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November 27, 2025

ジョナサン・ノット指揮東京交響楽団の武満徹&マーラー

ジョナサン・ノット 東京交響楽団
●23日はミューザ川崎でジョナサン・ノット指揮東京交響楽団。プログラムは武満徹の「セレモニアル」(笙:宮田まゆみ)とマーラーの交響曲第9番。休憩なし。前日に東響定期として同じプログラムがサントリーホールで演奏されており、この日はミューザ川崎の名曲全集としての開催。チケットは完売。2014年から音楽監督を務めてきたノットのラストシーズンの掉尾を飾ったのは、就任記念公演と同じプログラム。ノットは就任記者会見のときから、折に触れオーケストラとの協働を「旅」にたとえてきたが、旅の終着点は出発点でもある。そしてマーラーの第9番はおわりの音楽だ。
●武満の「セレモニアル」では笙、オーボエ、フルートを上方に配置して音が降り注ぐかのよう。奏者の移動や出入りがあるので、そのままマーラーに続けるというわけにはいかないが、両曲の世界観はつながっていると思わせる。マーラーの第1楽章はエモーショナルというよりは清澄。彫りが浅いわけではないのだが、どこか淡々とした表情にも。第2楽章は鋭利で、舞踊性を強く感じさせる。第3楽章のブルレスケは、いつもは怒りの音楽、フォースの暗黒面に堕ちた音楽だと感じるのだが、むしろまっすぐなジェダイの音楽。第4楽章は弦楽器の質感がすばらしい。お別れの音楽よりも希望の音楽として受け止める。この曲のテーマは「生と死」であるとは思うが、おしまいの部分は終焉というよりは、溶解というか、相転移みたいなイメージで受け止めたい自分がいる。曲が終わった後に長い長い沈黙。
ジョナサン・ノット 東京交響楽団
●大喝采の後、楽員が退出してノットがソロ・カーテンコールにこたえるのはお約束だが、さらに楽員総出で舞台と客席が一体となってノットの特製タオルマフラーを掲げる感動的なシーンが続いた。こんなに聴衆と楽員に愛された音楽監督をほかに知らない。
ニコニコにこの日の公演の動画あり。