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December 19, 2025

東京富士美術館 「ヨーロッパ絵画 美の400年」「西洋絵画 ルネサンスから20世紀まで」

東京富士美術館
●八王子の東京富士美術館を初めて訪れた。八王子駅からバスに乗るので、アクセスは決してよくないのだが、思いのほか大規模な美術館で、コレクションも大変なもの。収蔵品展の「ヨーロッパ絵画 美の400年」と常設展示の「西洋絵画 ルネサンスから20世紀まで」他が開催中。ともに西洋美術を俯瞰した総合的な展示で、国立西洋美術館の常設展みたいな雰囲気。ヴァン・ダイク、ミレー、ターナー、コロー、ドラクロワ、ルノワール、ゴッホ、モディリアーニ、シャガール、セザンヌ、マグリット、モネ、ミロ、等々。本当にすごい。公立の美術館ではなく、創設者は池田大作。隣に創価大学の広大なキャンパスが広がる。

モネ「海辺の船」
●これはモネの「海辺の船」。ノルマンディーの明るい空、さまざまな光を反射する海。静かな風景に対して、大型帆船が斜めに描かれて動きをもたらす。船のそばには顔の見えない人物がなんにんも働いている。巨大メカと整備員の対照の19世紀バージョン。

サン=ベルナール峠を越えるボナパルト
●で、なぜかナポレオンを描いた絵が何点も展示されていたのだが、いちばん有名なのはこれだろう。「サン=ベルナール峠を越えるボナパルト」(ジャック=ルイ・ダヴィドの工房/1805年) 。クラシック音楽ファン的には、ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」のレコード・ジャケットに出てくるヤツだ!と反射的に思ってしまうのだが、今どきこの絵を使ってるディスクはほとんどないらしい。まあ、結局ナポレオンには献呈されなかった曲だし、これが出てくるととたんに古臭く感じられるのはたしか。
●漠然と記憶に残っているこの絵の「エロイカ」はなんだったかなーと思って軽く検索してみてもはっきりしない。現在、Amazonで検索してようやく見つけたのは、カラヤン指揮ベルリン・フィルのLPレコード。よく見ると、ナポレオンの足元でカラヤンが両腕を振り上げて指揮をしている構図がなんだか奇妙……。皇帝と帝王。

フォンテーヌブローのナポレオン、1814年3月31日
●で、ナポレオン絵画ではこれも展示してあった。「フォンテーヌブローのナポレオン、1814年3月31日」(イポリト=ポール・ドラローシュと工房/1840年代)。こちらのナポレオンはさきほどの肖像とは別人のように、すっかりくたびれている。パリは陥落し、ナポレオンはフォンテーヌブロー宮殿の小アパルトマンに逃れる。お腹はぽっこり、背筋は伸びない。ため息が聞こえてきそう。
●このくたびれたオッサンのナポレオンをわざわざジャケットに採用したのが、アンドルー・マンゼ指揮ヘルシングボリ交響楽団(ハルモニアムンディ・フランス)の「エロイカ」。神話を剥ぐ、ってことかな。もちろん、演奏はくたびれていない。