
●「勝手にバッハ週間」第3弾、8日は久々に埼京線に乗って、彩の国さいたま芸術劇場音楽ホールへ。金川真弓の無伴奏ヴァイオリン・リサイタルで、二日間にわたるバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ全曲演奏会の二日目。前半に無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番ハ長調、後半に無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番イ短調、無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番ホ長調。これまで協奏曲や室内楽でなんどか聴いてきた大活躍中の俊英だが、リサイタルは初めて。しかも無伴奏。ヴァイオリニストが舞台にたった独りで立つのは、協奏曲とはまた違った重圧があるのだろうなと想像するが、集中度の高い堂々たるソロ。現代的な美意識にもとづいて磨き上げられたアポロン的バッハといった様相で、構築性や舞踊性とみずみずしい情感が絶妙なバランスで混じり合う。
●この3曲、ソナタ、ソナタ、パルティータという並びだと、頭のほうが重いプログラムになる。ソナタは教会ソナタで、それぞれ第2楽章に恐るべきフーガがあるわけだが、この両フーガが圧巻。とくに最初の第3番のフーガは、いきなりの大クライマックスが訪れた感があり、進むにつれて白熱する様子に息を呑む。対して、おしまいのパルティータは舞曲の連なりでもあり、明るい曲調もあって、肩の力を抜いて楽しむ。
●バッハって、構築性の塊のようなパズルっぽいフーガに人間的な熱いドラマがある一方で、本来身体性を伴う舞曲のほうに幾何学的な美みたいなものがあって、おもしろいなとよく思う。
●アンコールに先月100歳を迎えたジェルジ・クルターグの「サイン、ゲームとメッセージ」より「J. S. B. へのオマージュ」。納得の選曲。クルターグはエリオット・カーター(1908~2012)に続いて、自らの生誕100年に立ち会う作曲家になった。
March 10, 2026