News: 2013年7月アーカイブ

July 30, 2013

フェスタサマーミューザでアルミンク&新日フィル

フェスタサマーミューザ2013フェスタサマーミューザKAWASAKI2013が7/28より開幕中。首都圏9つのオーケストラがそれぞれ川崎で公演を開くというオーケストラのお祭り。震災後2年間は川崎各地の会場で代替開催されていたが、今年ようやくミューザ川崎に帰ってきた。昨年と一昨年の知られざる会場を巡る川崎オリエンテーリングみたいなのもそれはそれで発見があっておもしろかったけど、いやー、やっぱりいいっすね、ミューザは。
●で、7/29夜にアルミンク&新日本フィル。先週のサントリーホール定期の演目をそのまま持ってきて、三善晃のヴァイオリン協奏曲(豊嶋泰嗣独奏)、ストラヴィンスキーのバレエ組曲「プルチネッラ」、メンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」。ストラヴィンスキーとメンデルスゾーンで時を超えたイタリアつながりプロ。三善晃は1965年の作品。戦間期の西欧の香りをまといつつ、雄弁で気迫のこもったソロによって精彩を放っていた。「イタリア」は爽快なアルミンク節だが熱気も十分。第一ヴァイオリンの最後列で豊嶋氏が弾いていて、存在感が半端ではない。アルミンクとすみだトリフォニーで作られた新日フィルのサウンドというものがあると思うんだけど、ミューザはやはりアウェイなんだなという感も。ともあれ満喫。このクォリティの公演がフェスタサマーミューザのお値段で聴けるのは超お得。
●この日はなぜか会場に空席が目立っていたんだけど、今日の15時開演の小林研一郎&読響のチャイコフスキー・プロは抜群の人気でチケットはすでに全席完売。ス、スゴすぎる、平日昼間なのに……。この後、公演はまだまだ続いて8/11の東響でフィナーレ。あと何公演か、足を運ぶつもり。
●会場で無料配布されるプログラムが豪華。全104p。表4(裏表紙)から開くとコンサートとはまったく無関係な「川崎散策ガイド」になっていて、川崎のおすすめスポットが並んでいる。音楽に加えて、歴史、産業、ショッピング、グルメのステキな街。これが今の川崎。「産業」っていうのは工場のきれいな夜景の写真が載っていて、「川崎工場夜景バスツアー」とか「川崎工場夜景屋形船クルーズ」なんかのツアー情報が添えられているんすよ! 萌える人は萌える。

July 24, 2013

秋の春祭にムーティ

ムーティ conducts ヴェルディ●「東京・春・音楽祭」の特別公演として、10月にムーティが来日する。ヴェルディ生誕200周年を記念して「ムーティ conducts ヴェルディ」。東京春祭特別オーケストラと東京オペラシンガーズが出演、ヴェルディの序曲やバレエ音楽、合唱曲が演奏される。この東京春祭特別オーケストラのメンバー表が発表されていて、矢部達哉コンサートマスター以下、各オーケストラで活躍する強力なプレーヤーたちがそろっている。10月30日と31日の2公演。
●「春祭」なのに秋の公演があるとは。そして会場は上野ではなくて、すみだトリフォニーホール。開演時間に上野で途方に暮れませんように。
Riccardo Muti Box Set●ついでにBOX SET「リッカルド・ムーティ/交響曲録音集」。CD8枚にモーツァルトの後期交響曲集、シューマン交響曲全集、ブラームス交響曲全集が収められて、CD1~2枚分ほどのお値段。もうどんなに安くても驚かないけど。オケはウィーン・フィルとフィラデルフィア管弦楽団。PHILIPSレーベルへの録音で、DECCAのロゴにいまだに違和感を感じる。

