
●5日はサントリーホールへ。前日のTOPPANホールのベルリン古楽アカデミーに続いて、「勝手にバッハ週間」第2弾として鈴木優人指揮読響によるバッハ「マタイ受難曲」メンデルスゾーン版。この日も変化球なのだ。かのメンデルスゾーンによる復活蘇演にもとづく版で、カットがあったり(正味2時間強)、オーケストレーションが時代に応じて改められていたりする。合唱はバッハ・コレギウム・ジャパン、テノール(福音史家)にザッカリー・ワイルダー、バス(イエス)にドミニク・ヴェルナー、ソプラノに森麻季、カウンターテナーにクリント・ファン・デア・リンデ。前半だけ登場の児童合唱は東京少年少女合唱隊。オーケストラと合唱は左右二群にわかれて配置され、中央に児童合唱が入る。コンサートマスターは日下紗矢子で、胸のすくようなソロ。字幕あり。
●「19世紀のバッハ」という意味ではこれも一種のピリオド・スタイルなのか。メンデルスゾーン版を聴く貴重な機会を得られたということもさることながら、この日の収穫は激しいパッション(文字通り)に貫かれた魂のバッハを聴けたこと。後半はたいへんな気迫で、オペラの演奏会形式を聴いているかのよう。もともと「マタイ」にはそういう要素もあるとは思うが、とてもドラマティック。思わず会衆といっしょになって「バラバ!」と叫びそうになる(ウソ)。優人さんが2020年から務めていた読響の「クリエイティヴ・パートナー」の今月で任期満了。コロナ禍をはさみながら、契約延長を経ての6年間。有終の美を飾った……と言っても、まだ今月の公演が残ってる。優人さんのソロカーテンコールあり。
●よく思うんだけど、作曲当時のスタイルを尊重する考え方が広まる一方、一般的なオーケストラのレパートリーからバッハやバロック音楽がほとんど消えているのが少し寂しい。HIPはHIPで大切にして、それとは別にメンデルスゾーン的な考え方で(あるいはマーラーがベートーヴェンを編曲したように)、21世紀のオーケストラが演奏しやすく、大ホールの聴衆にも喜ばれるように編曲されたバッハやヘンデル、ヴィヴァルディ、コレッリ、テレマンがあってもいいんじゃないかと感じることがある。あえて歴史的情報ゼロで再創造したパワード・バロック、オルタナティヴ・バロック、みたいな。今、シューリヒトがバイエルン放送交響楽団を指揮したヘンデルのコンチェルト・グロッソを聴くと、一周回って胸キュンなんですけど。
March 9, 2026