2020年3月アーカイブ

March 31, 2020

庭先は多摩湖

庭先は多摩湖
●日曜日の東京は雪と寒さで、とても外出しようという気分になれない天気だった。この感染状況では「恵みの雪」だったか。週が明けて月曜日、仕事上の必要があり都心に出たが、普段よりも空いているとはいえ、体感的にはけっこう人は多い。お店も開いている。そりゃそうだ。閉めたほうがいいとわかっていても、閉めたら収入が途絶える。日本医師会幹部からはもう緊急事態宣言を出す時期という声があがった。新型コロナウイルス感染者数マップの左下で「日次累計(対数)」を選ぶと、グラフは3月中旬くらいに一時ゆるやかになりかけたように見えて、先週半ばくらいからまた急峻になっている。個人的にはもういつ発令されてもおかしくない状況だと感じている。
●訃報が続いてしまうが、志村けんが世を去った。子供の頃は「8時だョ!全員集合」を夢中で見ていた。志村けんでまっさきに思い出すのは「東村山音頭」。地方出身者には地名がさっぱりわからず、東村山はおろか、歌詞に出てくる「庭先ゃ多摩湖」も「狭山茶どころ」も意味不明だったが、わからないまま歌っていた。「たまこ」は女の子の名前なのかと思っていたほど。大人になって多摩湖ウォーキングに出かけた際は、「そうか、これがあの東村山音頭の多摩湖なのか」と感慨深かった。

March 30, 2020

クシシュトフ・ペンデレツキ逝去

●3月29日、ポーランドの作曲家、クシシュトフ・ペンデレツキ逝去。86歳。AFP通信の訃報では、作品が映画「シャイニング」やドラマ「ツイン・ピークス」他で使用されたことが紹介されていた。
●日本語メディアならまっさきに挙がるのが、トーン・クラスターの使用例としてよく言及される「広島の犠牲者に捧げる哀歌」。よく覚えているのだが、まだ自分が10代だった頃、そんな曲名の作品があることを知って感激した。世界的な作曲家が広島の犠牲者に思いを寄せて曲を書いてくれたなんて! ところが、すぐに曲は当初「8分37秒」と題されていて、作曲後に「広島云々」というタイトルに変更されたとなにかの本で知って、すっかり混乱してしまった。そんな都合のよい話があるものか、それでは曲と広島はなんの関係もないではないか、と(実際、関係ないわけだが)。
●訃報では映画「エクソシスト」の音楽を手がけたという紹介も多い。ただし、「エクソシスト」の音楽といわれて多くの人が思い出すのは、ペンデレツキではなくマイク・オールドフィールドの「チューブラー・ベルズ」じゃないかって気はする。

March 27, 2020

ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2020は開催中止に、「東京・春・音楽祭」も以後の公演を取りやめ

ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2020が開催中止になってしまった……。震災の年ですら規模を縮小して開催した音楽祭だが、なにしろ現状では海外から人を呼べない。国内の感染状況も含めて5月にどうなっているのか、だれにもわからないが、これだけ大規模で複雑に入り組んだプログラムを掲げている以上、「企画の維持は困難」というのももっともな話。ルネ・マルタンは「ベートーヴェンの交響曲第5番では、運命の扉が4回たたかれます。今、まさに運命が扉をたたいています。しかし私たちはより強くなることができるでしょう。ベートーヴェンの音楽がこの困難から立ち直る力となり、私たちがより博愛に満ち、より人間らしくなれることを願っています」とメッセージを寄せている。
●ナントの来年のテーマは知らないが、2021年を「逆襲のベートーヴェン」にできないものだろうか。ベートーヴェン・イヤーがウィルス禍に屈するのは惜しすぎる。
●一部を中止、一部を開催で抵抗してきた「東京・春・音楽祭」も、本日以降の全公演が中止になった。N響の4月定期公演もスラットキンが来日できず、公演中止。ただし代役を立てて各プログラムの1日目のみ無観客で演奏して、FM生放送とTV収録を行なう。さまざまな方策を練っていたようだが、クルレンツィス指揮ムジカエテルナも公演中止。先日、一泊二日で沖縄まで行って取材してきた琉球交響楽団は、4月6日の東京公演が6月12日に延期になった(中止ではなく延期なのは救い)。嵐が続いている。

