News: 2011年5月アーカイブ

May 31, 2011

ベルリン・フィル2011/2012新シーズン・プログラム発表。

berlinerphilharmonie_stamp.gifベルリン・フィルが2011/2012新シーズン・プログラムを発表。公式サイトのカレンダーを見ればOK。ツアーの日程も含まれている。
●ざっと指揮者陣の顔ぶれを見るとラトル、アンドリス・ネルソンス、ビシュコフ、メータ、ハイティンク、パブロ・ヘラス=カサド(売出中32歳、来月Music TomorrowでN響を振る)、アーノンクール、イヴァン・フィッシャー、ラニクルズ、ニコラ・ルイゾッティ、バレンボイム(エルガーのゲロ夢)、トゥガン・ソヒエフ(ソキエフ)、ティーレマン、ドゥダメル(ヨーロッパ・コンサート、ウィーン&パリ公演も指揮)、アバド、ブロムシュテット、ヤンソンス、ヤニック・ネゼ=セガン、小澤征爾。見落としあったらスマソ。巨匠たちも健在だが、それ以上に新世代の台頭を感じる。
●全体にエルガーたくさんやるっぽい、詳しく見てないけど。あとはベリオ。でも意外とド名曲も多い?
●で、11月には日本公演の予定が掲載されている。11月22、23、24日で、指揮はもちろんラトル、演目はマーラーの交響曲第9番と、ブルックナーの交響曲第9番&細川俊夫のホルン協奏曲「開花の時」(シュテファン・ドール独奏)他。サントリーホール2公演はいいとして、もう1公演はミューザ川崎となっているのだが果たしてこれはどうなるのだろうか。
※追記(6/1) 公式サイト上で発表された上記日本公演の予定は、本日時点では削除されています。

May 27, 2011

映画「プッチーニの愛人」(パオロ・ベンヴェヌーティ監督)

プッチーニの愛人
●プレス試写で映画「プッチーニの愛人」(パオロ・ベンヴェヌーティ監督)。いやあ、こんな映画だったとは。今年はクラシック音楽映画の当たり年で、これまでにも「ショパン 愛と哀しみの旋律」「ナンネル・モーツァルト 哀しみの旅路」「マーラー 君に捧げるアダージョ」をご紹介しているが、最後に真打ち登場といったところか。映画作品としての完成度という点では、4作で断トツだと思う。
●映画の題材となっているのは「ドーリア・マンフレーディ事件」。一般に知られる史実を簡単に振り返っておくと、オペラ「西部の娘」を作曲中に、プッチーニ家の女中ドーリア・マンフレーディが、プッチーニの妻エルヴィーラに夫との関係を疑われたことがきっかけで毒薬を飲んで自殺してしまうという悲劇的な事件である。嫉妬深いエルヴィーラはドーリアを執拗にいじめ抜き死へと追い込んだ。死後、検死によりドーリアの潔白が証明されたという……。
●まるでプッチーニのオペラの中の出来事のような話だ。ワタシは漠然とロマンス要素の多い映画を予想していたのだが、これが全然違っていた。なにしろこの映画、台詞というものがほとんどない! もっぱら映像で物語を描く。そして、その映像美が圧巻。景勝地トッレ・デル・ラーゴが美しいということももちろんあるが、自然の風景の美しさがそのまま美しいのではなく、一つ一つのカットが計算高くデザインされているという意味での美しさ。台詞がないだけではなく、音楽もごくわずか。物語性すら稀薄。その代わり、目を見張るような映像が次々とあらわれる。すばらしい。画面は4対3。
●なので、賢明にもプッチーニの名アリアが全編に流れる、みたいなことにはなっていない。その代わり、「西部の娘」を作曲中のプッチーニがピアノに向かっている場面はいくつもある。これがいいんだな。ピアノで弾かれる「西部の娘」は(物語が剥ぎとられると)ずいぶん斬新に響く。究極の人工物のような音楽と風光明媚なトッレ・デル・ラーゴが鮮やかな対比を作る。ちなみにプッチーニ役の人は本当にピアノが達者な人。役者じゃなくて本業は音楽家なんだとか。道理で。
●なお、この映画には余計な説明がない。プッチーニが「ミニーとジョンソンが……(ぶつぶつ)」とか独り言をつぶやくとき、それが「西部の娘」の登場人物の名前だということを見る側がわかってあげる方式。
●あ、あと最後にこの映画のいいところをもう一つ。ドーリア・マンフレーディがぜんぜん美少女じゃない。かわいくもない。むしろ、いい子なのに見ていると無性にイジメたくなるタイプの女の子。よもやエルヴィーラの気持ちに共感できようとは(笑)。いるよね、こういうイジメ誘発型タイプの子。慧眼。

