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2019年9月アーカイブ

September 30, 2019

読響 鈴木優人 指揮者/クリエイティブ・パートナー就任記者会見

読響 鈴木優人 記者会見●27日は東京芸術劇場のリハーサルルームで読響の記者会見。鈴木優人さんが2020年4月より「指揮者/クリエイティブ・パートナー」に就任する。最初の任期は3年間。バッハ・コレギウム・ジャパンの首席指揮者を務めつつ、各地のオーケストラに客演し、また鍵盤楽器奏者、調布国際音楽祭のエグゼクティブ・プロデューサーとしても活躍する鈴木優人さんだが、これからは読響との関係も深まることに。「指揮者/クリエイティブ・パートナー」というユニークな名称のポストだが、読響としては優人さんの「若い聴衆層にクラシック音楽の魅力を伝えることのできる卓越した発想力、企画力、発信力」を高く評価しているとのこと。指揮者として演奏はもちろん、青少年向け教育プログラムや、よみうり大手町ホールでの「読響アンサンブル・シリーズ」でのプロデューサー、鍵盤楽器奏者、作曲・編曲家としての活動にも期待しているという。
●で、具体的な活動だが、2020年5月の定期演奏会ではシューベルトの交響曲第4番「悲劇的」とベリオ「レンダリング」他、同9月の「土曜・日曜マチネー」ではベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲(ロザンネ・フィリッペンス)と交響曲第6番「田園」、同11月30日の「読響アンサンブル・シリーズ」ではヴィヴァルディの「四季」とジョン・ケージ作品を組み合わせたプログラムを予定している。
●すでになんども共演を重ねている読響について、優人さんは「新しいアイディアに対して開かれたマインドを持ち、新鮮な気持ちで譜面に向き合っているオーケストラ」「メンバーには温かく迎えてもらえた。これまで積み重ねてきた関係が、このような形で実を結ぶことになり嬉しい」と語っている。期待するしか。

September 27, 2019

福間洸太朗 ピアノ・リサイタル ワルツとノクターンの調べ

黎明橋から
●26日は午前中から第一生命ホールへ。11時開演のマチネで「福間洸太朗 ピアノ・リサイタル ワルツとノクターンの調べ」。休憩なしの約60分のプログラム。客層はほぼ女性。開演前に公演企画に携わっている山野雄大さんの巧みなトークで解説あり。曲の合間には福間さんのトークも。ショパンのノクターン第20番嬰ハ短調とワルツ第14番ホ短調、スクリャービンの左手のためのノクターン変ニ長調とワルツ 変イ長調、チャイコフスキーのノクターン嬰ハ短調op19-4と「くるみ割り人形」より「花のワルツ」(タネーエフ編)、フォーレのノクターン第8番変ニ長調とヴァルス・カプリス第1番イ長調、サティ(福間洸太朗編)「ジュ・トゥ・ヴ」、ラヴェル(福間洸太朗編)「ラ・ヴァルス」。
●序盤はサロン的な軽めの曲が多かったが、進むにつれて白熱し、最後は自身の編曲による「ジュ・トゥ・ヴ」と「ラ・ヴァルス」で大爆発するといった趣向。「ジュ・トゥ・ヴ」は大幅にパワーアップされたヴィルトゥオジティ全開のマシマシ仕様。「ラ・ヴァルス」は、「2台ピアノ版で慣れていたので、ラヴェルのピアノ独奏版では音が足りないなと思って、自分で編曲して弾くことにした」とか。豪壮に鳴り響くウィンナワルツへのオマージュ。やはり小規模で親密な曲よりも、こういう熱血超絶技巧曲がよく似合う。管弦楽版にまったく引けを取らない、踊りへの偏執と狂熱、グロテスクさ。すばらしすぎる。フィニッシュの決めポーズがカッコいい。
●福間さんのトークによれば、この「ラ・ヴァルス」は最近ローザンヌで開催された非公開の公演で演奏したそうで、そのときにアイスショーでご縁のあったフィギュアスケーターのステファン・ランビエール、宇野昌磨選手らが聴きに来てくれたのだとか。彼らに「緊張するから最前列に座らないでね」って頼んだら、2列目のど真ん中に陣取っててやっぱり緊張した、といったお話。アンコールの前に映画「蜜蜂と遠雷」のインスパイア―ド・アルバム「蜜蜂と遠雷 ~ 福間洸太朗 plays 高島明石」の案内があって、ショパンのノクターン第13番ハ短調op48-1。
●映画「蜜蜂と遠雷」で福間洸太朗さんは高島明石役の演奏をしているというのだが、タイプ的にはどう見ても高島ではない。むしろマサルかと。