March 26, 2020

フェスタサマーミューザKAWASAKI 2020 開催概要発表

フェスタサマーミューザKAWASAKI 2020 ビジュアル
●やりませんという話題ばかりでは気が滅入るので、これからやりますという話題をひとつ。毎夏、ミューザ川崎が開催する「フェスタサマーミューザKAWASAKI 2020」のラインナップが発表された。今年は7月23日から8月10日まで。オーケストラの12公演を中心に、ピアノ、オルガン、こどもフェスタ等を含む全19公演が開催される(昭和音楽大学テアトロ・ジーリオ・ショウワの2公演を含む)。今回も首都圏のオーケストラが競演するわけだが、群馬交響楽団がゲスト参加する。キービジュアルは上に掲げたように一新され、ファンキーなバッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、マーラーたちが出迎えてくれる。
●そして、全体の主役ともいえるのが生誕250年のベートーヴェン。この音楽祭はいつも特定のテーマを設けないが、さすがにベートーヴェンは主役級の大活躍。バッティストーニ指揮東京フィルの三重協奏曲や、久石譲指揮新日本フィルの交響曲第7番、高関健指揮群馬交響楽団の「第九」など。
●開幕公演はノット指揮東響のラッヘンマン「ドイツ国歌を伴う舞踏組曲」(ロータス・カルテットが共演)とマーラーの交響曲第5番。ほかに新味のある曲目としては、川瀬賢太郎指揮神奈川フィルと石田泰尚がフィリップ・グラスのヴァイオリン協奏曲第1番を、反田恭平と務川慧悟、下野竜也指揮読響がプーランクの2台ピアノのための協奏曲を演奏する。
●例年だとミューザ川崎で記者発表が行われるのだが、今年は新型コロナウイルス感染拡大防止のため開かれず。さすがに夏にもなれば公演は無事開催されるものと願うばかり。

March 25, 2020

さらなる公演中止と延期

●昨日24日、新たにいくつかの公演の中止、延期が発表された。新型コロナウイルス感染症対策専門家会議を受けて、3月23日に東京都は新たな対応方針を発表、大規模イベント等については4月12日までの間、現在の対応方針を継続することに。東京都の対策サイトには新しい対応方針が掲載され、医療体制と経済状況の認識なども含めて簡潔にまとめられている。特に東京は人の移動のハブとなっていること、感染の検出困難な若年層人口が多いという点で特殊性があると指摘されている。他地域に比べて大規模な流行が起きやすいことは、直観的にも容易に納得できる。
新国立劇場は4月7日からのオペラ「ジュリオ・チェーザレ」を含む、4月12日までの主催公演を中止にすると発表。また、東京交響楽団は当初開催すると発表していた3月28日の定期演奏会、鈴木優人指揮によるバッハ~メンデルスゾーンの「マタイ受難曲」を8月に延期する。延期に伴って会場はサントリーホールからミューザ川崎に変更される。さらにKAJIMOTOが、3月29日の「荘村清志 スペシャル・プロジェクト Vol.4」を中止と決定。先日、シフのリサイタルを開いてくれたKAJIMOTOだが、今回は断念することになった。
●先週の時点では少しずつ公演の再開を探る動きが出てくるのではと期待していたが、少なくとも東京はそうはなっていない。
●一方で、先週末の22日、さいたまスーパーアリーナでは格闘技イベント K-1 WORLD GPが埼玉県知事の自粛要請(←矛盾した日本語だ)を押し切って、予定通りに開催された。観客6500人が入場したそう。開催の妥当性は脇に置いて(どういうイベントなのか知らない)、一般論として民間事業者がいつまでも事業を自粛し続けたら経営破綻するしかない。大規模イベントを止めるという決断にインセンティブが働くような仕組みがないと、同様の事例は続くんじゃないだろうか。

March 24, 2020

無観客公演と無観客試合と「タッチ」

●無料開放中のベルリン・フィルのデジタル・コンサート・ホール、最後のライブは3月12日のラトル指揮によるバルトークの「管弦楽のための協奏曲」他。この公演は無観客で中継された。「管弦楽のための協奏曲」を聴いたが、ラトルが指揮台に立っていると一瞬、彼がシェフだと錯覚してしまう。一番フルートはパユでもデュフォーでもなく、ミヒャエル・ハーゼル。ファゴットの女性はだれなんだろう。気合の入った演奏で途中から無観客であることを忘れてしまったが、ラトルが両腕を大きく開き、終楽章のコーダが壮麗に閉じられた後、なんの反応もないことに虚を突かれる。ラトルは小声でオーケストラのメンバーにメッセージを告げ、そのあとは割とあっさりと解散。なんだか残酷な場面を目にしてしまったような気分になる。
●もうひとつ、映像ストリーミングサービスといえばDAZNも大変だ。なにしろあらゆるスポーツで試合が行われていない。サッカーの最新の試合は(練習試合を別とすれば)3月13日のヨーロッパリーグで、フランクフルト対バーゼルのハイライトが置いてある。こちらも無観客試合。フランクフルトは鎌田大地と長谷部誠のふたりの日本人選手が先発するも、次々と失点して0対3。観客がいないので、マイクが拾うのはベンチからの声ばかり。トレーニングを見ている気分にしかなれないし、選手もふだんと同じ熱でプレイできるはずがない。たとえ世界中に中継されていても、客がいないプロスポーツは成立しないと実感する。
●なんにも試合がないのにDAZNと契約していても意味はない。ないけど、当面解約する気はない。スポーツ一覧を眺めると、サッカー、野球、モータースポーツ、バスケットボールなどと並んで、アニメがある。はっ、アニメ? 「タッチ」の第1話から第101話まで、ずらりと公開されていた。そうかー、その手があったか―。今、見るべきはメッシでもなく、モハメド・サラーでもなく、浅倉南だ!?