「プッチーニの愛人」/6月18日(土)より東京・シネマート新宿、7月2日(土)より大阪・シネマート心斎橋ほか全国順次ロードショー/配給:エスピーオー/宣伝:マジックアワー/原題:Puccini e la fanciulla/photo © Arsenali Medicei S.r.l.2008
May 26, 2011

ケント・ナガノ、青学オケを振る

●なんと、ケント・ナガノが東日本大震災復興支援チャリティ・コンサートとして、青山学院管弦楽団を指揮する。6/5(日) 、青山学院講堂でドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」他。世界的指揮者が学生オケを指揮するという例はこれまでもなくはなかったと思うが、チャリティとして指揮者側から要望されるのは稀有では。入場料は1500円、学生オケだから。本日よりチケット発売。


●謎のノリ。日本レコード協会 キャンペーン“LOVE MUSIC”「著作権法30条1項3号読上げコンテスト」。「著作物は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者(もの)が複製することができる」とかいうあの条文を「個性豊かに読み上げているご自身の映像を募集」という企画。最優秀作品は同協会サイトで半年間公開されるという。なんかモンティパイソンのワンコーナーみたいな話なんだが……。

May 25, 2011

ヴロンスキー/読響、佐渡裕/ベルリン・フィル情報

グスタフ・マーラー●23日(月)はペトル・ヴロンスキー指揮読売日響定期公演へ(サントリーホール)。凄まじいマーラーの交響曲第5番だった。極太マジック握って筆圧200%くらいで描いたような濃厚なマーラーで、ホールの空間が大音響で飽和した。遅いテンポで粘りながら巨大な音楽を作る。客席はすごくわいていた。猛毒注意。今でもこんなマーラーがあるんだ……。ヴロンスキ-は1946年、プラハ生まれ。ズデニェク・マーツァルの代役で24年ぶりに読響に登場したというんだけど、それでこれだけ自分の色に染め上げてしまうんだからスゴい。第3楽章はオブリガート・ホルンを後ろで立たせる方式(たまたま少し前にベルリン・フィルのDCHでこの曲を観たんだけど、そのときはラトルがドールを指揮者の横に立たせていた。あれは違和感があってなじめないなあ)。ヴロンスキ-のはレントラーなどという優雅なものでは到底なかったが。
●そういえばベルリン・フィル、DCHで先日の佐渡裕指揮の武満&ショスタコーヴィチ公演が本日20時以降にアーカイブで公開されるそうなので、早く見たいという方はどうぞ。24時間チケット9.90ユーロがいちばんお手軽だが、どうせなら30日チケットとかで他の公演も楽しむのが吉。佐渡さんの公演だけでいいのなら、6月11日(土)のNHK BSプレミアムシアターで放映されるので、それまで待てばいいわけだし。

