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2023年8月アーカイブ

August 31, 2023

サッカー界、今シーズンの移籍状況備忘録

●欧州サッカー界の移籍期限は9月1日まで。滑り込みで大型移籍があるかもしれないが、備忘録として今季の移籍状況について振り返っておこう。
●日本人選手で最大のサプライズは遠藤航がシュツットガルトからリヴァプールに電撃移籍したこと。30歳の年齢でビッグクラブへのステップアップがあるとは予想していなかった。ドイツの「デュエルキング」(一対一の勝利数トップ)が、プレミアリーグでどれだけ活躍できるのか。ひとまず途中出場1試合、先発1試合とスタートは上出来。
●一時はACミラン行きが確実視されていた鎌田大地は紆余曲折あってラツィオに。ここの監督は元銀行員の戦術家マウリツィオ・サッリ。開幕から2試合連続先発したが2連敗で、いきなり雲行きが怪しくなってきた。あとはオランダの名門フェイエノールトに移った上田綺世、フランスのスタッド・ランスで伊東純也の同僚になった中村敬斗あたりが目立ったところ。ベテラン吉田麻也はアメリカのLAギャラクシーへ。
●世界に目を向けると、とんでもないことになっているのがサウジアラビア・リーグで、欧州のビッグクラブから一流選手を爆買いしている。パリ・サンジェルマンからネイマール、チェルシーからエンゴロ・カンテ、エドゥアール・メンディ、カリドゥ・クリバリ、マンチェスター・シティからリヤド・マフレズ、アイメリク・ラポルテ、マンチェスター・ユナイテッドからアレックス・テレス、リヴァプールからロベルト・フィルミーノ、ファビーニョ、ジョーダン・ヘンダーソン、バルセロナからフランク・ケシエ、レアル・マドリーからカリム・ベンゼマ、バイエルンからサディオ・マネ……等々、もう数が多すぎて把握できない。昨季のクリスティアーノ・ロナウドに続いて大挙してサウジアラビアに移籍してしまった。ネイマールの推定年俸は約239億円だとか。無茶苦茶なマネーパワーで、豪華メンバーが集う自国リーグを作り上げてしまった。ってことは、われわれJリーグ勢はアジア・チャンピオンズ・リーグでこれらの選手たちと対戦する可能性があるということなのか。サウジ勢はもともと強いけど、これでさらに強くなるかといえば、そこは微妙な気も……。
●で、この話のいちばん奇妙なところは、サウジアラビアの政府系ファンドがアル・ナスル、アル・ヒラル、アル・イテハド、アル・アハリの4クラブを傘下に収めて、それぞれにスター選手を分配しているって言うんすよね。実質、政府が強豪クラブ4つをコントロールしている状態で、そんな人工的なライバル関係ってありうるんだろうか。各クラブのファンやサウジアラビア国籍の選手からはどう見えているんだろう。

August 30, 2023

京都国立近代美術館 コレクション展

京都国立近代美術館 コレクション展
●せっかく京都まで来たので京都国立近代美術館にも寄る。初訪問。竹橋の東京国立近代美術館はMOMATだけど、京都国立近代美術館はMOMAKなんすね。東京国立近代美術館のサポーターズ会員は、京都国立近代美術館のコレクション展にも無料で入れる。いや、普通に入場しても430円で入れるので、微々たる特典ではあるんだけど、せっかく特典を使えるチャンスが到来したので使わねば! コレクション展は4階のワンフロアを使って展示されているのだが、上の写真のように東京の近代美術館と雰囲気がそっくり。一瞬、どっちにいるのかわからなくなるくらいに似ている。別館のワンフロアが京都にある、みたいな感じ。作品も同様。つまり、とても見ごたえがある。
京都国立近代美術館 コレクション展
●こちらは60年代の日本の前衛を展示した一角。やっぱり東京の近代美術館っぽい雰囲気。まあ、似ていて当然なのかもしれないけど。くつろげる。
京都国立近代美術館 伊砂利彦 「ドビュッシー作曲『前奏曲集Ⅱ』のイメージより」 枯葉 霧
●音楽ネタの作品ということで、伊砂利彦の「ドビュッシー作曲『前奏曲集Ⅱ』のイメージより 2.枯葉」と同「1.霧」の2作が並べてあった。「枯葉」はいいとして、「霧」のほうはこの写真じゃぜんぜんディテールが見えないか。
●通りをはさんだ向かいに京都市京セラ美術館があって、そちらはずいぶん華やかで、客層も若い感じ。国立新美術館でもあった「ルーヴル美術館展 愛を描く」が開催中だったせいもあるかもしれないけど、「ばえる」のは京セラ美術館のほうだとは思う。

