2022年11月アーカイブ

November 30, 2022

樫本大進、赤坂智子、ユリアン・シュテッケル、藤田真央の室内楽

●今朝からワールドカップはグループリーグの第3戦に突入。この第3戦が大会でいちばんおもしろいと思うんすよね。でも一日に4試合ずつやるので、とても全部は見られない。見たい、でも見られない。仕事もある、コンサートもある。今は夏じゃない。だからオイルマネーに屈してワールドカップを秋開催に決めたのはだれなんだ!(←毎日言ってる)。
●というわけで、28日はサントリーホールで「スーパーソリスト達による秋の特別コンサートVol.1 室内楽の夕べ」。なんと、樫本大進のヴァイオリン、赤坂智子のヴィオラ、ユリアン・シュテッケルのチェロ、藤田真央のピアノというゴージャスなメンバーによる室内楽。全席完売、客席は女性が大半。これは真央効果と大進効果の相乗作用なのか? プログラムはモーツァルトのピアノ四重奏曲第1番ト短調、メンデルスゾーンのピアノ三重奏曲第1番ニ短調、ブラームスのピアノ四重奏曲第1番ト短調。オール短調、オール「第1番」プロ。前半のモーツァルトとメンデルスゾーンは親密な音の対話で、お互いのバランスが保たれた調和のとれた響き。特にモーツァルトでの藤田真央のピアノが柔らかくしなやか。遊び心もある。後半のブラームスは一転してシンフォニックな音楽に。シェーンベルクがこの曲をオーケストレーションしたくなるのも納得の迫力。やや長めのプログラムだったのでアンコールはなし。藤田真央と樫本大進が並んだときに漂う息子とお父さん感が麗しい。
●それで、ワールドカップの話題も少しフォローしておくと、ブラジル対スイス戦があった。スイスは従来よりあまりブラジルを苦にしておらず、この日も拮抗した試合内容になった。ブラジルらしい華やかな攻撃がほとんど見られず、引分けかと思いきや、後半38分にカゼミーロがゴールを決めて、これが決勝点。結果的に負けたとはいえ、スイスは相手を過度にリスペクトしていない。「ランクで決まるなら試合はいらない」は岡田武史元監督の名言だが、日本のいるグループEだって、次戦でニッポンとコスタリカが勝利すればそろって勝ち抜けることになり、スペインとドイツは敗退が決まるのだ。今大会、第2戦が終わった段階で「2強2弱」に分かれたグループはなく、どこが勝ち抜けるかわからない混戦になっている。
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●宣伝を。UCカードのゴールド会員向け会員誌「てんとう虫」12月号の特集「今を聴くクラシック」に寄稿。注目の日本人若手奏者たちの紹介記事と反田恭平さんのインタビューを担当。同誌は同じ内容でセゾンカードのゴールド会員向け会員誌「express」としても発行されているので、そちらでも読むことができる。

November 29, 2022

アンドリス・ネルソンス指揮サイトウ・キネン・オーケストラ ~ セイジ・オザワ 松本フェスティバル30周年記念特別公演

セイジ・オザワ 松本フェスティバル30周年記念特別公演
●うーむ、やっぱり11月にワールドカップは無理があるのでは(←まだ言ってる)。コンサートのハイシーズンとすっかり重なっており、そもそもカタールで開催したことが「無理が通れば道理引っ込む」なのだが、その話はともかく、先週末は長野まで行ってきた。セイジ・オザワ松本フェスティバル30周年記念特別公演として、アンドリス・ネルソンス指揮サイトウ・キネン・オーケストラの公演が松本と長野で開かれており、日帰りで行ける長野のホクト文化ホールに行くことに。もともと行く予定ではなかったのだが、直前に急遽決めた。
●ホクト文化ホールは長野駅から徒歩で行けるのがいい。長野駅に来るのは3年前に長野UスタジアムでAC長野パルセイロの試合を観戦して以来。駅も美しいし、街も美しい。ホールの内部が松本のキッセイ文化ホールとよく似ていて、少々奇妙な既視感を抱くが、昭和の多目的ホールは全国どこでも似たようなものか。しかし音響は案外と良好で、不満を感じず。そして、ホクトといえばキノコの会社という認識であり、日頃からエリンギやブナシメジのパッケージでおなじみ感あり。ホクトのキノコ、おいしい。
●で、プログラムはマーラーの交響曲第9番、一曲のみ。ネルソンスは先日のボストン交響楽団来日公演からそのまま日本に残っていたのだろうか。オーケストラのメンバーは強力だ。もちろんいつもすごいメンバーなのだが、ホルンにバボラーク、トランペットにタルケヴィがいる。超強力2トップ。バボラークをオーケストラの中で聴くのはいつ以来だろうか。管楽器の名人芸と濃密な弦楽器による、かつて聴いたことのないハイクオリティのマーラー9を堪能。特に印象的だったのだが第2楽章。鋭く突き刺すようなアクセントを伴ったアグレッシブな音楽で、これが素朴なレントラー舞曲ではなくショスタコーヴィチ的なアイロニーやグロテスクさを帯びた音楽であることを実感する。第3楽章は輝かしくスリリング、第4楽章は情感豊か。演奏中は客席がやや落ち着かない雰囲気に思えたのだが、曲の終わりは完全な沈黙が長く続いて、しっかりと余韻を味わうことができた。

長野県立美術館
●せっかく長野まで来たので、以前から気になっていた長野県立美術館にも立ち寄った。善光寺に隣接する城山公園内に位置し、2021年にリニューアルオープン。「自然と一体にある美術館」のキャッチフレーズ通り、広々として開放的な雰囲気の快適空間。遠くに山が見えるのも羨望しかなく、都内では決してまねのできない心地よさ。時間の都合もあり企画展はあきらめ、コレクション展と東山魁夷館を鑑賞。見ごたえ十分。
長野県立美術館
●撮影は不可だったのだが、唯一OKだったのが「アートラボ2022 第Ⅲ期 荒木優光 ダンスしないか?」。音も含めた作品なのだが、展示室には古いレコードやオーディオ装置、家具などが配置されていて、ノスタルジーを刺激する。リアルに懐かしい光景で、モダンな美術館の一室にこれがあると異空間にワープした感が半端ではない。
荒木優光 ダンスしないか?

●この一年で長野、松本、諏訪となんども長野県内に足を運んだが、文化と自然の両面に恵まれた土地だなと感じる。なにしろAC長野パルセイロと松本山雅のそれぞれに最高のスタジアムがあるのがすごい。冬は寒そうだけど。
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●宣伝を。「東京・春・音楽祭」の短期集中連載コラム、「ヴヴヴのヴェルディ」第2回「熾烈!ヴェルディvsヴェルディ」を公開中。どうぞ。