September 26, 2019

パーヴォ・ヤルヴィ指揮N響の北欧音楽プログラム

●25日はサントリーホールでパーヴォ・ヤルヴィ指揮N響。前半にトゥールの「ルーツを求めて~シベリウスをたたえて」、ニールセンのフルート協奏曲(エマニュエル・パユ)、後半にシベリウスの交響曲第6番と第7番という北欧音楽プログラム。
●トゥールはパーヴォがくりかえし取り上げるエストニアの作曲家。シベリウス生誕125周年に書かれたという先人への賛歌。リズミカルですばやく短いパッセージの連続から、やがてゆったりとしたハーモニーの海が現れ、繊細に移ろいゆくというワン・ストーリーの小曲。ニールセンのフルート協奏曲、実演で聴いたのは初めてか。独奏フルートに加えて、トロンボーンやティンパニ、ヴィオラなどがソロ楽器的に活躍するところもあって、フルート協奏曲であると同時にコンチェルト・グロッソ的な発想がある。そして終楽章は思った以上にユーモアの要素が強い。パユは入魂のソロ、音楽の化身。ソリスト・アンコールもニールセンで、劇音楽「母」より「子供たちが遊んでいる」。素朴な味わいで、しみじみ聴き入る。
●後半、シベリウスの交響曲第6番と第7番は最近流行の2曲をつなげる方式。会場内にも2曲続けて演奏すると掲示されており、パーヴォは第6番の後、腕をおろさずに、そのまま第7番へ移行、拍手も起きずにスムーズに曲が連結された。ラトル&ベルリン・フィルをはじめ、この2曲をつなげるアイディアはずいぶん受け入れられているようだけど、だれが始めたんすかね。同時期に書かれた2曲、共通する世界観を持つ姉妹作ということなのか。作曲者はそんな演奏をまったく期待していなかっただろうか、後世の聴衆による作品の再定義みたいな話で興味深い現象だと思う。第6番にしても第7番にしても、音楽的な密度の高さ、余韻からすると演奏会の最後に置きたい曲だけど、単独で演奏会の後半を満たすには尺が足りない。だったら、両方をくっつけてしまえばちょうどいいのでは? そんな実際的な利点があるのだろう。大作化するシベリウス。あるいは儀式化するシベリウスとでもいうか。N響は磨き抜かれた最高度に美しい響きを実現し、清澄にして壮麗。緻密でありながら、音楽の力強く大きな流れが保たれていて、自分にとっては先週のマーラーの第5番よりも大きな喜びを得られる音楽だった。

September 25, 2019

パーヴォ&N響とヴァイグレ&読響のマーラー5番祭り その2

池袋西口工事中
●さて、21日、前日のパーヴォ&N響のマーラー5番の強烈なインパクトが色褪せないまま、同じ曲をヴァイグレ&読響で聴くことに。会場は東京芸術劇場。入口前の池袋西口公園は絶賛工事中で、なにかができつつある。迂回路を通って入館しようすると、なんと、スタジアムで見慣れたあの光景が。そう、手荷物検査だ。ラグビーワールドカップ開催期間中であり、翌年の東京五輪への予行練習でもあるのだろう。一瞬、「あれ、カバンになにが入ってたっけ。カビの生えたパンとか入ってたらヤダな」とうろたえたのだが(ウソ)、カバッとカバンを開ける。とにかくカバッと開ければチラ見で終わるという経験則。ガバッ。
●前半はルドルフ・ブッフビンダーの独奏でベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番。冒頭のピアノ・ソロから悠然としたテンポで始まる、20世紀ウィーンの伝統美の世界。ソリスト・アンコールにベートーヴェン「悲愴」第3楽章。後半のマーラーは一歩一歩着実に踏み進める質実剛健なスタイルで、前日に聴いたパーヴォ&N響とは同じ曲と思えないほど。2階席だったが、芸劇だとステージが近く感じられることもあってか、重量感があり、雄弁で巨大な音楽を聴いているという実感。管の聴きどころは豊富だが、緊密な弦楽器のアンサンブルが印象に残る。第4楽章はテンポが遅いのだが、ロマンに耽溺しないまっすぐな音楽。終楽章は堂々たるクライマックスを築いて、客席の反応も上々。ちなみに20日と21日と22日の同一プログラム3公演とも完売という盛況ぶり。
●連続して聴いたマーラーの5番、順序や日にちが違っていたら、またずいぶん違った感じになったかも。こんなに重い曲を二日続けて聴くのはどうかとも思ったが、結果的には充実の二日間。漠然とした実感だが、たまたまプログラムがかぶるとか、たまたまシリーズになっているとか、超高密度な首都圏のコンサート・スケジュールから自然発生的にできた「祭り」は、だいたい期待以上におもしろくなる。ような気がする。

September 24, 2019

パーヴォ&N響とヴァイグレ&読響のマーラー5番祭り その1

●この週末はパーヴォ・ヤルヴィ指揮NHK交響楽団とセバスティアン・ヴァイグレ指揮読響が、ともにマーラーの交響曲第5番を演奏するという偶然が生んだマーラー5番祭り。N響は20日と21日、読響は20日と21日と22日。両方を聴くにしてもいろんな順序が可能。悩んだ末に、20日(金)にNHKホールでパーヴォ&N響、21日に東京芸術劇場でヴァイグレ&読響を聴くことに。
●20日のN響はいろんな意味で波瀾万丈の演奏会に。なにしろ開演時間になっても舞台にだれも出てこない。収録用のテレビカメラにも人が立っていない。開演が遅れるとだけアナウンスがあって、みんな15分ほどずっと席に座って待っていた。感心するのはN響のお客さんで、これだけ待たされても泰然としたもの。だれもブーもしないし口笛も吹かないし、楽員がステージに出てきてもやんやの喝采もなく、いつもと同じように静か。どうやらパーヴォが渋谷のデモで渋滞に巻き込まれたということのようで、当人のインスタに動画があがっていた。デモは世界各地で行われた「グローバル気候マーチ」で、遅刻しつつもデモの若者たちに全面的に連帯の意を表するあたりが、さすがのパーヴォ。
●ようやく開演すると、まずはヴァレンティーナ・ファルカシュのソプラノで、リヒャルト・シュトラウスの「カプリッチョ」から「最後の場」。幕切れのしみじみ感から始まる公演。後半、マーラーの交響曲第5番。これまでのパーヴォのマーラーから推進力があるタイトな演奏を予想していたら、ずいぶん違っていた。伸縮自在のテンポ感、舞踊性と民族色の強調、あくの強い語り口。前半は楽器間のバランスなど、やや雑然としたところも感じたのだが、第3楽章からは強烈だった。オブリガート・ホルンを福川さんが下手側から上手側のヴィオラ後方(この日もいつもの対向配置)に移動して立奏、完全に主役となってのびのびと爽快に鳴り響かせた。第5楽章はスリリングで一気呵成。圧倒的なクライマックスを築きあげて、客席から最近ではまれなほどの盛大な「ウオオーー」。地響き風のブラボー。パーヴォに対しても嵐のような喝采。
●その後、珍しいシーンがあった。指揮者のカーテンコールがなんどかあった後、意外とあっさりと拍手が止む。楽員が退出し始める。開演が遅れた分、終演も遅れたからな、さあ、出口に向かおうというところで、またパラパラと拍手が始まった。なんと、これは舞台上に残っていたトランペットの菊本さんへの拍手。続いて、やはり舞台上に残っていたホルンの福川さんへの拍手が。これはぐっと来る場面だった。指揮者へのソロ・カーテンコールではなく、演奏者個人に向けてこんな形で拍手が起きるのはきわめてまれ。というか、だれへの拍手なのか、みんなが暗黙のうちに「わかる」のも、この曲だからこそ。まったく演奏会はなにが起きるかわからないと感慨にふける。(つづく)