March 23, 2020

「1%の成功をつかむ、99%の準備力」(霜田正浩著/朝日新聞出版)

●こんな本が出ていることに気づかずに、やっと読んだ、「1%の成功をつかむ、99%の準備力」(霜田正浩著/朝日新聞出版)。書名が完全にビジネス書のノリだし、著者名が目立たなくて、代わりに帯のカズばかりが目に入るという今どきの作りなのだが、著者はレノファ山口の霜田正浩監督。というか、日本代表のサッカー協会技術委員長としてザッケローニ、アギーレ、ハリルホジッチという3人の監督を招聘した人といったほうが通りがいいかもしれない。FC東京やJEF市原・千葉のコーチを務めた後、日本サッカー協会入りし、その後、ベルギーのシント=トロイデンVVのコーチを経て、2018年にレノファ山口の監督に就任した。
●中身もビジネスパーソン向けになっていて、一言でいえば「何事も準備が大事」という話をくりかえしている。サッカー・ファンとしてはせっかくこれだけ稀有な体験を重ねてきた人なんだから、もっとサッカーの話に特化してくれよと思わなくもないのだが、それでも貴重な話がいくつもある。やはりおもしろいのは代表監督との交渉の大変さ。ファンが想像するよりもずっと多くの候補者と会っているし、交渉の難しさやプレッシャーの厳しさも伝わってくる。ザッケローニのとき、なかなか監督が決まらなかったが、焦りもあってもっと簡単に契約できる人で妥協したくなったのをぐっとこらえたという話が出てくる。だれのことなんだろう。あと、今だから言える話として、ザッケローニの前にペジェグリーニと交渉していたが、年俸の要求が高すぎて交渉が決裂したという生々しい話も。
●「サッカー監督という職業は、一度監督を引き受けたら、最後はほとんどの人が敗者としてクラブ去っていきます。そういう仕事です」という一文も味わい深い。よく言われるように、サッカーという競技そのものが「ミスのスポーツ」。ボール保持者のほとんどのプレイはミスからボールを奪われて終わる。ゴールの多くはミスから生まれる。どんな一流選手でもミスから逃れられない。そして、監督はいつも敗者としてチームを去る。サッカーには常に勝つ人、常に正しい人の居場所がない。
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●ついに首相からオリンピックの延期容認論が出た。巷間言われるように2年後になるのだろうか。
プラシド・ドミンゴも新型コロナウイルスに感染と発表。体調は良好だという。

March 19, 2020

渡航制限により東京・春・音楽祭で中止公演追加

●おそらく今日の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議を受けて新しい方針が打ち出されると思うが、現時点の記録として記しておこう。東京・春・音楽祭では、追加して新たに多数の公演が中止に。これは海外からの渡航制限拡大に伴うもの。ワーグナー「トリスタンとイゾルデ」や、ベートーヴェン「ミサ・ソレムニス」、プッチーニの「三部作」といった大型企画がぜんぶなくなってしまった。開催される公演もある。マラソン・コンサート「ベートーヴェンとウィーン」や、東京文化会館小ホールでの一連の室内楽公演などは現時点で開催の予定。
●1試合しただけでずっと中断しているJリーグは、はたして4月から再開できるのかどうか、こちらもきっと今日なんらかの発表がありそう。報道によれば「今季は降格なし」の案が出ているとか。一瞬、意味がわからなかったが、昇格はあるけど、降格をなしにするという奇手。そうなると来季のJ1は2チーム増えて20チームになるが、シーズン終了後に4チーム降格させてもとの18チームに戻すという。いいのかわるいのか、なんとも言えない。
●EURO2020はさっさと来年に延期に決定。やはり今冬は無理だった模様。来夏はヨーロッパでEURO、アメリカで世界陸上が開催されるわけで、これ以上大きなスポーツイベントが入る余地はないはず。一方、再来年はワールドカップ・イヤーだが、カタール開催のため夏ではなく11月下旬に開催される変則日程になっている。なので、もしオリンピックを延期するなら2022年夏という見方が出てくるのはよくわかる。

