2004年6月アーカイブ

June 30, 2004

死というものも知らずにいて

●ある人気小説を読みはじめて、わずか10ページ足らずで挫折した。別に作品の良し悪しとはまったく関係ない。冒頭、ある登場人物を紹介する過去のエピソードとして、ドーベルマンを無意味に殺すシーンがあるのだが、これでもうダメである。人を殺すシーンなら引っかからなくても、犬を殺すと理屈ぬきで引っかかる。ワタシはジャック・ケッチャムの動物愛護暴力小説「老人と犬」を共感をもって読むことができる。
●もちろん猫もダメだ。もっとダメだ。森茉莉の一節を。

死ぬ日の午後、寝台の下から私を見て、一声啼いたお前の声は今でも私の胸を掻きむしる。それは母親の死んだ時の記憶よりも切ない。何故ならお前は自分が猫であることも知らず、死というものも知らずにいて、そのために幸福だった。それが最後の日になって、やっぱり何かを感じたらしかったからだ……。(「私の美の世界」 森茉莉/新潮文庫)
June 29, 2004

週末はなにやってたの?

中華食堂●ランチタイムの中華料理屋。先輩と後輩の二人組が隣で話している。先輩風を吹かせるガタイの大きなロン毛と、まだ仕事に慣れてない風の細身でうつむき加減の若者二人。
「週末はなにやってたの?」
「えーと、あれ、なにやってたかなあ、最近物忘れ激しいんです」
「洗濯とか」
「うーん、洗濯は……えっと、やりました」
「掃除とか」
「掃除は、ええっと、どうだったかなあ。本当に忘れっぽいんです」
「遊びに行ったりしたの?」
「えーと確か、(手帳をカバンから取り出して確認)、あっ、そうだ、掃除したんです。それから掃除の後、買い物に出かけました」
「ふーん」
●それさ、メシどきの世間話じゃなくて、アリバイを尋問する刑事と容疑者だよ。

June 28, 2004

魔術師ブリュックナーの策略、チェコvsデンマーク@ユーロ2004

ブリュックナー監督はハーフタイムにこんなことをしてそうだ●デンマークはすばらしい。あのチェコ以上にポゼッション・サッカーを志向し、攻撃的で、ピッチをワイドに使い、強いパスをどんどん回す。ダイナミックで美しい。相手は前の試合に控え組でドイツに逆転勝利したチェコ。コンディションではチェコ有利だが、前半はデンマークが攻めまくる。65%程度の支配率。チェコが手も足も出ない、しかし結果はこうなった。

チェコ 3-0 デンマーク

●どうしてこうなるのか、ワタシにゃわからん。ハーフタイムになにかがあった。チェコの大魔術師ブリュックナー監督が不思議な模様を空中に描くと、後半から突如として、デンマークにあった華麗なオートマティズムが崩壊し、ヨルゲンセン、グロンキアらのサイドアタッカーが沈黙する。コーナーからのコラーのヘディングという平凡なゴールを合図に、ポボルスキーのパス一本にバロシュが裏に飛び出てふわりと2点目、さらにネドヴェドのパスからまたもバロシュ、3点を奪ってチェコが快勝した。
●チェコはコラーとバロシュの2トップ、中盤左右にネドヴェドとポボルスキといて、さらにその後ろ、ボランチの位置にファンタジスタ系のロシツキがいる(一皮も二皮も剥けた中村俊輔って位置づけ、自分的には)。こんな下がった位置にいるので、あまり攻撃に絡めなくてせっかくのテクニックがもったいないとワタシは思ってしまうのだが、現にチームは勝っている。偉大な魔術師の考えは凡人にはわからないのだ。

June 27, 2004

凡戦と名勝負は紙一重、スウェーデンvsオランダ@ユーロ2004

euro2004ポルトガル.jpg●この試合、おもしろかったか。確かにおもしろかった。この試合、つまらなかったか。確かにつまらなかった。ドラマティックな瞬間、活躍するポストとバー、卓越した個人技、歓喜と落胆、その一方で消極性と疲労、ゴールなき120分間があった。

スウェーデン 0-0 オランダ
Ex.Time 0-0
PK 4-5

●攻めるイブラヒモヴィチと守るスタムを見ればわかるように、ともに欧州屈指の大型チーム。お互いにパワーというサッカーにおける基本的な優位性があって、なおかつ技術やセンスのある攻撃のタレントを持ち、しかもオープンな戦いをしようというスピリットがある。だから2-3くらいのスペクタクルを期待していたのだが、特に前半は慎重な試合で、中盤のつぶしあいに終始した。
●後半からはチャンスも増えた。しかしオランダが持ち前の攻撃的なポゼッション・サッカーを放擲して、ロッベンらの個々の能力に頼ってしまったため、ゴールは遠い。先日のチェコ戦でも感じたが、オランダのアドフォカート監督の采配は慎重である。ダーヴィッツをベンチに下げてコクに上がり目のポジションを取らせるなど、「これからさらに消極的な試合をしますよ」と宣言しているようなものである。たとえブラジルが相手でも点を取り合って勝ってみせようとするのが本当のオランダだと思うのだが……。疲労が試合からスペクタクルを奪ったのだと希望的に解したい。
●スウェーデンは2002年のW杯でもそうだったように、強いチームである。今も強いし、以前から強かった。ブロリン、ケネット・アンデションらを擁した94年アメリカ大会では3位(この大会ですでにラーションは出場している。ドレッド・ヘアの快足フォワードだった)。この日だってスウェーデンが勝っていてもおかしくなかった。優勝していたとしても驚かない。交代出場したシェルストレムをはじめ、若い才能に恵まれているので、いずれさらに強くて楽しいチームになるかもしれない。
●PK戦、リュングベリの蹴ったボールがポストに弾かれ、それがファン・デル・サルの背中に当たってゴールに入ったときには、つくづくファン・デル・サルの運のなさに同情した。つられてか、精神的支柱のコクがはずしてしまう。これでオランダは負けるだろうと思ったが、そうならなかった。いつも仲間割れを起こしている集団が一致団結したことへの神様からのご褒美だろうか。

