
●1日は東京芸術劇場で新芸術監督の就任記者発表会。今年度から芸術監督は舞台芸術部門の岡田利規と音楽部門の山田和樹にふたり体制になる。登壇者は岡田利規、モナコからオンライン参加の山田和樹、東京芸術劇場の鈴木順子副館長。少し驚いたのは会場が地下1階のロワー広場だったこと。つまり、地下鉄の池袋駅から芸劇に行く際に通る地下のオープンスペース。衝立くらいは置くのかなと思ったら、なにもなくて、通りすがりの人も見聞きできる完全にオープンな環境で行われた。開かれた劇場を目指す姿勢を示したものと理解。
●舞台芸術部門の岡田利規さんは率直な語り口が印象的。まずは「芸術の力を疑ってかかることを基本姿勢としたい。それは芸術の力を信じているから」という逆説で話をはじめ、「公共による芸術の実践は、現実に対する応答でなければならない」「現実に対して舞台芸術で応答するというコンセプトを、どれだけ明確に実践できるのか。この課題を自分自身に対して課したい」と問題意識を表明しつつも、それが容易に達成できるテーマではないことを認める。問題を簡単な話に落とし込もうとしないところがいいなと思った。今、音楽界でも世界的に公的支援が縮小する方向にあり、社会のなかで音楽家がどういう役割を果たせるのかというテーマについて語られる機会は増えているとは思うんだけど、「現実に対する応答」として音楽芸術が語られる機会はとても少ないと感じるので、その意味では刺激的でもあった。
●さらに、こういう場では珍しい発言だけど、「職員の過酷な労働環境を改善したい」と明言。現場の職員とのコミュニケーションを重視し、すでに職員ひとりひとりと面談をしたのだとか。このあたりは現場で働く人々にとっては心強いことだと思う。
●音楽部門の山田和樹さんは、「音楽監督になっていちばん嬉しいのは、岡田さんといっしょに仕事をできること」。まだ詳細は発表されていないが、10月には岡田利規×山田和樹のコラボレーション企画も予定されている。岡田さんの労働改善環境の話を受けて、「私は逆で、もっと働いてほしい。人と金には限りがある。錬金術的な発想、アイディアが必要」と答えていたのも「らしい」ところ。もちろん、これは労働環境はどうでもいいという話ではなく、バーミンガム市交響楽団で予算がカットされて苦境に陥った自身の体験に基づいて、これからは従来にないような発想が求められるということを強調したかったのだろう。
●山田和樹さんも「社会に自分たちの存在意義を証明していかなければならない時代になった」と語り、「交響都市計画」というシリーズ企画を掲げる。「交響は英語にするとシンフォニックだけど、違うものを結びつけるという意味で、ハーモニーと訳したい」。その目玉企画が5月の水野修孝「交響的変容」。伝説的な超大作をよみがえらせる。
●岡田利規芸術監督就任記念公演として、「映画を撮りたいゾンビの演劇」が挙がっていた。この作品について自分はなにひとつ知らいないのだが、かねてよりゾンビ禍について探求してきた者としては、不定期連載「ゾンビと私」のためにも観ておくべきだろうか?
April 8, 2026