
●22日はかなり久しぶりに東京芸術劇場ナイトタイム・パイプオルガンコンサート。19時30分開演で20時30分終演、休憩なしという少し特殊なスタイルの演奏会で「遅く始まって早く終わる」のが特徴。平日対応のひとつの形。オルガンは山田由希子。松本市音楽文化ホールのホールオルガニストで、ローザンヌ国際バッハ・コンクール第3位、バチェーノ国際オルガン・コンクール優勝他の受賞歴。
●近年、芸劇はオーケストラのコンサートだと反響板を下ろしてオルガンが見えないことがほとんどだが、ここのオルガンはルネサンス/バロック面とモダン面の2面構成になっている。この日は上のようなルネサンス/バロック面で始まって、途中でオルガンが回転して(3分かかる)モダン面に変わった。うっすら漂う変形合体ロボ感。
●プログラムはパブロ・ブルーナの「第1旋法による右手のティエント」、ベームのパルティータ「主イエス・キリストよ、われらを顧みて」、バッハのコラール「おお人よ、汝の罪の大いなるを嘆け」BWV622、トッカータとフーガ ニ短調「ドリア調」BWV538、オルガンの回転をはさんでヴィエルヌのオルガン交響曲第3番より第4楽章アダージョ、トゥルヌミールのテ・デウムによる即興曲(デュリュフレ復元版)。最初のブルーナはルネサンス・タイプ(A=467Hz)、ベームとバッハはバロック・タイプ(A=415Hz)、ヴィエルヌとトゥルヌミールはモダン・タイプ(A=442Hz)のオルガンを使用、それぞれ調律も異なる。この変幻自在さも合体ロボ的。バッハのトッカータとフーガ ニ短調「ドリア調」は、あの超有名なトッカータとフーガ ニ短調とは別の曲ということで、「ドリア調」の愛称をつけて区別されている。といってもこの曲は別にドリア調ではなくてふつうにニ短調で、一種の誤解から付けられた愛称のようだが、どうしても超有名なあちらの曲と区別する必要があるので、愛称は必須。超有名なあちらが「本当にバッハなの?」的な疑念から逃れられないのに対して、こちらの「ドリア調」は堂々たるバッハ。フーガに入ると、ぐっと張りつめた雰囲気になり荘厳。
●ヴィエルヌとトゥルヌミールは、ふだん自分が聴かないロマン派オルガン音楽の世界なので新鮮。ワーグナーの楽劇に出てきそうな瞑想的なヴィエルヌから、一転して重厚壮大なトゥルヌミールへとなだれ込む場面がハイライト。トゥルヌミールのテ・デウムによる即興曲は、弟子のデュリュフレが1955年から58年にかけて採譜したものなのだとか。オルガンの世界では20世紀以降も即興演奏が創作の源となっていることに思いを馳せる。
●下は反転したモダン面。こちらのほうがなじみがあると思う。

April 23, 2026