釈なんだろうか(異界の精霊の叫びとか?)。続くワーグナー「ジークフリート牧歌」は白眉。ぐっと編成を絞って、たぶんこれまでに聴いたベルリン・フィルの最小編成。聴いたことがないような柔らかく夢幻的な音が出てくる。魔法だ。心のコージマが随喜の涙を流していた。
●後半のブラームスはかなり細かいテンポの操作や綿密なダイナミクスの設計に基づいた練った造形。自然な流れよりは意匠を重んじるというか。第1楽章は意外と軽めに始まって後半で白熱。第2楽章のヴァイオリン・ソロはコンサートマスターのノア・ベンディックス=バルグリー。隣に樫本大進、弦楽器は首席奏者2名が並ぶ形。終楽章はぐっとアクセルを踏んで最後は加速して強靭なコーダへ。フルートにパユ、オーボエにマイヤー、クラリネットにフックス、ホルンにドールと気がつけばベテランぞろい。奏者も音楽も熟している。ブラームスでは第1ヴァイオリンに若いMINAMIの姿。
●大喝采の後、楽員退出後も拍手が止まず、ペトレンコのソロカーテンコール。会場売りのCD購入者は楽団員3名によるサイン会に参加できた模様。