March 18, 2020

パソリでらくらくe-Tax!?

pasori.gif●新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、今年は確定申告の期限が一か月延長されたそう。しかし経理の仕事をずるずると長引かせるのは精神衛生上よくないので、例年通りの期日になんとか済ませた。いつもは書類を郵送しているのだが、今年は思うところがあってe-Taxで申告してみた。そのためにわざわざ、ソニーのICカードリーダーPaSoRiを導入。これでマイナンバーカードを読み取る。で、その際にパスワードが必要になるんすよ! マイナンバーカードには署名用パスワードとか利用者証明用パスワードとかなんとかパスワードとか、計4種類のパスワードが設定されている。どうやら自分でそいつを設定したようだ。マイナンバーについて言いたいことはいろいろあるのだが、「ひとつのカードに用途別に4種類のパスワードが設定されている」という時点で、どうかしている。
●そんなわけでレクター博士ばりに記憶の宮殿に潜り込んで、パスワードを思い出した。ちなみにe-TaxはGoogle Chromeが動作対象外なんすよ。だからMicrosoft Edgeで手続した。あと、自分は旧石器時代の会計ソフトを使っているので、e-Taxとの連携機能など一切ない。そこで逐一、コピペで国税庁のサイトに数字やら取引先を入れていくんだけど、結果的に青色申告決算書だけは別途郵送で送ることになってしまった。トホホ。これもオンラインで済ませる方法は当然あるとは思う。現代のクラウド型会計サービスなどを使っていればすべてがスムーズに進むのだろう。やり方を再考すべきだとは思うのだが、経理の仕事に新たなエネルギーをつぎ込むのはなかなか難しい。
●一日単位でどんどんと状況が変化していくので、先の予測がつかないが、19日に新型コロナウイルスの専門家会議が見解を表明するということなので、現状のイベント自粛や休校について、なんらかの新しい方針が出てくるのだろうか。

March 17, 2020

ベルリン・フィルがデジタル・コンサート・ホールを無料開放

●3月も後半に入った。新型コロナウィルスの感染拡大で、東京の演奏会は次々と中止となってしまったが、一部には対策を講じたうえで再開の動きも出てきている。一方で、ヨーロッパの感染拡大がすさまじく、WHOは現在の感染の震央はヨーロッパだと宣言。各国で移動制限や外出禁止など大胆な策がとられており、演奏会も軒並み中止。
●そんななかでベルリン・フィルはデジタル・コンサート・ホールを無料開放すると発表。3月31日までにクーポンコード「BERLINPHIL」を入力すれば、全コンテンツを30日間視聴できる。最近の公演では、ネゼ=セガンの代役として登場したロレンツォ・ヴィオッティがマーラーの交響曲第3番を指揮して話題を呼んだ。首席指揮者キリル・ペトレンコは2月にラフマニノフの交響的舞曲他、1月にマーラーの交響曲第6番や、スークの「アスラエル」を指揮。新シェフに決まってからもなかなか姿を見せなかったペトレンコだが、だんだんとアーカイブがそろってきた。
●欧州サッカー界も試合がぱったりなくなってしまった。DAZNをなんのために契約しているのかわからない状態になっている。本来、この夏はEURO2020の開催が予定されていたわけだが、現状では延期が濃厚。というのも各国リーグ戦が中断しているため、EURO2020のスケジュールを空けて、そこでなんとか試合を消化しようという方針のようだ。UEFAはEURO2020を12月に動かそうとしているというが、その場合は来シーズンのスケジュールもどこかで詰めなければいけなくなるはず。基本的にレギュラー・シーズンは可能な限りぎっしり埋まっているわけで、4年に1度しかない大会をどこかに動かすのは至難の業だろう。もっとも、新型コロナウィルスの勢いが止まらなければ、EURO2020以前に今シーズンを完了できるかどうかもわからない。