September 20, 2019

「蜜蜂と遠雷」(恩田陸著/幻冬舎)

●今さらではあるんだけど、もうすぐ映画も公開されるということで、ようやく読んだ、「蜜蜂と遠雷」(恩田陸著/幻冬舎)。分厚い本だけど、読みだすと先が気になってあっという間に読める。小説の舞台となるのは芳ヶ江国際ピアノコンクールで、モデルとなったのは浜松国際ピアノコンクール。著者の綿密な取材が生きていて、音楽コンクールとはどんなものかを一般読者にきちんと伝えているというだけでも功績大。ときに「あ、この言葉は小川典子審査委員長の言葉なんだろうな」っていうのが透けて見えるくらい。
●基本的に音楽小説である以前に青春小説なので、文体は若者向け。登場人物もみんな若者か、若者視点で見た大人という描かれ方。だから、小説としては自分に向けられたものとは少し違うかなとは思うんだけど、各々のコンテスタントのキャラクター設定とか、本当によくできている。あと、音楽を言葉で表現することには常に困難がつきまとうはずなんだけど、この小説では主要登場人物が一次予選、二次予選、三次予選、ファイナルと進むにつれて、くりかえし架空の演奏に対するそれぞれ異なる言語表現が求められる。この難しさに小説家として正面から立ち向かっていることに感嘆するほかない。
●なにかの才能を競うタイプの物語では、「ある天才が出てきた」と思ったら「もっとすごい天才がでてきた」、さらに「まだまだ上を行く天才がいた」みたいに天才の価値がインフレ化していく。天才インフレーション理論と呼びたい。
●映画も見たい。
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●お知らせ その1。FM PORTの番組「クラシック・ホワイエ」、明日9月21日(土) 22:00-23:00の回で、オルガンの石丸由佳さんをお招きして、ニューアルバム「オルガン・オデッセイ」についてお話をうかがっている。ラジコプレミアムを使えば、全国どこからでも放送後オンデマンドで聴取可。
●お知らせ その2。ONTOMOの10月特集「秘密」に「大ヴァイオリニストたちの秘密~パガニーニ、クライスラー、エネスコ」を寄稿。ささやかなエピソード集。

September 19, 2019

国際音楽祭NIPPON 2020 諏訪内晶子芸術監督 記者会見

国際音楽祭NIPPON 2020 諏訪内晶子芸術監督 記者会見
●13日は帝国ホテルで「国際音楽祭NIPPON 2020」の記者会見。諏訪内晶子芸術監督らが登壇。今年で6度目となる同音楽祭、今回は東京、名古屋、釜石で2月14日から3月15日にわたって開催される。全体としては生誕250周年を迎えるベートーヴェンの比重が高めだが、公演ごとのプログラムは実に多彩。オーケストラ、室内楽、現代作品、マスタークラス、名古屋でのミュージアムコンサート、釜石での復興応援コンサートなど、一口ではくくれない幅広さ。
●注目公演としては、まずは開幕公演となる諏訪内晶子とニコラ・アンゲリッシュのデュオ・リサイタル。こちらはベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタが並ぶ。諏訪内さんとアンゲリッシュは、以前ベートーヴェンのレコーディングで共演した旧知の間柄。昨年のアルゲリッチ・フェスティバルで久々に共演したところ、お互いに「またやってみようか」ということになって、今回の共演が実現したとか。「レコーディングをした10年前とはまた違った表現ができるのではないか」。
●オーケストラではジャナンドレア・ノセダ指揮ワシントン・ナショナル交響楽団が出演。チャイコフスキー国際コンクールから30周年ということで、諏訪内さんがチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を弾く。ほかにドヴォルザークの「新世界より」ほか。
●目を引いたのは紀尾井ホールでの室内楽公演で、一公演が古典、一公演が現代の作品となっている。後者のプログラムはライヒ「ヴァイオリン・フェイズ」、川上統の組曲「甲殻」より、ダルバヴィのピアノ三重奏曲、レオ・オーンスタインのピアノ五重奏曲第2番。新鮮味のあるプログラム。
●ほかにはベートーヴェンの室内楽マラソンコンサートも。三部にわたってピアノ三重奏曲や七重奏曲、弦楽五重奏曲などベートーヴェン漬けになれる一日。
●質疑応答で「この音楽祭は自分がこれまで経験してきたことへの恩返しをしたいという気持ちで始めた。今はとても充実した活動ができている」と語っていたのが印象的だった。