May 23, 2011

週末オレ音楽祭開催

●先週末は金、土、日の3日間に演奏会4つとサッカー観戦1試合を詰め込んで、勝手に自分フェスティバル状態。たまたま予定が全部重なったから。LFJが縮小開催だったことの反動が今頃来たと仮定してみたくなってが、どう考えても偶然。
●20日(金)は白寿ホールへ。「あなたは聴きますか、眠りますか、それとも……」という挑発的なキャッチが印象的なリクライニング・コンサート・シリーズで、若林顕のピアノによるラフマニノフ・プロ。コレッリの主題による変奏曲、10の前奏曲op.23他。自分にとってはやや縁遠い音楽なので(ラフマニノフが)、濃厚なロマンティシズムと圧巻のヴィルトゥオジティを新鮮な気分で堪能。昼の休憩なし短時間公演ってすごく贅沢。あと、ここは場所が贅沢。このホールには原宿駅から代々木公園を通って歩いて行くのが断然いい。今、代々木公園の薔薇園が見事に咲き誇っている。くらくらするような薔薇の香りがあたりに立ち込めていて、この強く甘い芳香は、もちろんこれから聴くラフマニノフを予告していたわけだ。いやそんなわけない。でもそう(どっちなんだ)。帰りも薔薇園を通った、もちろん。
●20日(金)夜はすみだトリフォニーでアルミンク指揮新日本フィル。久々の定期、そして新国「ばらの騎士」キャンセルをしたアルミンクが来日。で、アルミンクにまつわる物語が今たくさんありすぎるんだが、それに触れようとすると元気がなくなるので全部スルー。新日フィルの演奏はすばらしかった。ブラームスの二重協奏曲(ソリスト二人とも変更あり。タチアナ・ヴァシリエヴァとアリッサ・マルグルス)での深い響きも美しかったし、感動的なマルティヌーの交響曲第3番(1945)を聴けたのも嬉しい(昨年の都響は聴けず)。この悲劇的な作品は追悼の音楽、祈りの音楽であるにちがいなく、偶然だがこれが震災後の演目になっていたという巡りあわせに感慨を覚える。マルティヌーはあまりに多作家すぎて焦点を合わせにくいと思ってたけど、今後少なくとも交響曲作家としての注目度はどんどん高まっていくんじゃないだろうか。
●21日(土)は昼にJFLの横河武蔵野FCの試合をご近所観戦して、夜はオーチャードホールでレ・フレール公演へ。3rdアルバム発売記念ライブPIANO SPATIAL in TOKYO。今回のツアー・パンフレットに原稿を書かせていただいたご縁あり。ニューアルバムPIANO SPATIALに収録された曲目が中心で、ブギウギもあればハードロック調の曲もあれば抒情的な作品もあるという多彩な内容。彼らの曲はピアノ・デュオだからできるという作品が多いんすよね。片手でピアノの弦を押さえて音色を変化させるミュート奏法を多用するのも、デュオだからいろんな可能性が広がる(1本使ってもまだ3本残る!)。デュオならではの音の厚みはとても豊かでゴージャスなものだし(ピアノは常にベーゼンドルファー・インペリアルを使う)、ステージ上と客席とのコミュニケーションも自然体でうまい。いや、うまいというか、レ・フレールから「いい人オーラ」が発散されて、あたたかい雰囲気が自然と醸成される。ちなみに0歳児から入場可。家族連れも少なくない。乳幼児はもちろんずっと静かにはしていられない。でも、なんの問題も感じなかった。これはきっとレ・フレールだから。
●22日(日)は所沢ミューズでピョートル・アンデルシェフスキのリサイタル。前日のサントリーホール公演では開演前に特殊な演出があったそうだが、所沢公演はノーマル。演目も少し違ってオール・バッハ。イギリス組曲第5番ホ短調、フランス組曲第5番ト長調、休憩後にイギリス組曲第6番ニ短調というやや短いプログラム。これはもう最強に強まってた。精緻で洗練されていて、情感豊かで、快活で、鬱屈してて、シリアスで、チャーミングで、躍動感にあふれ、静かで、みずみずしい。現存するピアニストからこれ以上のバッハを聴けるという可能性を想像できない。聴いていて、毎秒毎秒演奏会が終わりに近づいていくということが悲しくてしょうがなかった。アンコールも弾いてくれたですよ、シューマンの「森の情景」から「孤独な花」「宿」「別れ」の3曲。「別れ」を弾いたらそりゃもうオシマイってことなわけだけど、でも「2周目」やってほしかったな、もう一回最初のイギリス組曲第5番から(←ムチャクチャな要望だ)。永遠に終わるな、と念じたが、終わった。
●ちなみに大ホールの公演だったこともあり、客席は3分の1も埋まっていなかったと思う。2500円(LFJ並みじゃないか)で最高のピアニストを聴けたのに。一瞬、所沢はどうなってるのか、市の文化振興事業団はちゃんと宣伝したのかと思ったが、たぶんそれはまちがってて、お客さんの集中度はものすごく高くて、みんな固唾を呑んで聴いているのが伝わってきた。アンデルシェフスキを聴きたいって思ってる人だけが集まって、とても熱心な、アーティストを歓迎し敬愛する空気が生まれていた。関心のない人で無理に客席埋めるより、このほうが正しいのかも。公共のリソースの使い方として。