March 16, 2020

ミューザ川崎&東京交響楽団「モーツァルト・マチネ」の無観客ライブ配信

●14日午前11時からミューザ川崎&東京交響楽団の「モーツァルト・マチネ」第40回が無観客でライブ配信された。今回もニコニコ生放送による配信。東京・春・音楽祭でも一部の公演で無観客ライブ配信が行なわれるなど、どんどん無観客ライブが広がっているようだが、さすがに先週のように10万人も集めるのは最初だけだろう……と思っていたら、この日も7万3千人もの視聴数があった。ここまでの反響があるとは。今回はニコニコ生放送の「ギフト」機能も活用されて、19万ポイントを超える応援があったとか。
●プログラムはフルート四重奏第3番、交響曲第35番「ハフナー」、ピアノ協奏曲第13番。指揮は原田慶太楼、ピアノは金子三勇士。歯切れよくしなやかなモーツァルトで、生命力がみなぎっている。トランペットは直管。アンコールはピアノ・ソナタ第5番の第2楽章。今回の配信もコメント欄が活用されていて、みんなでワイワイガヤガヤと楽しんでいる雰囲気が伝わってきたが、ソリスト・アンコールに続いて、原田さんと金子さんがコメント欄に出ていた質問に答えてくれるという一幕も。まさかの双方向性。そのあと、さらにオーケストラのアンコールがあって「上を向いて歩こう」。今だからこその選曲。
●東響は16日朝の時点で3月21日の東京オペラシティシリーズ(飯森範親指揮)を開催するとしている。新型コロナウイルス感染症対策として、チケットの半券は来場者が自分でもぎる、プログラムは手渡しせずに自分でもらう、換気の強化、ビュッフェ、クローク、物販、チラシ配布、サイン会の中止等々、先日のKAJIMOTOによるシフのリサイタルとよく似た対策がとられる模様。

March 13, 2020

アンドラーシュ・シフのピアノ・リサイタル

●12日は東京オペラシティでアンドラーシュ・シフのピアノ・リサイタル。新型コロナウィルスの影響で公演中止が相次ぐ中、主催のKAJIMOTOは感染症に詳しい医師の指導のもと、対策を立てたうえで公演を決行してくれた。基本的には手を介した接触感染を抑止するという方針で、たとえば、チケットは係員に渡さずに見せるだけ(半券は切らない)、プログラムもチラシも渡さない(プログラムはネットで)、バーコーナーもクロークも中止、CD販売もサイン会もなし。アルコール消毒液の用意、場内の換気を十分する、体調に懸念がある人には払い戻しを受け付ける等。
●客入りは満席まではいかなくても上々。開演前の客席が固唾をのんで今か今かとシフの登場を待っている様子が伝わってきた。シフが姿を見せると、鋭く熱い拍手がわき起こる。ようやく演奏会を聴くことができるという喜び。しかし、始まってみるとシフはリラックスした様子で淡々とした円熟の音楽を奏でる。日頃の演奏会とは逆だが、非日常の中に日常を垣間見せてくれたかのような感。プログラムは今回も小曲、小品を集めたものだったので、なおさら。メンデルスゾーンの幻想曲「スコットランド・ソナタ」、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第24番「テレーゼ」、ブラームスの「8つのピアノ小品」op76、同じく「7つの幻想曲集」op116、バッハのイギリス組曲第6番ニ短調。家庭音楽的というと言い過ぎかもしれないが、大ホールとは思えないくらい親密な空気が聴衆との間に醸成されていたと思う。白眉はバッハ。気負いがなく、しなやか。ピアノはベーゼンドルファー。
●そして真骨頂は「第3部」とも呼ぶべきアンコール祭り。まずはバッハの「イタリア協奏曲」で開始。第1楽章が終わったところで拍手があって「ん、全曲弾くのでは」と思ったが、期待通り、続けて第2楽章と第3楽章も弾いてくれた。ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第12番「葬送」第1楽章、メンデルスゾーンの無言歌「甘い思い出」と「紡ぎ歌」、ブラームスの間奏曲op118-2、シューベルトの「ハンガリー風のメロディ」。イタリア協奏曲の第2楽章とかブラームスの118-2みたいな遅く演奏されがちの曲でも、シフのテンポ設定はけっこう速め。老巨匠風の思わせぶりなところがない。終演はかなり遅くなったが、最後は場内ほとんど総立ちで拍手。19日にも同ホールで別プログラムの公演あり。

March 12, 2020

ゾンビとわたし その41:潜伏期間について

●ゾンビ映画の基本的な作法として、潜伏期間の明示があると思う。たとえばブラッド・ピットが主演した映画「ワールド・ウォーZ」では、近年の流行に従って全力疾走するゾンビが描かれていたが、映画としてのスピード感を重要視するあまり、潜伏期間がわずか12秒に設定されていた。噛まれたらあっという間にゾンビ。なるほど、視覚的なインパクトは抜群だ。しかし、この設定はいただけない。潜伏期間が長いから感染が広がるのであって、12秒で人がゾンビになってしまっては、そんなものが世界的に流行するはずがないではないか。
●というのも、ゾンビになってしまってはクルマも運転できなくなるし、電車にも乗れなくなる。ましてや飛行機で外国に行くことなんてできない。もし潜伏期間が十分に長ければ、噛まれた者が無自覚なまま出張や旅行に出かけて、旅先でゾンビ化することでゾンビ禍が広がってゆく。しかし感染から12秒でゾンビになってしまっては、外国どころか、箱根の山すら越えられない。日本の国土の75%は森林である。感染は人口過疎地域で終息してしまう。つまり、潜伏期間の長さは射程の長さを意味している。
●昨日3月11日を迎え、東京の風景はいろんな点で9年前と酷似していると感じる。演奏会はほとんど中止、がらがらで人通りの少ない新宿、空っぽの商店の棚(今回は主にトイレットペーパーとマスクだが)、自粛と同調圧力、SNSで罵詈雑言を浴びる学者・専門家たち。そして、人は聞きたい話しか聞かない。自分も含めて。