September 18, 2019

長野UスタジアムでJ3 AC長野パルセイロvs福島ユナイテッドFC

長野Uスタジアムで長野パルセイロ
●もう先々週の話なのだが、松本にディエゴ・マテウス指揮サイトウ・キネン・オーケストラを聴きに行った翌日、松本から長野へと移動して、長野UスタジアムでJ3の試合を観戦したのであった。本当だったら松本のアルウィンで松本山雅の試合を観戦したかったが、この週は試合なし。いつも松本に一泊してサイトウ・キネンと山雅の両方に足を運べたらいいなと思いつつも、なかなか日程がうまくつながらない。そこではたと気づいた。パンがなければお菓子を食べればいいじゃない。松本山雅がダメなら長野パルセイロを観ればいいじゃない。
●そんなわけで、J3のAC長野パルセイロvs福島ユナイテッドFCの試合を観戦。試合会場の長野Uスタジアムは文句なしにすばらしい球技専用スタジアム。2015年に改修されたばかり。陸上トラックがないのでピッチがすぐ目の前、そしてスタジアム自体がコンパクトで、見やすく快適。空腹ではなかったのでなにも食べなかったが、スタグルも充実している模様。おそらく地元の方はなんとも思わないだろうが、スタジアムから山が見えて実に美しい。アクセスは篠ノ井駅からシャトルバスで往復すればスムーズ。長野県には長野にUスタ、松本にアルウィンと、理想的なスタジアムがふたつもある。都民から見ればうらやましいかぎり。
●さて試合だが、長野は3バックで3-4-3の陣形、アウェイの福島は4-4-2の陣形。どちらも今季のリーグ戦では苦戦しているようだが戦い方は対照的。長野は序盤こそ主導権を握ったものの、試合全体としてはまずしっかり守って、相手の裏を狙うリアクション主体のサッカー。一方、福島はボールを保持して、細かくパスを回しながら攻めるサッカーを志している。序盤は長野の勢いが勝り、13分に右サイドからのフリーキックに大島嵩弘が頭で合わせて先制。しかし、次第に福島にボールを持たれるようになり、41分に右45度から武颯が蹴りこんで同点弾、80分には後方からゴール前へ上がったボールに対して、ふたたび武颯が技巧的なシュートを決めて逆転。武颯はフィジカルもしっかりしていて、このレベルでは頭一つ抜け出ている感じ。長野は1-2で惜しまれる逆転負け。17時キックオフの試合で前後半とも給水タイムあり。
●試合開始前に「リスペクト宣言」っていうのがあるんすよ。地元のあおいちゃんっていう女の子がママといっしょにピッチに登場して「差別のない、みんなが楽しめるスタジアムを作ります!」みたいな宣言をする(これ大事)。すると、ホーム長野のゴール裏から「あおいコール」が起きた。うれしそうに両手を振ってこたえるあおいちゃん。わーってスタジアムが和む。すると、反対側のゴール裏に推定30名ほどしかいない福島サポの人たちも、少人数でがんばって「あおいコール」を返してくれた。また手を振るあおいちゃん。下部リーグらしいノリ。わかる。

September 17, 2019

アンドレア・バッティストーニ指揮東京フィルの「四季」と「惑星」

海王星
●13日はサントリーホールでアンドレア・バッティストーニ指揮東京フィル。ヴィヴァルディの「四季」(ヴァイオリンに木嶋真優)&ホルストの「惑星」というプログラム。「四季」と「惑星」、つまり地球と宇宙の自然を合わせたという発想。これはいい。「惑星」には地球がないから、両曲合わせて「太陽系」プロともいえる。
●シンフォニーオーケストラの演奏会でヴィヴァルディの「四季」を聴くのはずいぶん久しぶり。小編成ではあるんだけど、サウンドはかなり重厚。ときにバリバリと突進し、ときに朗々と歌う。18世紀ヴェネツィアではなく21世紀港区の「四季」。コンクリートジャングルでも小鳥のさえずりはよく聞こえる。
●「春」第2曲にヴィオラ犬が出てくるじゃないすか。「ツッ! ツ~!」っていう鋭いアクセントで吠える犬。あれは「ワン!ワン!」だと思ってたんだけど、バッティストーニの解釈は「ツッ!ッ〜」。最初にだけアクセントがある。「ワン!……ゥ~」くらいの感じなのか。
●後半、ホルストの「惑星」は豪快な鳴りっぷり。重量感があって、ほとんど爆演級のダイナミズム。神秘主義的というよりは、フィジカルな快感を体現した「惑星」。「海王星」の女声合唱に新国立劇場合唱団を起用する贅沢仕様。フェイドアウトはかつてない緻密さ。
●「惑星」といえば、かつてコリン・マシューズが追補的に「冥王星」を作曲したものの、冥王星が惑星の定義から外れてしまい、ほとんど顧みられなくなってしまった。しかし、まだ太陽系の星ネタにはチャンスが残っていると思う。だれか「フォボス」「ダイモス」「エウロパ」「ガニメデ」「イオ」……などを書いてみてはどうか。題して、組曲「衛星」。

September 13, 2019

ロイヤル・オペラのグノー「ファウスト」

●12日は、東京文化会館で英国ロイヤル・オペラ2019、グノーのオペラ「ファウスト」。指揮は音楽監督アントニオ・パッパーノ。デイヴィッド・マクヴィカー演出。歌手、オーケストラ、舞台装置、バレエ、いずれも高水準で大いに楽しんだ。ファウスト役のヴィットリオ・グリゴーロは輝かしく張りのある声で、奔放なキャラクターも加わってスターのオーラ全開。マルグリートのレイチェル・ウィリス=ソレンセン、メフィストフェレスのイルデブランド・ダルカンジェロも聴きごたえ十分。ロイヤル・オペラのオーケストラは明るく華やかな音色を持ち、弦楽セクションのしなやかなサウンドも吉。なにより効果的だったのはバレエ。ほとんどアスリート的なキレのある動き。第5幕「ワルプルギスの夜」のバレエがエグい。あの妊婦と来たら!
●グノーの「ファウスト」って、ファウストのマルグリートへの恋が成就する第2幕、第3幕あたりは話があまりおもしろいとは思えないんだけど、第4幕でファウストがマルグリートを捨てた後に話が飛ぶと、がぜんおもしろくなる。ファウストってあれだけ学問を究めた人物なのに、悪魔に魂を売ることと引き換えに手にする現世的欲望は意外とフツーだ。若返ってマルグリートと愛し合って、でも妊娠させて捨てる。マルグリートは罪を犯し、牢獄に入る。それを助けようとするファウスト。若さを手に入れて待っているのはそんな鬱展開。どうせなら、もっと爽やかな青春とか手に入れられなかったのか。キラッキラに輝く青年ファウスト、とか。そして、悪魔の話であるにもかかわらず、グノーの音楽はまったく悪魔的ではなく、美しく磨き上げられた宝石がどこまでも並んでいるような上品さがある。なので、バレエシーンであれくらい思い切りやってくれてちょうどいいのかも。
●悪魔に魂を売る話はしばしば目にするが、悪魔は買った魂をなにに使うのだろうか。