August 29, 2023

J1リーグ第25節 京都サンガvsアビスパ福岡 @ サンガスタジアム by KYOCERA

サンガスタジアム by KYOCERA 外観
●さて、びわ湖ホールで沼尻竜典指揮京響を聴いたその夜、せっかく遠方まで来たので、亀岡のサンガスタジアム by KYOCERAまで足を延ばして京都サンガvsアビスパ福岡を観戦することに。今、日本で最高のスタジアムといわれるサンガスタジアム by KYOCERAであるが、まさに評判通りのすばらしさ。ピッチが近い。見やすい。全周屋根あり。機能的でシンプル。バックスタンドの下層階で見たが、もちろん快適。バックスタンド上層階からの眺めも完璧で、サッカーファンが求めるスタジアムはこれだ!といいたくなる。
●おまけにアクセスが最強。亀岡駅の目の前にあるのだ。徒歩3分? っていうか、もう本当に目の前。駅前の広場に屋台がいっぱい出ていて、飲食には困らない感じ(スタジアムの中にもお店はある)。今どき、よくこんなに便利な場所にスタジアムを新設できたなと思うが、ここに至るまでには28年の年月がかかっており、建設地や財源を巡る紆余曲折がさんざんあってようやく実現した模様。偉大なり、亀岡。それにしても球技専用スタジアムに関してはすっかり西高東低で、関西には京都にも大阪にも神戸にも見事なスタジアムがあるのに、東京にはひとつもない。いちばん近くて千葉のフクダ電子アリーナか。
サンガスタジアム by KYOCERA 客席から
●サンガスタジアム by KYOCERA、コーナーフラッグ上方の客席に注目してほしいのだが、スタンドが斜めに切って配置されていて、全体を見渡しやすい。安価な席にもこういう配慮があるところが、見る人の立場に立ったスタジアムだなって感じる。国立競技場の建て替えのときに思ったけど、「スタジアムの写真」って空から眺めた外観じゃなくて、客席から見た光景であるべきなんすよ。鳥のために作るんじゃないんだから。
●ちなみにこのスタジアム、試合のある日のためだけの建造物にはしないという姿勢があって、付帯施設としてコワーキングスペースや保育園、子どもの遊び場、VR/フィットネスゾーン、3x3バスケットボールコート等々が設けられている。このあたりの発想も今風。
●で、試合だが原大智の2ゴールでリードした京都が、退場者を出しながらも2対0で逃げ切った。スペイン2部アラベスから移籍してきた原大智は191cmの大型フォワード。アラベスでは十分な出場機会を得られていなかったようだが、高さだけではなく足元の技術もあって、ボールを預けられるのが魅力。2ゴールはいずれも頭で。福岡では元代表の井手口陽介が目をひいた。視野が広く、中距離パスが正確で、展開力がある。中田ヒデを思い出す。ボール奪取能力も高い。ただし、安全なプレイを選択しがちで、リードされててひとり多い状況にしてはプレイが淡白なのは気になった。

August 28, 2023

びわ湖ホール 沼尻竜典指揮京都市交響楽団のマーラー「夜の歌」

びわ湖
●26日はびわ湖ホールへ遠征。沼尻竜典指揮京都市交響楽団のマーラー・シリーズ第4弾、交響曲第7番「夜の歌」。ホールの中からも琵琶湖の絶景を眺めることができるが、せっかくなので開演前に、外で風を感じながら湖を眺める……が、暑すぎて早々にホール内に避難。
●外の猛暑とはうらはらに中のマーラー7番はひんやりとした世界。演奏は高水準で、過剰なストーリーテリングを排した等身大のマーラーといった趣。整った演奏によって、混沌とした作品世界をさまよい歩く。この曲、基本的にはパロディの音楽、メタ音楽であり、シニカルな作品だと思って聴くのだが、一方で終楽章のけたたましいどんちゃん騒ぎがいちばんの楽しみだったりする。終楽章の主題がワーグナー「マイスタージンガー」を連想させるとはよく言われることだけど、この楽章全体の気分みたいなものは「マイスタージンガー」第2幕おしまいの大騒ぎと似ている。最後の終わり方も似ていなくもないし。
●びわ湖ホール、行きはJR膳所駅から歩いてみた、暑いのに。京阪電車に乗り換えて石場駅から行くつもりだったのだが、なんとなく歩きたくなったので。紫外線が強い。帰りはJR大津駅へのシャトルバスを使う。シャトルバスに乗るのって、なんだかサッカーのスタジアムっぽい。

