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December 23, 2022

ワールドカップ2022カタール大会をふりかえる

●さて、忘れないうちにワールドカップ2022カタール大会を総括しておこう。今大会、競技面に関していえば、近年のワールドカップでもっとも盛り上がった大会になったと思う。ニッポンがドイツとスペインを破ってグループリーグを1位で突破するという、だれも予想しなかった大健闘を見せた。が、ニッポンだけではなく、世界中のサッカーファンにとってエキサイティングな大会だったんじゃないだろうか。理由はいくつかある。ひとつは決勝戦が劇的な名勝負になったこと。アルゼンチンが優勝し、伝説として語り継がれるであろうメッシが最後の大会で栄冠を勝ち取った。そんなストーリー性も満足度を高めてくれる。久々にヨーロッパ以外のチームが優勝したのも大きい。ワールドカップが欧州選手権になってしまうと盛り上がらない。おおむねワールドカップは、欧州/アフリカで開催されると欧州のチームが優勝し、南米/アジアで開催されると南米が優勝するのだが(例外は2回ある)、今回もその法則が適用された。あとは、正直なところ、事前の期待値が低かったせいもある。サッカーの熱狂がまるで感じられないカタールで開催され、気候を理由に秋に開催するなどの無茶がまかり通ってしまい、始まる前からこの大会は失敗であり、マネーの力に屈した大会だという屈辱感があった。だが、終わってみたら予想外によい大会になった。それは競技内容そのものがすばらしかったということに尽きる。
●今大会はいくつも従来から大きな変化があった。大会前から各国のリーグで採用されていたものではあるが、5人交代とVARはサッカーを変えたと思う。コロナ禍から生まれた5人交代(ただし交代回数はハーフタイムを除いて3回まで)ルールのおかげで、厳しい日程にもかかわらず「消耗戦」にならなかった。5人交代はベテランの活躍も後押ししたのでは。従来、キーパーとセンターバック以外は32歳にもなればそろそろトップレベルでは厳しい印象だったが、今大会ではメッシ35歳をはじめ、オリヴィエ・ジルー36歳、モドリッチ37歳、クリスチャーノ・ロナウド37歳など、ベテラン勢が目立った。ネイマールですらもう30歳なのだ。交代枠のおかげだけではないとは思うが、場合によっては前半だけでお役御免という起用法も可能になったのは大きい。それとVARに関しては、どちらかといえば攻撃の選手が恩恵を受けていると思う。すぐにPKチェックが入るので、ペナルティエリア内でディフェンダーが慎重なプレイをするようになった。
●過去の大会よりゴールが増えたという話もあったが、それに関してはアディショナルタイムが長くなったことも影響しているはず。厳密にアディショナルタイムを取ることになり、7分や8分はあたりまえといった調子。実はこれはあまりうれしくない。ただでさえ長い試合がさらに長くなる。実質、前後半それぞれ50分はかかるイメージ。だったら45分ハーフじゃなくて、もう40分ハーフにしてしまえばいいんじゃないの。時間稼ぎのプレーは減ってほしいけど、試合そのものが長くなるのはうれしくない。
●あまり話題にならなかったが、女性審判が参加した。フランス人の女性審判が史上初めて主審を務めた。日本からは山下良美さんが参加。ただ、「6試合で第4審判を務めた」ということなのだが、主審が無理でも、せめて副審くらいは任せてほしかったという思いも残る。ワタシはJFLの試合で山下さんが主審を務めた試合を観戦したことがあるので、心情的には応援モード。ワールドカップで主審を務める雄姿を見たかった。
●今回、開催国カタールはまったくいいところがなかったけど、代わってモロッコ代表がアラブ世界の代表としてベスト4に入る健闘を見せた。モロッコ対フランス戦の場内の雰囲気は、あれがアフリカ対ヨーロッパではなく、アラブ対ヨーロッパなのだということを知らしめたと思う。フランスがボールを持つたびに出るブーイングにはいろんなニュアンスがあったんじゃないかな……。フランスといえば決勝戦後のセレモニーにマクロン大統領が出てきたが、まったく場違い。自国開催ですらないのに、なんのつもりなのか。世界中のサッカーファンが心のなかでブーイングをしたと思うが、ひょっとしてそこまで計算に入れてカタールはマクロンの乱入を許したのかも、と思わなくもない。