September 12, 2019

ディエゴ・マテウス指揮サイトウ・キネン・オーケストラ ~ セイジ・オザワ 松本フェスティバル2019

セイジ・オザワ 松本フェスティバル2019 キッセイ文化ホール
●7日はあずさに揺られて松本のキッセイ文化ホールへ。セイジ・オザワ松本フェスティバル、今年はファビオ・ルイージ指揮のマーラー「巨人」やチャイコフスキー「エフゲニー・オネーギン」などもあったのだが、諸々の日程を考えるとこの日の一択で、ディエゴ・マテウス指揮サイトウ・キネン・オーケストラ。これが音楽祭最終日。プログラムはレブエルタスの「センセマヤ」、モーツァルトの交響曲第35番「ハフナー」、チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」。
●会場に入ると、テレビ収録あり。もしかして……とは思った。このプログラム、「センセマヤ」はマテウスならではのプログラムだし、「悲愴」は大曲だから難しいと思うんだけど、「ハフナー」だったらレジェンドのサプライズ登場が可能なのでは!? というか、そういう可能性を見越しての「ハフナー」なのでは。「センセマヤ」を振り終えたマテウスが袖に引っ込み、ステージの準備が整い、さあ「ハフナー」だと思ったら、そこで袖からすすっとさりげなくあらわれるレジェンド、あっと息をのむ客席、そして地響きのような大ブラボー……なんてことには、ならなかったんである。ちゃんと普通にマテウスが最後まで指揮した。マテウス、最高にすばらしかった。だよねっ!
●「センセマヤ」は歯切れよくくっきりとしたサウンドで大蛇秒殺。「ハフナー」は20世紀の伝統的なスタイルを一段シャープに磨いたようなモーツァルト。「悲愴」は冒頭ファゴットからただならない気配を感じさせる緊迫感にあふれた演奏。白熱した第3楽章の後にダーッと拍手が出た。おまけにブラボーまで出た。最近、なかなか見ない光景だけど、これでいいんだと思う。まだ終わってないと承知の上でのブラボー、たぶん。この曲はすごーく盛り上がったときだけ第3楽章で拍手、そうでもなかったら黙って次、ということでいいかも。第4楽章は抒情的で、決して暗鬱ではない。沈黙のあと、拍手喝采。普通ならこれでおしまいだが、音楽祭最終日ということもあってなのか、「エフゲニー・オネーギン」のポロネーズを豪快に。最後はハッピーエンドに着地した。楽員退出後、ソロカーテンコールならぬ、みんなでカーテンコールが2回。
●JRの中央線特急「あずさ」「かいじ」って、いつのまにか自由席がなくなってたんすね(→参考)。各席の上方にランプがあって、緑は予約済み、赤は空席になっていて、指定席を確保していない人は赤の席に座れる(でも、乗ってる途中でその席が売れたら色が変わってしまうんだとか)。「あずさ」回数券は廃止。

