January 28, 2014

「ブルクミュラー 25の不思議 なぜこんなにも愛されるのか」(飯田有抄、前島美保 著/音楽之友社)

ブルクミュラー 25の不思議●これはスゴい!とのけぞった一冊。ピアノ学習者の超定番教則本「ブルクミュラー 25の練習曲」を題材に、作曲家ブルクミュラーその人と受容史に迫る「ブルクミュラー 25の不思議 なぜこんなにも愛されるのか」(飯田有抄、前島美保 著/音楽之友社)。冒頭の二人の著者による対談で明かされるブルクミュラー熱のきっかけが最高におかしくて、たまたまブルクミュラーの話題になったら、「アラベスク」とか「貴婦人の乗馬」とかを次々と思い出して、しまいに25曲ぜんぶを「エアピアノ」で弾いて熱唱できてしまったという(笑)。バイエルやチェルニーだったらそうはならないんだけど、ブルクミュラーだったらこうなる。つまり、愛と追憶の対象になる。そこからスタートしたブルクミュラー探究の成果が本書で、「ブルクミュラーはバレエ作曲家だった!」とか、「天才とうたわれた弟ノルベルトがいた!」とか知らないことだらけ。ほんわかした体裁にがっつりとした研究内容が収められているのが吉。
●特にいいなと思ったのはウルトラ・ロングセラー「25の練習曲」に書誌学的な関心が寄せられているところで、各曲の翻訳タイトル一覧まで掲載されているのがおもしろい。同じ「25の練習曲」でも10種類以上の楽譜が出版されているわけで、それぞれの楽譜で「貴婦人の乗馬」が単に「乗馬」だったり「お嬢様の乗馬」だったりする。「スティリアの女」が「シュタイヤー舞曲」だったり「スティリエンヌ」だったりする。子供が手にする教則本だからこそ、こういう訳題にも単に「正しい翻訳かどうか」では決められない出版社の判断が滲みでている。

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