June 26, 2004

熟れすぎた果実、フランスvsギリシャ@ユーロ2004

今のフランス代表はこんな感じだ●98年に初めて世界チャンピオンとなり、2000年に欧州チャンピオンとなった王者フランスが敗退した。相手は今回初めてユーロで勝利をあげたというギリシャ。

フランス 0-1ギリシャ

●今大会も優勝候補に挙げられていたフランスだが、気がついてみれば00年はおろか98年からの生き残りの選手たちがずいぶん多い。成功したチームの若返りは難しいのか。いや、そんなはずはない、02年で大きな敗北を喫している。それでもこのイレヴンは新味を欠き、運動量や積極性がいつの間にか失われ、にもかかわらず「たぶん問題なく勝てるだろう」という雰囲気の中で試合が進む。
●相手のギリシャがレーハーゲル監督(まだ健在だったのですか!)のもと、古式ゆかしいドイツ式マンツーマン・ディフェンスを敷く。おかげで昨日のポルトガルvsイングランドとうってかわって、スローで退屈な試合になった。65分にギリシャのハリステアスが先制点をあげるまでは。
●その後、サアやロテンらの新しい力が注入されると、フランスに少し可能性が見えた。もしアンリがフリーのヘディング・シュートをはずさなかったら、疲れたギリシャを簡単に逆転することができたかもしれない。そのときは老獪で試合巧者、地力で勝る優勝候補の順当な勝利として、この試合は明日にでも忘れ去られたはずだ。
●98/00年バージョンのフランスは長すぎた。今度こそさようなら。フランスは若いタレントの宝庫である。98年組のバルテズ、ピレス、デサイー、テュラム、リザラスらが06年を目指す新生フランスに必要とは思えない。ジダンは? 惜しいが、おそらく本人に残る気はないだろう。

June 26, 2004

絶句。ポルトガルvsイングランド@ユーロ2004

ユーロ2004●こ、これは。試合が終わって茫然。見ごたえのある試合だった。

ポルトガル 1-1 イングランド
Ex.Time   1-1
PK        6-5

●開始3分のオーウェンのアクロバティックな先制ゴールは美しかった。同点に追いついたポルトガルの若手ポスティガのヘディングは完璧だった。延長に入って、途中出場のルイ・コスタが個人技で決めたゴールなどは鳥肌モノ。黄金世代の生き残りが決めたゴールで、ポルトガルの勝利は決まったと思った。これで普通は終わる。ところがイングランドはランパードの同点ゴールで追いつく。駆け足で振り返ったが、この120分でもうお腹いっぱいである。が、本当の事件はその後だ。
●PK戦。先に蹴るのはイングランド。で、ベッカムが先鋒を務める。このキックの名手が、なんと、見たこともないようなホームラン級のミスキックで、ボールはスタンドまですっ飛んでいってしまった! あ、ありえない……。まあ、下が悪いんだろうが、しかし。ポルトガルはデコが落ち着いて決める。以降、ポルトガルがリードして進むが、今度は本日のヒーロー一歩手前だったルイ・コスタがPK失敗。PK戦ってのは不思議なもので、優秀なキッカーほどはずす(印象に残るだけかもしれんが)。で、根性でド真ん中に蹴りこむディフェンダーは簡単に成功する(ような気がする)。
●このPK戦のヒーローはポルトガルのポスティガである。蹴る瞬間にキーパーの動きを見て、チップキックでフワリと蹴りやがった。なんつうヤツだ。前にトッティが同じことをやってるので伝説にはならないが、こういうふざけたキックを成功させると、なぜかこの後、相手が失敗したりする。で、イングランドの7番手、ヴァッセルのシュートをポルトガルのリカルドが見事にセーブ。
●このポルトガルのキーパー、リカルドもヘンである。このとき、なぜか彼はキーパーグラブをはずして、素手で止めたんである。ワケわからん。で、リカルドはこれで自分が神の寵愛を受けたことを確信したらしく、次のキッカーを追いやって、なんとPKを自分で蹴る。おいおい、はずしたらどうするのだ。でもちゃんと決めた。そういう風に世界はできている。ポルトガルが準決勝進出。ポスティガとリカルドの魔術のおかげだ。

June 25, 2004

更新情報

CLASSICA logo●毎日、サッカー話ばかりしていると、ここがホントは「クラシック音楽ファンのためのウェブ・マガジン」であることを忘れられてしまいそうだ(笑)。で、ここで更新情報を。レギュラー・コーナーであるNew Release Radarを更新した。最近当サイトを知った方のために説明すると、これは各レコード会社、レーベルから発売される新譜情報を掲載したページである。ワタシがこれはと思ったものをピックアップするほか、レコード会社、レーベルへのミニ・リンク集もあって、一通りの新譜発売情報を把握するのに便利。もともとはワタシが仕事用に楽しようと思って作ったページなのだ。