September 11, 2019

ニッポンvsミャンマー代表@ワールドカップ2022カタール大会 アジア2次予選

ミャンマーの国旗●早くもワールドカップ2022カタール大会の2次予選がスタートした。サッカー界は2020よりも2022。いや、灼熱のカタールで本当に大会が開かれるのかという疑問はいまだにあるのだが、とにかく予選は始まった。ちなみにこの2次予選は、アジアカップ2023中国大会の予選も兼ねている。サッカー界は過密スケジュールなのだ。もうひとつ言っておくと、いきなり2次予選から始まったのは、ニッポンは1次予選を免除されているから(全46チーム中、FIFAランキング上位34チームが免除。つまり免除される国のほうがずっと多い)。
●さて、ニッポンが2次予選で戦う相手はキルギス、タジキスタン、モンゴル、ミャンマー。なんと、中東勢がいない。そして、2次予選といっても感覚的には実質的に1次予選程度の相手。各組1位、および2位の成績上位チームの合計12チームが最終予選に進む。えー、なんでこんな楽な相手になっちゃったんだろう。不思議な気がするがこれはクジ運、ということなんだろう。日本は他のアジアの強豪と並んで第1シード。第2シードにはイラク、ウズベキスタン、シリア、オマーン、ヨルダンなど厄介な相手もいたのに、キルギスが日本と同組になった。そして、第3シードにも北朝鮮、バーレーンなどがいたのに、タジキスタンが同組になった。第4シードにもクウェートがいたのに、ミャンマーが来た。まるでモーゼが海を割って最終予選への道を作ってくれたかのように、平坦な2次予選になってしまった。これをラッキーと言っていいのかどうかは微妙なところだが……。
●で、アウェイのミャンマー戦だ。森保監督は予想通り先日のパラグアイとの親善試合と同じメンバーを先発させた。GK:権田-DF:酒井宏樹、冨安、吉田、長友-MF:橋本拳人、柴崎-堂安(→伊東純也)、南野(→鈴木武蔵)、中島(→久保建英)-FW:大迫。なんと、フィールドプレーヤー10人が全員別の国でプレイしているという珍事。フランス、イタリア、イングランド、トルコ、日本、スペイン、オランダ、オーストリア、ポルトガル、ドイツ。途中出場の伊東がベルギーだから、彼を中島と交代させていれば、キーパーも含めて11人全員が別の国になったのに、惜しい、惜しすぎる!
●いやー、全員Jリーガーだったころに比べると、ホントに時代は変わった。「サッカーのプロ化なんて、ムリムリ。まだバレーボールのほうが可能性ある」なんて言われてた日本リーグ時代から、Jリーグを創設してここまでやってきたサッカー界、ホントにすごい。
●肝心の試合内容であるが、雨がすさまじく、水をたっぷり含んだ芝でまるでボールが転がらない。ミャンマーは雨期。ボールが途中ですっと失速して思わぬところで止まる。スムーズなパスワークなどできるはずもない。なので、ニッポン代表はそれに応じたプレイ。高さでも優位に立てたので空中戦でも無問題。ほとんどの時間、ニッポンがボールを持つ展開。前半16分に中島が左サイドからカットイン、得意の角度からドライブ回転のかかったシュートをゴール右上に決めて先制点。早めのゴールで楽になった。前半26分、堂安のアシストで南野が頭で決めて2点目。個の力に大きな差があり、しかもミャンマーの守備組織が緩いとあって、その後も次から次へとチャンスを作ったが、いらだった相手のラフプレイがあったり、ヨルダンの審判がそう信頼できるとも思えなかったりで、2点を取った後は「いかにケガをせずに無事に終えるか」がテーマになった感。実力差がありすぎると、大量点は入らないもの。唯一ミャンマーで印象的だったのは、スタンドにつめかけたサポーターで、本当に盛り上がっている。一度、笛で試合が止まっている場面で、たまたまボールが日本のゴールに入ってネットを揺らせたら、それだけでワーッと歓声が上がった。そのノリ、よくわかる。ミャンマー 0対2 ニッポン

September 10, 2019

山田和樹指揮日本フィルのフランス&日本音楽プログラム

●6日夜はサントリーホールで山田和樹指揮日本フィル。プログラムが魅力的。前半にサン=サーンスの「サムソンとデリラ」より「バッカナール」、間宮芳生のヴァイオリン協奏曲第1番(日本フィル・シリーズ第2作)、大島ミチルの Beyond the point of no return(世界初演/日本フィル・シリーズ第42作)、ルーセルのバレエ音楽「バッカスとアリアーヌ」第1・第2組曲。フランスの作曲家によるバッカスの音楽に、日本フィルの新旧委嘱作がサンドイッチされるという構成。外側はフランスパン、中身はあんこみたいなハイブリッド感が吉。外はサクッ、中はふわっ、みたいな。
●最初の「バッカナール」は終盤で煽りに煽っていきなりやってくるクライマックス。自分の聴く限り、サントリーホールでいちばん大きな音を出すオーケストラが日フィル。一方、響きの彩度は控えめ。間宮芳生作品ではコンサートマスターに就任した田野倉雅秋が渾身の演奏。このヴァイオリン協奏曲第1番、日本フィルが1959年に委嘱した作品なんだそう。新作委嘱はオーケストラの財産になるのだと改めて痛感。そして初演とは違ったハードルの高さがある再演を、こうして別の初演曲といっしょに実現するというアイディアは秀逸。名演が名曲を作り出すもの。主にプロコフィエフ、ときにバルトークを連想させつつも、随所で独自の音色に彩られた作品。演奏後、客席から90歳の作曲者がステージにのぼり、盛大な喝采を浴びた。レジェンドの醸し出すオーラ。大島ミチル新作は変拍子で突き進む推進力にあふれた快作。たまたまなんだろうけど、ここにもバッカス的な熱狂があるかも。聴きやすく、映画やアニメの一場面風でもあり。こちらも作曲者臨席。最後のルーセルは山田和樹がスイス・ロマンド管弦楽団とPentaToneレーベルに録音している曲。華麗なオーケストレーションを楽しむ。フィナーレの執拗な熱狂が快感。

September 9, 2019

英国ロイヤル・オペラ2019日本公演開幕記者会見

英国ロイヤル・オペラ2019 記者会見
●6日はグランドプリンスホテル新高輪で英国ロイヤル・オペラ2019日本公演開幕記者会見。9月12日から23日にかけて、グノーの「ファウスト」とヴェルディの「オテロ」が東京文化会館と神奈川県民ホールにて上演される。指揮はいずれもアントニオ・パッパーノ。写真は左よりイルデブランド・ダルカンジェロ(「ファウスト」メフィストフェレス役)、ヴィットリオ・グリゴーロ(同 ファウスト役)、指揮のアントニオ・パッパーノ、フラチュヒ・バセンツ(「オテロ」デズデモナ役)、グレゴリー・クンデ(同 オテロ役)、ジェラルド・フィンリー(同 ヤーゴ役)。
●パッパーノは2002年から音楽監督を務めているので、もう17年も続いている。会見からもパッパーノと歌手陣たちの信頼関係の強さがうかがえた。今回が日本デビューとなるデズデモナ役のバセンツからは「パッパーノは私たちを守ってくれる守護天使のような人」。F1好きのグリゴーロは「最高の指揮者と共演できることがうれしい。指揮者をF1にたとえると、みんなはエンジンだと思うかもしれないが、実はタイヤ。最高のタイヤがないと車体は正しい方向に進まない。パッパーノはすべてを信頼して任せることができる音楽家であり友人でもある」。
●「ファウスト」はデイヴィッド・マクヴィカー演出、「オテロ」はキース・ウォーナー演出。パッパーノは「『ファウスト』は2004年以来、ロンドンでも高く評価されるプロダクションで、音楽に大変力があり、ゴシック的な要素もある魅力的な舞台。『オテロ』はシェイクスピアの原作のメッセージをまっすぐに伝える作品。オテロとヤーゴはもっとも難しい役といってもいいが、デズデモナ役も含めて、すばらしい歌手がそろった。まったくスタイルの異なる2作品を日本で披露できることがうれしい」と語った。