July 23, 2013

りゅーとぴあでスダーン&東響の新潟定期

りゅーとぴあ
●21日は新潟へ。りゅーとぴあでユベール・スダーン指揮東京交響楽団の新潟定期を聴いた。東響は新潟を準フライチャンズとしていて、年に6回りゅーとぴあでコンサートを開いているんすね。前々から一度りゅーとぴあでも聴いてみたかったんだけど、いろいろなめぐり合わせがうまく行ってようやく実現。
●りゅーとぴあはステージが客席から近い。ミューザ川崎を一回り小さくしたかのような印象。1900席という座席数よりも空間がもっとコンパクトに感じられる。一方でホワイエは広々としているし、さらに建物の外はゆったりとした作りになっていて、きわめてぜいたくなコンサートホールだった。2階席(といってもかなりステージに近い)で聴いたけど、音響的にも申し分なし。ホールの外側も含めたゆとり、環境のよさというのは都心では得難いもの。
●東響は前日東京で演奏したプログラムをそのまま新潟に持ってくる。なので、ルーセルの交響曲第3番、ショパンのピアノ協奏曲第2番(中村紘子独奏)、ベルリオーズの劇的交響曲「ロメオとジュリエット」抜粋といった、東京の定期公演と同じように意欲的で、しっかりとリハーサルが積まれたプログラムを聴けるのが吉。もし年に一回くらいだったら、間口の広い名曲コンサートでもしょうがないかなと思うんだけど、定期と銘打って継続してやるならこれくらいの多様性やクォリティががないとお客さんは何年も続けて聴いてくれないだろう……。
●と、はたから見てると思うわけだけど、新潟のお客さんはこのプログラムで満足しているのか、どうして東響を新潟に呼ぶことになったのか等々のお話を、翌22日にりゅーとぴあで企画制作担当主任を務める寺田尚弘さんにうかがってきた。その取材の模様は、8月10日、新潟のFM PORTの番組「クラシックホワイエ」(毎週金曜23時~)で放送される。公演を企画する側がどんなことを考え、どこで苦心するのかがよくわかる、はず。聴ける環境の方はどぞー(新潟県外からは要au LISMO WAVE)。

July 20, 2013

クリスチャン・バスケス&東フィル

●18日はサントリーホールでクリスチャン・バスケス指揮東フィル。レブエルタスの「センセマヤ」、ブラームスのヴァイオリン協奏曲(前橋汀子)、ベルリオーズの幻想交響曲というプログラム。バスケス初来日。2011年3月にエル・システマ・ユース・オーケストラ・オブ・カラカスとの来日公演を聴ける予定だったのだが公演中止になり、その後2012年7月に東フィルを指揮する予定だったのがこれも来日中止になり、今回ついに初めて。容貌は全然違うけど、指揮ぶりはドゥダメルにそっくり。棒の振り方も、左手の使い方も。漠然と爆演系のベルリオーズを予期していたんだけど、熱いだけではなくていねいで意匠を凝らした感あり。東フィルも好調で、精彩に富んだベルリオーズを聴くことができた。
●バスケスといえば、マーラー「復活」のクライマックスを指揮者ごとに聴き比べた Mahler enthusiasm。大巨匠たちを相手にトリを務める完璧な熱狂。

July 16, 2013

ヒュー・ウルフ指揮読響のアメリカン・プログラム

●12日は東京芸術劇場でヒュー・ウルフ指揮読響へ。バーンスタインの「キャンディード」序曲、アイヴズの「ニュー・イングランドの3つの場所」、ガーシュウィンの「パリのアメリカ人」、バーンスタインの「ウェスト・サイド・ストーリー」から「シンフォニック・ダンス」というオール・アメリカ音楽プロ。明快で歯切れがよく、一曲目からオーケストラがすっきり掃除されている印象。軽快にさくさくと進むが、強奏時のブラスセクションは強烈で迫力十分。例の「マンボ!」の叫び声もノリノリで楽しい。野太くワイルドにシャウト。満喫。
●なんとなくアイヴズで休憩に入るのかと勘違いしていたら、前半は「パリのアメリカ人」まで。後半は20分強の曲で終わったことになる。この日は新コンサートマスター、日下紗矢子さんが就任後初登場。終演後にサイン会まであった模様。コンサートマスターのサイン会。スゴい。
●ヒュー・ウルフって、アメリカ人なんだけど生まれはパリなんすよね。だからリアル「パリのアメリカ人」。
●ガーシュウィンは「パリのアメリカ人」に本物のタクシーのクラクションを使って、大都会の喧騒ぶりを伝えようとした。これって taxi horn も horn だしオケに入っててもいいんじゃね?的な思いつきから来ているんだろうか。