June 25, 2004

哄笑するチェコ、抱擁するオランダ@ユーロ2004

ユーロ2004●もう止まんないよ、ユーロ2004。こんなにおもしろいとは。で、グループ・リーグ最終戦はこうなった。

ドイツ 1-2 チェコ
オランダ 3-0 ラトヴィア

●これもまた決勝トーナメントへの生き残りをかけた試合で、大変だったんである。唯一、すでに同組1位を決めているチェコだけは余裕。ブリュックナー監督はガラセク一人を除いて、全員控えの選手を先発させた。この種の集中的なスケジュールで行われる大会では(しかも暑いとなれば)、これは正しいコンディション調整である。ノーリスクで主力選手を1試合分休ませることができる。激闘続きの他チームに比べ、これだけでも優勝に一歩近づけるアドヴァンテージ。アンフェアではない。
●ドイツはチェコに勝ちさえすれば2位で勝ち抜ける。一方、辛い立場なのはオランダで、たとえ自分たちが勝っても、ドイツが勝ってしまえばそれまで。しかもドイツの相手はほぼ全員控え選手のチェコ。
●にもかかわらず、控え組のチェコは主力組そっくりのサッカーをやって、ドイツを打ち負かした(しかもまたしても逆転勝利で)。チェコにとってこんな痛快なことはない。ブリュックナー監督は笑いが止まらないだろう。この監督、大変な理論家のようだが一方でトンデモ系テイストもあって、ワタシはサッカー界のマッド・サイエンティストというキャラで見ている。逆にドイツの監督はルディ・フェラー。まだ監督というより選手の印象が強い。思い切りのよいストライカーで、策士にはほど遠い。
●オランダに意外なシーンを見た。彼らはブラガ(以前、広山が所属していた)にある不思議なスタジアムで試合をしていた。メインスタンドとバックスタンドしかなく、片方のゴール裏に岩壁がそびえるという驚異的な建築物。ここでラトヴィアに勝ったのだが、試合途中、ドイツが追いつかれ、さらに逆転されたとき、サポーターが歓声を上げた。選手たちは試合前には悲観していただろうが、スタンドの反応で彼らが決勝トーナメント行きの切符を手にしつつあることに気づいたはずである。で、試合終了の笛。チェコvsドイツはまだロスタイム。ベンチに座っていたクライファートもニコニコしながら待っている。昨日のイタリアとなんという違いか。少しして、ドイツが負けたこと確認すると、全員がまるで優勝でもしたかのように、輪になって抱き合って喜んだ。これがあのオランダなのか。いつも大会ごとに内紛を起こして、最後は白人組と黒人組に分裂するあのオランダが、全員で輪になっている! このオランダなら、この先も勝ち進めるかもしれない……。
●では、これからトーナメントに進む前に優勝予想を。チェコもいい、オランダもいい、でもワタシが賭けるなら、イングランドまたはポルトガル。つまり次にこの2チームが対戦するのだが、この勝者がそのまま優勝すると見た。あなたならどこ?

June 24, 2004

イタリア戦に滂沱、ユーロ2004「世間の風は冷たいよ」編

ユーロ2004 イタリア 2-1 ブルガリア
デンマーク 2-2 スウェーデン

●「悲劇的な逆転勝利」といいたい。サッカーにはたまにある。イタリアvsブルガリア、イタリアが勝ち抜くために必要な条件は、最低でも勝利。もし同時開催のデンマークvsスウェーデンが「引き分け」以外の結果に終わってくれれば、イタリアはブルガリアに勝ちさえすればいい(ちなみにワタシはイタリアを応援している。国歌斉唱の時にはブフォンに負けないように大声でイタリア国歌を歌っている←ゴメン、ウソ)。
●しかし(細かい説明は省くが)デンマークvsスウェーデンが2-2とか3-3で引き分けになると、もうイタリアはどんなに点を取っても勝ち抜けないことになっている(=北欧の二国が仲良く決勝トーナメントに進める)。試合前からこの条件は定まっていたので、イタリア側は「デンマークとスウェーデンが予定調和的に2-2にならないように」と釘を刺していた。もちろんデンマークとスウェーデンの立場もはっきりしていた。「われわれはスポーツマンシップに則って、全力で戦う。わざと引き分けるなど論外」。
●イタリアはブルガリアに先制されてしまう。必死に攻めに攻め、同点に追いついたがあと一点が獲れない。しかし試合終了直前、カッサーノの逆転ゴールがついに決まって2-1。カッサーノをはじめ、イタリア代表の選手たちは喜びを爆発させながら、ベンチへ駆け寄る。そして、おそらくベンチのトラパットーニ監督から説明を聞くまでもなくその暗く沈んだ表情だけで一瞬にしてすべてを解したと思うのだが、デンマークvsスウェーデンが恐れていた通りの2-2で終わったことを知る。つい数秒前に歓喜したイタリアの選手たちが、どっと崩れ落ち、若いカッサーノなどは泣きじゃくってキックオフの笛が鳴っても立つことすらできない。ニッポンの「ドーハの悲劇」でベンチで中山が泣き崩れる姿や、虚ろな目のラモスが尻をついて茫然としている様子を思い出した。レッズ・ファンなら2部降格が決まった日の福田のVゴールを想起したにちがいない。サッカーで、こんなに泣ける光景はない。
●でも、言っておく、デンマークvsスウェーデンが2-2で終わるのは「運命」である。イタリアを突き落とし、ともに幸福になれる2-2のスコアで完結することは、ある意味だれもがわかっていた。もちろんデンマークvsスウェーデンは真剣勝負、八百長などでは絶対にないはずだ。選手は全力を尽くしただろう。にもかかわらず「予定調和の2-2」で試合が終わるのは、見えざる手が導く必然、サッカーにおける自然の摂理である。世界はそういう風にできているんである。換言すれば、「不条理の支配」である。
●むしろ北欧二ヶ国よりもイタリアのほうがよっぽどこの種の予定調和とは仲が良いわけで、イタリアにこの摂理に異を唱える資格など微塵もない。デンマークにもスウェーデンにも罪はない。イタリアはこの日を迎える前に勝点を積み上げるチャンスはいくらでもあったのであり、それを逃したに過ぎない。サッカーの神様は失敗に不寛容で、苦境にある者に冷淡である。

June 23, 2004

ジダンのために。スイスvsフランス@ユーロ2004

ユーロ開催地マップ●フツー、今日はクロアチアvsイングランドに関心が集まる日だと思うんだが、裏番組のスイスvsフランスを録画観戦。ワタシはイングランドになじみがなく、一方のフランスにはジダンがいる。ワタシがサッカーを見はじめて以来、最高の選手はマラドーナだが、その次を挙げるとすればジダン。巧くて、強い。しかしそれだけでは憧れない。加えて「楽しい」からジダンなんである。
●ジダンの選手としては頂点は、もしかするとイタリアのユヴェントス時代にあったかもしれない。だが、「楽しさ」では断然、レアル・マドリッドに入ってからである。もっといえば、「昨季のジダン」、これが最高のシーズンだったんじゃないか。
●このスイス戦、フランス代表は引き分けでも良かったためか、全体に緊張感を欠いていた。アンリは体がキレているのに、プレイが軽い。ジダンすらミスが目立った。それでも、ジダンは「あり得ないよ!そんなのっ!」というテクニックを見せてくれる。それだけでも十分。王様の肉体的能力が少し衰えてきたのであれば、みなマケレレを見習って忠実な僕として王に仕えよ。優れた選手はいくらでもいるが、優れていて楽しい選手はそんなに多くはない。

