
●今季のJリーグは鹿島が9年ぶりに優勝。かつての「常勝軍団」が帰ってきた。7月末にJ1の1位が神戸、J2の1位が水戸、J3の1位が八戸になって、「神戸/水戸/八戸」のトリプル「戸」が実現するかもと書いたが、結局、優勝できたのはJ2の水戸だけだった。J1を鹿島、J2を水戸、J3を栃木シティが制して「北関東の三冠」に。水戸は26年間もJ2に留まった末に、初のJ1昇格。来季はJ1で鹿島との茨城ダービーが実現する。J3優勝の栃木シティはJFLから昇格したシーズンで即座にJ3優勝を果たしてJ2へ。先にJリーグ入りしたJ3の栃木SCを追い越してしまった。栃木にふたつもJリーグのクラブがあるのは驚きだが、栃木SCは宇都宮市が本拠、今回J3優勝を果たした栃木シティFCは栃木市が本拠。栃木市だから「栃木シティ」なのかな。
●マリノスは一時はJ2降格が決定的だと思ったが、最終盤になって大島秀夫監督のもと、割り切った「ボールを持たないサッカー」に大転換を果たして、ウソのように勝ち点を積み上げて15位フィニッシュ。名古屋と東京ヴェルディより上になるとは。最終節は鹿島に敗れて目の前で優勝を決められてしまったものの、その前に浦和、広島、京都、セレッソ大阪相手に4連勝して、終わってみれば得失点差は「-1」まで改善した。「アタッキングフットボール」をかなぐり捨てたら、ウソみたいに簡単に得点を取れるようになったという、フットボールの大いなる矛盾。
●キーパーからボールをつないでビルドアップしてチャンスを創造することに比べれば、リスクを取らずに後ろからボールを大きく蹴るのは効率的だ。前に蹴って味方につながればオッケー、相手に奪われても守備陣形は整っている。ハードワークしていれば、いずれ相手がミスをしてチャンスがやってくる。キックオフではボールがタッチラインを割るように相手陣地奥深くに蹴り出して、ボールを譲る。サッカーは陣取り合戦なので、前に蹴るのは本質的に理にかなっている。そもそもマリノスは日産時代から堅守の伝統があり、アタッキングフットボールはポステコグルーの置き土産にすぎない。今後も「ボールを持たないサッカー」を続ければ、残留争いなどをせずに、以前のように毎シーズン10位前後に落ち着くチームになるだろう。ただ、ファンとして、それがうれしいことなのかどうかは、よくわからない。たとえJ2に落ちてでも1試合に600本以上のパスを回し続けるという考え方もありえただろう。これはフィロソフィの問題。
December 8, 2025