November 27, 2022

ニッポンvsコスタリカ さらば伝説……? ワールドカップ2022 グループE

ニッポン!●あーあ、サッカーって、こういうスポーツだったよなあ……(嘆息)。試合前はなんとなく楽観的になっていた、すなわち、ドイツ戦の逆転勝利でテンションMAXのニッポンがコスタリカを一蹴する。でも、案外、熱い試合の後は0対0のドローなんてこともあるかも。なんて思っていたら、0対1で負けてしまった!コスタリカがたった一本打った枠内シュート、ほぼ唯一のチャンスでゴールが決まり、試合が決まる。サッカーでこういう試合は無数にあるものだが、ここでそれが来るのか。
●まず先発だが、森保監督はメンバー5人を入れ替えてきた。一般的にいえば、かなり大胆なターンオーバーだが、ワタシはほぼ全員入れ替えるんじゃないかと予想していたので、むしろおとなしいと思ったほど。ただ、トップの上田、左の相馬はかなり意外な起用。ここで南野が先発しないのはよほど本調子に遠いのか。浅野、三苫も先発確定かと思いきやベンチ。GK:権田-DF:山根(→三笘)、板倉、吉田、長友(→伊藤洋輝)-MF:遠藤、守田-堂安(→伊東)、鎌田、相馬(→南野)-FW:上田(→浅野)。酒井と冨安は負傷でベンチ外。
●前半の冒頭だけは勢いよくニッポンが攻め込み、期待を抱かせたものの、その後は見せ場の少ない展開に。お互いに慎重で、前線からのプレスも弱い。前半、ニッポンにシュートらしいシュートはなかったのでは。コスタリカは5バック。前半途中からニッポンは3バックに変更。ドイツ戦ではハマった策だが、これはあまり功を奏したようには見えず。後ろでは容易にボールを回せるのだが、前に収まりどころがなく、上田のポストがまるで機能しない。
●後半の頭から、上田を浅野に、長友を伊藤に交代。その後、山根を三笘に代えて攻撃力を高めるのだが、なかなか三笘が高い位置で前を向いてボールをもらえない。前にスペースが欲しい三笘と、チャンスがあれば前に出たい左センターバック伊藤の組合せがよろしくない。それでも終盤に三笘が2度、ドリブルで相手を抜き去ってペナルティエリア奥深くまで侵入する得意の形を作った。あれを2回やって2回ともコピーのように成功してしまうというのもすごい話だが、どちらも中で決められなかったのにはがっかり。後半、ニッポンのチャンスはかなり増えたが、途中からニッポンの守備が少し軽くなった時間帯があり、そこでコスタリカは唯一のチャンスを決めてしまった。あと、ニッポンはファウルで止める場面がやたらと多いのは気になった。
●サッカーの難しいところは、終わった後でなにを言っても結果論でしかないということ。ドイツ戦で森保監督が後半から3バックに変更し、守りが弱くなるのを承知で次々と攻撃の選手を入れたのは名采配と称えられたが、同じことを10回やって5回勝てるかといえば、たぶん勝てない。浅野のあのトラップとシュートはまれにしか発動しないし、ドイツはあんなにシュートを外さない。コスタリカ戦の森保采配は意味不明に思えるが、同じことを10回やって5回勝てるかと問われると、まあ勝てるんじゃないかという気はする。コスタリカの勝利への道筋はすごく狭かったのはたしか。イランのケイロス監督は初戦で臆病な采配をしてイングランド相手に大敗して叩かれたが、第2戦でウェールズ相手に完勝すると胴上げされてヒーローになっていた。昨日の愚か者は今日の英雄。そう思ったものだが、森保監督はその逆でこれからずいぶん批判されるのだろう。足りなかったものを指摘するのは容易だし、ミスももちろんたくさんあった。サッカーはミスのスポーツ。両チームがミスをしなければすべての試合は0対0で終わると言ったのは誰だったか。
●アジアの健闘ぶりが光っているように見えた大会序盤だが、ニッポンはこれでだいぶ決勝トーナメント進出が厳しくなった。少なくともスペイン戦で勝点が必要だと思うが、細かい条件はこの後のスペイン対ドイツ戦が終わってから見ればいいのか。ここまでのアジア勢を見てみると、サウジはアルゼンチンに勝ち、ポーランドに敗れた。オーストラリアはフランスに敗れ、チュニジアに勝った。イランはイングランドに敗れ、ウェールズに勝った。韓国はウルグアイに引分け。カタールは連敗。まあ、普段の大会でアジア勢が勝つ試合はとても少ないので、ここまで大健闘しているのはたしか。問題は決勝トーナメントに何チームが進出できるか。

ニッポン 0-1 コスタリカ
娯楽度 ★★
伝説度 ★★

November 25, 2022

レナード・スラットキン指揮NHK交響楽団のヴォーン・ウィリアムズ

スラットキン NHK交響楽団
●今回のワールドカップ、疑惑のカタール開催ということで欧州を中心に批判が渦巻いているが、ファンにとって大きいのはシーズンオフの夏ではなく、秋の開催になってしまったこと。サッカーのシーズンは音楽界のシーズンとも重なっているわけで、秋のハイシーズン中にワールドカップを観戦することになってしまった。そんなわけで、24日はサントリーホールでレナード・スラットキン指揮NHK交響楽団。貴重なヴォーン・ウィリアムズ生誕150年記念プログラム、ワールドカップ中とはいえ聴かないわけにはいかない。
●プログラムは前半にヴォーン・ウィリアムズの「富める人とラザロ」の5つのヴァリアント、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲(レイ・チェン)、後半にヴォーン・ウィリアムズの交響曲第5番。スラットキンは指揮棒を持たず。前半でソリストを務めたレイ・チェンは台湾生まれのオーストラリア育ち。明確なパーソナリティを持った奏者で、その特徴を一言でいえば「ばえる」。音楽性から立ち居振る舞いまで、一貫してスターのオーラに包まれている。ステージマナーひとつとっても華がある。音色は輝かしく、潤いがあり、しかも音が大きいのが強み。使用楽器は1714年製ストラディヴァリウス「ドルフィン」。つまり以前は諏訪内晶子さんが使っていたものだと思うが、ぜんぜん印象が違う。音楽はエモーショナル。喜びは超喜びに、悲しみは超悲しみに拡大されて表現される。なので、最初は大仰さについていけないと思ったのだが、だんだん聴いているうちに癖になってくる。「素材の味」では伝わらない、しっかりした味付けのパンチのきいた世界の楽しさというか。ナイスガイぶりも伝わってきて、ファンが多いのも当然だと納得。アンコールを大きなはっきりした声で紹介してくれて、自らの編曲によるオーストラリア民謡「ワルチング・マチルダ」。鮮やかな技巧。
●ヴォーン・ウィリアムズの交響曲第5番は圧巻。これまでに聴いたスラットキンのベストパフォーマンスかも。オーケストラから深く豊かなサウンドを引き出す。N響、とくに弦楽器の緻密でニュアンスに富んだ響きが味わい深い。最近、ときどきN響の弦が神がかっていると感じる。ブロムシュテットが指揮したときとかもそうなんだけど。
●木曜日のN響はB定期なので、会場はサントリーホール。そんなことは百も承知なのに、なぜかNHKホールだと思いこんでいて、原宿に行ってしまった。駅を出て代々木公園の入口まで来たあたりで「あっ!」と気づいて、そこから前田大然並みの高速ダッシュで駅に引き返したら、なんとか開演に間に合った。やはりドイツ戦の逆転勝利で浮ついているのではないか。こんなところにもカタールで秋開催にした余波が!(違います)

