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2016年7月アーカイブ

July 29, 2016

ラウタヴァーラ、中村紘子さん逝去

●訃報がふたつ続いた。フィンランドの作曲家エイノユハニ・ラウタヴァーラが世を去った。87歳。今年のラ・フォル・ジュルネで、鳥と管弦楽のための協奏曲「カントゥス・アルクティクス」が話題を呼んだことが記憶に新しい。交響曲第7番「光の天使」ほかの管弦楽作品、室内楽曲、独奏曲、オペラ、合唱曲など、録音には恵まれている。交響曲は第8番「旅」(1999)が最後だったのだろうか。近作ではアン・アキコ・マイヤーズのために書いたヴァイオリンと管弦楽のための幻想曲(2015)の初演が2017年3月に予定される。
●もうひとつは中村紘子さん。7、8年前だったか、全国各地でのリサイタルを前に情報誌用にインタビューでご自宅に伺ったことを思い出す。そのときの話でいちばん印象に残っているのは「演奏会は一期一会だ」ということ。演奏する側はツアーであちこちを回って同じプログラムを何回も演奏するが、お客さまのほうは自分が足を運んだ一回きりの公演がすべてなのだから、一回一回のために決して準備を怠ってはいけないといったことをおっしゃっていた。なにしろ大御所、しかもご自宅ということで、こちらは滝に打たれる覚悟で出向いたのだが、会ってみるとまったく尊大ではなく、むしろこちらを気遣ってくれる方だったので感激した覚えがある。
●謹んでご冥福をお祈りいたします。

July 28, 2016

スナホ・ゲーム解放区

●ポケモンGOにはひとたび遊びだしたら自分が底なし沼にハマって生活が破綻するんじゃないかという危険な香りを感じて、手出し無用だと思ってるんだけど(もともとゲーム大好き人間だし)、いい話だな~と思ったからメモっておく。
●「鳥取砂丘で87カ所ポータル申請 Pokemon GO 解放区のきっかけに」(ITmediaニュース)。なんにもない鳥取砂丘に大量のポケストップが集中していて、どうしてかなと思ったらそれはひとりのIngressプレーヤーのおかげだったという話。Ingressというのは同じ米Niantic開発によるポケモンGOの兄貴分みたいなゲームで、このプレーヤーが砂丘を歩いて大量のポータルを申請したのだとか。で、そのポータルがポケモンGOでポケストップに転用されたので、鳥取砂丘はがぜんポケモンGOで注目を集めるようになった。鳥取県は「鳥取砂丘スナホ・ゲーム解放区宣言」を発表して、観光客誘致に力を入れている。
●これってホントにカッコいい。ひとりで砂漠を緑化した男、みたいなイメージ(砂漠じゃなくて砂丘だけど)。家庭用ゲーム機やアーケードゲームの全盛期にもネットとかパソコン通信(死語)を通じて個人の力で裏技やらチートが共有されて、ゲームの世界に広がりを感じたものだけど、それらはしょせん開発者の作った世界の内側の話。こっちは外側に向けて開いているというか。
●ポケモンGOもさることながら、その次の展開が楽しみな感じ。これってまだファミコン時代でいえばドラクエIIくらいがリリースされたあたりの黎明期なんだろうし。

July 27, 2016

ズーラシアンブラス+弦うさぎ「音楽の絵本」

ズーラシアンブラス+弦うさぎ「音楽の絵本」●24日は所沢市民文化センターMUSEのマーキーホールで、ズーラシアンブラス+弦うさぎ「音楽の絵本」親子で楽しむクラシックコンサート。ズーラシアンブラスは子供たちに大人気の動物たちによる金管五重奏。クールでカッコいいインドライオンのトランペット、愛嬌のあるドゥクラングールのトランペット、のんびり屋のマレーバクのホルン、お調子者のスマトラトラのトロンボーン、沈着冷静なホッキョクグマのテューバの五重奏に、しっかり者のリーダーであるオカピが指揮者として加わる。この日はうさぎたちの四人姉妹による弦うさぎも加わり、カッコいい系のブラスとかわいい系の弦楽四重奏の両方があって、男子も女子も楽しめる構成になっていた。
●一曲目はワーグナーの「ローエングリン」第3幕への前奏曲をブラスの演奏で。コーダが「禁問の動機」入りバージョンになっていて、動物たちもワーグナーには一家言ある様子。ヨハン・シュトラウス「皇帝円舞曲」やプッチーニ「だれも寝てはならぬ」といったクラシックの名曲から、久石譲「となりのトトロ」、渡辺茂「ふしぎなポケット」、八木節、ロンドンデリーの歌など、曲目は多彩。後半で演奏された「弦うさぎの一日」は、うさぎさんたちの一日の過ごし方を名曲メドレーでたどったもので、グリーグの「朝」、ヨハン・シュトラウス「トリッチ・トラッチ・ポルカ」、キューピー3分クッキングのテーマ、ベートーヴェンの「田園」第1楽章、ドヴォルザーク「新世界より」第2楽章、チャイコフスキー「眠りの森の美女」ワルツ、あともう一曲最後に超有名なピアノ曲が続いたんだけど、えーと、なんだっけ、シューマン「トロイメライ」だったっけ?(記憶違ってるかも)。
●ブラスの5人がものすごく上手い(特にインドライオンさん、何者ですか)。あ、動物だから5人じゃなくて5体? ケダモノ界の人材豊富さをうかがわせる。編曲もいい。で、すばらしいなと思ったのは司会のお姉さんも含めてショーとしての完成度が高く、子供たちを本気で喜ばせていたところ。「いい音楽さえ聴かせれば子供たちは喜ぶ」なんてワタシはぜんぜん信じない。やっぱり子供に正面から向き合った練った演出が必要なんだなと痛感した。たとえば、それぞれの動物にキャラ設定があるわけっすよ。ホルンのマレーバクはぼんやりして、うっかりすると演奏中に昼寝なんかしちゃうという設定。最初のほうでお姉さんが、眠ってしまったマレーバクに向けて、会場の子供たちに「起きて―!」って言わせる。で、一回それをやっておくと、後半で「だれも寝てはならぬ」を演奏中にマレーバクがウトウトすると、子供たちは自発的に大きな声で「起きて―!」って大喜びしながら声を出してくれる。こういうのって、だれでもできる(=台本を書ける)ものじゃない。よくできているし、ずいぶん試行錯誤を重ねたのかなって思う。
●最初にお姉さんが会場に「ズーラシアン・ブラスに今まで会ったことのある人!」って尋ねたら、たくさん手が挙がっていた。リピーターが多いのも納得のクォリティ。