June 22, 2004

ザッパの名言

アンサンブル・モデルンのザッパ●右に挙げたジャケ写はアンサンブル・モデルンの演奏によるフランク・ザッパの「グレッガリー・ペッカリー」なんだが、このCDの話題じゃ全然なくって、とりあえず絵ネタが欲しいから置いただけであって(これはこれで聴いたらよい)、いま知りたいかなと思っているのは以下のフランク・ザッパの有名らしい引用句をあちこちで見かけるんだが、この出典はどこ/なにであるかという程度のことだったりする。

Some scientists claim that hydrogen, because it is so plentiful, is the basic building block of the universe. I dispute that. I say there is more stupidity than hydrogen, and that is the basic building block of the universe. -- Frank Zappa.

科学者は宇宙は水素でできているっていうんだ、宇宙には水素がたくさんあるからね。でもオレは違うと思うよ。水素よりもバカのほうがもっと多い。宇宙はバカでできていると思うんだ。(フランク・ザッパ)

●いっしょに世界に絶望しようぜー、イエーイ!

June 20, 2004

守るが負け。週末のユーロ2004

euro2004ポルトガル.jpg●守っちゃダメだ! 守っちゃダメだ! 守っちゃダメだ! ああ……。
●いくらなんでも全試合を見る時間はないので、なにを見たかといえば、

イタリア 1-1 スウェーデン
オランダ 2-3 チェコ

なんである。イタリアはリードした1点を守るために、次々と攻撃のタレントを下げ、守備職人を投入した。にもかかわらず、スウェーデンに追いつかれた。イブラヒモヴィチのゴールは奇跡のようなゴールで、あれを必然の結果という気はない。しかし、守備を固めた後に追いつかれてしまうと、イタリアに打つ手はない。「守りきる」というイタリア・スタイルが崩壊した。黄昏の指揮官トラパットーニ、旧世代のマフィアのボス。
●オランダとチェコの名勝負もこれと似ていた。2-1とリードし、問題なく試合を運んでいたオランダだが、左ウィングの若手ロッベンを下げて、守備要員のボスフェルトを入れてからおかしくなった。もちろん直接的にはこれも若いタレント、ハイティンハが2枚目のイエローで退場したのが痛かったとはいえ、今の欧州で「守って勝つ」ことの難しさを痛感した。
●とはいってもな、これ結果論だ。ずいぶん多くのシュートがバーをたたいた。ファン・ニステルローイやらネドヴェドやら、あのシュートこのシュート、決まっていれば結果は全然違っていた。それでもこの大会、後から振り返って「守備戦術終焉の大会」と位置づけられる可能性は高い。イタリアもオランダも追いつめられた。第3戦は大変なことになりそうである。

June 19, 2004

クロアチアvsフランス@ユーロ2004

ユーロ2004●いやあ、なにが驚いたかといえば、フランス代表、先発メンバー全員、ほぼ毛がない。ピレスがベンチだったせいもあって、そしてジダンが剃髪したこともあって(この解決策に至るまでは時間の問題だったからなあ)、気がついたらスキン・ヘッドと超短髪しかいない! いちばん髪が長いのがたぶんデサイー(笑)。バルテズ、テュラム、シルヴェストル、デサイー、ギャラス、ダクール、ジダン、ヴィエイラ、ヴィルトール、アンリ、トレゼケ。ほら、11人毛がない。髪の短さで国見高校を超えたね、フランスは。
●つーのは、どうでもよくて、試合は猛烈エキサイティングだった。フランスが1点リードしたところまでは「普通の試合」だったが、後半パタパタとクロアチアが2点取って逆転して、お互いゴールに急ぐ「クレージーな試合」になった。クロアチアのプルショ(モナコ所属)はチャンピオンズ・リーグに続いて、その能力の高さを証明していた。もともとクロアチアの個々の技術は欧州屈指なんだろうから、こういうパワフルなストライカーがいると、どこと戦っても番狂わせを起こす可能性がある。つか、番狂わせなんていっちゃ失礼か。不運なミスと判定で2-2に追いつかれることになったが、きわどい試合だった。
●ロスタイム、クロアチアのオリッチがペナルティエリア内をゴールラインすれすれまでドリブルでえぐって、マイナスのパスを出した瞬間、テレビを見ていた全世界のファンから叫び声があがっていたと思う。ワタシも悲鳴を上げた。録画観戦だったけど……。シュートがはずれて、2-2のまま笛。

June 18, 2004

週アスダッシュ

週刊アスキーダッシュ●「週刊アスキー ダッシュ」創刊号ゲット。表紙がベイダー卿なのが大変よい(立派だ、権利処理とか)。「PC&Netを遊ぶマガジン」という謳い文句で、ネタ的にはむしろ後発だと思うが、ノリとしてはいい感じで脱力していて吉。たとえば「コンピータニュースのピン」(ママ)のTopicsとして見出し「BASIC言語さん 40歳の誕生日おめでとう~!」ときたら、本文はこうだ。

10 PRINT 今年の5月1日で
20 PRINT BASICが40周年
30 PRINT だそうな。

 と続く(わかる人だけ笑ってください)。
●後はアキバのメイド喫茶取材とか、雑誌ができるまでの編集会議日記とか、桜玉吉のマンガとか連載「TMPGEnc男塾」第1回「動画エンコードは漢の花道!!」とか。いいなあ。こういうバカノリのクラシック音楽雑誌があったらいいのにと思っていたこともあったが、現実には絶対ムリなのであきらめている。
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●ふっ。先月いっぱいでWOWOWを解約したのに、紆余曲折ありまくってまた契約しちまったよ、ああ、ユーロ2004。