November 24, 2022

ドイツ対ニッポン ドーハの歓喜、そして伝説へ……? ワールドカップ2022 グループE

ニッポン!Goooooooooooal!!!!!!! GolGolGolGolGolGol Gooooooooooooooaaaal!!!!! で、伝説だ。堂安ゴル。浅野ゴル。特に逆転の浅野ゴル。本物の伝説のゴールだ。これは2002年10月11日に世田谷区の砧公園の草サッカーでワタシが決めた伝説の俺ゴール以来の伝説のゴール。伝説を連呼してゲシュタルト崩壊を起こすほどの伝説すぎる伝説。
●まさかニッポンがドイツ代表相手にワールドカップで逆転勝利を収めようとは。しかも、ここまでさんざん批判されてきた森保監督だが、この試合は森保采配で勝ったようなもの。脱帽するしか。先発は怪我人の影響を除けば想定通り。GK:権田-DF:酒井(→南野)、板倉、吉田、長友(→三笘)-MF:遠藤、田中碧(→堂安)-伊東、鎌田、久保(→冨安)-FW:前田大然(→浅野)。前半は完全にドイツのペース。ほとんどの時間帯でドイツがボールを支配し、個の力の差を痛感。ニッポンは試合の入り方は悪くなく、序盤は前田と鎌田でプレスをかけながら組織的に粘り強く守り、ボールを奪ったらカウンターという形が見えていた。前半8分に右サイドの伊東から鋭いクロスが入り、なかで前田が決めるという形があったが、これはオフサイドでノーゴール。ただ、その後はたまにニッポンがボールを奪っても、攻撃につなげられず、すぐにまた守って耐えるという展開に。守備にエネルギーを使って消耗するばかり。ドイツの攻撃は効率的で力強く、パスを回しながら空いたスペースにどんどん選手が走り込む。なんどもピンチを迎え、前半33分、権田のファウルからPKをとられてギュンドアンが先制ゴール。その後もドイツになんどもゴールを脅かされ、このまま失点を重ねて大敗してもおかしくないという流れ。前半を1失点で凌げたのは幸運だったと思う。
●後半頭から、森保監督は久保に代えて冨安を投入して、布陣を3バックに変更。久保は前半から相手のフィジカルに屈する場面が目立ったので交代はあるかと思ったが、コンディション不良だった冨安を入れるとは。この布陣の変更が効いた。3バックとはいえ、センターバック3枚にウィングバックに長友、酒井が残るという5バック調になった。前半、ニッポンの守備時にドイツがひとり余る形が多かったので、その穴をふさぐ効果もあったが、それ以上に後ろに一枚増えたことで、後方からボールをつないでビルドアップができるようになった。もちろん前の選手はひとり減るので、そのまま5バック調で進めるはずはなく、森保監督はここから徐々に攻撃の選手を増やしていく。後半の最初の10分くらいを守った段階で長友を下げてドリブラーの三笘を投入、同時に前線の前田と浅野を交代。ただ三笘が前を向くチャンスがなく、守備に追われがちだったが、後半26分に田中碧を下げて堂安を入れたことで一気に攻撃的な布陣になった。後半30分、ようやく前を向いた三笘が左サイドから切れ込むと思わせてスルーパス、これを南野が中央に折り返す。キーパーのノイアーがこれを弾いたところに走り込んだ堂安が押し込んで同点ゴール。
●続く後半38分、自陣でのフリーキックから板倉がロングボールを前線に入れると、阿吽の呼吸で飛び出た浅野が神技的なトラップから直線的に突進、ディフェンスも付いていたが、そのままノイアーのニアサイド、肩の上をぶち抜くゴールで逆転。これまで代表では浅野はトラップやシュートの技術的な精度で見劣りすると思っていたのだが、いちばん重要な場面でスーパープレイ。最高のジャガーポーズを見せてくれた。ドイツは終盤はキーパーのノイアーも前線に上がって捨て身の攻撃。6分のアディショナルタイムがあったが、ニッポンは攻撃の選手だらけの布陣でなんとか守り切って勝利。前半と後半でまったく違ったゲームになった。前半、ニッポンは相手に押されてディフェンスラインが下がりがちで、ラインが間延びしているなと感じていたが、後半は逆にドイツがコンパクトさを欠き、中盤で日本に自由を与えてしまった。前半の優位な内容が影響したのか、守備があまりに淡白すぎた。
●先制された後、集中的に2ゴールを奪って逆転するという流れはアルゼンチン対サウジアラビアの番狂わせとそっくり(内容はぜんぜん違うと思うけど)。これでいくらか「アジアで開催される大会」らしくはなっただろうか。もっとも、ニッポンは勝点3を得ただけで、まだなにも決まってはいない。次のコスタリカ戦では、これまでの親善試合同様、きっと森保監督はドイツ戦の控え組中心のメンバーを出してくるのだろう。キーパーすら変えるのでは。

ドイツ 1-2 ニッポン
娯楽度 ★★★★★
伝説度 ★★★★★

November 23, 2022

アルゼンチン対サウジアラビア よもやの伝説が誕生 ワールドカップ2022 グループC

アルゼンチン●せっかくカタール開催なのに、カタール、イランと中東勢が連敗して迎えたアルゼンチン対サウジアラビア。だれもが中東勢3連敗(=アジア3連敗)を予想していたと思う。この試合、テレビ中継がなく、abema.tvでのネット中継のみ。正直なところ、ワタシも期待しておらず、前半途中から試合を観た。アルゼンチンがメッシのPKで1点を先制している。あー、これはまたアジアがボカスカとやられるパターンなのか……と思ったら、はっ。なんだなんだ、サウジアラビア、すごく高いディフェンスラインを敷いている。前日のイランとはまったく違って、引いて守るつもりなどまったくなく、かなりリスクをとった戦い方をしているではないの。もうこれは先日のイランが反面教師になったのでは。ベタ引きして6点取られるくらいなら、真正面からぶつかって3点取られるほうがまだ可能性がある。事実、サウジアラビアはラインの裏を何度も突かれるが、ルナール監督にとってはこれは取らなきゃいけないリスク。
●そんなルナール監督の戦術が実ったのが後半3分。カウンターアタックからアルシェハリが細かなボールタッチでペナルティエリアに侵入、ファーに流し込んだシュートがゴール右隅に決まって同点ゴール。もうここしかないというコース。すると、場内の雰囲気が一変、スタジアム全体が揺れるほどの太い声でサウジアラビアへの声援が鳴り響く。サウジの選手たちは見違えるほど動きがよくなり、客席の熱狂に煽られてアルゼンチンゴールを目指す。それまでの試合がウソのようにアルゼンチンは守勢に回り、相手のプレスにミスをする場面が増える。後半8分、こぼれ球を拾ったアルドサリがペナルティエリア内に切れ込み、右足を振り抜くとボールはキーパーの手を弾いてネットを揺らす。まさかの逆転。場内は異様な雰囲気になり、さらにサウジの攻勢が続いたほど。ここですぐに守りに回らなかったのがよかった。
●後半30分頃からサウジははっきりと守りの姿勢に入る。もともとサウジは堅守速攻を伝統とするチーム。こちらがリードしていて、なおかつ相手に焦りが生じる時間帯なら、守りに入る価値があるというのがルナール監督の判断なのだろう。サウジはイエローカードもたくさんくらい、選手の負傷や倒れ込みなど、あらゆる手段を使って逃げ切りを図る。本来ならここからでも逆転しかねないのがアルゼンチンだが、コンディションもよくなく、集中力と判断力も低下してしまい、そのままタイムアップ。またしてもアディショナルタイムが長く、14分くらいあっただろうか。今大会から厳密にアディショナルタイムを取っているようだが、これと中東のスタイルが組み合わさるとものすごく試合が長くなる。もはやサッカーは90分ではなく、100分、いや110分と思ったほうがいいのか。ともあれ、最後はギリギリではあったが、サウジアラビアがアルゼンチンに逆転勝利を収めて、伝説を作った。脱帽。明日、日本もドイツに対して普段の戦い方をするしかないし、それで負けたところで力不足なだけの話。もうこの大会でイランのようなベタ引きをするチームはひとつもないと思う。