July 10, 2013

平日夜のJリーグキックオフ時間

19時30分●さて、昨日の「平日夜の19時開演」では、19時開演というのが「早い」というよりはむしろ「遅い」と思われている可能性があるのではないかと疑ってみた。同じように平日夜の「開演時間」がしばしば議論されるのがJリーグ。Jリーグでは基本的にJ1は土曜日、J2は日曜日の開催となっているのだが、どうしても日程上、平日夜(主に水曜日)に試合を開かなければならない週がある。たとえば……今日だ! 今日はJ1開催日なのだ。
●で、その場合のキックオフはやはり19時が基本。が、「平日19時はビジネスマンには厳しい」という声は以前からサッカー界にもあったと思う。で、今日の試合では唯一、埼玉での浦和戦は19:30キックオフに設定されている。
●これは浦和だけが例外なのではない。次回の平日夜開催日、7月17日(水)だと味スタのFC東京が19:30キックオフ。その次の平日開催、7月31日(水)は日産スタジアムのマリノス、および豊田の名古屋が19:30キックオフ。つまり、主に大都市圏のチームが19:30キックオフを採用している傾向が見える(ただし名古屋は瑞穂なら19:00だったり、FC東京も国立なら19:00だったりするので、いつでもというわけではない)。
●サッカーもコンサートと同じようにざっくり2時間イベントなんだけど、実際にはコンサートよりもかなり長いイメージ。キックオフよりずっと前にスタジアムに入って、練習や先発メンバーの発表などセレモニー類も楽しみたいので、感覚的には19:30キックオフで、実質的にコンサートの19時開演と同等くらいかなという気もする。試合終了後は退出に結構時間もかかるので、19:30キックオフとなれば帰宅はやたらと遅くなってしんどいわけであるが(おまけにほとんどのスタジアムはコンサートホールよりアクセスが悪い)、クラシックのコンサートに比べると明らかにお客の年齢層が違うので(リタイア層が非常に少ない)、そのあたりの事情が相当効いてくるだろう。例の「日本人の生活時間2010」にもあったが若い年代ほど夜は遅いため(p.18 表16)、仕事を早く切り上げることよりも帰宅が遅くなることのほうが受け入れられやすいのは理解できる。

July 9, 2013

平日夜の19時開演

19時●平日夜のコンサートの開演時間は19時。多くの公演がそうなっている。これについて「もう少し遅ければ間に合うのに……」という言葉を、これまで何度耳にしたかわからない。ビジネスマンにとって、19時開演は厳しい。少なくとも20年以上前からそういう声はあるし、かつては自分もそう思っていた。しかし、その割には19時より開演を遅くしてお客を増やしたという話もあまり聞かない。むしろ、世間の人々はもっと開演を早くしてほしいと思っているのではないかとすら感じる。特に最近、終演時にカーテンコールを最後まで待たずにダダッと席を立つ人も多いわけで、みんな全般に急いでいる。
●と言うと「終電そんなに早いんですかね?」とかいう話になりがちなんだけど、終電なんて眼中にないと思うんすよ。電車はあるんだけど、夜遅くなるのが困るのかな、と。NHKの「日本人の生活時間2010」によれば、平日の場合、日本人の半数は23:30までに眠っている(週末でもほぼ同じ)。そして朝は6:30までに半数弱が(有職者に限れば半数強が!)起床している。ちなみに有職者は前回調査の2005年から2010年までの間に「早起き化」が進行している(PDF p.17 表14・15参照)。リンク先のサマリーにあるように「仕事の“夜から朝へのシフト傾向”が進んでいる」のだ。
●かつて超夜型人間だった自分には驚きの統計だが、これを見ると、急いで帰宅しようとする人たちの気持ちもわかる。21時過ぎくらいに終演して、そこから電車に乗って帰宅して、スーパーやコンビニに寄ったり、食事をしたり、お風呂に入ったり、家族の面倒を見たり、メールしたり、家事をしたり、明日の準備をしたりとかして、23時半とか24時までに眠ろうと思ったらなかなか大変だ。
●そういえば勤務時間についての統計も同じ資料に載っている(p.6 図3)。平日・有職者の場合、17時半になると仕事をしている人は57%、つまり43%の人は仕事を終えている(あるいは夜勤でこの後に仕事という人もわずかにいるだろうけど)。18時になると仕事をしている人は46%で半分以下になる。18時半になると仕事をする人は35%。このあたりまでは時間とともに仕事をする人の割合がガクガクと減るが、その先はややなだらかになってペースが鈍る。常に夜遅くなる職種や、夜が本来の勤務時間の職種もあるので、これはわかる。なお、このカーブはあくまで有職者のもので、リタイア層には無関係。実際の来場者層の有職者率がわかれば、このグラフの縦軸に有職者率を掛け算して読み直すと、実態に近いものが浮びあがるかもしれない。
●ちなみに、日本のオケでも名フィルや広響の平日定期は18:45開演みたい。これはどういう経緯でそう定まったんすかね?