July 26, 2016

フェスタサマーミューザKAWASAKI 2016開幕、ジョナサン・ノット&東響

●今年もフェスタサマーミューザKAWASAKIが開幕。ミューザ川崎を舞台に首都圏のオーケストラが続々と登場する。23日はその開幕公演であるジョナサン・ノット指揮東京交響楽団の公演へ。いつも東響はこの音楽祭のホスト・オーケストラとして開幕公演と閉幕公演の両方に登場するのだが、ノットが同音楽祭に出演するのは初めて。やはり音楽監督が指揮台に立ってくれると期待度はあがる。
●基本的にこの音楽祭は名曲中心のプログラムで、チケット価格もぐっと抑えられているフレンドリー路線なのだが、さすがにノットは興味深いプログラムを組んでくれた。前半にヴィラ=ロボスの「ニューヨーク・スカイライン・メロディ」というごくごく短い小品と、アイヴズの「ニューイングランドの3つの場所」、後半にベートーヴェンの交響曲第6番「田園」。おもしろい。メイン・プログラムに「田園」を据えるにしても、その前に20世紀のニューヨークやボストン等の景色を配置することで、プログラムが時空を超えたひとつの旅のように思えてくる。都市と田舎、新大陸と旧大陸、20世紀と19世紀。
●ヴィラ=ロボスにこんな曲があることすら知らなかった。もともとはピアノ曲で、マンハッタンの摩天楼の稜線を方眼紙に書き取って、それを五線譜に置き換えたものということらしいのだが、じゃあケージばりにランダムに生成された容赦ない不協和音が響くかといえばぜんぜんそうではなく、すっかりヴィラ=ロボスの音楽語法に収まっている感。ここからノットとしては拍手なしでアイヴズにつなげたかったようだが、少しの拍手をはさんでアイヴズへ。並べて聴くと断然アイヴズのほうがヤンチャしてる。
●後半は「田園」(休憩なしで3曲続けても大した長さにはならなかったはずだが、客層も考えてか、休憩あり)。ノットのベートーヴェンは豊潤でふくよか。緊張感に貫かれたまったくルーティーンではない「田園」で、しなやかなフレージングが印象的。大活躍する木管群のソロも精彩に富んでいた。
●「田園」の1楽章が終わったところでパラパラと拍手が沸き起こった。首都圏ではめったに出会えない光景なのだが、これは着実に新しいお客さんを呼べている証拠でもあって、頼もしいかぎり。初めて聴いた「田園」がこれだったとすると、幸福な出会いというほかない。

July 25, 2016

兵庫県立芸術文化センターのブリテン「夏の夜の夢」

●22日は兵庫県立芸術文化センターへ。この日、東京は肌寒いほど涼しかったのに関西はカンカン照りで猛暑。最高気温が10度ほど違っていた。佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2016として取りあげられたのは、なんとブリテンの「夏の夜の夢」。この日が初日だったが、それにしてもこの演目で6回も上演されるとは。感嘆するしか。これは貴重な機会だと思い新幹線に乗ってはるばる訪れたわけだが、いざ現地に着いてから「実はブリテンじゃなくてメンデルスゾーンだったらどうしよう」と急に自分の勘違いが怖くなって(まさか)ポスターかなにかを見たら、小さくBrittenって書いてあって安堵。
●演出・美術はアントニー・マクドナルド。オーベロン役のみダブルキャストでこの日は彌勒忠史(2公演のみ藤木大地)。森谷真理(ティターニア)、森雅史(シーシアス)、清水華澄(ヒポリタ)、クレア・プレスランド(ハーミア)、イーファ・ミスケリー(ヘレナ)、ピーター・カーク(ライサンダー)、チャールズ・ライス(ディミートリアス)、塩谷南(パック:語り役)、アラン・ユーイング(ボトム)、アンドリュー・ディッキンソン(フルート)他の歌手陣、佐渡裕指揮兵庫芸術文化センター管弦楽団、ひょうごプロデュースオペラ児童合唱団。舞台は私たちが「妖精譚」と聞いてまっさきに思い浮かべるような、幻想的で装飾的なもの。とても美しい。3面の回り舞台を駆使。おもしろかったのは、妖精たちは日本語で歌い、人間たちは英語で歌うというアイディア。これは昨年の野田秀樹演出の「フィガロの結婚」を思い出させる。外国人歌手に日本語で歌わせるのは難しいが、日本人歌手はどちらでも歌えるという言語の非対称性が背景にあるにしても、作品内世界で筋が通った言語の使い分けになっている。人間たちの言葉である英語から見れば、日本語は超自然的な言語に聞こえるのかも。日本語歌唱に対しても、字幕は付く。この仕組みだと堂々とパックに日本語で語らせることができるのが効果的。歌手陣は歌えてなおかつ役柄にもあっている人たちがそろっていて、オペラにつきものの脳内置き換えをしなくても、ちゃんと若い恋人たちは若い恋人たちに見える。すばらしい。
●で、歌手、オーケストラ、舞台美術といずれもワタシは満喫したんだけど、ひとつ根本的なところで自分のなかで消化できていないのは、「夏の夜の夢」という物語そのものなので、以下、思いつくままに記しておこう。この話そのものはメンデルスゾーンの音楽もあるし、決してなじみのないものではないが、一筋縄ではいかない。妖精の王様と女王様がケンカして、人間の恋人たちをめぐるドタバタがあって、職人たちのヘッポコ劇団が出てきて、最後はみんな仲良くなってハッピーエンド。それだけのふわふわとしたラブコメだったら、ブリテンはオペラにしようなんて考えないだろう。つまるところ、なにがおもしろいのか。
●たとえば、物語の発端のひとつに、オーベロンとティターニアがインドの小姓を奪い合うというのがある。なんでそんなインドの小姓ごときで話が大事になるのか。オペラで小姓といえばケルビーノ。ケルビーノみたいな美しい少年だとすると、ティターニアがかわいがるのはわかるが、どうしてオーベロンが欲しがるのか。そのあたり、自分なりにでもなにか答えがないとこの話は厳しいんじゃないだろうか。ここで小姓とされているものは、ケルビーノの小姓とは意味が違っているはずで、この子はChangeling、「とりかえ子」と呼ばれることも多いようだ。とりかえ子とは人間側から見ると、本来の子供が妖精などにさらわれて、その代わりに置いていかれる妖精の子供のことで、ときには醜かったり発育不全だったりする。人の側からすると「この子は、本当は化け物の子で、本物のわが子は連れ去られたのだ」的な都合のいい解釈ができる存在なのだと思うが、妖精側からするとさらってきた完全で健やかな子供のほうが「インドの小姓」になっている(そしてインドには醜い子供が身代わりになっているはず)。で、だったらどうなんだってことではあるのだが……。
●シェイクスピアの「夏の夜の夢」が結婚式のために書かれたものだとすると、この話は結婚を祝う以上に、今でいえば「結婚式の二次会」みたいなものへの期待を煽っている。奔放な性愛をテーマとした話なので。目が覚めた時に初めて見た者を好きになる秘薬というのは媚薬そのもの。ティターニアはロバ頭に変身させられた職人に求愛する。このロバを性的な旺盛さのシンボルとする見方もある。そうでなくても4人の若者たちでカップルの組合せがゆらぐというのは(モーツァルト「コジ・ファン・トゥッテ」のカップル入れ替えの話もそうだけど)、放埓でドキッとさせる話。しかもヘレナとハーミアが女学生的な結束を確認する場面なんかも、なんだかきわどい要素をはらんでいる。
●第1幕の頭から登場する弦楽器のポルタメントを使って、妖精たちの異世界を表現するところが、なんだか「ニャ~ン」って猫が鳴いているみたいでかわいい。妖精の表現としては、メンデルスゾーンが弦楽器をちらちらとピクシーが飛翔するみたいにせわしなく扱うのが得意だけど、別の方法でやるとするとこんな感じか。第3幕、職人たちの劇中劇の場面で、ブリテンは遊びまくっている。イタリア・オペラのパロディ調。しかし、イマイチ笑えないギャグに付き合わされている感も。ピーター・ピアーズが職人フルートの役を歌っていたというのが興味深い。いちばん最後にパックの有名な口上が出てくる。「お気に召さなければ、これは夢だと思ってお許しを」みたいな言葉。オペラだとなんだか危険な口上にも聞こえるのはなんでだろう。レオンカヴァッロ「道化師」の幕切れを連想する。あちらはリアリズムの手法でファンタジーを描いているけど、こっちはファンタジーのタッチでリアルを描いているのかも。

