
●ワールドカップ準決勝のもう一試合はイングランド対アルゼンチン。この両者の対戦にはいろんなストーリーがある。最大の事件は1986年メキシコ大会でのマラドーナの「5人抜きゴール」、そして「神の手ゴール」だろう。もちろん「神の手ゴール」は今だったらVARで取り消されるだけだが。神は死んだ!(違) 1998年フランス大会では、ベッカムがシメオネの挑発に乗ってしまい、レッドカードで退場し、PK戦でイングランドは敗退。続く2002年の日韓大会でも両者の対戦があり、ベッカムが決勝点となるPKを決めた。で、今大会の対戦では、アルゼンチン代表にあのシメオネの息子、ジュリアーノ・シメオネがいる。スカローニ監督は期待に応えて(?)、シメオネを先発起用!
●試合は序盤からイングランドがハイプレス。だが、アルゼンチンもスペインばりのパス回しでプレスをかわして対抗。まったく五分の展開になった。因縁の対決とあってか、荒っぽい肉弾戦になってしまうが、アメリカの主審イスマイル・エルファスはラフプレイにカードを出さない。選手たちの小競り合いがたびたび勃発。つまらないレッドカードで決着しなければいいがと心配になるほど。前半は両チームともほぼ決定機がなかったが、中盤に下がってきたメッシに一瞬の鬼神プレーあり。ありえない39歳。ハイドレーションブレイクで恒例のブーイング。これだけ締まった試合を中断されるのは、観客席にとってストレスだろう。
●後半10分、イングランドは長い縦パスをロジャーズが受けて、右サイドからクロスを入れると、ファーに走り込んだゴードンが右足でゴール。人も手数もかけずに1点。膠着した試合だったが、入るときはこんなもの。ここから攻めるアルゼンチンと守るイングランドの構図に。イングランドのトゥヘル監督は5バックにして5-3-2でゴール前を固める。これに対してアルゼンチンは相手の中盤の3枚の脇からどんどんクロスを入れて攻勢を強める。なんだかニッポンvsブラジル戦を思い出す光景。これでは耐えきれないと、トゥヘルは5-4-1で中盤の枚数も増やして、なんとしても守り切るという布陣に。ところが後半40分、メッシがショートコーナーのリターンを受けてマイナス方向へのパス、これを受けたフェルナンデスが豪快なミドルを蹴り込んで同点弾。これでさらにアルゼンチンは勢いを増し、アディショナルタイムの後半47分、マックアリスターのミドルがポストを叩いて跳ね返ったところで、右サイドからメッシが右足のクロスを入れると、これがセンターバック間にポジションをとるラウタロ・マルティネスの頭にドンピシャで合って逆転ゴール。怒涛の逆転劇でアルゼンチンが決勝進出を決めた。激しくガッツポーズをくりかえすメッシ。選手たちの感情の高ぶりがすごい。アルゼンチンはエジプト戦での2点差からの逆転劇といい、ドラマティックな展開のゲームが続く。イングランド 1-2 アルゼンチン。
●イングランド側から見れば、5バックにして守りを固めたら、連続失点して逆転されたのだから、トゥヘルの策は大失敗。当然のごとく監督批判の嵐になる。アルゼンチンはカウンターアタックに対しての守備が弱い印象があるので、5バックにしてもボールを跳ね返した後の攻め手があればまた違ったのだろうが、単純に防戦一方になってしまった。だから、まあ、失策なのかな。とはいえ、アルゼンチンの最初のゴールはコーナーキックからなので、布陣とは関係なくありそうなゴールともいえる。サッカーは結果論で語られがちで、トゥヘルの策で耐え切る確率はどれくらいだったのか。10回中8回成功したのか、5回成功したのか、1回しか成功しなかったのか。正解はだれにもわからない。
July 16, 2026