>> 不定期連載「ゾンビと私
March 11, 2020

「ハーレクイン・ロマンス 恋愛小説から読むアメリカ」(尾崎俊介著/平凡社新書)

●どう考えても自分には縁がなさそうなテーマなのに、読んでみるとまさかと思うほどおもしろい、「ハーレクイン・ロマンス 恋愛小説から読むアメリカ」(尾崎俊介著/平凡社新書)。ハーレクイン・ロマンスといえば、ロマンス小説の代名詞。どこにでもいる普通の女性がお金持ちの御曹司のイケメンと恋に落ち、障害を乗り越えてめでたく結婚するといったワンパターン小説のこと……といったように、一冊も読んだことのない(読むはずがない)男性でも漠然としたイメージを抱いていると思う。そんなハーレクイン・ロマンスがどうやって始まり、どんなふうに出版界を席巻したかという話がつづられているのだが、これが驚きの連続。ビジネスのサクセス・ストーリーとしても、一種の出版史としても読みごたえがある。そもそもハーレクイン・ロマンスの出版元がカナダだということも知らなかったし、もともとはなりゆきでイギリスの出版社から恋愛小説の版権を買って、カナダでペーパーバック化していたのだという話も初耳。
●読者はハラハラドキドキする先の見えない展開を望んでいないので、必ず一定のパターンをたどってハッピーエンドに落ち着くという「品質管理」を小説に持ち込んだという話には目からウロコ。どれも同じ話だから読者は飽きて買わなくなるのではなく、どれも同じだから読者は安心して新刊を買えるというのだ。実のところ、これは男性も同じで、毎回一定のパターンが約束されていて、願望を満たしてくれるという点では「ヒーロー戦隊もの」から「水戸黄門」まで、なんら変わりがない。ただ、ハーレクイン・ロマンスの成功ぶりは尋常ではなく、1980年には約1億9千万部を売り、大手書店チェーンにおけるペーパーバック販売の約3割をハーレクイン・ロマンスが占めていたというから、想像を絶する。
●19世紀イギリスの貸本屋事情も興味深い。当時、本は買うよりも、年会費を払って借りるものだったというのだが、そう考えると今どきのサブスクリプション・モデルは先祖返りなのかも。

March 10, 2020

スーパーと街と劇場と

●スーパーマーケットに行くと、本当にトイレットペーパーのコーナーがすっからかんになっていた。すべての商品が完璧に売り切れている。ほかの売り場は普通だったんだけど。9日の午前中に新宿を歩いたら、人通りが少ない。店舗は営業時間の短縮化が目立ち、夜は早々に閉めてしまうところも。逆に前は閉めていたのに、再開しているカフェもあっりして、まだら模様。
●週末にあったミューザ川崎の東京交響楽団のライブ配信だが、ニコニコ生放送では定点カメラとスイッチングの2チャンネルがあって、それを合計して10万人の視聴だったそう。ワタシは定点カメラのほうを見ていた。
●隣接分野の3月10日朝の時点での状況をメモしておこう。宝塚歌劇団は3月9日以降の公演を実施すると発表していたが、その通り、公演を再開した。劇場入り口に赤外線サーモグラフィを設置したそう。劇団四季は「3月16日以降の公演につきましては、政府から特別な要請が発令されない限り、上演を再開させていただく」というのだが、さてどうなるだろう。
●9日の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の見解によれば、新型コロナウィルスは暖かくなると消えるタイプではなく、「数カ月から半年、年を越えて続くかもしれない」とされ、また「国内での流行をいったん抑制できたとしても、しばらくはいつ再流行してもおかしくなく、国外から感染が持ち込まれる事例もくりかえされる」と予想されるという。

March 9, 2020

びわ湖ホール「神々の黄昏」ライブ配信に1万2千人、ミューザ川崎の東京交響楽団に6万7千人(→最終的に約10万人に)