July 22, 2016

第26回出光音楽賞受賞者ガラコンサート

●19日は東京オペラシティで第26回出光音楽賞受賞者ガラコンサート。今年の受賞者は川瀬賢太郎(指揮)、薮田翔一(作曲)、山根一仁(ヴァイオリン)の三氏。演奏に先立ってまずは授賞式がとりおこなわれた。司会は同賞選考委員でもある池辺晋一郎さんと、テレビ朝日アナウンサーの松尾由美子さん。
●セレモニーに続いて、川瀬さんが横浜シンフォニエッタを指揮してモーツァルトの「フィガロの結婚」序曲、シューマンの交響曲第3番「ライン」から第1楽章。ていねいで推進力のある演奏で続きも聴きたくなる。休憩後は薮田翔一作曲の演奏会用組曲「風神雷神」。これはもともとは歌舞伎役者の舞を伴った作品だが、今回のために演奏会用組曲として再構成したもの。オケに加えてピアノに萩原麻未、ソプラノに半田美和子というゴージャス仕様。たぶん、氏のほかの作品と比べると相当に明快な作風がとられた曲で、そのまま映画音楽などに使われてもおかしくないくらい。オーケストラ曲だが、打楽器アンサンブルや弦楽四重奏で演奏される部分もあり、きわめて色彩的で物語的。「尊敬する作曲家は?」と尋ねられて、司会の池辺さんを目の前に堂々と「池辺さんです」と答えてくれた(おふたりは旧知の間柄)。
●山根さんは「幼稚園の頃から大好きだった」というショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番から第3、第4楽章。これはもう恐るべきクォリティ。キレッキレの鋭さで、第3楽章の厳粛な長大なソロからクレイジーな第4楽章へと突入するコントラストの鮮やかさは鳥肌もの。ホント、全曲聴きたかった。
●さて、池辺さんの司会となれば、はたしてどんなダジャレが飛び出したかが気になるところであろう。しっかりメモって来ました!(なんでよ)。冒頭のセレモニーで松尾さんから「出光音楽賞の選考基準は?」と聞かれて、「やはり光を出している人ですね……出光だけに。あとはアブラの乗っている人」。ダジャレとは少し角度を変えた、授賞式にふさわしい狙い澄ましたジョークであった。
●公演の模様は「題名のない音楽会」で9月4日(テレビ朝日)に放映予定です。

July 21, 2016

結ばない靴紐

●最近、感動したのが「キャタピラン 結ばない靴紐」という商品。これは発明だと思った。伸縮性のある材質でできた靴紐で、スニーカーを履くときにひもを緩める必要がない。そして、ひもがほどけない(というか、もともと結んでない)。今までやたらとひもがほどけやすいスニーカーを履いていて、いったいどういうメカニズムでこんなものが自然にほどけるというのか、目に見えないイジワルな靴紐の精がいて、油断をした瞬間にひもを緩めているのかと訝しんでいたのだが、これでもう安心。ほどけない。そして緩めなくても履けて、快適にフィットする。
●映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で自動で靴紐を締める機能を持ったシューズが出てきたけど、先端テクノロジーを使わなくても靴紐問題はゴム+ナイロン製の材質でスマートに解決できたのであった。

July 20, 2016

N響「夏」2016

●15日(金)はNHKホールでN響「夏」2016。毎夏に開催される名曲コンサートで、今年はなんと、クリスチャン・アルミンクが指揮。新日フィル音楽監督時代にはたくさん聴く機会があったが、退任後はまったく機会がなく久々にアルミンクの姿を目にすることに。相変わらず若々しく男前。こんなに長身だったっけ。ソリストがポール・メイエだったので、舞台上がなかなか麗しい感じに。
●前半はモーツァルトで「魔笛」序曲とクラリネット協奏曲。クラリネット協奏曲が始まる前、メイエがなかなか登場せず袖で音出しをしているのが聞こえてくる。やっと姿を見せて曲が始まったのだが、オケのみの提示部の間もメイエはしきりと楽器のコンディションを気にして、なんどもオケに合わせてそっと音を重ねている。ようやくソロが始まったが本調子が出ず、しばらくすると演奏をストップして、袖に帰って予備の楽器と取り換えるという珍しいアクシデントがあった。なぜか不調の楽器を手渡されたアルミンクが機転を利かせたジェスチャーで客席を和ませ、微笑ましい雰囲気のなかで冒頭から演奏を再開。もちろん今度は何事もなく、流麗なソロが奏でられた。メイエは同じ曲を以前に聴いた時も感じたけど、快速テンポでよどみなく音楽が流れるのが爽快。アンコールにスティーヴン・ソンドハイムの「リトル・ナイト・ミュージック」より「センド・イン・ザ・クラウンズ」。後半はドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」。こちらはさすがN響という引き締まったサウンドで、緊密堅牢。アンコールにドヴォルザークのスラヴ舞曲第10番。

July 19, 2016

Proms 2016開幕

BBCプロムス2016●夏の音楽祭シーズンがやってきた。Proms 2016が7月15日に開幕、9月10日のラストナイトまで、2か月近くにわたって公演が続く。全公演の概要を1ページに収めて眺めるなら、こちらの Proms 2016 All Events が便利。また、今回も期間限定でオンデマンドで音声を聴くことができる。個別コンサートのページからも再生できるが、いま掲載されている音源を一覧するには Episodes のページが吉。なお、例によって一部公演は映像も配信されているのだが、英国内からしかアクセスできない。試してないけど、VPNを使えば見れるんだろうか。
●あと、BBC Proms 2016 in Surround Sound というのもあって、4.0chサラウンドでライブストリーミングを楽しめるという趣向になっている。これは最近のブラウザさえあれば他のソフトウェアは不要なんだとか(もちろんハードウェアは必要)。サラウンドは守備範囲外なので個人的には手出し無用といった感じなのだが、ハイレゾのような音質を上げていく方向がある一方で、こういったわかりやすい臨場感を求める方向性もあるんだなというのが発見。

July 15, 2016

「地霊・パンドラの箱――ルル二部作」(フランク・ヴェーデキント著/岩波文庫)