September 6, 2019

ニッポンvsパラグアイ@親善試合

パラグアイ●9月10日に早くもワールドカップ2022カタール大会の2次予選、アウェイのミャンマー戦が行われる。で、その直前の強化試合として行われたのが昨夜のパラグアイ戦。せっかく代表メンバーを招集するのだから、1試合だけではもったいないというわけでカシマで親善試合を開催。もし親善試合が2試合だったら森安監督はAチームとBチームに分けてほぼ全員を出場させるだろうが、今回はテスト+本番。テストのほうがずいぶん格上の相手だが、なにせ本番はアウェイ。テストでも本番と同じメンバーを先発させたと考えるのが自然か。
●ニッポンのメンバーはGK:権田、DF:酒井宏樹(→植田)、冨安、吉田、長友(→安西幸輝)-MF:橋本拳人、柴崎(→板倉滉)-堂安(→久保建英)、南野、中島(→原口)-FW:大迫(→永井謙佑)。所属先のポルティモネンセで出番を失っている権田は4か月ぶりの試合だった模様。無問題。ベンチの川島永嗣も試合には出ていない。ベルギーのシントトロイデンに移籍したシュミット・ダニエルがおそらく正キーパーだが、けがをしたらしい。バックラインは盤石の4人といった感じ。唯一プレミアリーグでプレイする吉田に、マルセイユで主力の酒井宏樹、ボローニャに移籍して右サイドバックとして評価を高める冨安、そしてガラタサライの長友。欧州での実績という点でいえば、このチームの核はバックライン。後半は酒井宏樹に代わって植田をセンターバックに入れて、冨安をサイドバックに。酒井宏樹が絶対的な存在になっているので、冨安はセンターバックでの起用が基本だと思うが、右サイドバックのオプションができたのはありがたい。
●東京の橋本拳人は唯一のJリーガー。落ち着いたプレイで守備で大活躍。交代出場した板倉が冴えなかったのとは好対照。攻撃ではやはり堂安、南野、中島の技術の高さが圧倒的で、パラグアイ相手でも一対一に強い。屈強な相手のタックルをするすると交わす。特に中島のドリブルは痛快。南野はいつまでザルツブルクにいるんだろう。途中出場の久保建英は代表最年少ゴールを決める気マンマンで、がんがんと仕掛けてきたが、惜しくも決めきれず。さすがに巧い。今回はもっぱらニッポンが攻める展開だったので問題はなかったが、守勢に回ったときにどれだけできるかが気になるところ。
●ニッポンの2ゴールはいずれもサイドバックからの低いクロスを中央で決める形。1点目は左の長友から大迫、2点目は右の酒井から南野がゴール。長友のクロスは幸運もあったが、どちらもチーム全体の連動性が高くて、きれいな形。パラグアイは移動と気候の影響か、体が重そう。ニッポン 2-0 パラグアイ

September 5, 2019

DCHでペトレンコ指揮ベルリン・フィルのベルク&「第九」

●ベルリン・フィルのデジタル・コンサートホールで、キリル・ペトレンコの首席指揮者就任演奏会を観る。ペトレンコ、ついに首席指揮者に就任。というか、決まってから就任するまでに何年かかったのか。新しい旅の始まりというよりは、スタートラインに立つまでの長い旅がようやく終わったという感慨すらある。プログラムはベルクの「ルル」組曲とベートーヴェンの「第九」。新旧ウィーンの音楽。歌手陣はマルリス・ペーターゼン(ソプラノ)、エリーザベト・クルマン(アルト)、ベンヤミン・ブルンス(テノール), ユン・クヮンチュル(バス)、ベルリン放送合唱団。コンサートマスターは樫本大進。木管楽器セクションの中央にはフルートのパユとオーボエのマイヤーの2枚看板。はっと気がつくと、パユとマイヤーもずいぶん髪に白いものが目立つようになっていて、2トップが熟している。クラリネットはオッテンザマー。
●「第九」は奇をてらわないけれども新鮮な演奏。第1楽章はやや速めのテンポで歯切れよく、弾むよう。第2楽章も弾力性があって、きびきびと進む。合唱は最初からスタンバイしていて、第3楽章の前に独唱者が入場(拍手は出ない)。第3楽章から第4楽章へはアタッカで。vor Gottのフェルマータで、目をむいて真っ赤な顔で音をひっぱるペトレンコ。すごい気迫。高解像度と熱量を両立させた立派な演奏。でも、少し気まじめすぎるかな。ペトレンコが目指しているのは、ひとつにはオートマティズムの排除なんだろうと思うんだけど、ディテールまで意匠を凝らしたとしても、どこまで細部に神は宿るんだろう。

September 4, 2019

大野和士指揮東京都交響楽団のベルク&ブルックナー

●3日は東京文化会館で大野和士指揮都響。ベルクのヴァイオリン協奏曲(ヴェロニカ・エーベルレ)とブルックナーの交響曲第9番という「白鳥の歌」プログラム。告別のプログラムを、新たな生命の誕生を間近に控えるソリストが奏でる。大野和士のブルックナーはやや意外な選曲で、ベルクをより楽しみにしていたのだが、強い印象を刻んだのはブルックナーのほう。伝統的なブルックナー像が深い森を思わせる重厚な響きを連想させるとしたら、こちらは重工業的というか、巨大な溶鉱炉で赤光を放つ鉄塊のようなブルックナー。強い筆圧で描かれた、剛健でたくましい造形美を堪能。祈りや神が不在でもブルックナーは成立するという心強い宣言。ビバ、世俗のブルックナー。
●京成上野駅側から文化会館方面に上る坂道が工事中で通行できなくなっていた。JRからホールに直行する際は関係ないが、下で先に食事をとった場合は上野公園内を通ることになりそう。上野の森さくらテラスのエスカレーターを使って上ってみた。