アルゼンチン 1-2 サウジアラビア
娯楽度 ★★★
伝説度 ★★★★

November 22, 2022

イングランド対イラン 失望の5バック ワールドカップ2022 グループB

イングランド●ワールドカップ2022カタール大会が開幕した。初日、開催国のカタールがエクアドルに完敗して、いきなり水を差された感もあるが、二日目はアジア最強国の一角イランがイングランドと対戦。イランにはポルトガルリーグ得点王のタレミやオランダリーグ得点王の経験もあるジャハンバクシュもいる。アジア予選ではぶっちぎりの強さ。期待していたが、イランの布陣を見てがっかり。5バックで引いて守って耐える戦法。ケイロス監督、そりゃないよ……。普段から王者の戦いをしているチームが、守って耐える戦術をとったらどうなるか。ぜんぜん守れない。
●前半だけでイングランドはベルンガム、サカ、スターリングの3ゴール。イランのキーパーの負傷による中断もあって、前半アディショナルタイムが14分もあって、もうテンションはただ下がり。後半もイランは失点を重ね、終わってみれば6対2(イランの2点目は微妙な判定のPK)。こんなのはワタシの知ってるイランじゃない。みんなで守ると好きなだけ相手は攻めてくるし、たまにボールを握っても相手は恐れない。後半も10分以上のアディショナルタイムがあり、前半と合わせるとまるで延長戦があったような長さ。やれやれ。
●せっかくのカタール開催なのにアジア勢(しかも中東勢)は連敗スタート。この後、サウジアラビア対アルゼンチン、オーストラリア対フランス、日本対ドイツが控えているわけだが、はたして……。
●今大会、カタールが人権問題で欧州から批判されていること、レギュラーシーズン真っ最中の秋に変則開催したことなどあって、大会が盛り上がるかどうかが疑問視されている。というか、すでにカタールで開催したこと自体が失敗だったという気分が蔓延しているのでは。いったいなぜカタールなのか(前回のロシアもだけど)。FIFAが目先の利益を追い続けた結果、ワールドカップの価値は下がっていると感じずにはいられない。もし今大会を成功に導くものがあるとすれば、それは競技そのもの、すなわち伝説のプレーであり、伝説の試合しかない。

イングランド 6-2 イラン
娯楽度 ★
伝説度 ★
(満点は星5つ)

November 21, 2022

ジョナサン・ノット指揮東京交響楽団のシュトラウス「サロメ」(演奏会形式)

ジョナサン・ノット 東響 サロメ
●20日はサントリーホールでジョナサン・ノット指揮東響のリヒャルト・シュトラウス「サロメ」(演奏会形式)。こんな「サロメ」は聴いたことがないという壮絶さ。終演時の客席の湧きあがりがコロナ禍以降久しぶりの大波で、やっぱりこの雰囲気はいいなと思った。
●まず歌手陣がミラクル。アスミク・グリゴリアンのサロメを筆頭に、ミカエル・ヴェイニウスのヘロデ、トマス・トマソンのヨカナーン、ターニャ・アリアーネ・バウムガルトナーのヘロディアスと主要四役がすべてその役柄にふさわしい。サロメが強靭さと可憐さを兼ね備えていて、本当にサロメ。P席上方に登場したヨカナーンの威厳、深くまろやかな声。演出監修としてトーマス・アレンが加わっているが、以前のモーツァルトと違って舞台上が楽員で埋め尽くされており、ほとんど演技のためのスペースがない。それなのに舞台を観ている感覚があるというマジック。特にヘロデが歌い出すとたちまちそこはユダヤの宮殿となりドラマが立ち上がる。なんというか、次元の違う歌手陣を目のあたりにした感。
●そしてオーケストラが凄まじい。ノットの指揮のもと、うねり、咆哮する。「7つのヴェールの踊り」でサロメになにをさせるのかと思っていたら、歌手たちはみんな退出してオーケストラだけになる。ノットとオーケストラによるスリリングな狂熱のダンス。劇場のピットでは決して聴くことのできないシンフォニックなサウンド。こうして聴くと、「サロメ」って「アルプス交響曲」とよく似てる、順序は逆だけど。なんだか風もよく吹いてるし。
●シュトラウスの音楽にはしばしば笑いの要素があると思うんだけど、「サロメ」はユダヤ人たちの神学論争の場面が可笑しい。「神を見たのは預言者エリアが最後」「いや、それは神の影にすぎないのでは」……とサロメそっちのけで5人で延々と答のない議論をする場面。洗練されたコントだと思った。

November 18, 2022

新国立劇場 ムソルグスキー「ボリス・ゴドゥノフ」(新制作)

新国立劇場 ボリス・ゴドゥノフ
●17日は新国立劇場でムソルグスキーのオペラ「ボリス・ゴドゥノフ」。ポーランド国立歌劇場との共同制作で、同劇場芸術監督のマリウシュ・トレリンスキによる新演出。大野和士指揮都響がピットに入った。問題作ではあるが、「ボリス・ゴドゥノフ」という偉大な傑作を野心的な演出で観ることができたのがうれしい。なお、この演出は現在のロシアによる野蛮な戦争とは無関係で、時局に便乗したものではない。版の問題とも絡むのだが、思い切った読み替え演出が施されており、登場人物の多くは現代的な服装をしており、舞台装置も抽象的で、豪華な宮殿などは出てこない。映像も巧みに駆使。
●ボリス・ゴドゥノフのストーリーを超簡単に紹介しておくと、史実が題材になっていて、ボリス・ゴドゥノフがロシアの皇帝に即位するんだけど、先帝の息子である幼いドミトリー皇子を暗殺して権力を手にしたのではないかと疑われている。で、破戒僧グレゴリーが「オレは皇子ドミトリーだ」と僭称し、ポーランド・リトアニアやカトリック教会を味方につけてモスクワに進軍する。ボリスは死に、息子が後を継ぐが、偽ドミトリーが皇位を奪う。というのが大枠。で、ムソルグスキーの「ボリス・ゴドゥノフ」には原典版と改訂版があって、おもしろいのは断然、改訂版。改訂版はボリスのみならず偽ドミトリーにも焦点が当てており、大河ドラマ的なスケールの大きさがある。ただ、長すぎるんすよね。なかなか上演できない。一方、原典版はもっぱらボリス個人の苦悩を描いていて、コンパクトなんだけど、私見ではぜんぜん物足りない。そこで、今回のプロダクションで使用されたのは折衷版。ざっくり言うとポーランドの場面をカットしている(それでも休憩込み3時間半を超える)。だからグレゴリーの結婚相手マリーナは登場しない。男だらけのオペラ。グレゴリーが宿屋から逃げる場面の行き先は本来はリトアニアだが、この演出ではクレムリンに変更されている。原典版と違って、ちゃんと最後に偽ドミトリーが帰ってくる場面があるのは吉。そう来なくては。
●で、この折衷版以上に大胆なアイディアがトレリンスキの演出で、なんと、ボリスの息子フョードルを重度の障害者に設定し、黙役として役者に演じさせている。歌の部分はほかの歌手に割り当てている。しかも息子フョードルと聖愚者を同一人物として設定しているのだ! これにはびっくり……というか事前に知っていたからよかったけど、知らずに観たら混乱していた。幼いドミトリー皇子を殺したボリスの罪を、息子が背負って生まれてきた、と考えればいいのだろうか。刺激的なアイディアである一方、ストーリーの整合性は犠牲になっているので、そこをどうとらえるか。あと、年代記を記している修行僧ピーメンの役柄にも変更があり、グレゴリーの僭称をそそのかした首謀者として描かれる。
●「ボリス・ゴドゥノフ」って、ボリスの苦悩以上に、一介の破戒僧が僭称者となって皇位に就くという暗黒のシンデレラストーリーが魅力だと思うんすよね。トレリンスキ演出はそのダークサイドの部分をより強烈に描いていて、「悪が滅びたときにさらなる悪がやってくる」というはなはだペシミスティックな話になっている。あと、この演出から離れるけど、自分はボリスを「本当はドミトリーを殺していないのに、やってしまったという強迫観念にとりつかれた男」として観るのが好き。
●と、長々と演出面について記してしまったが、もちろんオペラである以上、主役はムソルグスキーの独創的な音楽。誰にも似ていない音楽、話し言葉のような歌はたまらなく魅力的。ピットの都響は雄弁でニュアンスに富んだサウンド。ピットに入るオーケストラをその楽団の音楽監督が指揮しているというシチュエーションは貴重。歌手陣はボリス・ゴドゥノフにギド・イェンティンス、シュイスキー公にアーノルド・ベズイエン、ピーメンにゴデルジ・ジャネリーゼ、グリゴリー(偽ドミトリー)に工藤和真。ピーメン役のジャネリーゼが格調高く立派。イェンティンスのボリスは内なる弱さを好演。黙役のフョードル&聖愚者を演じたのはユスティナ・ヴァシレフスカ。そこにいるだけで舞台が引き締まる存在感。
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●宣伝を。今年も「東京・春・音楽祭」のサイトで短期集中連載コラムを書いている。まずは「ヴヴヴのヴェルディ」第1回「名作オペラ殺人事件」を。もうひとつ宣伝。ONTOMOの連載「心の主役を探せ! オペラ・キャラ別共感度ランキング」第6回はヴェルディ「ファルスタッフ」。キャラ視点によるオペラガイド。