May 18, 2011

METライブビューイング「カプリッチョ」

シュトラウス●昨晩はMETライブビューイング「カプリッチョ」へ。ウルトラ・ハイコンテクストな自己言及オペラ、メタオペラ。R・シュトラウスが1941年に作った最後のオペラは、あらゆる楽屋オチ的な笑いと洗練されすぎた老人の音楽に満ちあふれている。物語らしい物語はない(登場人物もそう言っているように)。伯爵夫人マドレーヌ(ルネ・フレミング)をめぐって、作曲家フラマンと詩人オリヴィエが恋のさやあてをするという構図に、舞台芸術における音楽と言葉のどちらが優位かという議論を重ね合わせる。グルックの話題が出るとオーケストラが「タウリスのイフィゲニア」を奏でるといったように引用満載、仕掛けが多すぎてどこまで受け止めることができているんだか。若い作曲家と詩人はそれぞれ伯爵夫人に愛を告白する。しかし伯爵夫人はどちらか一人に決められない、いったい音楽と言葉のどちらを選べばいいのか。恋と芸術論のバトルは、兄伯爵と劇場支配人ラ・ローシュを巻き込んで、新しい提案を生み出す。だったらキミたち、作曲家と詩人なんだから力を合わせてオペラを作ったらどうだろう、題材は……そう、今まさに起きている今日この日のことをオペラにしてみたまえ! つまり、客席のワタシたちはそうやって出来上がったオペラを鑑賞しているのだ。という意味でメタオペラ。
●そもそもオペラってどうよ。兄伯爵の問いかけはワタシたちが抱く疑問そのもの。「言葉なんていいよ、どうせ聞き取れないんだから」「レチタティーヴォってなにあれ、つまんないよね」。女優クレーロンはいう、「あたしは平気よ、死にながら歌ってても」。ハハハ……。そして、さあ目と耳を楽しませようと唐突にバレエとイタリア人歌手の余興がさしはさまれるというオペラのセルフ・パロディ。これが実に笑える。特にイタリア人歌手の男女が大見得を切りながらイタリア的歌唱をこれでもかと戯画的に繰り広げる場面は、ジョン・コックスのわかりやすい演出もあって抱腹絶倒。オペラの伝統へのパロディであると同時に、この唐突な娯楽的挿入はまさにシュトラウス本人が「ばらの騎士」で鮮やかな成功を収めている方法そのものなわけで、二重にパロディになっていてますますおかしい。
●劇場支配人ラ・ローシュの人物像、好きだなあ。オレの偉大な出し物を見ろといって繰り出すのは大時代的な古めかしい題材。やれやれ。若い作曲家と詩人は彼をとことんおちょくる、なんという化石的芸術観。しかしラ・ローシュは古風な人物なりの言い草で若者たちをたしなめる。おまえらまだ青二才、あそことここがまだまだなっておらん(若者はしゅんとする)、オレは偉大なる伝統を作ってきたのだ、時代を代表する作品を作ってみろ。でも、いざオペラを作るとなると、くどくどとわかりきった忠告を若者にしてしまう(年取るとみんなそうなる)。その忠告の一つに「オケを厚くしすぎると歌が聞こえなくなる」とかあるのがまたおかしい。それ自分で言うか、シュトラウス。で、ラ・ローシュは自分がオペラの登場人物になるとなったら、つまらない自尊心を抑え切れずに、「オレが舞台から去る場面は印象に残るカッコいいものにしろよ」的なことを言うんだが、そう言ってる矢先にジミ~に舞台から追い出されてしまうという趣向になってて、これも気が利いている(メトのお客さんも笑い声をあげた)。
●以前にもルネ・フレミングがこの役を歌った映像を見た記憶があるんだが、あれはどこの舞台だったっけな……。ルネ・フレミングでさえ少しずつ年をとるのだな。この日、主役は声のコンディションがよくなかった。中継だから編集もできない。でも客席からは大ブラボーだったが。指揮はアンドリュー・デイヴィス。いちばんおしまいのところ、お客さんの拍手がうっかりフライングで出てしまった。たまたまそうなったんだろうけど、それすら仕組まれたセルフ・パロディのように錯覚してしまう。シュトラウスは「私は自分自身より長生きした」って言ったんだっけ。オペラ追悼。一幕による美しすぎる弔い。