●フランク・ヴェーデキントの「地霊・パンドラの箱――ルル二部作」(岩波文庫)といえば、ベルクのオペラ「ルル」の原作。どうやら今は古書でしか入手できないっぽいのだが、amazon等を使えば、適正価格で簡単に手に入る。ようやく読むことができたので、自分用のメモとしていくつか気がついたことを記しておこう。
●まずルルのオペラと原作との関係性でいえば、台本はもとの戯曲にかなり忠実。語数的には大幅に縮められているにしても、根幹となるストーリーや人物設定に大きな違いを感じない。オペラでいうと第2幕のシェーン博士が撃たれるところまでが原作の「地霊」。で、その後のゲシュヴィッツ伯爵令嬢がルルを脱獄させる話以降は「パンドラの箱」のほうで描かれる。「地霊」と「パンドラの箱」のシンメトリックな物語構造は、オペラのほうでも無声映画場面を転換点としてさしはさむことで表現されている。もちろん、オペラは第3幕がなかったら話がまるで成立しない。
●プロローグについて。猛獣使いがいろいろな動物を紹介するプロローグは原作にもその通りにある。虎はシェーン博士を、猿はアルヴァを、蛇はルルを表す。で、最後に「おっと、とっておきの見ものを忘れておりました。わたしの頭を猛獣の牙に間に突っ込みましょう。この猛獣の名前をご存知でしょうな。さあ、観客のみなさま、どうぞお入りください」みたいな一言で終わる。この「猛獣の名前」っていうのは、オペラを見てピンと来るものだろうか。えっ、そんなの簡単だって? いやー、ワタシは鈍くてよくわかんなかった。これは原作ではもう少し長々とした口上になっているのだが、猛獣とは今まさにこれを見ているわれわれ「お客」だと解するのが自然だろう。
●「パンドラの箱」を読んでいると、途中で登場人物のアルヴァが「地霊」を書いたのだという記述が出てきて、ほんのりメタフィクション風味あり。オペラのほうでアルヴァがベルクの分身である的な言い方がされるのは、そういうことなんだろうか。ともあれ物語中ではアルヴァというのは完膚なきまでに才能のないクリエーターで、父親の権力によるメディア戦略だけで名前が売れた男に過ぎない。
●物語中でとりわけ超越的な存在が、ルルのかつての父親代わりであり情夫でもあったらしき浮浪者のジゴルヒ。彼ってなんとなくヴォータンっぽくないだろうか。最下層のヴォータン、あるいはさすらい人。ジゴルヒだけがルルをルルの名で呼ぶ。
●オペラの第3幕で唐突に登場する切り裂きジャック。いきなり実在のサイコキラーが出てきてとまどうわけだが、ヴェーデキントはもともと切り裂きジャックの話を書きたかったらしい。そこから逆算して娼婦の被害者があり、ルルがありといった形で着想されたのだろうか。
●オペラの登場人物中、やや割を食っているかなと感じるのが同性愛者のゲシュヴィッツ伯爵令嬢。彼女のルルに寄せる想い、自己犠牲の精神はほとんど尊いと言っていいくらいのもの。「パンドラの箱」第3幕での彼女の長セリフから引用しておこう。

 いったいこれまでに、愛によって幸福になった人間なんていたかしら? 人間の幸福なんて、所詮はよく眠れてすべてのことを忘却してしまえることじゃないかしら? ──ああ神様、あなたがあたしをそんな人間に作り上げて下さらなかったことに感謝します。──わたしは人間ではない、わたしの肉体は、人間の体とは全く違ったものだ、わたしは、人間の心なんか持ってないわ!
July 14, 2016

EURO 2016を総括する

●閉幕するとあっという間に過去のことになってしまうが、忘れないうちにEURO 2016を総括しておかねば。とてもいい大会になったのでは。
●まず優勝したポルトガルについて。従来、細かなパスをつないでポゼッションを重視するというのがポルトガルのスタイルだったが、今大会は慎重で守備的な戦いをするチームになっていた。逆説的だが、守備的なチームにこそ決定力のあるスーパースターが有効ともいえる。ほとんどの好機はカウンターとセットプレイなので。
●ベストの試合はイタリア対スペイン。前回チャンピオン相手にイタリアが猛烈に攻めまくった。痛快。好感度ナンバーワンのチームはウェールズ。最大の番狂わせはイングランド対アイスランド。イングランドは「プロサッカー選手が火山の数より少ない国に負けた」と揶揄された。
●大会方式について。今回から24か国に参加国が増え、グループステージ3位でも多くの場合、決勝トーナメントに進めるようになった。ポルトガルだって3位通過だ。そんなの変だよっていう声が一部の選手から上がっていたのが印象的。だって、これってフランス大会より前のワールドカップの方式そのものじゃん。おなじみの方式が復活しただけと思っていたら、若い選手たちにとっては「は、なにそれ?」くらいの感じなのか。たしかに言われてみれば、ヘンだよなあ。もっとエレガントな方式はないの?
センターサークル●今回から「ひとりキックオフ」を多くのチームが採用するようになった。これはサッカーのルールが変わったから。従来、キックオフは前方向に蹴らなければならなかった。そのため、どのチームもボールのそばに2人を選手を立たせて、ひとりが前にチョン蹴りして、もうひとりがバックパスで味方につなぐというキックオフをしていたわけだ。ところが、今後はキックオフでどの方向に蹴ってもよくなったので、ひとりキックオフでバックパスをすればOK。どうせバックパスをするとわかりきっているのに、なぜ従来はそんな儀式的なチョン蹴りをしていたのかと思う。割と恥ずかしいので小声で言うけど、ワタシは草サッカーで初めてフォワードのポジションをやらせてもらったとき、この前に蹴るっていうルールを知らなくて、いきなりバックパスをしてしまって叱られたのであった……。うっかり未来のルールを先取りしていたぜー。
●あと、さすがEURO、主審の質が高い。「審判が試合を決めてしまった」みたいな印象が残った試合がひとつもなかった。エキサイトしないし、主役になろうともしない。うらやましすぎる。それともうひとつ、ゴールキーパーの質もアジアとは段違い。悔しいけれど。
●最後に、代表チームのおもしろさについて。プレイの質だったら、代表チームよりもヨーロッパ・チャンピオンズリーグのほうがはっきりと高い。チャンピオンズリーグで優勝を争うビッグクラブでは、先発からベンチまでスター選手がずらりと並ぶ。代表チームだと、ビッグクラブの選手もいればトルコやメキシコでプレイしている選手もいて、まだら模様になっている。それでも代表チームのほうが見る甲斐があると思えるのは、ずばり、代表はお金の力で補強ができないから。このチーム、左サイドバックが弱いんだよねと思っても、じゃあいい選手を買おう、というわけにはいかない。なんで左サイドバックが弱いかというと、そもそも利き足が左の走力のある選手が国全体に不足しているから、これはジュニア世代から補強しないとなあ……みたいな話まで遡ることになって、いつか補強できるかもしれないし、できないかもしれない。マネーゲームにはマネーゲームのおもしろさがあることを否定しないが、長期育成ゲームには夢がある。

July 13, 2016

案外そうでもない

うどん●カウンター席に座って手打ちうどんを賞味していると、隣の男から独り言が聞こえてきた。「案外そうでもない」。しばらくすると、男はまた言った。「案外そうでもない……(ツルルルッ)案外そうでもない……フフッ」。男は麺をすすりながら、なんども同じ言葉を繰り返す。うーむ、困った人の隣に座ってしまった。面倒なことにならない内に、早く食べてしまわなければ。ズズッ。
●男は執拗に反復する。「うん、案外そうでもない」。いったいなにが案外そうでもないと言うのか。たとえばこういうことか。おいしいお店だという評判を聞きつけてやってきたが、食べてみたら案外そうでもなかったということか。そっと横目で観察するが、男の食べっぷりは特にうまいものを食べているという雰囲気でもなく、かといって味に落胆している様子でもない。でも、なにかが期待と違ったのだろう。ずっと言ってる。「案外そうでもない……(ツルルルッ)うんうん、案外そうでもない」。
●男のほうが先に食べ終わった。男はレジで会計を済ませる間も、まだ「案外そうでもない」とつぶやいている。で、その時、男の耳にイヤホンが入っているのに気がついた。あ、なんだ、この人、イヤホンマイクを使ってずっとハンズフリーで通話をしてたのか。独り言じゃなくて会話だったんだ。スマン、てっきり危ない人かと。
●と、合点してからはたと思ったのだが、延々と「案外そうでもない」を繰り返す会話って、どんな話なのか。「ヤバい」と「マジで」の二語だけで会話する男子高校生を効率性で上回っている。そんな反復で大人の会話が成立するとは到底思えないのだが、案外そうでもない?

July 12, 2016

EURO 2016 決勝 ポルトガル対フランス。来ましたよ、「ポ」が!