November 17, 2022

バッハ・コレギウム・ジャパン 2023/24シーズン・ラインナップ オンライン記者会見

●バッハ・コレギウム・ジャパンの2023/24シーズン・ラインナップについて、オンライン記者会見が開かれた(11月10日)。ヨーロッパ・ツアー中のBCJから鈴木雅明、鈴木優人の両氏が参加。使用ツールはZoom。
●新シーズンの開幕はいつものように4月、バッハの「マタイ受難曲」(鈴木雅明指揮)で。今回は東京少年少女合唱隊が参加。5月はヘンデルのオラトリオ「復活」(鈴木優人指揮)で、今回が初挑戦。「長年演奏したいと思っていた大作。昔から大好きだった」(優人氏)。7月は教会カンタータ・シリーズで「トーマス・カントル就任300年記念」(優人指揮)。カウンターテノールのアレクサンダー・チャンスをソリストに招く。あのマイケル・チャンスの息子さん。9月は初めての挑戦としてシューベルトをとりあげる。ミサ曲第5番(雅明指揮)。「シューベルトのミサ曲は和声的な面、調性の構造、対位法的な作曲のしかたなど、あらゆる点から非常に興味深い作品」(雅明氏)。11月は「クリスマスと新年のカンタータ」(優人指揮)。おしまいの2月はバッハ「ヨハネ受難曲」第2稿。「この作品にはいろいろなバージョンが残っている。資料的にもっとも安全に演奏できるのは第4稿と第2稿。いつもは第4稿をとりあげるが、今回は第2稿を選んだ。第4稿とは冒頭の曲から違う。とても興味深い存在」(雅明氏)。全6公演のラインナップ詳細はこちら
●余談だけど、この日の会見は18時スタート。時差の関係もあってこの時間に設定されたのだろうが、19時から演奏会があるので参加はムリ、電車に乗ってる時間帯だし。と、一瞬思ったのだが、いやいや、いい方法があるではないか。最近、駅のあちこちにできたアレを使えばいいのだ(参照:駅の片隅にあるテレワーク用のブースを使ってみた)。というわけで、あらかじめ駅のテレワーク用ブースを予約しておき、18時にブースに入場。
●といっても、演奏会があるので18時30分になったら記者会見の途中で退出しなければならない。ブースの予約も18時30分まで。ところが思いのほか会見がサクサクと進行して、18時20分すぎには登壇者のお話が終わり、質疑応答に入ってしまった。まあ、よかったかな、そろそろ退出時間だし準備するか……と思っていたら、なかなか最初のひとりの質問が出なくて(←記者会見あるある)、気が付いたら自分が質問していた(えっ)。そんなときに限って、すごくしっかりした内容のお話をいただけて、今にもブースの予約時間が終わりそうだというのに、話が続いている。う、どうするのだ、次の人が外で待っているのでは。そのうちブース内に「あと5分で終了時間です」のアナウンスが流れ、しかもうっかりZoomのマイクをミュートしていなかったという失態……トホホ。焦ったが、なんとかギリギリセーフでお話が終わり、予約終了時間ぴったりに退出。あわや自分で質問しておいて、その回答の途中で退出する超失礼伝説を作ってしまうところだった。いや、いざとなったらノートPCを抱えて退出して、外でそのままZoomを続けようとも思ったけど。

November 16, 2022

「英国音楽大全」(三浦淳史著/音楽之友社)

●これは驚いた。三浦淳史さんが書いたイギリス音楽に関するエッセイや楽曲解説を集めた一冊、「英国音楽大全」(音楽之友社)が刊行された。日本のイギリス音楽受容に決定的な功績を残した三浦先生(と言いたくなってしまう)だが、亡くなったのは1997年とずいぶん前の話。著書はいずれも品切で、復刊することもないだろうと思っていたら、400ページを超える堂々たるハードカバーの新刊が登場。帯に「三浦淳史没後25周年&ヴォーン・ウィリアムズ生誕150周年記念」と記されており、この機を逃すともうチャンスはないという編集者の意気込みが伝わってくる。インターネットもなにもなく、英語で書かれた情報へのアクセスが今とは比較にならないほど難しかった時代、日本にイギリス音楽の魅力を伝えるにあたってどれだけ三浦先生が頼りになる存在だったか……。ワタシ自身も大昔、「レコ芸」編集者時代にずいぶんお世話になった。一頃は毎月、原稿取りにうかがって、じっくりとお話をする機会があったのだが、駆け出しだった自分には経験が絶対的に不足しており、話し相手としても物足りない若造だったはず。にもかかわらず、とてもよくしていただいた。まだ手書き原稿の時代で、三浦先生の原稿は少しユニークだった。カクカクとした筆跡だが読みやすく、そしてときどき段落ごとにペンの色が変わっていたりして、カラフルだったような記憶がある。
●で、今回の「英国音楽大全」、エッセイをいくつか読んでみて、改めて驚嘆したのは、文章のうまさ! 当時から言われていたことではあるけど、今ならその価値がずっとよくわかる。もうむちゃくちゃうまい。とても簡明で滑らかなのに、文体に独自の味わいがある。こんな文章を書ける人、今だれかいるだろうか。内容に関して情報が古びている部分は当然あると思うが、文体はまったく古びていない。今読んでもみずみずしい。