May 12, 2011

METライブビューイング「オリー伯爵」

METライブビューイングでロッシーニの「オリー伯爵」。初めて観る演目だが、これは文句なしにすばらしい舞台。これまでに観たMETライブビューイングの中でも一、ニを争う満足度の高さ。フアン・ディエゴ・フローレス、ダムラウ、ディドナートという歌手陣は信じられないような見事な歌唱を聴かせてくれるし、バートレット・シアーの演出は才気にあふれてて本気で笑えるし、衣装はどれもこれもかわいいし、オケはいつものようにうまいし、話は際どいし(第2幕、あんな展開になるなんて)、コメディとして完璧。世の中、こんなに美しくて愉快なものはそうそうない。
●幕が開けてすぐ、色男のオリー伯爵が隠者に扮して登場するんだけど、こんなに甘い声で歌う隠者がどこにいる。フアン・ディエゴ・フローレスの扮装だけでもおかしい。ダムラウは歌は最高だろうけど容貌的にどうなのかなと思ったら、なんかかわいいんすよね、キャラが。幕間インタビューでダムラウとディドナート(小姓役)が仲睦まじくというか、イチャイチャしてる(!?)雰囲気とか妙にドキッとする。女同士なのに。いや、ラストシーンはそんなもんじゃ済まないんだが。
●オペラで「笑い」をとるには、歌がスゴいってのが一番の近道かも。痛快だから笑える。あと、これはワタシだけかもしれないんだけど、喜劇は笑ったもの勝ちだけど、悲劇は泣いたもの負けって気がする。
●フローレスはこの日、子供が誕生したって言うんすよ。前夜一睡もしてなくて、開演30分前に赤ちゃんが生まれて、それからダッシュで劇場に駆けつけた、と。で、それが自宅で水中出産だったっとか。なんか、ニューヨークのセレブ!って感じがするよなー、知らんけど。

May 9, 2011

LFJ新潟と鳥栖、そしてヴォーチェス8

●東京のLFJが終わって、この週末はLFJ鳥栖、LFJ新潟がそれぞれ成功を収めたようだ。現地からの反応を見ても、初開催の鳥栖はかなり盛り上がった模様。きっと東京とはぜんぜん別種の楽しさがあったんだろうなあと想像する。食い物充実度も高そうで「食のシンフォニー」とか見てるとうらやましくなる。
ベートー弁当●あとLFJ新潟は「うんめぃ広場」があって、そこで「新潟のおいしいものがぎっしり詰まったベートー弁当」が売ってるっていうんすよ。すばらしすぎる。「うんめぃ広場」に「ベートー弁当」っすよ! 東京はネオ屋台村とか名乗って気取ってる場合ではない。来年は地上広場を赤の広場と名づけるしか。
●忘れないように書いておくと今年東京のLFJで印象に残ったアーティストナンバーワンはヴォーチェス8。なにがすごいって、毎日猛烈な勢いであらゆる場所に出演しまくって、それでいてずっとにこやかだったこと。彼ら、何ステージこなしたんでしょう。前夜のスペシャルコンサートから始まって、3日間で有料公演の出番が5回、それに加えて少なくとも4日は当日発表で展示ホールで1回、地上広場で1回、5日は地上広場で1回。さらにOTTAVAのサテライトスタジオにも4日と5日に出演してトトロ歌ったし(器楽奏者ならインタビューを受けるだけで済むけど、ボーカルアンサンブルだと歌うことになる!)、3日はエリアイベントとしてマルキューブでも1回出演している。
ヴォーチェス8
●こんだけ歌わされたらヤになりそうじゃないすか。ところがヴォーチェス8はずっとニコニコしながら「初めて日本に来ることができて嬉しい!」という顔で歌いまくった。いくら若くても疲れてないはずないと思うんだけど、1mmもそんなそぶりを見せずに、最後の最後まで朗らかにしていた、8人全員で。
●舞台芸ってこういうことなんすよね、きっと。お客のほうはいつだって一期一会、初めてのヴォーチェス8体験なんだもの。「トトロ」とか、仮に飽きるほどやってたとしても、毎回「ほらほら、みんなの知ってる歌、うたっちゃうよ、この曲って楽しいよね(ニコ!)」って歌うから、お客さんが目を輝かせる。ヴォーチェス8への好感度がマックス高まった。

