
●17日はサントリーホールでオーケストラ・アンサンブル金沢の東京定期公演。今回は「野村萬斎 with OEK ファリャ 恋は魔術師」と題され、狂言師の野村萬斎が演出、出演。野村萬斎はOEKの本拠地、石川県立音楽堂のアーティスティック・クリエイティブ・ディレクターを務めている(石川県立音楽堂にはコンサートホールと並んで能楽堂がある)。指揮はOEKパーマネント・コンダクターの松井慶太。プログラムは前半に徳山美奈子の交響的素描「石川」~加賀と能登の歌による~より「海の男」、シューマン(青島広志編)「蝶々」、後半にファリャのバレエ音楽「恋は魔術師」。「能・狂言×日本舞踊×フラメンコ×オーケストラ」と銘打たれていて、いったいどんな舞台になるのか、さっぱり予想がつかなかったが、驚きの完成度。こういった和洋の芸術の融合を目指したものとしては出色の出来で、すべてにおいて洗練された舞台に仕上がっていた。客席にはOEKのお客さんだけではなく、ふだんオーケストラを聴かない方も多数いた模様だが、どちらのお客さんも満足できたのでは。
●オーケストラは舞台後方に陣取り、前方中央には「サントリーホールにはないので、歌舞伎座から借りてきた」(野村萬斎のトークあり)という所作台が敷かれている。前半のシューマン「蝶々」から舞踊付きで、原曲に物語性はないが、自由な発想から組み立てられたストーリーにもとづいて舞が踊られる。編曲はOEKのコンパクトな編成に応じたものだが、ほどよくあでやかで、無理がなく、見事なもの。ファリャの「恋は魔術師」では歌唱も入る(メゾソプラノ:秋本悠希)。作品に充満する熱く濃密なアンダルシア的世界観と和の世界がどう結びつくのかと思ったら、まったく境目のない調和ぶりで驚嘆。これって幽霊譚なんすよね。浮気者の旦那の亡霊に悩まされて、ジプシー美女に亡霊を誘惑してもらう。幽霊なら狂言の得意技、ということで野村萬斎が亡き夫の亡霊役で場内を沸かせる。カンデーラ役に中村壱太郎。ところどころ、所作台を足でドンと強く打ち鳴らして付ける強いアクセントが、ファリャの音楽をいっそう引き立てる。「火祭りの踊り」で大いに盛り上がる。基礎理解がなさすぎて舞についてはなにも言語化できないのが悔しいが、すこぶる華やか。松井慶太指揮のオーケストラはキレのある明るいサウンドで、見通しがよく雄弁、管楽器のソロも巧み。ファリャの作品世界へと引き込んでくれる。カーテンコールもふだんのクラシックの公演とは違って、演出がついているのが新鮮で、カーテンコールからそのままアンコールの「火祭りの踊り」になだれ込む趣向が冴えている。客席からも「火祭りの踊り」のリズムで手拍子。
●会場内で野村萬斎のアクスタ等のグッズ販売あり。本人トークで宣伝されたこともあって、休憩中に飛ぶように売れていた。
●この日もOEKは18時30分開演。もうみんな慣れた。早く始まって早く終わる。これでいいのかも。
March 18, 2026