November 15, 2022

アンドリス・ネルソンス指揮ボストン交響楽団のマーラー6

ネルソンス ボストン交響楽団 来日公演 2022●13日はサントリーホールでアンドリス・ネルソンス指揮ボストン交響楽団。プログラムはマーラーの交響曲第6番「悲劇的」一曲のみ。舞台上がびっしりと埋まる大編成の作品をアメリカのメジャー・オーケストラの演奏で聴く。コロナ禍でこんなことは当面難しいだろうと思っていたことができるようになったという喜びと、昨今の円安ドル高を思うとこんなことは当面難しいかもという予感が入り交じって複雑な気分。ネルソンスを最初に聴いたのは2010年のウィーン・フィル来日公演だっただろうか。あのときは小澤征爾の代役のサロネンのさらに代役で、若手枠という扱いだったが、そこから一回りも二回りも大きくなって、今や巨匠の風格すら漂っている。
●ボストン交響楽団は名手ぞろいで、恐るべき機能性の高さ。高い解像度と濃厚なテイストのサウンドをあわせ持つオーケストラは貴重。ネルソンスの指揮ぶりは緩急自在というか、特に「緩」に傾きがちで、じっくりと音楽を掘り下げてゆくスタイル。スケールの大きな音楽である反面、もっと推進力が欲しくなる場面も。楽章の順序は第2楽章がスケルツォで、第3楽章がアンダンテ。第4楽章のハンマーは3回。第3楽章までは「細部まで彫琢された荘厳重厚な音響建築」を鑑賞しているような感もあったのだが、第4楽章は白熱したドラマに引き込まれた。終演後は盛大な喝采に続いて、ネルソンスが英語でスピーチ。が、自分はほとんど聴き取れず(あーあ、この前のシフのレクチャーはほぼ聴き取れたのに)。感謝のメッセージ的なものだと思うが、ずいぶんと長く話してくれた。楽員の退出後も拍手が止まず、ネルソンスのソロ・カーテンコールとスタンディングオベーションに。

November 14, 2022

五嶋みどり デビュー40周年記念 トリオの夕べ サントリーホール スペシャルステージ 2022

「道程」 五嶋みどり●11日はサントリーホールで五嶋みどりのヴァイオリン、アントワーヌ・レデルランのチェロ、ジョナサン・ビスのピアノによる「トリオの夕べ」。「五嶋みどりデビュー40周年記念~ベートーヴェンとアイザック・スターンに捧ぐ~」と銘打たれ、ベートーヴェンのピアノ三重奏曲第1番変ホ長調作品1-1、ピアノ三重奏曲第3番ハ短調作品1-3、ピアノ三重奏曲第7番変ロ長調「大公」というプログラム。三人の奏者が有機的に絡み合いながら調和したひとつの音楽を作り出す。とりわけ印象的なのがビスのしなやかなピアノ。完全にトリオとして溶け合う音色を駆使。全員分は見えなかったけど、3人とも楽譜はタブレット?
●前半が作品1の2曲。ともに4楽章制で交響曲的な発想で書かれた「大作」だが、特に第1番はシンフォニックでミニ交響曲的だなと感じる。第3番の冒頭は後の「テンペスト」ソナタを連想させる。終楽章が静かに終わるところもそう。前半を聴くと作品1からベートーヴェンはすでにベートーヴェンだったと思う反面、後半で「大公」を聴くとその自在さ、のびやかさ、引き出しの多さに感嘆する。趣味は変わっていないんだけど、洗練度が段違いで、すっかり垢抜けた最強のベートーヴェン。終演9時半の長大なプログラムで、アンコールはなし。
●帰り際におひとり一冊、著書のプレゼントということで、「道程」(五嶋みどり著)を受けとる。バーコードがないので市販本ではなく、40周年記念冊子ということだったが、とても力の入った立派な本だった。

November 11, 2022

芸劇リサイタル・シリーズ「VS」 Vol.5 阪田知樹×髙木竜馬

芸劇「VS」阪田知樹 髙木竜馬●10日は東京芸術劇場で芸劇リサイタル・シリーズ「VS」Vol.5 阪田知樹×髙木竜馬。ふたりの気鋭の共演ということもさることながら、リスト対タールベルクの「象牙の戦い」に触発されたプログラムがおもしろい。阪田の発案に髙木が応えたそう。前半はタールベルクとリストのソロの作品が交互に登場。タールベルクの2つのノクターン作品35より第1番「大夜想曲」嬰ヘ長調(阪田)、リスト「愛の夢」第3番(髙木)、タールベルクのロッシーニ「エジプトのモーゼ」の主題による幻想曲(髙木)、リストのベッリーニ「ノルマ」の回想(阪田)。後者2曲が超絶技巧の大曲で壮絶。ヴィルトゥオジティはある種の過剰さと結びついたときに快感をもたらすものだと実感する。特に阪田による「ノルマ」の回想は鮮烈で、これでもかというくらいのテクニシャンぶりを発揮。絢爛たるロマンティシズムにくらくらする。技巧の冴えだけではなく、客席を巻き込んで熱狂を起こすオーラがある。驚嘆。
●後半は2台ピアノ。まず後半冒頭に本日のプログラムについてのトークがあって、これもよかった。リスト(一部タールベルク、ヘルツ)の「ヘクサメロン」(ベッリーニ「清教徒」の行進曲による華麗な大変奏曲)と、リストの2台ピアノのための「悲愴協奏曲」。最後の「悲愴協奏曲」はそれまでの作品とは毛色が異なり、完全にロ短調ソナタと同様の世界で、深淵を覗きこむような音楽。重量級の作品が続いたので、アンコールにはベートーヴェン~リスト編の七重奏曲変ホ長調(ピアノ連弾版)より第3楽章テンポ・ディ・メヌエット。充実の一夜。

November 10, 2022

シューベルトの名曲について

●後期三大交響曲「完成」

交響曲第7番「非完成」
交響曲第8番「未完成」
交響曲第9番「既完成」

●幻の連作室内楽シリーズ「寿司」

ピアノ五重奏曲「鱒」
ピアノ五重奏曲「鮪」
ピアノ五重奏曲「鯛」
ピアノ五重奏曲「鯵」
ピアノ五重奏曲「鰤」

シューベルト アニメ調
●歌曲集「美しき水車小屋の娘」問題

修業の旅に出た若者は水車小屋にたどり着く。その水車小屋は美しかった。若者は思った。美しいのは水車小屋なのか娘なのか。てっきり娘が美しいものと思い込んでいたが、予想外に水車小屋が美しく、もしかすると美しいのは水車小屋であって娘ではないのかもしれないと考えた。もし娘が美しいのであれば、校正者が「水車小屋の美しい娘」と修正したのでは? だが、理論的には水車小屋も娘も同時に美しい可能性だってありうる。苦悩する若者に、原文を確かめるというアイディアは思い浮かばなかった……。