May 6, 2011

「ラ・フォル・ジュルネ」2011、東京は閉幕。来年のテーマはロシア音楽を予定

東京国際フォーラム

●東京のLFJ2011は無事閉幕。震災の影響で一時は中止かとまで伝えられていたことを考えると、規模は縮小したとはいえ、よく「タイタンたち」のテーマが生き残るほどの公演数が実現したものだと思う。90公演に対してチケット販売数は4万5千枚(速報値)。販売率にすると97%。ほぼどの公演も売り切れていた。といっても朝9時台までは意外と当日券がたくさん出ていて、かなり選べる状況だった。のべ来場者数は14万人(東京国際フォーラム館内のみ。周辺エリアは除く)。有料公演90と無料プログラム85をあわせて総公演数は175公演(周辺イベント除く)。
●来年については、連休中のどこかの3日間で開催することになっており、内容については構想中の段階だが、ルネ・マルタンのプランとしてはロシア音楽を取り上げたいとのこと。「五人組からスタートして、チャイコフスキー、スクリャービン、ラフマニノフ、さらに20世紀の音楽であるショスタコーヴィチやシュニトケも、そして21世紀の音楽としてグバイドゥーリナも演奏する」という。記者懇談会の後、OTTAVAのサテライトスタジオでは「まだどうなるかわからないが、グバイドゥーリナ本人を呼びたい」とも。
●なお、東京以外の地方のLFJについても、来年は「ロシア音楽」を共通のテーマにしたいと語っていた。

May 2, 2011

「ラ・フォル・ジュルネ」開幕&映画「マーラー 君に捧げるアダージョ」

キッズプログラム●いよいよ明日より東京の「ラ・フォル・ジュルネ」も本公演がスタート。今年は震災の影響でチケット発売後にプログラムの組み直しがあったり、使えないホールがあったりで大変な混乱の中でようやくここまでたどり着いた。果たして普段の年とどう雰囲気が違ってくるのか(あるいは違わないのか)見当もつかないんだけど、なにより「無事」であることを願う、すべてにおいて。
●写真はキッズプログラムの会場設営をのぞいたときに見つけたブラームス。なんか、かわいいぞ。
●今年も「ラ・フォル・ジュルネ公式レポートブログ」開設中。すでにいくつか記事が更新されています。3日~5日まではそちらをご覧ください。
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●大型連休中の映画の話題を一つ。映画「マーラー 君に捧げるアダージョ」(パーシー・アドロン&息子フェリックス・アドロン監督)が渋谷ユーロスペース他で公開中。これはマーラーとアルマの関係を軸にした映画で、史実にもあるように思い悩んだマーラーが精神分析医フロイトのもとを訪ねるシーンなどが描かれている。建築家グロピウスとか指揮者ブルーノ・ワルターとか画家クリムトとかいろんな実在の人物が登場する。マーラーの神話性を剥ぎ取る映画とでも言えばいいのか、個人的にはかなりコメディ要素を感じたんだが(さっきまで演技をしていた役者が突然客席側に向き直って、スクリーンからお客に語りかけたりする。ええっ、そうなの?)、どこまでシリアスなのかよくわからない。作曲家ツェムリンスキー役がすごーくいい味を出している、変態っぽくて。音楽はサロネン指揮スウェーデン放送交響楽団が新たに録音。
salonen_conducts_mahler.jpg●なお、ユーロスペースではこの映画のためのミュージック・メイキング「サロネン・コンダクツ・アダージョ」をレイトショーで併映。こちらの中身は未見。サロネンの録音風景。45分。

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