
●先日、東京春祭ディスカヴァリー・シリーズでリトアニアのチュルリョーニス(1875~1911)の曲を聴いたが、続いて国立西洋美術館の「チュルリョーニス展 内なる星図」へ。作曲家としても画家としても名を残した稀有な芸術家のふたつの顔を知る貴重な機会。上は今回の展覧会のキービジュアルとしても使われている「祭壇」(1909)。今回の展示のなかで、これが典型的な作風かといえばそうでもないと思うのだが、たしかに際立った一作。ピラミッドみたいな形状の巨大な祭壇で、てっぺんから煙が立ち昇る。コンクラーベみたい。この作品もそうだが、全般に神秘主義的傾向が強い。

●作曲家だけあって、音楽形式にちなんだ作品も多い。これは「第6ソナタ(星のソナタ):アレグロ」(1908)。本来4楽章の作品として構想されたが、アレグロとアンダンテの2点のみが描かれたという。こういった「ソナタ」だったり「前奏曲とフーガ」といった題を添えた絵がいくつもあるのだが、趣向に興味が持てるかというとそこは微妙なところ。ただ、これが連作の最初に配置されるアレグロ楽章だと言われれば、まあ、納得はできる。リズミカルで活発で、なにかが始まっている。ほとんどの作品はこういった彩度の低い色調。

●こちらは「第5ソナタ(海のソナタ):フィナーレ」(1908)。海がモチーフになっているのだが、葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」を参照しているのだとか。実は作曲家チュルリョーニスには交響詩「海」(1907)という作品もある。この曲は録音がいくつもあるので簡単に聴けるのだが(たとえばBISのモデスタス・ピトレナス指揮リトアニア国立交響楽団など)、会場でループで流される冒頭部分が、一瞬、ドビュッシーの「海」みたいでギクッとする。ただ、全曲を聴くとだいぶ違った手触りで、思い切り後期ロマン派のスタイル。こんなところにもワーグナーの影響が。

●これは「レックス(王)」(1909)。晩年の大作、といっても35歳で早世しているのだが。モチーフは地球、天上、城、太陽、星々、彗星など。世界を統べる王とその影ということなのか。これも神秘主義的。