ポルトガル●いよいよお祭りも今日でおしまい。EURO2016の決勝はポルトガル対フランスとなった。これ、フランス対ポルトガルじゃなくてポルトガル対フランスなんすよ。実は決勝トーナメントの表を見た時から「あれ?」と思ったのだが、開催国フランスが日程的にいちばん有利なところから少しずれた場所に入っていて、フランスが勝ち進むと決勝戦がアウェイ扱いというか、中二日で迎えることになって、中三日の相手より不利になる。なんでそうなっているのか、雑に想像するとフランスの準々決勝を日曜日に開催したかったのかなとか思うんだけど、ともかくそれで漁夫の利を得たのは準々決勝のポーランドvsポルトガルの「ポ」対決の山。先日の記事で、「ポ」が来ちゃうよーって書いたのは、そういう理由。ま、そうはいっても決勝は休みが少ないほうが勝つこともよくあるのだが。
●試合を軽く振り返っておく。フランスは好調の4-2-3-1を引き続き採用。ポルトガルは今大会4-4-2でクリスチャーノ・ロナウドとナニの2トップを採用している。序盤はフランスが仕掛け、ポルトガルが試合をゆっくり進めようとする展開。フランスは開催国ゆえのテンションの高さに加えて、相手より疲労度が高い分だけ延長戦を避けたいと考えるはず。前半8分、パイエとの接触でクリスチャーノ・ロナウドが倒れ込む。さほどのダメージには見えず、場内は「その手は食わないよ」とブーイングが吹き荒れるが、しばらくするとクリスチャーノ・ロナウドはピッチ外へ。いったんは戻るがやはりプレイ続行は不可能ということで、25分に早々にクアレスマと交代することに。実質、彼は8分しかプレイしていない。ポルトガルは4-1-4-1でナニのワントップに。これでポルトガルは苦しくなったが、一方で、いつもクリスチャーノの顔色をうかがっていたチームが自分たちだけでヤル気になったらどうなるのかを見たかったという気分も大いにあり。
●フランスはムサ・シソコが気を吐いていたが、全般に体が重い。ボールを保持して攻めるが、あと一歩のところで攻め切れない。ポルトガルは10番のジョアン・マリオがいい。7番がいなければ主役は君なんじゃないの。前半44分、スタンドであくびをするフィーゴ(来てたのね)。28度という高めの気温もあってか、特にフランスは走行距離も少なめ。後半に入ると途中出場のコマンらがチャンスを作る。途中からはポルトガルの運動量も落ちてきて、両者交代選手頼みといった感。惜しかったのは後半ロスタイム、ジニャックが至近から打ったシュートがポストに跳ね返った場面。終了直前の劇的ゴールで開催国が優勝を手にするまで、あとボール半個以内まで来た瞬間だった。
●延長に入ってからも攻めるフランスと守るポルトガルの構図は変わらず。ポルトガルは耐えた。レナト・サンチェスに代わって入った肉体派のエデルはたびたび体を張ってファウルをもらってチームを助けていた。この選手、今までポルトガル代表で見るたびにパワーはあっても、足元の技術や敏捷性が今一つで「あー、またロッカールームでクリスチャーノから叱られるのかなあ」と妄想を刺激してくれていたのだが、ついにクリスチャーノを差し置いて主役になる日がやってきた。延長後半4分、エデルが左サイドから真横に中へと入り、かなり遠目からの位置ではあったが思い切って右足を振り抜くと、これがゴール左隅に吸い込まれてついに先制。これが決勝点となった。ポルトガル 1-0 フランス
●自分はクリスチャーノ・ロナウドに「メッシ」コールをするイジワルな人たちの気持ちが少し理解できてしまう汚れた人間なので、こんな大事な試合で早々に負傷交代したエースがどうなるのか、かなり気になっていた。さすが、スーパースター、ベンチに消えたりはしない。途中からまるで監督のようにライン際に立って、選手たちに声をかける。延長に入る前には選手たちをひとりひとり鼓舞する。もう監督になる練習してるの? 試合終了後の表彰式でトロフィーを真ん中でまっさきに掲げるのはやっぱりクリスチャーノ・ロナウドだ。そりゃそうだろう。オレの心のなかの悪魔が、他の選手たちの妄想コメントを吐き出す。「ふー、クリスチャーノがいないとのびのびと自分らしくプレイできるぜ!ハハッ!」。いや、そんなわけないから。たぶん。きっと。
●12年前、ポルトガルは自国開催のEUROで決勝まで進み、最後に退屈なギリシャに屈した。今年、ポルトガルは雪辱を果たして、主要国際大会の初優勝をなしとげ、一方で開催国フランスは準優勝に甘んじた。なかなかドラマティックな大会になったのでは。ポルトガルはクリスチャーノ・ロナウドもナニもクアレスマもペペももうベテラン。サイクルの最後に盛大な花火を打ち上げた。
●ところでキックオフ前からやたらと選手たちの頭髪などに蛾がたかっていた。最初は蝶かなと思ったけど、蛾。これはセキュリティ上の理由から前夜から夜通し照明を点灯してたら、すさまじい大量の蛾がスタジアムを埋め尽くすことになったのだとか。うーん、蝶なら美しかったが、蛾じゃねえ……。

July 9, 2016

EURO 2016 準決勝 ドイツ対フランス。受け継がれる「ウッ!」

ドイツ●この試合で主力選手を欠いたのはドイツ。フンメルスが出場停止、ケディラとマリオ・ゴメスが故障。唯一9番らしい選手ということで代表復帰したマリオ・ゴメスだが、いないと困るのか、いなくても困らないのか……。攻撃陣はミュラーをトップに置き、ドラクスラー、クロース、エジル。ゲッツェはベンチ。十分にタレントがそろっているのでは。一方のフランスだが、前の前の試合から円滑に機能している4-2-3-1をこの日も採用して、好調な流れを大切にすることに。そのためカンテはベンチに。
●前半、開始直後はホームのフランスが攻勢に出た。早くも前半7分に絶好調のグリーズマンが細かいパス交換から突破して決定機。これは惜しくも決まらず。が、その後はドイツのペースが続く。前半13分、右サイドからマイナス方向のクロスにミュラーに決定機。これは足にヒットせず。前半27分あたりからドイツは波状攻撃で、次々とフランスのゴールを脅かす。フランスは中盤でのプレッシャーが甘い。ドイツの先制は時間の問題と思われたが、前半ロスタイムにまさかの展開。シュヴァインシュタイガーがゴール前でハンドを取られてPK、これをグリーズマンが決めてフランスが先制。まあ、たしかにPKには違いないのだが、このゴールが決勝点になってしまうと後味が悪い……。
●後半、スタンドからアイスランド式の「ウッ!(手拍子)」が飛び出す。笑。フランスの観客はアイスランド戦ではこの名物に対してブーイングを浴びせていたのに、どうやら自分たちもマネすることにしたらしい。いやー、これはいいっすね。代表戦はこういうのが楽しい。
●後半もドイツは攻めていたが、フランスに余裕が出た分、前半ほどのクォリティはなかったかも。後半27分、ペナルティエリア内の左サイドでポグバが粘って個人技でムスタフィを交わすと、ふわりとクロスを中へ。ノイアーがかろうじて弾くが、こぼれたところをグリーズマンが足裏キックのような形で押し込んでゴール。2点目。ロスタイムにはドイツが迫力のある捨て身の総攻撃を見せてくれたが、実ることなくフランスがそのまま逃げ切った。
●試合終了後、フランスの選手たちとサポたちがいっしょになってアイスランド式「ウッ!(手拍子)」。完全に自分たちのものにしている。開催国が決勝に進めて大会の盛り上がりという点では申し分のない結果に。とはいえなあ……。クォリティではドイツが上回っていたと思うので、少々残念な気も。日頃ドイツばかりが勝つのにうんざりとは思っていたのだが、実のところ内容的にいちばん見ごたえがあったのはドイツ(結局全試合見てるし)。あんなハンドがきっかけで負けてしまったのは惜しすぎる。ホントにドイツというのは勝っても腹立たしいし、負けても釈然としない厄介なチームだ。もっとエジルのクリエイティブなプレイとかゲッツェの逆襲を見たかったなあ。はっ、これではまるでドイツ・ファンではないの。ドイツ 0-2 フランス