July 8, 2013

iPadアプリでブリテン「青少年のための管弦楽入門」

iPadアプリ ブリテン「青少年のための管弦楽入門」●ブリテン・ピアーズ財団がiPad用アプリのブリテン「青少年のための管弦楽入門」をリリース。無料、要iOS 6.1以降。触ってみたが、さすがによくできていて感心。対象年齢は7–11歳ということだが、もう少し小さなお子さんも、あるいは親御さんも楽しめるのでは。曲本来のオーケストラ・ガイド機能をうまくiPadに落とし込んであって、オーケストラにはどんな楽器があって、それぞれどんな音色を持っているのか、「青少年のための管弦楽入門」を鑑賞しながら理解できるようになっている。クイズ・コーナーでは「あたなにぴったりの楽器は?」をYES/NOの二択設問で診断してくれたり(診断された楽器について、その奏者が登場して動画でインタビューに答えてくれる)、「フーガ・ゲーム」と題してブリテンのフーガを自分で選んだ楽器の音色で聴いてみることができたりとか、簡潔ながらも作りがていねい。サラ・ファネッリのイラストが楽しい。あまり機能面でよくばらずに、でも十分に予算と工数をかけたという印象。
●こういうのって、むしろネット以前の時代によく作られていたと思うんすよね。PCがようやく動画や音声を扱える性能を持ちはじめた「マルチメディア時代」の頃に、エデュテインメント・ソフトとして。今やるならタブレット向けのアプリになるのか。アーツ・カウンシル・イングランドの助成で制作された模様。ミュージック・アドバイザーにコリン・マシューズの名前も。
●サイズが888MBもあるので、ダウンロードにはそれなりに時間がかかるのでご注意を。

July 3, 2013

Opera Strip マンガで読むオペラ

Opera Strip マンガで読むオペラ●Sinfini MusicにあるOpera Strip(マンガで読むオペラ)がおもしろい。アメコミ調(っていうのかな)の絵柄がバタくさくて、妙にキモかわいかったりする。ヴェルディ「トロヴァトーレ」、ブリテン「ピーター・グライムズ」、そして極めつけはワーグナー「ニーベルングの指環」四部作だ。もちろん、話は端折ってある。たとえば「ワルキューレ」をわずか12コマで終わらせてしまう簡潔さ、手際の良さは、作曲者にもぜひ見てほしかった。
●ハイライトシーンは「トロヴァトーレ」の「まちがえてわが子のほうの赤子を火にくべてしまう」という、オペラ史上最大のツッコミどころだ。WHOOPS! って、あなた……。ハーゲンに背中を刺されるジークフリートのやられ顔も見どころ。
●新国とかでもやってみない?

July 1, 2013

キタエンコ&東響のロシア・プロ

●30日はサントリーホールでドミトリー・キタエンコ指揮東京交響楽団定期演奏会。プロコフィエフのあまりライブでは聴かない交響的協奏曲(チェロはイェンス=ペーター・マインツ)と、最近よく聴く気がするラフマニノフの交響曲第2番。前後半で対照的なキャラクターの曲が並んだ。特に後半のラフマニノフの演奏は圧巻。精妙でありながらも気迫がこもり、オケの響きは澄明で爽快。日常のなかで聴くことができる最高水準の名演を聴いたという手ごたえ。キタエンコに対して漠然としたイメージしか持っていなかったんだけど、東響の最良の美質を引き出してくれたんじゃないだろか。
プロコフィエフ●イェンス=ペーター・マインツの鬼ソロにもかかわらず、後半のほうをより楽しんだけど、プロコフィエフとラフマニノフ、作曲家としてどちらが好きかと言われたら逡巡レスにプロコフィエフ。プロコフィエフがラフマニノフを毛嫌いしていたという話はあちこちで目にするが、この日の公演プログラムのエッセイ「山田耕筰の会ったラフマニノフとプロコフィエフ」(伊東一郎氏)で紹介されているエピソードもおもしろい。ラフマニノフは山田耕筰にプロコフィエフのことを「才能あるピアニスト」と評した。一方、プロコフィエフは山田にラフマニノフのことを「あれは馬鹿です」と吐き捨てたという。
●なぜプロコフィエフがそんなにラフマニノフを嫌っていたのかについては、(以前も書いたけど)スヴャトスラフ・リヒテルによれば「影響を受けていたから」。ピンと来るだろうか?

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