●公演中止になってしまったびわ湖ホールのワーグナー「神々の黄昏」だが、先日お伝えしたように、無観客で7日と8日にYouTubeで無料ライブストリーミング配信を敢行した。その視聴者数にびっくり。全部を通して見たわけではないが、7日に自分が目にした範囲では常時1万1千人台の人が視聴していて、Twitterでもトレンド入り。無観客なのに、実際には劇場の客席の約6倍もの人が見ていたことになる。字幕なし、カメラは一か所固定という配信であっても、これだけ多くの人がアクセスしているということにただただ驚く。さらに翌日の公演のラストシーンでは、1万2千人台に到達。ひとつの舞台がこれだけのインパクトをもたらすとは。単に上演中止にしてしまえばすべてが無に帰すところを、画期的な試みで日本のオペラ上演史に名を刻んだ。偉業。なお、後日DVDが販売されるが、そちらは複数カメラで撮影したもので日本語字幕も付くという。
●そして、8日、今度はミューザ川崎シンフォニーホール&東京交響楽団の「名曲全集」第155回が「ニコニコ生放送」で無観客ライブストリーミング配信された。会員登録不要で無料。大友直人指揮でラヴェルのピアノ協奏曲ト長調(黒沼香恋)、サン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」(大木麻理)他。こちらは本格的なカメラワークによる高品質な配信で、開始から進むにつれて視聴者数がどんどん増えていき、自分が確認した範囲では、なんと、6万7千人超にまで達した! 予想をはるかに上回る盛況ぶり。同時間帯にびわ湖ホールの「神々の黄昏」二日目が配信されているのに、それで東響に6万7千人が来ているのだから、客層が重なっていないということなのか。あるいはYouTubeとニコ動の視聴層の違いもあるのだろうか。こちらはコメント欄を開放していたので、配信中に視聴者同士でワイワイガヤガヤとおしゃべりをしながら一緒に楽しむ雰囲気になっていた。コメント欄から察するに、コアな東響ファンもいれば、普段はクラシックの演奏会にあまり足を運ばないような方もいるといった様子。ありとあらゆる無料コンテンツがひしめき合うネットの世界で、これだけの人数に演奏を聴いてもらうのは大変なこと。これを機にコンサートホールに足を運んでみたいと思った方も相当にいると思う。もちろん、コンサートが再開されないことには、どうにもならないわけではあるが。
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●追記。ミューザ川崎の東京交響楽団は最終的に約10万人が視聴したそう。すさまじい人数。

March 6, 2020

無観客公演のライブ配信 その2

●昨日に続いて、さらに無観客公演のライブ配信情報を。東京・春・音楽祭でも3/14と3/15の3公演を無観客で無料ライブ・ストリーミング配信を実施するそう。以下の3公演。

3/14(土)15:00 林 美智子(メゾ・ソプラノ)& 与儀 巧(テノール)にほんの歌を集めて
3/14(土)18:00 The Ninth Wave - Ode to Nature 目で聴き、耳で視る『ベートーヴェン』
3/15(日)16:00 ベルリン・フィルのメンバーによる室内楽

●「ベルリン・フィルのメンバーによる室内楽」は、ガイ・ブラウンシュタイン、アミハイ・グロス、オラフ・マニンガーらによるピアノ四重奏なのだが、わざわざ来日して東京文化会館でライブ配信をするという状況になっている。一瞬、妙な気もするが、同じメンバーによる3月16日の大阪公演(主催者は別)は、予定通り開催と発表されている(3月6日9時現在)。

March 5, 2020

無観客公演のライブ配信

●新型コロナウィルスの影響で演奏会はほとんどの公演が中止、一部には開催する公演もあるという現状。これはいつまで続くのか、なにをきっかけに再開できるのかが今もっとも気になるところ。当初の政府の要請は「2週間」、Jリーグも3月15日までをめどに区切っていた。ちなみにJリーグは日本野球機構と共同で新型コロナウイルス対策連絡会議を設立、感染症の専門家3人からなるチームの意見をもとに試合開催の判断に役立てるそう。
●そんな中、公演は中止するけど、無観客で演奏してライブ配信するという動きも。東京交響楽団とミューザ川崎シンフォニーホールは、3月8日の名曲全集第155回と3月14日のモーツァルト・マチネ第40回の無観客ライブを無料配信する。「ニコニコ生放送」を活用するが、会員登録不要で視聴可。CDも制作。
●もうひとつ、びわ湖ホール プロデュースオペラ「神々の黄昏」(3月7日と8日)も無料ライブストリーミング配信されることに。こちらはYouTubeを利用。後日、DVDも販売される。なにもかもゼロになるよりずっといい。
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●こんなタイミングに重なってしまったが、月刊誌「東京人」最新号の特集は「クラシック音楽散歩 東京」。かなりのページ数を割いた大特集。ワタシは杉並公会堂の取材記事を書いている。