July 8, 2016

EURO 2016 準決勝 ポルトガル対ウェールズ。レアルマドリッドの2大スター対決

ポルトガル●ポルトガルにはクリスチャーノ・ロナウド、ウェールズにはベイルというレアルマドリッドの二大スーパースターがいる。しかしこの日はだれがいるかよりも、だれがいないかのほうが重要だったのかも。ポルトガルにはペペとカルヴァーリョがいない。ウェールズにはラムジーとベン・デイヴィスがいない。主力二人ずつを欠くという点では互いにイーブンだが、不在の影響を圧倒的に感じさせたのはラムジーのほう。ウェールズの攻撃があまりにベイルひとりに頼る形になってしまう。ベイル自身はキレていた。縦へのスピーディな突破、遠目からでも打てる強くて正確なシュート。しかし組み立てから突破からフィニッシュまでひとりでやるわけにはいかない。
●前半は序盤を除けば互いに慎重な「ミス待ちサッカー」で、眠くなるような展開。しかし後半になると一気に試合が動いた。後半5分、ポルトガルは左コーナーキックから、クリスチャーノ・ロナウドがドンピシャで頭に合わせて先制ゴール。マークに付いたウェールズのチェスターの頭の上から余裕で競り勝って完璧なシュート。後半8分、今度はクリスチャーノ・ロナウドがミドルシュート、ゴールに向かうボールに対して、オフサイドポジションにいたレナト・サンチェスはすっと足をあげてスルーし、オンサイドにいたナニはさっと足を出してワンタッチでボールの軌道を変えた。キーパーはどうしようもない。2対0。
●ここからポルトガルはとても堅実に戦った。リスクを冒さず、このまま試合を終わらせる。クリスチャーノ・ロナウドの機嫌がいいと、みんなのびのびとプレイできる(ような気がする)。ウェールズは最後まで攻撃のタレントが一枚不足していた。大会初出場でここまで来たウェールズ。好感度抜群のチームだったが、想定外に勝ち進んだことで選手層の薄さが露呈してしまった感。ポルトガルはよく考えてみると今大会90分以内で勝利したのはこの準決勝が初めてなわけで、彼らは一貫して慎重なサッカーをしているともいえる。これは前回と前々回の覇者スペインが見せた守備的ティキ・タカ(華麗なパス回しでボールを慎重に保持して相手に渡さない)とも通じると思うんだけど、勝てるチームは攻撃的なタレントを有しながらも、その能力の高さを「相手に攻めさせない」ために使う傾向があると思う。ポルトガル 2-0 ウェールズ
●これでポルトガルは決勝進出決定。以前、決勝で涙をのんだのはいつだっけ? あ、2004年か。あれから12年も経ったとは! あのときもクリスチャーノ・ロナウドのチームだったように記憶しているんだが、ホントか?
●この日の主審はスウェーデンのヨナス・エリクソンさん。この人は有名な審判で、もともと投資業界に身を置いていたが、母国のスポーツメディア会社IECの15パーセントの株式を売却して億万長者になり、今はお金のためではなく個人の喜びのために審判業を続けている。審判で稼ぐお金よりも、資産が稼ぐ利息のほうが大きいとか。人呼んで、世界一買収が難しい審判。その話を聞いて反射的に思い出すのは、日韓ワールドカップのイタリアvs韓国戦で大暴れしたエクアドルのモレノ。あのときモレノはトッティをレッドカードで追い出すわ、トンマージのゴールを取り消すわと大変な物議を醸したが、なにがすごいって審判を引退した後、母国で審判員養成学校を設立したというブラックジョークみたいな展開があり、さらにその後、ケネディ国際空港でパンツのなかに6キロものヘロインを隠し持っていて逮捕されたのであった(どんだけ巨大なパンツなのよ)。同じ国際主審でもこれだけ違うのかと感心するほかない。

July 7, 2016

アレクサンドル・ラザレフ&日本フィルの記者懇談会。グラズノフについて

ラザレフの記者懇談会
●6日はラザレフ指揮日本フィルの公開リハーサルと記者懇談会へ(杉並公会堂)。リハーサルは今週末の8日(金)と9日(土)に本番を迎えるグラズノフのバレエ音楽「四季」(本番ではほかにショスタコーヴィチの交響曲第15番)。この日も時計の針を見ながら最後の1秒までみっちりとリハーサル。ハイカロリーなグラズノフの予感。
●で、記者懇談会の話題は全面的にグラズノフについて。というのも、この秋11月から2018年までにかけて、「ラザレフが刻むロシアの魂 SeasonIV グラズノフ」として、グラズノフがシリーズで演奏されるから(交響曲第5番、バレエ「お嬢様女中」、交響曲第4番、交響曲第8番)。これまでの「ロシアの魂」も十分意欲的だったが、グラズノフに焦点を当てるというのはなかなかの冒険だろう。日本ではあまり演奏されない曲が大半なので、期待大。
●ラザレフはすごくたくさん語ってくれたんだけど、いくつかポイントを絞って拾ってみる。まず今週末の「四季」について。「ヴィヴァルディやハイドンの『四季』と異なり、グラズノフの『四季』は冬から始まって、実りの秋で終わる。これがロシア人にとっての四季。チャイコフスキーの『四季』も1月から始まる」
●「グラズノフのなにが卓越しているかといえば、オーケストレーション。彼は音楽的教養に恵まれ、オーケストラを知悉していた。チャイコフスキーはすばらしい音楽を書いたが、オーケストレーションはもうひとつだなと感じることがある。リムスキー=コルサコフにもやはりもうひとつだなと感じることが少しだけある。でもグラズノフにはまったくない。各楽器の特性をよく知ったうえでオーケストレーションを施している」
●あと、いくつかワタシも聞いたことがあるエピソードについて、ラザレフの話として聞けたのも収穫。たとえば、ボロディンの「イーゴリ公」序曲について。グラズノフは驚異的な音楽的記憶力の持ち主だった。ボロディンは25年をかけて「イーゴリ公」を作曲し、できあがったものをピアノで披露した。グラズノフもその場に招かれていたのだが、遅刻してしまい、序曲は部屋の外で聴かなければならなかった。その後、ボロディンが亡くなりリムスキー=コルサコフが「イーゴリ公」の手稿をなんとかしてまとめようとしたが、序曲の資料はなにも残っていなかった。しかしグラズノフはずっと前に一度部屋の外から聴いただけの序曲を記憶力で書き起こしてみせた。という話。
●それからこれはとても有名だけど、グラズノフが指揮者としてラフマニノフの交響曲第1番を初演したときに、悲惨な演奏で大失敗に終わり、ショックを受けたラフマニノフがその後何年も作曲できなくなり、ダーリ博士の助けでピアノ協奏曲第2番で復活を遂げたというエピソード。ラザレフもグラズノフが酔っていたということを示唆していた。このあたりは日本でよく書かれる通説通り。ほかに、グラズノフがラフマニノフの交響曲第1番をあまり好まなかったことと、悲惨な初演に終わった後もグラズノフとラフマニノフの間は友情で結ばれ、後にアメリカでピアニストとして成功したラフマニノフが、病に苦しむグラズノフの治療費を支援していたことなども。
●あとはグラズノフがヘルシンキでシベリウスと酒を飲んだ話。あるレストランでシベリウスとその縁者といっしょに一日中ずっと飲んだ後で、グラズノフは「そろそろペテルブルグに帰らなければ。交響曲第6番の初演がある」と言って、その場を去った。交響曲の初演だからおそらくリハーサルが3日くらいあって本番があったはず。それで4日間ほど経ってから、グラズノフはヘルシンキに戻って再度そのレストランを訪れた。すると、4日前と同じ席にシベリウスたちが座っていた。そして、グラズノフに向かって言った。「ずいぶん長いトイレだったな!」。これは本当の話です、ジョークではありません(←ラザレフ談)。