June 17, 2004

ヨロヨロよれよれリアル・サッカー

●すげえな、このハイペースぶりは! 一頃、年に1試合ペースだったのに、今年は何試合目だ、またしても草サッカーである。日本が、いや世界が欧州選手権で盛り上がっている中、都営グランド借りて草。世界の頂点から都内の最底辺までサッカーの喜びを味わい尽くしているという実感あり(笑)。
●つか、もうヨロヨロ、腰いてえ、足いてえ、しかし手ごたえずっしり。だってですよ、こんなに今まで試合しているのに1回しか勝ったことのない恐るべきわれら弱小チームが、2点リードしたんすよ! ありえん。15分2本終わった時点で、まだ無失点、2-0でリード。ここでさらに10分2本することになったのだが、もうわれわれは体力を使い果たしており、守備大崩壊、サンドバック状態にシュートを浴びて、その多くは外れたが2本決められ、終わってみれば2-2。あーあ、せめて最後の10分1本を止めてりゃ勝ってたんだよ。珍しく、勝ちきれなかったことへの悔しさがこみ上げてきた。
●あ、ここで首をかしげている若者のみなさんに解説。「サッカーで15分とか10分とか言ってるのは、短すぎておかしくないですか?」→ 普段まるで運動してなくてしかも平均年齢30歳余裕で超えてるチームは15分で休憩入れないと死ぬって。ていうか10分でいい。15分2本でもう息ぜえぜえ、45分ハーフなんて論外、人外魔境の域。
●この日、ワタシはチームメイトの伝説のゴールを見れた(草サッカーにおいてすべてのゴールとアシストは伝説である)。美しかった。自分はあと一歩まで近づけたが伝説には至らなかった。
●左からあがったクロスボールに、ワタシはちょうどヘディング・シュートを打てる位置に入り込んだ(ミランのパチユニ着てたので気分はインザーギ)。頭を少し振ってゴールの右を狙ったのだが(ホントは狙ってないがそういうことで頼む)、バーに阻まれた。相手ディフェンスも一緒に頭で競ってきたので、額をぶつけてしまった。一瞬ふらっと来て、あ、切ったかなと思って、手をあててみると幸い血は出ていなかった。あれは流血するほど強く頭を振れば入っていたのだろうか。でも流血はヤだな。ケガも絶対ヤだ。ゴールは伝説だが肉体的代償を求められるものであっていいはずがない。だいたい、前の試合で俺Goal決めたんだから、いいではないか。多くを求めすぎるということは不幸と同義だ。

June 16, 2004

イタリア対デンマーク@ユーロ2004

ユーロ2004●スマソ、またサッカーの話題で。なにしろ欧州選手権はミニワールドカップみたいなものだから。ただ、地上波TBSの放映はあと残り6試合しかないはずなので、この後はポツポツとしか続かないっす。なので非サッカー系のみなさま、どうかご容赦を。
●で、イタリア対デンマークだ。これも本当に見ごたえがあった。スペクタクルに満ち溢れた0-0であり、そのスペクタクルというのはもっぱらデンマークの側にあったんである。前半に飛ばしすぎて後半は少しおとなしくなったが、デンマークがイタリアを圧倒していた。
●もともとデンマークは強い。かつてユーロで代替出場で優勝したこともある(この大会の模様はテレビ東京がそこそこ中継してくれた。ワタシはハイライト・ビデオを後日買ってしまうくらい、この大会を満喫した)。そこまで遡らなくたって、ワールドカップ2002のイングランド戦、あれは不運にもデンマークが負けたのであって、内容的にはイングランドに勝っていた。恵まれた体躯による個人のパワーがあって、さらにチーム・プレイができていて(ピッチをワイドに使って、どんどんボールをまわして、空いたスペースに選手が後ろから飛び出てくる、パスはなるべく強く)、何人か技術が優れた選手がいる。
●イタリアはヴィエリのトップに、トッティとデル・ピエロの二人の「9.5番」タイプを併用する布陣で、この3人のだれかがスーパープレイをしない限りゴールは遠いといった印象。でも事実そういうスーパープレイが出ちゃうからな、イタリアは。中盤で押し込まれていても関係なかったりする。それにしてもヴィエリは黄昏つつあって、心配である(あ、イタリア代表って結構好きだから)。後継者となる9番タイプはいるのか?
●ブフォン、ソーレンセンの両キーパーが超絶技巧を連発して0-0、イタリアは幸運だったと思う。この試合、ベンチも含めてACミラン率(元ミランも含む)が高かった。イタリアに多いのは当然だけど、デンマークにトマソン、ヘルヴェク、ラウルセン。トマソンはPKの笛をもらえずに不服そうだったが、お互い様でもあったから、文句は言えない。

