
●14日はサントリーホールで山田和樹指揮N響。N響100年特別企画「邦人作曲家シリーズ」と銘打たれた公演のひとつで、プログラムがすばらしい。前半が山田一雄の小交響詩「若者のうたへる歌」、ハルトマンの「葬送協奏曲」(キム・スーヤン)、後半が須賀田礒太郎の交響的序曲、ヒンデミットの交響曲「画家マチス」。すべて1930年代に書かれた日独の作品。大戦前夜、ファシズムの時代から生まれた音楽。前後半で日独日独の相似形になっており、1曲目は「新ヤマカズ・コンダクツ・元祖ヤマカズ」で、2曲目以降はハルトマン、須賀田、ヒンデミットとひとつの音楽的な流れを体感することができる。チケットは完売。
●ヒンデミット以外はなじみのない曲で、元祖ヤマカズ=山田一雄作曲の小交響詩「若者のうたへる歌」を聴くのも初めて。作曲者25歳の作品でマーラーやリヒャルト・シュトラウスの影響を感じる。そもそも山田一雄といえば大指揮者という認識で、作曲家として注目したことがなかった。たしか、初めてN響を聴いたときの指揮者が山田一雄だったような記憶。情熱的な独特の指揮ぶりによるチャイコフスキーの5番に圧倒されたことを覚えているのだが、記憶の捏造かもしれない。後期ロマン派の香りが漂う山田作品の後にハルトマンの「葬送協奏曲」を聴くと、時代をジャンプしたかのような気分になる。独奏ヴァイオリンはキム・スーヤン。ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団の第1コンサートマスターを務める。同曲をインキネン指揮バイエルン・カンマーフィルとの共演でOehmsに録音している。コラール主題で始まるものの、険しく厳しい音楽。ソリスト・アンコールにバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番の第3楽章アンダンテ。
●後半、須賀田礒太郎の交響的序曲は意外と楽しい曲。作曲者32歳の作品。かなりのところヒンデミット風で「画家マチス」に近い世界を描いているのだが、後半は日本のお祭り調に。オーケストラの機能性を生かしたフーガはバルトークの「管弦楽のための協奏曲」風。おしまいの部分のはじけ方はアイヴズ風でご機嫌。とてもよい。メインプログラムは本家、ヒンデミットの交響曲「画家マチス」。こうして聴くと「画家マチス」は生まじめでクールではある。即物的スペクタクルとでもいうか。終楽章は壮麗。ブラスの音色は輝かしいんだけど、ずしりとした重みもあって、作品にぴったり。指揮とオーケストラは終始、噛み合っている印象。珍しい作品を最上質の演奏で聴けて満足度の高い公演だった。
May 15, 2026