July 6, 2016

アレクサンダー・ロマノフスキー ピアノ・リサイタル

●5日は紀尾井ホールでアレクサンダー・ロマノフスキーのピアノ・リサイタル。前半がシューマンで「アラベスク」「トッカータ」「謝肉祭」の3曲、後半がムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」。この組み合わせは少しおもしろいかも。タコ糸が切れて飛んで行ったような制御レスな人生を送ったふたりの作曲家を、若くしてすでに風格の漂う泰然としたピアニストが弾く図。シューマンも見事なんだけど、おもしろかったのは断然ムソルグスキー。冒頭プロムナードから「キエフの大門」に至るまでの起伏に富んだ大きなドラマを一気呵成に聴かせてしまう。色彩感が豊かで、ほとんど華麗なくらい。スリリングだけど、エレガント。もっとも客席の反応は前半のほうがよかったかも。短めのプログラムだったが、アンコールは5曲。ショパンの「革命」と遺作のノクターン、リスト、スクリャービン、バッハの「バディネリ」(編曲だれだっけ)。
ムソルグスキー●それにしても「展覧会の絵」って、本当に名曲だと思う。生前になぜ成功を収めなかったんだろう。土の香りがするようで都会的なようで、リリカルでいてコミカルで、と二律背反的な要素が絶妙に混ぜ合わさっている。こんなに原曲が魅力的なのに、よってたかってみんながオーケストラ用に編曲したくなるという現象もおもしろい。これだけの曲が書けるなら、ムソルグスキーはもっとピアノ曲を書いてくれればよかったのに。いや、ほかにも性格的小品みたいなのはいくつもあることはあるんだけど……。士官学校を出たムソルグスキーに出会ったボロディンは彼のことを「優雅にピアノを弾くディレッタント」と評したそうだけど、そこからどれだけ荒ぶるとああなるのやら。

July 5, 2016

EURO 2016 準々決勝 フランス対アイスランド。所沢代表の冒険・終章

フランス●今大会、旋風を巻き起こしているアイルランド代表。なにせ人口33万人の小国。日本でいえば所沢市くらいで、前の試合は所沢代表がイングランド代表に勝ったようなものと書いたが、WOWOWの中継を見てたら柄沢アナまで所沢と人口が同じって話をしてて、もはやアイスランド代表が所沢代表にしか見えない。グンナルソンとか西武池袋線に乗ってそう(乗ってません)。
●ていうか、アイスランド代表、どうして監督が二人いるんでしょ。謎のダブル監督制。そもそも代表監督は何人まで許されるのか。代表監督10人体制とかも可能なのか。謎が謎を呼ぶ。
●さて、対フランス戦。なにしろ開催国なので、いくらなんでも「プロサッカー選手が100人しかいない」というアイスランドに負けるわけにはいかない。デシャン監督は前の試合の後半でうまく機能した4-2-3-1を採用して、トップにジルー、その下にグリーズマン、左にパイエ、右にシソコを配置、カンテは不在だが中盤にはマトゥイディとポグバ。前半12分、縦パスにラインの裏に抜け出たジルーがいきなり先制ゴール。さらに20分にはコーナーキックからポグバが頭で合わせて追加点。あっという間にアイスランドの魔法が解けてしまった。
●アイスランド名物のロングスローがチャンスを作る場面もあったが、チーム全体に出足の鋭さが欠ける。サンドゥニの雨で濡れたピッチのせいもあるかもしれないし、フィジカル・コンディションの低下もあるのかもしれない。サポーターはこれも名物となった「ウッ!(手拍子)」で選手たちを鼓舞したが、フランスのスピーディでダイナミックなサッカーについていけず、すっかり柔らかディフェンスに。前半43分、さらに45分とフランスにゴールが生まれ、前半だけで4-0のワンサイドゲームになってしまった。
●アイスランドも意地の2ゴールを決めて、終わってみれば5対2。いずれにせよアイスランドは立派の一語。試合終了後、スタンドのサポーターは選手たちとともに「ウッ!(手拍子)」。これでベスト4に残ったのはポルトガル、ウェールズ、ドイツ、フランス。なかなかいい感じの顔ぶれになったのでは。フランスは次戦、準決勝でドイツと戦う。地力で勝るのはドイツだとは思うが、フランスは自国開催のEUROとワールドカップで優勝を収めてきたという実績がある。ハイテンションのゲームを期待。フランス 5-2 アイスランド

July 4, 2016

EURO 2016 準々決勝 ドイツ対イタリア。悲しい無敗伝説

ドイツ●強豪同士の対戦とあって「事実上の決勝戦」などと呼ぶ声もあったようだが、過去にギリシャやデンマークが優勝しているEUROにそんなものはない。ドイツが最強チームであろうことはみんな大会前から感じている。しかしEUROとかワールドカップの楽しみのひとつは「ドイツがどうやって負けるか」を見ることにあるわけで(ドイツ人と一部フットボール的マイノリティを除く)、ここで期待されるのはスペインをボッコボコにしたイタリアが、同じようにドイツを圧倒する痛快なシーンが見られるのかどうか。なにしろイタリアはドイツに強い(ということになっている)。EUROとW杯の二大大会についていえば、イタリアの4勝4分無敗。え、ホントに?
●ドイツのレーヴ監督は対イタリア用フォーメーションとして3バックを採用。フンメルス、ボアテング、ヘーヴェデスの3枚のセンターバックに、ヘクトルとキミッヒの左右ウイングバックでイタリアの攻撃を抑えようという一手(ドラクスラーはベンチに。ゲッツェはすっかり出番なしで今日もマリオ・ゴメス先発)。イタリアが先のスペイン戦で2トップに加えて両サイドが高い位置を取っていたことに対応して、守りの局面で数的優位を保とうということのよう。3月にイタリアと親善試合を行った際も3バックで快勝したそうなので、突然の奇手というわけでもない。
●しかし試合開始から一貫して攻めていたのはドイツ。序盤にケディラが負傷退場してシュヴァインシュタイガーと交代する不運があったが、それでもペースは変わらず。イタリアはスペイン戦とはうってかわって堅守で耐える。イタリアの選手たちは前半から相当走らされた。スゴかったのは後半9分、ドイツのミュラーの決定機に対して、フロレンツィがゴール前で体を投げ出して、そのまま空中で足でボールを弾いたという超絶アクロバティック・クリア。軽く伝説。しかし後半20分、ドイツは左サイドを攻略して、マリオ・ゴメスから中央にボールを入れて、エジルが決めて先制ゴール。内容的にはこれで勝負が決着していてもよかった試合だと思う。
●ところが後半32分、ゴール前の競り合いでドイツのボアテングがハンドのファウルでPKを取られてしまう。これは相手をつかんでいないことをアピールするために両手をバンザイしていたところ、頭に当たったボールが手にも触れてしまったもので、ドイツには少し気の毒。ボヌッチがPKを決めて1対1の同点に。
●試合は延長戦に入り、ほとんどの時間帯でドイツが攻めイタリアが守り、両者疲れ切ってPK戦へ。先攻はイタリア。なんと、最初の5人の内、どちらも3人が失敗してしまうという入らないPK戦になってしまった。ノイアーとブッフォン、両キーパーがそれだけスゴいのか、それともプレッシャーが厳しいのか。イタリアは終了直前にザザを入れて、PK戦の二人目を蹴らせたのに失敗する始末。6人目以降はともにPKをあまり蹴りたくない選手たちが登場するはずだが、なぜか6人目、7人目、8人目とともに成功。9人目にイタリアはダルミアンが外し、ドイツはヘクターが決めた。まあ、文句は言えない。どちらが勝者にふさわしかったかといえば、ドイツなので。PK戦でチームで9番目に蹴る選手の考えることと言ったら「オレまで順番が回ってきませんように……」しかないと思うのだが、いざ回ってきたときにはどんな気分なのか。
●公式記録的にはPK戦は引き分け扱い(PK戦はくじ引きだから)。これでEUROとワールドカップにおけるイタリアの対ドイツ戦は4勝5分無敗に。イタリアは無敗記録をひとつ伸ばして、大会から去った。ドイツ 1 (6PK5) 1 イタリア