※イラストはAI画伯Stable Diffusion作

November 9, 2022

新宿御苑 2022 賑

新宿御苑 秋
●ここしばらく忙しくて綱渡り状態が続いていたが、ようやく一山越えたので、久々に新宿御苑を訪れてみた。二季化しつつある東京において貴重な秋晴れの一日。たぶん2年ぶりなのだが、前回はあまりに人が少なくて居心地が悪いくらいに「疎」だった。ここ、東京のど真ん中なのに。東京の街がゾンビで埋め尽くされても、ここなら生き残れるかもしれないと思ったほど。それが今回はどうかといえば、わりと賑わっていた。少なくとも、この人たちがゾンビだったらもう逃げられないと観念する程度には。
●コロナ禍以前と同様、外国人観光客も多数いた。入口でワタシまで係員さんから英語で声を掛けられてしまった。いつの間にかSUICAで「ピッ!」と入場できるようになっている。以前は「年パス」を持っていたが、コロナ禍以降、使用頻度が激減したので更新していない。
新宿御苑 日本庭園
●新宿御苑は複数のスタイルの公園が一か所に集まった複合式公園なので、場所によって雰囲気がぜんぜん違う。なんとなく主役かなと思うのは「日本庭園」。菊花壇展が開催されていた。
新宿御苑 母と子の森
●ワタシが好きなのは「母と子の森」エリア。大して広くはないが、鬱蒼としていて、里山っぽさが(ほんの少しだけ)ある。もう少しこのエリアが広ければな、とは思うが。
新宿御苑 プラタナス並木
●「整形式庭園」にあるプラタナス並木。遠近法を体感できる。新宿門から入るといちばん遠く、秋でなければ来ない場所かも。大木戸門か千駄ヶ谷門から入ると近い。
新宿御苑 大温室
●異彩を放つのが「大温室」。扉をくぐればそこは熱帯地方。ムッとした空気のなかで、約2700種もの熱帯・亜熱帯の植物が植えられている。これだけの種を健やかに育て、なおかつ余計な植物を棲息させない。叡智の結集。
新宿御苑 大温室 バナナ
●大温室には実がなっている植物がけっこうある。バナナ、カカオ、レモンなど。写真はサンジャクバナナ。勝手に収穫しちゃう人はいないのだろうか。キョロキョロ……パクッ!(←ウソ)。

November 8, 2022

AIに文字起こしを任せたい 2022年11月

●一部職業の人々にとって注目度の高いトピックス、AIによる文字おこしの話題を。「文字起こし」とはインタビュー取材とか会議などの録音をテキストにすること。昔は録音を聴きながら人力で起こすしかなかったわけだが、近年は音声データからAIが自動的に文字を起こすサービスがいくつかある。
●で、今から2年半ほど前に、Microsoft Video IndexerAmazon Transcribeによる文字おこしを比較してみたことがあった(→該当記事)。その後、AI文字起こしサービスがいくつか立ち上がっており、最近、Rimo VoiceNottaというふたつのサービスを無料体験で試してみた。結論から言うと、日本語文字起こしの精度はその頃から思ったほどは変わっていないなと実感。つまり、とても役立つものではあるが、起こした文字がそのまま使えるようなものではない。聞きまちがいは多いし、語彙もまだまだ乏しい。取材現場に自分も当事者として立ち会っていれば(記憶があるので)文字から内容は理解できるが、もし立ち会っていなかったらあまり理解できなさそう。2年半前はこれでも十分に感動したが、今の時点ではもう一段階、技術的なブレイクスルーを求めたくなる。なお、音声データはノイズの少ない静かな環境でICレコーダーをインタビューイのすぐ近くに置いて録音したものを使用した。日本語のみ。
●ただ、今回、Rimo Voiceを使ってみて改めて感じたんだけど、実用性は高いんすよ。画面上の文字データをクリックするとその該当箇所の音声が流れるようになっている(これはMicrosoft Video Indexerでもできるし、他のサービスでもきっとできると思う)。本当に必要なのは文字起こしの精度以上に、こっちの機能なのかも。つまり、これがあれば原稿に必要な部分だけピックアップして聴き直せばいいわけで、作業効率は格段に上がる。
●自分は特段の理由がないかぎりアーティスト・インタビューの仕事は受けないので、この分野の動向にそう詳しいわけではないのだが、だれかの役に立つかもしれないので記録しておく次第。利用者が増えれば、AIの品質も上がるだろうし。

November 7, 2022

祝。マリノス3シーズンぶり5回目の優勝 神戸vsマリノス J1リーグ第34節

●最終節までもつれにもつれたJ1リーグだったが、マリノスがアウェイで神戸を下して、3シーズンぶりの優勝を果たした。神戸 1-3 マリノス。同時刻に開催されていた2位の川崎が早々に退場者を出しながらも勝利するという、敬服すべき粘り強さを見せたが、マリノスも勝利して勝点差2のまま逃げ切った。
●神戸戦は序盤にアンデルソン・ロペスが先制点を決めたかと思いきや、7分間もの長い長いVARチェックを経て取消し(いくらなんでも長すぎ……)。嫌なパターンではあったが、エウベルが先制点をあげた。その後、武藤に同点ゴールを決められるが(クロスを入れる酒井高徳にだれもプレッシャーをかけられなかった)、後半に西村、途中出場の仲川がゴールを決めて勝ち切った。後半途中まで、マリノスはなかなかボールが持てず、自分たちのサッカーができなかった。しかし63分に神戸がイニエスタを投入して中盤のプレッシャーが弱くなると、途端にボールが回り出した。このイニエスタの起用法、どうなんでしょね。
●3年前の優勝はポステコグルー監督がもたらした。今回、同じサッカーを継承したケヴィン・マスカット監督が優勝を果たした。この日の先発メンバーのほとんどが3年前にいなかった選手。監督も選手も入れ替わって、同じサッカーを実現しているのがすごい。マリノスは過去にも優勝経験はあるものの、大半のシーズンはJ1の中位グループに留まっていて(少なくともそういう実感)、「優勝争いに絡まずに7位、8位あたりに落ち着く守備の堅いチーム」という、いくぶん退屈さを伴うチームカラーをまとっていた。それがポステコグルーが監督に就任すると一変、ハイライン、ハイプレスで積極的にリスクをとるサッカーに変わった。すさまじい得点力に加えて、今季は失点も少なくなったのが勝因。キーパーの高丘が無理にボールをつなげようとせず、長いボールを蹴る場面が増えた。極端な理想主義に走らず、現実的になったというか。
●試合後のキャプテン喜田拓也のインタビューが味わい深かった。くりかえし、みんなに「おめでとうと言いたい」って話すんすよ! いや、あたながいちばん祝われるべき立場じゃないの。でも、ファンを、マリノス・ファミリーのみんなを「おめでとう」と祝福せずにはいられないのが喜田。「みんなの喜ぶ顔を見て感無量です」だって! そんなできた28歳がいるか。喜田には引退後、指導者になってほしくない。現場ではなく、会社に残ってマリノスを支えてほしい。いずれは営業本部長、さらには球団社長へ。なんならJリーグ専務理事あるいはチェアマンに。ひょっとすると横浜市長、神奈川県知事に。そんな妄想を刺激するのが喜田。