June 15, 2004

フランスvsイングランド@ユーロ2004

ユーロ2004●うわわわわ、ぐぐげげごご、ったくサッカーってヤツぁ!
●午前3時台の中継ってことで、ビデオ録画、次の日は帰宅するまで必死に結果を知るまいとして、慎重にYahoo! Japanやら駅の新聞スタンドやら周囲のすでに結果バレOKなサッカー・ピープルを避けに避け、無事一日遅れの録画観戦に成功。最高だ、ユーロ。
●フランス代表はとにかく巧くて強い。ジダン、アンリ、ピレス、トレゼゲ……。しかもマケレレ、ジダンの後ろで守備するマケレレ、ああっ、これがあるべき正しい姿だ(笑)。キーパーがいまだにバルテズなのは謎だよなあ。どうしてフレイとかじゃないんだろ。でも、フランスがヨーロッパでもっともスペクタクルを見せてくれる代表チームであるのはまちがいないと思う。それにしてもさ、4年前のユーロ決勝イタリアvsフランスのときって、なんて言われてたか。フランス代表の多くのプレーヤーがイタリアでプレイしているから、イタリアvsイタリア2みたいな言われ方だったじゃないっすか。それが今やフランス代表は一気にイングランド化してて、この試合なんてイングランドvsイングランド2じゃないのさ。ああ、激動する欧州サッカー界。
●押していたのはフランスだった。しかしベッカムのフリーキック、あまりにもみごとなクロスボールからランパードが先制ゴール。あのクロスボール、ありゃなんですか。あれはランパードじゃなくて、ワタシがあそこにボケラと突っ立っていても、ゴールになったね(←それは言いすぎ)。ベッカムは本来玄人受けするクロスボール職人であると再認識。
●イングランドの2トップはオーウェンとルーニー。どっちもワンダーボーイだが、確かエリクソンだったかが「オーウェンは完璧なストライカーだと思った。そしてルーニーは完璧なフットボーラーだと思った」といったようなことを言っていた。ワタシはイングランドのフットボールを見ないので、この意味が最初わからなかったのだが、今はわかる。つまりルーニーもオーウェン同様に速くて巧いけど、それ以上に馬力がある強いタイプだってこと。スピードだけじゃなくてパワーでも強引に突破できるし、守備でも競れる。オーウェンは歳をとってもポジションを下げることはできないだろうが、ルーニーはどこまでも下げれる。
●ワールドカップ2002のように、フランスはいきなり初戦で負けてしまうのかと思ったが、ロスタイムに奇跡が起きた。ジダンがゴール前のフリーキックを見事に決めた。これがなぜ味わい深いかというと、レアル・マドリッドではこの位置なら普通はジダンは蹴らない。ベッカムに譲る。そのベッカムは、この日、1アシストを決めたものの、その後PKをはずしている。で、奇跡はこれにとどまらず、イングランドの不用意なミスが原因で、さらにフランスはPKをゲット、これをジダンが決めた。そこで笛。フランスの逆転勝利。あっという間に何もかもが発狂したような展開で、本当にサッカーというのはどうしようもなくおもしろい。

June 13, 2004

サッカー欧州選手権2004 開幕

ユーロ2004●欧州選手権(EURO 2004)がついに開幕。開催国はポルトガルである。ワールドカップが全世界の代表のナンバーワンを決める大会とするなら、「ユーロ」は欧州各国代表のナンバーワンを決める大会である。ワールドカップ同様、4年に一度開催される。ワールドカップとは2年ずらしになっているので、結果的に五輪と同じ年ということになる。
●で、WOWOWが全試合中継するのだが、ワタシはWOWOWとの契約を止めてしまったので、今回はTBSで地上波観戦。いや、「今回は」などといったが、これまで地上波で欧州選手権がまともに放映されたことはなかったと思う(昔、テレビ東京がやってくれたが、日本サッカー不毛の時代だったので、一週間に一試合だったか半試合だったかの中継だった気がする。でもどうせ試合結果は国内で報道されなかったので、たとえ一ヶ月遅れの中継だろうが無問題)。TBSは何試合も中継してくれて、偉い。
●開幕戦はポルトガルvsギリシャ。ポルトガルにはファイナルくらいまで行ってくれる活躍が期待されているんだが、いきなりこれが0-2で完敗してくれて、大会的には大いに盛り下がる(←んなコトバはない)。いやー、みんな苦笑いしたでしょ。ワタシも。
●でもポルトガルって「巧くて、弱い」のが特徴みたいなものだから。サッカーでは「技術」など勝利に必要ないくつもある要素の一つにしか過ぎないことを痛感する。

June 11, 2004

「幸運の25セント硬貨」スティーヴン・キング

幸運の25セント硬貨●スティーヴン・キングの新刊「幸運の25セント硬貨」(新潮文庫)読了。といっても短篇集である。しかも、もともと一冊の短篇集だったものの前半が「第四解剖室」、後半が本書として翻訳されているので、これで一冊というよりは二分の一冊。あとがきがこっちにあるから、つい知らずにこっちだけ買っちゃったんだけど。ま、いいか、短篇集を後半から読んだって。
●キングは初期のホラーから最近作までの数十年間、作風が変わってきているにもかかわらず、どれを読んでもみんな同じようにおもしろいからスゴい。さすがにもう新味はないけど、なくていい。本書でいちばん楽しめたのは「一四〇八号室」。初期のホラー作家時代の名作「シャイニング」と同様、幽霊屋敷ならぬ幽霊ホテルものなのだが、これがムチャクチャ怖い。たとえば「音」の描写。

さきほど力まかせに開けた窓の横でカーテンが漫然とそよいでいる。だが、新鮮な空気が顔に吹きつけてくるわけではない。まるで、部屋がカーテンを吸い込もうとしているかのようだ。五番街を往来する車の警笛はまだ聞こえる。しかし、いまや遥か遠くに。では、サクソフォンの音は? まだ聞こえたとしても、それは甘い音色とメロディを部屋に剥奪され、無調の弱々しい単調音だけになっている。その音から連想されるものといえば、死者の首に開いた穴を通り抜ける風の音、あるいは瓶の口に切断された指を突っ込んで勢いよく抜くときのはじける音、もしくは--。

●この短篇集は肩の力の抜け具合が魅力。次は(全部文庫で出揃ったら)大作「ザ・スタンド」を読まねば。欲を言えば各巻ズボンの尻ポケットに入るサイズで収まってくれるともっとありがたいんだがなあ→「ザ・スタンド」。