July 3, 2016

EURO 2016 準々決勝 ウェールズ対ベルギー。タレント軍団の行方

ウェールズ●今大会随一のタレント軍団といっていいのがベルギー代表。アザール、デ・ブルイネ、クルトワを筆頭に、ナインゴラン、ルカク、カラスコ、メルテンス……。フェライニは主にベンチ。個の能力でいえばドイツと並ぶ二強か。特にアザールはシーズン中の不調がウソのようにキレッキレ。しかし、惜しむらくは組織プレイの弱さ。グループステージからヴィルモッツ監督の指導力を疑問視する声もちらほら聞こえてくる。中心選手はビッグクラブでプレイしているのに監督の(選手としては一流だったが)指導歴は乏しいので、ただでさえそう言われがち。なお、ベルギーは左サイドバックとセンターバック一枚を怪我と出場停止で欠き、代わって左サイドバックにジョルダン・ルカク(トップのルカクの弟)、センターバック左にデナイエルを起用。
●で、この試合、立ち上がりから両者オープンに攻めあう展開に。前半7分、ベルギーが怒涛の波状攻撃でゴール前で3本連続シュートを打ち込むというシーンがあったが、これがすべて阻まれてしまう。そして13分、守備ラインが深くなっているウェールズに対して、ナインゴランがすさまじく強烈なミドルシュートをゴールに突き刺してベルギーが先制。この人の前を開けてはいけない。
●ウェールズは前半30分、右コーナーキックからアシュリー・ウィリアムズが頭できれいに合わせて同点ゴール。後半からベルギーはフェライニを投入して試合の主導権を握ろうとするが、後半10分ウェールズはラムジーのクロスから中央でゴールを背にしたロブソン・カヌにボールが渡る。これを一瞬のターンでディフェンスを交わし、落ち着いてシュートを決めて逆転。ベルギーは反撃に出るが、攻撃がもう一つ散発的で個人頼み。逆に後半41分、ウェールズは右サイドからのクロスに中で走りこんだポークスが合わせて3点目をゲット、勝負がついた。ディフェンス・ラインの左半分でメンバーを代えざるを得なかったベルギーは不運といえば不運だが、なすがままにやられた感も。
●これでウェールズはベスト4進出。次はポルトガルと決勝戦進出を賭けて戦う。ウェールズのベイルとポルトガルのクリスチャーノ・ロナウド。ともにレアル・マドリッド所属のスーパースター対決になるが、両チームの印象はずいぶん異なる。ウェールズではだれもベイルに遠慮などしていないし、彼を中心にチームが一体となっている(少なくともそう見える)。ポルトガルはみんなクリスチャーノ・ロナウドの顔色をうかがってプレイしている(ように見える)。なかなか興味深い対戦が実現したのでは。またクリスチャーノ・ロナウドに「メッシ・コール」をする者がいるだろうか? ウェールズ 3-1 ベルギー

July 2, 2016

EURO 2016 準々決勝 ポーランド対ポルトガル。運命の「ポ」対決

ポルトガル●さて、二日間の休息を経て準々決勝に突入したEURO 2016。ここからは一日一試合ペース。まず第一戦はポーランド対ポルトガルの「ポ」対決。前に書いたように、この勝者が日程的に有利なので優勝候補とにらんでいたのだが……。
●中盤の形は若干違うが4-4-2対決となったこの試合、前半2分にいきなり試合が動く。左サイド奥まで侵入したグロシツキが中央にクロスを入れると、中でレヴァンドフスキが足で合わせてポーランドが先制! 今大会不発のエースが待望のゴール。これでおもしろくなった。一方、ポルトガルは18歳のレナト・サンチェスが躍動。中に切れ込んで思い切りシュートを打つと、相手ディフェンスにあたってコースが変化して、ゴールに吸い込まれる。同点!
●が、おもしろかったのはそこまでだ。そこから次第に両者積極性を欠き、「ミス待ちサッカー」に徹するようになる。虎視眈々とカウンターを狙ってワナを仕掛けるが、どっちもワナを仕掛ける側でちっとも獲物がやってこない。膠着状態が続く。これを打開できるのはクリスチャーノ・ロナウドのスーパープレイ、と言いたいところだが、彼にボールが集まりすぎるがゆえにポルトガルの攻撃が単調になっている感も。あらゆる好機をクリスチャーノ・ロナウドのシュートで終わらせなければならないという呪縛が、ポルトガル代表から創造性を奪っている(同じことがイブラヒモヴィッチとスウェーデン代表についてもいえると思う)。
●後半32分あたりかな、退屈した(?)スタンドから、クリスチャーノ・ロナウドに「メッシ、メッシ」のメッシ・コールが。大笑い。失礼すぎるけど、これはすごくわかる。クリスチャーノ・ロナウドにメッシ・コールはあっても、その逆は決してない。世界最高のプレーヤーでなければならないという呪いを己にかけた男。
●90分で決着つかず。実のところポルトガルは今大会、これで全試合が90分内では引き分けである。そのまま延長戦に入っても、「PK戦でいいや」のムードは濃くなるばかり。延長後半4分にはピッチ上に客が乱入。しまらない雰囲気のなかでPK戦に突入。ポルトガルは一番手のクリスチャーノ・ロナウドから五番手のクアレスマまで、全員が決めた。ポーランドは4人目のブワシュチコフスキが止められた。これでポルトガルが勝ち進んだわけだが、日程の有利さは延長戦続きによる疲弊と相殺されてしまった感もある。依然、有力な優勝候補だとは思っているものの、このままでは魅力的なチームとはいいがたい。
●ポーランドがコイントスで勝ちながらPK戦で後攻を選んだことが解せない。過去の統計によるとPK戦の勝率は先攻が6に対して後攻が4(十分な母数による調査結果でそうなっている)。圧倒的に先攻が有利。にもかかわらず、後攻を選ぶ理由がなにかあったのだろうか。ポーランド 1 (3PK5) 1ポルトガル

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