
●東京都美術館開館100周年記念のアンドリュー・ワイエス展へ。20世紀アメリカの具象絵画。アメリカ北東部の田舎の風景、あるいは人物が、どれも彩度の低い色調で描かれ、多くの作品では外の光の明るさと室内の陰が強いコントラストをもたらす。豊かな田園風景ではなく、自然環境の厳しさ、暮らしの質素さが伝わってきて、どういうわけか自分の内側には存在しないはずの郷愁を呼び起こす。写真は一部撮影可。上は「ケネットの集会所」(1980)。

●こちらは「灯台」(1983)。ワイエスが所有していたメイン州の小さな島にある灯台の内側を描いている。これで灯台と言われても。ていうか、ワンちゃんだし、主役は。全体に厳しさを感じる作品が多いんだけど、この作品のように80年代後半から90年代になると、少し和らいだ雰囲気も漂う。

●もうひとつ動物テーマで「納屋の猫たち」(1993)。隣人の納屋を描いている。猫を探しても見つからない。代わりに左下に猫のエサ入れがある。奥で荷車を押しているのは隣の奥さん。猫はねずみ退治のために外で飼っていたというから、今は仕事中なのかもしれない、人と同じように。こんなふうに室内から外の明るい光を目にする構図が多い。
●全体として目立つテーマは、不在、孤独、痕跡。「その状態に至る前の過去」に思いを巡らせてしまう。