June 10, 2004

ニッポン代表vsインド代表、W杯ドイツ大会一次予選

インド●ふー。埼玉スタジアムより帰還。遠い。
●試合は7-0で完勝。大量得点無失点なんだから文句なし。これまでの苦戦した2戦となにが違うかといえば、たぶん準備期間。欧州シーズン中に召集したほとんどぶっつけ本番メンバーと、2週間合宿したチームとじゃ、まるで違う。きっとイングランド遠征も含めてナカタ不要論まで出てくると思うが、そんなものじゃないというか、むしろ今真価が問われているのは中村俊輔か。ゴールもアシストも決めてるのに、試合後に「自分はミスばっかで全然ダメだったんで」とか俯いている。あれ、ワタシがもしチームメイトならカチンと来るだろな。ああいうのは「謙虚」じゃなくて「無責任」。「オレのおかげで勝った」と言ったっていい。せめて内向きの個人採点じゃなくてチームを代表したコメントが欲しいところである。チームでいちばん巧いんだしさ。
●力の差がありすぎたので、周辺的なポイントを挙げると、まず鈴木タカ。コーナーフラッグを用いた一人ワンツーという神業を見せてくれた(笑)。あと、駅を出てすぐのところで、代表のパチもんユニを2000円で売ってたガイジン。スタジアム周辺では良心的な価格である。寒かったので助かった(?)。
●それから青い紙ボードを配るJFA。「選手入場のときに掲げて場内を青で染めましょう……」って、んなの要らないって。だってユニ着用率が異様に高いから、もともと十分青い。代表サポは羊のように従順なのだ。黙っててもユニ買って着てくれる。で、場内アナウンスが「青いボードを掲げてください」って言うと、ほとんどの人が本当に掲げる!! これは心底びっくりするよね。ゴール裏が代表マフラーを振り回し始めると、みんな同じ代表マフラーを取り出して振り回す。とっても生真面目なのだ。まあ、ガラが悪いよりはずっといいから、ダメとは言わないんだけど。うん、いいこと……だよな。

June 9, 2004

いよいよインド戦!

ダルシム●本日はインド戦なり。行ってくるですよ。ドキドキ。勝てるかなあ。一応、対戦前に確認しておくけど、インドは右の絵みたいな風貌したヤツは参加禁止だから。色違いのヤツも含めて、こいつに似たヤツがいたら即刻退場。手足が異様に伸びたり、口から火噴いたりとかはファウル、あとテレポートはどこでやっても全部オフサイド取るんで、そこらへん、よろしく。
●あとさ、
ヨガファイア~
 こういう「ハメ」っぽい極悪無限ループやったら、以後出入禁止ね。

June 8, 2004

ヴァイオリン、悪魔の楽器

アート・オブ・ヴァイオリン●先週末にNHK-BSで「バイオリンの芸術」が再放送されていた(DVDでの題は「アート・オブ・ヴァイオリン」)。改めて見たけど、やっぱりこれっておもしろいっすね。モンサンジョン制作のドキュメンタリーはみんな質が高い。
●海外盤DVDではArt of ViolinのタイトルにDevil's Instrumentの副題が付いているようだが、これは本当に痛感した。ヴァイオリンくらい悪魔的な楽器はない。パガニーニのイメージのせいもあるが、このドキュメンタリーに登場する数々の名ヴァイオリニストの映像を見ていると、みなテクニックなんかとは別の部分で人間離れしていると思ってしまう。
●「電話ボックスで弾いているみたいだ」って言われたのはシゲティだっけ。長身痩躯で貴人の風格でヴァイオリンを自在に操ればそれだけも十分悪魔風だ。ミッシャ・エルマンは水木しげるのマンガに出てきそうで、悪魔を超えて妖怪風。ハイフェッツは機械でできているみたいでメカデビルと呼ぼう。右腕の運動速度が光速を超えていそうな感じだ。メニューインは悪魔じゃなくて神の子、天使、実に神々しい。オイストラフは土の香りがプンプンしてて、体からなにか芽吹いてきそうなくらいの大地の精、巨人。伝説クラスの巨匠はみんな人ではない何かになっている気がする。
●ピアノだと人が作った機械だけど、ヴァイオリンは弾いているうちに人間と楽器が合体しているような雰囲気がある。名刀ならぬ銘器に魂宿るで、弾きこむうちに人間が楽器を弾いているんじゃなくて、楽器が人間に弾かせているんじゃないか、みたいな。映画「レッド・ヴァイオリン」をちょっと思い出した。もっとも、これはやっぱり巨匠の映像だからそう思うわけで、現代の名手に同じような悪魔性を感じるかって言われるとビミョー。

June 7, 2004

Yahoo! Japan対Google、開戦一週間

●5月31日に日本のネット界を大きく変える出来事があって、こりゃあどうなることやらと注視しているわけだが、みなさんのところじゃ何か変化はあり? つうか、サイト持ってる人なら必ず「あり」なんだけど。→ ヤフー、検索エンジンを「Google」から独自開発エンジンに変更
●今まではYahoo!で何かを検索すると、まずYahoo!のディレクトリ・サービスの結果が表示されて、続いて全文検索の「ページ検索」の結果が表示されていた。この「ページ検索」ってのは中身はGoogleとまったく同じものだった。で、これがついに、Yahoo!も初めて自らの全文検索エンジンを持って、自前のものを使うことになったわけだ。しばらく前から米国Yahoo!がGoogleと決別していたので、Yahoo! Japanが追随するのは時間の問題だったともいえる。
●で、このYahoo!の検索エンジン、検索結果はGoogleと大きく異なる。これまで世の中のウェブサイト制作者は「Googleでいかに検索してもらえるか」を考えてサイトを設計してきたのが、一夜にしてその状況は一変したわけだ。ただYahoo!の検索エンジンの精度についてはあまり好評とは言えず、現時点ではGoogleに一日の長があるかもしれない。
●でもさあ、ワタシゃこれ大歓迎なんだよね。確かに今のところ中身はGoogleのほうが優れてるとワタシも思うけど、こんなの一ヶ月先にどうなってるかわからないっすよ。それに、今まで全文検索エンジンが事実上Google一つだけだったっていうのが、すっごく問題大きかった。Googleはその影響力が大きすぎたし、なんていうかその、その割りに日本法人がどうも心配な感じでねえ……。本来、数年前まで全文検索エンジンはいろんなところがしのぎを削ってシェアを争ってたわけで、ワタシとしてはやっと正常な状態に戻ったと思いたい。だいたいGoogle対策でサイトを設計するよりも、フツーに中身を豊かにすることのほうが本来大事じゃん。がんばれ、Yahoo! Japan、ワタシゃ応援しているぞ、少なくともワタシのサイトに「めがねマーク」を付けてくれている間は!(←結局そういうことかよっ!)