September 3, 2019

第29回 出光音楽賞受賞者ガラコンサート

●2日は東京オペラシティで第29回出光音楽賞受賞者ガラコンサート。出光興産主催の音楽賞「出光音楽賞」の今年の受賞者が出演し、まずは授賞式があり、これに各々の受賞者の演奏とトークが続く。今年の受賞者は3名で、箏のLEO(今野玲央)、ピアノの牛田智大、ヴァイオリンの郷古廉の各氏。選考委員のひとりでもある秋山和慶指揮の東京フィルが共演。公演の模様は「題名のない音楽会」で後日放映予定。
●このガラコンサートは各受賞者がどんな曲を選ぶのかがおもしろいところ。LEOさんは肥後一郎作曲「箏と弦楽合奏のための一楽章」より。自分にとってはまったくなじみのない現代箏曲だが、バルトークを連想させるような弦楽合奏に箏の独奏が加わって生まれる響きの色彩感が興味深い。牛田智大さんはプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番。といっても時間の制限があるので全曲は弾かせてもらえないわけで、第2楽章の第4変奏以降から第3楽章まで。楽章の途中からになるけれども、それでもこの曲を弾きたいという意欲が伝わってくる。高揚感にあふれたプロコフィエフ。鋭利さよりもむしろ柔軟さを感じる。牛田さんはかつての美少年ピアニストとしてのインパクトが強く、アイドル的な人気ゆえに(オッサンたちには)関心外だった人も多いと思うが、昨年の浜松国際ピアノコンクールで第2位に入ったことで、ずいぶん見方が変わりそう。まだ19歳。郷古廉さんはチャイコフスキーの「憂鬱なセレナーデ」と「ワルツ・スケルツォ」の2曲。長い曲の一部を演奏するよりも、完結した作品、そして性格的に対照的な2曲を並べるという選択。気品のある、成熟した音楽。ますますの活躍が楽しみ。

September 2, 2019

J1リーグ 第25節 マリノスvsガンバ大阪 ~ 3連敗の後に2連勝


●三ツ沢競技場での試合をDAZNで。マリノスは前節、途中交代で2ゴールを奪った遠藤渓太が先発復帰するかと思いきや、なんとベンチ。変わって左ウィングには最近名古屋からローンで獲得したマテウスが先発。フォワード陣は左にマテウス、中央に仲川、右サイドにエリキ。ストライカーがいなくて、ウィンガーが3人並んでいるゼロトップ仕様。そして、その下にいるマルコス・ジュニオールが攻撃のキーマン。相変わらずハイラインで、選手の流動的なポジショニングからひたすらボールを回す。この日は、いつもより余計に回しております~的な大サービスで、一段と円滑、見栄えは最高。
●マリノスは圧倒的なボール支配率を保ち、前半39分にタイ代表ティーラトンが先制ゴール。神戸時代もゴールはなかったのでこれがJ初ゴールなんだとか。右からの攻めで、左サイドバックのティーラトンがペナルティエリア前の中央に待ち構えているという、ポステコグルー監督の戦術が功を奏した形。2点目は後半8分、マルコス・ジュニオールの狙い澄ましたショット。ガンバ大阪は3バックでまず守備からというゲームプランだったはずだが2失点、ここで宮本監督が選手をふたりを交代して、4バックに。すると、ガンバが徐々に試合の主導権を奪い返す。後半22分、小野瀬康介がディフェンスの間をかいくぐって単独突破して鮮やかなゴール。これは美技。布陣の変更が効いたのか、小野瀬のゴールで勢いがついたのか、その後はガンバの時間帯が続く。苦しむマリノスだったが、後半33分、マテウスの負傷により途中出場した遠藤渓太が、左サイドから低い弾道の強烈なゴールを決めて3点目。これで一気に楽になった。マリノス 3-1 ガンバ大阪
●ガンバでは小野瀬康介と福田湧矢が印象的。小野瀬はスーパーゴール。福田湧矢は高卒ルーキーで即定位置を獲得しているそうで、J1でこれはすごい。元海外組の井手口、宇佐美はトップコンディションにはもう一歩か。井手口はマルコス・ジュニオールとマッチアップする形が多かったが、以前ほど守備に獰猛さを感じず。マリノスはセンターバックのチアゴ・マルチンスがMVP級の活躍。リスキーなハイライン戦術は快足センターバックの存在があってこそ成立するのだと再認識。マテウスは左ウィンガーとして縦に仕掛ける専門職のような感じだが、プレイが単調なのと、正確性の面で甘いのがかなり気になる。遠藤のほうがずっと安心感があるのだが、ポステコグルー監督は気に入っている模様。第3キーパーから出世中の杉本大地は、だんだんなじんできた。一度、飯倉ばりの前方ダッシュがあってひやりとしたがセーフ。
●マリノス側のみメンバーを。GK:杉本大地-DF:広瀬陸斗、チアゴ・マルチンス、畠中槙之輔、ティーラトン-MF:扇原貴宏、喜田拓也-マルコス・ジュニオール(→渡辺皓太)-FW:エリキ、仲川輝人(→大津祐樹)、マテウス(→遠藤渓太)。遠藤渓太と渡辺皓太はU22に選ばれて北中米遠征へ。東京五輪を目指す。仲川輝人はこの調子で活躍していればフル代表に呼ばれるはずだが、いつまでマリノスにいてもらえるのやら。

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