March 4, 2020

ブンデスリーガ、1899ホッフェンハイム対バイエルン・ミュンヘンで起きたプレイ放棄


●Jリーグが休止になってしまい、なんともサッカー熱も高まらないが、ドイツのブンデスリーガで異例のプレイ放棄があったので記しておこう。1899ホッフェンハイム対バイエルン・ミュンヘンの試合で、バイエルンは6対0でリードしていた。ところが66分、アウェイのバイエルン・サポーターがホッフェンハイムのオーナー、ディートマー・ホップを侮辱するバナーを掲げた。これにバイエルンの監督や選手たちが激怒して、自チームのサポーターに止めるように要求。バイエルン側の幹部たち、ルンメニゲやオリヴァー・カーンらも現れてサポーターに止めるように求めたが、サポーター側は収まらず。6対0でリードしているのに、没収試合になってしまうとバイエルン側は勝ち点を失いかねない。
●で、どうなったかというと、試合は再開されたが、最後の13分間は両チームともただボールを回して時間を潰すことに。試合をしているふりすらせずに、ボールと戯れて時計の針を進めるだけの異様な状況になった。もう勝敗の決着がついた状況だったからできたこともしれないが、選手たちはこのような状況ではプレイしないという断固としたメッセージを伝えていた。
●で、このホッフェンハイムのオーナー、ディートマー・ホップという人はよほど嫌われているらしくて、ドルトムント戦でも誹謗中傷を受けて問題になっている。IT企業の創業者で大金持ちで、資金力にものを言わせてチームを強化したことで不評を買っているそうなのだが、それをいったらビッグクラブはみんなそう。どうしてそこまで嫌われているのか、よくわからない。

March 3, 2020

「完全な真空」(スタニスワフ・レム著/河出文庫)

●信じがたくナンセンスな状況はしばしばひきつった笑いをもたらすもの。そんなときに「ああ、これってレム的な状況だな」と感じることがある。スタニスワフ・レムだったら、こんな状況を嬉々として小説に書くに違いない、と思えるような不条理。
●そのレムの著作のなかでもひときわ異彩を放っているのが架空の書物に対する書評集「完全な真空」(河出文庫)。以前、国書刊行会から出ていたものが文庫化された。念入りな書評がずらりと並んでいるが、どれもその対象となる本は実在しない。同じレムによる架空の書物に対する序文集「虚数」と対をなすメタフィクション。
●前から順番に読んでいく必要もないので、ちらちらと読書と読書の合間に思いついた章を眺めるくらいの読み方をしている。賢すぎる人の笑えないギャグもあれば、あれ?こんな素直に笑えるネタもあったんだという驚きもある。たとえば「生の不可能性について/予知の不可能性について」なんて、昭和の漫才あるいはコントと一脈通じるような可笑しさ。全般に激しく饒舌。レムといえば、先頃藤倉大がオペラ化してクラシック音楽界にも浸透した(かもしれない)名作「ソラリス」があるわけだが、あの原作のなかで必要以上に詳細に論じられる「ソラリス学」についての記述と、ノリとしては似た一冊。あとは小説の没ネタを架空書評化したものもあるんじゃないかなーと想像。
●訳者の沼野充義氏が文庫用に新たに解説を書いてくれていて、これが今読むべきレムへのガイドとして最高。このなかの一部はオペラ「ソラリス」上演前に東京芸術劇場で開かれた沼野充義&藤倉大対談の際にも語られているのだが、故郷の町がナチス・ドイツに占領され、町の帰属がポーランド、ドイツ、ロシアへと変遷していったことがレムの世界観の形成に大きく影響しているといった指摘には納得するほかない。

March 2, 2020

沖縄で琉球交響楽団を取材

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●週末は取材で沖縄へ。以前より予定していた琉球交響楽団の取材。本来なら定期演奏会が開かれるはずだったのだが、公演は新型コロナウィルスの影響で中止に。それでも関係者のインタビューや練習の様子などの取材は予定通りに敢行することになり、一泊二日で沖縄まで行ってきた。写真は本番が予定されていた浦添市てだこホール。記事になるのはまだ少し先なので、できあがったらまた改めて。
●沖縄はTシャツ姿も目立つ初夏の陽気。唯一寒さを感じたのは、お店に入って冷房が効きすぎていたとき。これだけ温暖な気候で過ごしていると、ずいぶん気分も違ってくるだろうなと思う。車で通った国際通りは週末の昼時でも閑散としていて、どの業界も大変。
●琉球交響楽団は近く萩森英明作曲「沖縄交響歳時記」のCDをリリースする。沖縄民謡などを素材とした全6楽章からなる作品。楽団創立20周年を記念して4月6日にサントリーホールで大友直人指揮による東京公演が開催され、そこで演奏される。もうチケットは完売なんだとか。さすがにその頃にはウィルス騒動は一段落していると願いたい。

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