June 4, 2004

CLASSICA視覚系ネタ・リンク

●まとめておくと便利な気がしたので、いくつか絵ネタ、テキストネタを以下に。

明哲なる愛玩的動物助手との対話
http://www.classicajapan.com/wn/archives/000016.html

サッカーボール、そのデザインの変遷
http://www.classicajapan.com/wn/archives/000342.html

サブレンジャー!
http://www.classicajapan.com/wn/archives/000490.html

ゲバラ焼肉のタレ
http://www.classicajapan.com/wn/archives/000387.html

芸術は……
http://www.classicajapan.com/wn/archives/000491.html

テキスト・ルートヴィヒ
http://www.classicajapan.com/wn/archives/000169.html

読切小声小説「ぁぃιぁぅョゥヵィ」
http://www.classicajapan.com/wn/archives/000480.html

June 3, 2004

イングランド代表vsニッポン代表

イングランド。イギリスにあらず●大変なことである。場所はマンチェスター・シティ・スタジアム、アウェイにあって、ニッポンは1-1で引き分けた。相手に疲れがあったとかいろんなことはあるかもしれないが、向こうのホーム、しかも欧州選手権前でベスト・メンバーのイングランドが相手、不利なのはニッポンのほうだ。ナカタもいない。
●前半は大人vs子供。ニッポンはシュートどころかボール一つ回せない。イングランドは余裕の球回しで、きれいかつスペクタクルに決めようとしたがために1点しか取れなかったが、その気になれば何点でも取れるという雰囲気。しかもその1失点、楢崎が強いシュートを正面に弾いたために決められたという居心地の悪いゴール。ニッポンは玉田と俊輔がミドルを打っただけ。
●おっと、メンバー書いておかねば。GK:楢崎正剛-DF:坪井、宮本、中澤-MF:加地、稲本(→福西)、小野、アレックス、中村俊輔-FW:久保(→鈴木隆行)、玉田(→柳沢)。
●後半はなんとニッポンがボールを支配。そして気持ちのいいことに小野が同点ゴールを決めてくれたのだが、これがもう、前半に相手がやりたかったであろう「きれいかつスペクタクルな」ゴールで、ざまーみやがれサッカーの母国である。俊輔から左のアレックスへスルーパス、低いクロスボールを入れて小野がダイレクトでピシッ! キーパーの股間を抜けてゴール! 巧い、巧すぎる。
●終了間際、稲本の骨折だけが残念。全治三ヶ月。アジア・カップもムリ、それにシーズンオフの移籍契約交渉に大いに支障をきたしそう。
P.S.次のインド戦、 ダバディ氏のニッポン3-0インドあたりが妥当な予想だろう。

June 2, 2004

光化学スモッグ注意報

これがスモッグ……らしい●えっと、さすがに五輪代表のマリ戦は見れなかったっす。だって深夜というか明日の早朝にイングランド戦っすよ。平日に一日2試合も見れない。つうか、イングランド戦だけでも至難、少なくともナマはムリムリ。
●ところで、この前の日曜日、東京都内全域に「光化学スモッグ注意報」が出てたんすよ。区役所の車が巡回して、拡声器で「光化学スモッグ注意報が出てるから注意すれ~、外出はなるべくするなよー」みたいなことを言ってくれる。えっ、スモッグ注意報? なんだそりゃ。ここは1970年代か!? 今にも怪獣ヘドラとか東京湾に攻めてきそうだ。いや、スモッグだからスモッグ怪獣スモガが来るのか(←知らねーよ)。
●しかしワタシは「スモッグ注意報」初体験かと思ったのだが、年に数回から20回くらいは都内でも出ているらしい。知らなかったなあ。東京都は「東京都の光化学スモッグ注意報等の発令状況」なんてウェブ・ページまで用意してくれて、リアルタイムでオキシダント濃度大速報。メール・アドレスも登録可。登録者にはスモッグ・メルマガが届いて、石原都知事の公害撲滅コラムとか、ヘドラとスモガの公害放談とかそりゃもう記事満載、なわけはなくて、注意報の発令や解除を素っ気なく教えてくれる。

June 1, 2004

「パレード」 吉田修一

パレード●あちこちで評判よさげなので、文庫化された吉田修一「パレード」(幻冬舎文庫)を読む。第15回山本周五郎賞受賞作。登場人物は東京・千歳烏山の2LDKのマンションに暮らす5人の若い男女。家族でも恋人でもないんだけど、成り行きでともに仲良く暮らしている。学生、無職、会社員、みんな適当に快適で稀薄で、まあまあ幸せなような不幸せなような日常を送っていて、絵に描いたようなイマドキの若者たち。
●が、日々は淡々と過ぎていて、表立って何もおきないのだが、読み進めるうちに登場人物5人全員が「壊れている」ことに気づく。本当は全員不幸で全員大きな問題に直面しているにもかかわらず、みな一様に苦悩する自我というものを欠いていて、空気みたいな日常にすすんで埋没してしまっている。5人とも仲がよく、面倒見もいい、それぞれに友達もいて、恋人もいたりいなかったりで、充足しているように見えて、誰もが孤独。フツーすぎる若者という外見と、壊れた人という内面がなんの問題もなく一人物に同居できてしまうという怖さには、リアリティがある。この危なっかしさとは20代そのものっすね。ああ、生きるって大変だね、若者も。
●5人の登場人物を5つの章で、視点を変えながら一人ずつ描いているのだが、後に出てくるほど重症で、仕掛けが巧い。短いので一気読みが吉。オススメ。

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