
●20日はNHKホールでレナード・スラットキン指揮NHK交響楽団のベートーヴェン「第九」。ついに今年も「第九」の季節だ。一曲だけのプログラム。ソプラノ独唱は予定されていた中村恵理の代役として、砂田愛梨がN響と初共演。メゾ・ソプラノに藤村実穂子、テノールに福井敬、バリトンに甲斐栄次郎、合唱は新国立劇場合唱団。オーケストラの弦は通常配置、合唱は100名規模。20世紀の伝統に即した大編成による「第九」を堪能。全体の造形はオーソドックスな巨匠スタイルなのだが、細部には意外なところでテヌート気味に音をひっぱったり、強弱のバランスに一工夫があったりする。しばらくぶりに聴いたけど、81歳になってもスラットキンはやはりスラットキンで、持ち前の明瞭さ、明快さは健在。重厚な巨匠芸に傾くことなく、シャープで推進力のある音楽を展開。棒の振り方もきびきびしている。一方で第3楽章の温かみも印象的。合唱もスラットキンのスタイルにふさわしく、くっきりとして力強い。第4楽章の終結部では一段と熱量を増して、高揚感とともに幕。伝統的なスタイルであっても新鮮さを失わない「第九」はさすが。
●「第九」は常に年末進行は並走することになる。仕事納めに向かって怒涛のコーダに突入。例年そうだが、あわあわと追い立てられているうちに、突然すっと目の前が開けて静かになるのが年末。今年は各社とも26日が仕事納めだろう。みんなが休みに入ると一気にメール等のトラフィックが減って、モードが変わるはず。
December 22, 2025