November 4, 2022

ワールドカップカタール大会、代表メンバーが決まったけれども

ニッポン!●先日、ワールドカップカタール大会に向けてのニッポン代表メンバーが発表された。が、早くも中山雄太が負傷のため今シーズンを棒に振ることになり、離脱が決定。これから追加招集があるはず。さらに昨日のヨーロッパリーグで冨安が負傷退場したのが気になるところ。ともあれ、森保監督はこれまでの序列に従ってメンバーを選んだ。大きなサプライズはなかったけど、強いて言えば名古屋の相馬勇紀が残ったことか。大迫、原口は落選したが、柴崎、長友は残った。以下、メンバーと所属クラブ。
●GK:川島永嗣(ストラスブール)、権田修一(清水)、シュミットダニエル(シントトロイデン)、DF:長友佑都(東京)、吉田麻也(シャルケ)、酒井宏樹(浦和)、谷口彰悟(川崎)、山根視来(川崎)、板倉滉(メンヘングラートバッハ)、中山雄太(ハダースフィールド)[欠場]、冨安健洋(アーセナル)、伊藤洋輝(シュツットガルト)、MF/FW:柴崎岳(レガネス)、遠藤航(シュツットガルト)、伊東純也(スタッド・ランス)、浅野拓磨(ボーフム)、南野拓実(モナコ)、守田英正(スポルティング)、鎌田大地(フランクフルト)、相馬勇紀(名古屋)、三笘薫(ブライトン)、前田大然(セルティック)、堂安律(フライブルク)、上田綺世(セルクルブリュージュ)、田中碧(デュッセルドルフ)、久保建英(レアルソシエダード)。
●全体を見た率直な第一印象。「多い……」。26人もいる。従来は23人だった。この3人の増枠がかなり効いていて、だいぶ緩くなった。もともとサッカーには11のポジションがあるわけで、単純に各2名として22人、それにキーパーは出場停止を考えるともう1名必要なので計23人。実際には左も右もできる選手、一列前や一列後ろもできる選手がいるので、多少余裕ができるわけだが、本来23人が「ぴったり」サイズ。3人の増枠で、監督の自由度が増した。この枠があれば、カズも落選しなかっただろうに……(←いつの話だ)。なお、交代枠も3人から5人に拡大しているので、(特に攻撃の)控え選手の出番は増える。
●あと、今回の大会なんだけど、まさかの11月の変則開催になったじゃないすか、中東の気候のために。これって、われわれファンの側にも大きな影響があるはずで、予測不能なところがある。だって、今まで忙しい忙しいと言いながらも意外と試合をたくさん観れていたのは、ひょっとして夏場だったからじゃないのかな、と。はたして11月にどれだけ試合を観られるものか。

November 2, 2022

アンドラーシュ・シフ ピアノ・リサイタル 曲目は当日発表

●1日は東京オペラシティでアンドラーシュ・シフのピアノ・リサイタル。同会場でもう一公演あるので先に言っておくと、終演が午後10時半だった。型破りなリサイタルで、プログラムは当日発表。「バッハ、ハイドン、モーツァルト、シューベルトなどの作品から、シフ自身がトークを交えながら当日ステージ上で発表する」ということだったが、シューベルトがなくて代わりにベートーヴェンが演奏される予想外の展開。大変すばらしい。トークといっても、中身はしっかりとしたレクチャー、作品解説。シフがわかりやすい英語で話し、舞台上で座っているパートナーの塩川悠子さんが緩く通訳するというアットホームなスタイル。
●前半はバッハとモーツァルトの関係がテーマ。バッハの「ゴルトベルク変奏曲」より「アリア」、「音楽の捧げもの」から「3声のリチェルカーレ」、モーツァルトの幻想曲ハ短調K.475、バッハのフランス組曲第5番ト長調、モーツァルトの小ジーグK.574、バッハの平均律クラヴィーア曲集第1巻から前奏曲とフーガ ロ短調、モーツァルトのアダージョ ロ短調、ピアノ・ソナタ第17番ニ長調。対位法や調の話を軸に。前半が終わってもう8時40分くらいで、さすがに長さを感じ、これから休憩を入れると普通の公演なら終演時間だ……と、たじろいだのだが、後半に入ると楽しすぎて、逆に長さをまったく感じなくなる謎。ハイドンのピアノ・ソナタ ト短調Hob.XVI-44、ベートーヴェンの6つのバガテル、ピアノ・ソナタ第31番変イ長調。プログラムノートを見て、後半はきっとハイドンとシューベルトなのだろうと思い込んでいたのだが、まさかのベートーヴェン、そしてこれが圧巻。肩の力の抜けた自在さが作品の核心に迫るといった趣。最後に平均律第1巻から前奏曲とフーガ ハ長調を弾いておしまい。ピアノはベーゼンドルファー。トークの中で、ホール開館時にシフ自身が選んだピアノであることが紹介され、コンディションが保たれていてうれしいと語っていた。
●それにしても思い出すのは前回、同じ場所で開かれたシフのリサイタル。まだウイルス禍の最初期で、クラシック音楽業界には世間に先行して公演自粛のムードが広がる中、微妙なタイミングでシフのリサイタルが敢行された。いいのかな、大丈夫かな?とドキドキしながら聴きに行ったのを覚えている(今から思えばその時点での感染者数などかわいいものだったが、そんなことは知りようがない)。だれひとり咳払いもしない(できない)あのときの会場の静かさは、後にも先にもないレベルだったと記憶。

November 1, 2022

「東京・春・音楽祭2023」概要発表会

「東京・春・音楽祭2023」概要発表会
●31日は東京文化会館の大会議室で「東京・春・音楽祭2023」概要発表会。23年3月18日から4月16日にかけて上野を舞台に開催される「東京・春・音楽祭」のラインナップが発表された。演奏会形式のオペラが3本上演されるほか、上野の街を舞台とした「桜の街の音楽会」も復活して、フルバージョンの音楽祭が帰ってくるといった盛りだくさんの内容。登壇者は写真左より、芦田尚子事務局長、鈴木幸一実行委員長、藤原誠東京国立博物館館長、長岡信裕上野観光連盟理事長。鈴木「音楽祭は続けることが大切だと、当初からムーティさんにも言っていただいた。パンデミックの間は厳しかったけれどもなんとかできる範囲で続けることができた。今回はリスタートという意気込みを持って臨みたい」
●目玉公演というべき演奏会形式のオペラでは、まずムーティが「イタリア・オペラ・アカデミー in 東京」の一環として、ヴェルディの「仮面舞踏会」を指揮。オーケストラは東京春祭オーケストラ。ワーグナー・シリーズはヤノフスキ指揮NHK交響楽団による「ニュルンベルクのマイスタージンガー」。プッチーニ・シリーズは「トスカ」で、フレデリック・シャスランが読響を指揮。他に大型公演では売り出し中のフィネガン・ダウニー・ディアーが都響と東京オペラシンガーズを指揮してブラームスの「ドイツ・レクイエム」。
●で、公演全体については「ぶらあぼ」で紹介記事を書くので、それ以外の公演から自分が特に気になっている公演をいくつか。ミュージアム・コンサートが今年も魅力的で、特に「東博でバッハ」は周防亮介の無伴奏ヴァイオリン、川口成彦のフォルテピアノなど強力。「福川伸陽と古楽の仲間たち」では福川のバロック・ホルンと高田あずみ、上村文乃、三宮正満らのバロック・アンサンブルでテレマン、ヴィヴァルディ、ファッシュ、バッハ他。毎回プログラムが意欲的な「名手たちによる室内楽の極」は、長原幸太らの8人でブルッフの弦楽八重奏曲。ピアニストのキット・アームストロングは「鍵盤音楽年代記」と題して、なんと5公演にわたるリサイタル・シリーズ。16世紀から21世紀までの鍵盤音楽の歴史をたどる。シリーズ「ベンジャミン・ブリテンの世界」はいよいよ最終回。辻本玲の独奏で「チェロと管弦楽のための交響曲」他。
●今回もライブ・ストリーミング配信がある。オンデマンド配信はなく、ライブ配信のみなのは「ネット席という位置づけ」だと聞いて、なるほどそれも一理あるな、と。芦田事務局長によれば、前回は平均一公演あたり100人弱の視聴者数で、来日アーティストの公演だと数が増えるそう。鈴木「日本では配信ビジネスはなかなかうまくいかない。ただ、それも時間の問題だと思う。桑田佳祐のライブは5万人を超えた。少しずつ配信は一般的になっていくのではないか」。これは同感。上の世代が配信に親しむようになる以上に、配信を当たり前に楽しむ下の世代の自然増で物事が変化するというイメージを持っている。

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