August 25, 2023

サントリーホールサマーフェスティバル2023 オーケストラ・ポートレート

●24日はサントリーホールサマーフェスティバル。二日続けて「サマーフェスティバル」と題された公演に足を運んだことに気づく。この日は今年のテーマ作曲家、オーストリアのオルガ・ノイヴィルトの作品を中心とした「オーケストラ・ポートレート」。マティアス・ピンチャー指揮東響で、前半にヤコブ・ミュールラッドの「REMS」(短縮版)世界初演、ノイヴィルトの「オルランド・ワールド」(サントリーホール委嘱/世界初演)、後半にノイヴィルトの「旅/針のない時計」、スクリャービンの「法悦の詩」。
●ミュールラッドの「REMS」は原曲を4分の1に縮めた短縮版なのだとか。REMはレム睡眠のレムを指しているそうで、冒頭から瞑想的な楽想がうねうねと続いて、本当にレム睡眠に誘われてしまいそうだが、終盤に頂点を築く。ノイヴィルトの「オルランド・ワールド」ではメゾ・ソプラノのヴィルピ・ライサネンの歌唱入り。もともと「オルランド」というオペラがあって、そこから編まれた組曲ということで、歌手がオルランド役を歌い、途中でスカートを履いて性別の変更が示唆されたりするのだが、もとのオペラを知らず、字幕もないので、まったく文脈がわからないまま音響のみを聴いたという状況。後半、ノイヴィルト「旅/針のない時計」は時が刻まれるなか、多数の引用がちりばめられた音の旅といった趣。イベントが次々起こるという点では聴きやすいけど、新味は感じないかな。最後のスクリャービン「法悦の詩」は名演。官能的というよりは明快でカラフル。オーケストレーションの巧みさに圧倒される。
●会場におもしろそうなものがあったので。「現代音楽クイズにLINEで挑戦!」。サントリーホールに降臨したクイズ王伊沢拓司。
現代音楽クイズにLINEで挑戦

August 24, 2023

読響サマーフェスティバル2023「三大協奏曲」

読響サマーフェスティバル2023「三大協奏曲」
●23日は東京芸術劇場で読響サマーフェスティバル2023「三大協奏曲」。ヴァイオリンの前田妃奈、チェロの鳥羽咲音、ピアノの亀井聖矢という若いソリストたちを坂入健司郎指揮読響が迎える。前半、まずは前田妃奈がメンデルスゾーンをヴァイオリン協奏曲を好演。のびやかで雄弁。続く鳥羽咲音はドヴォルザークのチェロ協奏曲。以前に堤剛80歳記念コンサートでも目にした若手奏者だけど、こうしてソロできちんと聴くのは初めて。アグレッシブでスケールの大きな演奏で、びっくり。作品に深く入り込むというか、一歩踏み込んで核心に迫ろうとするパッションが感じられて、この日最大の発見。「琴線に触れる」っていうのはこういうことなんだなと思った。客席全体が舞台に引き付けられている様子も印象的。まだ18歳とは。
●後半は亀井聖矢がチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を演奏。技術的な洗練度は最高水準だろう。きらびやかで、華麗。魅せる。演奏が終わるとすぐにたくさんのお客さんが立ち上がって拍手。盛大なブラボーの声。並外れたスター性をあらためて実感。読響は潤いのあるサウンド。テレビ収録が入っていた模様。18時30分スタートの長丁場だったが、長さを感じさせない。

August 23, 2023

Spotifyでレーベル検索をする方法

先日書いたように、イギリスの中堅レーベルHyperionレコードがようやくストリーミング配信を始めてくれたので、Spotifyでこのレーベルを贔屓にしていたのだが、ふと思いついた。Spotifyで「レーベル検索」はできないのか?
●実はできる。配信時代になって「レーベル」という概念がリスナーから失われつつあるのを感じていたが、そこはSpotify、ちゃんと検索オプションを用意してくれていた(今頃知ったの?って言わないでほしい)。公式サイトのここにもあるように、label:という検索タグを使えばいい。Hyperionを検索する場合は、こうすればいい。

label:Hyperion

さあ、これで便利になった……と言いたいところだが、検索結果をアルバム一覧で見ると、見たことのないような非クラシック系のアルバムがいくつも出てくる。どうやらHyperion違いの無関係なレーベルまでヒットしてしまったのだ。じゃあ、どうしたらいいのか。たとえばジャンルを指定するとか、フルネームでHyperion Recordsで検索するとか? 試してみたが、どちらもうまくいかない。
●で、これは偶然発見した意味不明の方法なのだが、以下のキーワードで検索すると、無関係なレーベルが消える。本来ならANDという演算子になんらかのキーワードが続くべきだが、どういうわけか、これだけで英Hyperionに絞れてしまったのだ。なぜそうなるのかは聞かないでほしい。

label:Hyperion AND

●さて、これで問題解決だろうか? 残念ながら違う。実はlabel:を用いた検索では最大100アルバムまでしかヒットしないようなのだ。たった100点のアルバムしか表示してくれないのだから、Hyperionのすべてのアルバムを表示させようと思っても無理。なぜこんな仕様なのか、謎。
●そんなわけで、label:は使えるときもあれば、使えないときもある。便利なのはこういうときだ。たとえばアリーナ・イブラギモヴァの録音からHyperionのものだけを検索したいときは、こう。

label:Hyperion Ibragimova

同様に、アムランのHyperionの録音だけを検索したいならこう。

label:Hyperion Hamelin

こういう検索が必要になる場面って、あるじゃないすか! きっとある。いや、絶対ある。ある、ある、ある。あるあるあるあるある……。

August 22, 2023

キューブリックの「シャイニング」、キングの「シャイニング」

●映画「シン・仮面ライダー」を観るためにAmazon Primeに入っていたのだが、結局、Prime Videoはめったに観ないとわかったので解約……するのだが、その前にふと気になって、スタンリー・キューブリック監督の映画「シャイニング」を観る。大昔に観てはいるのだが、記憶も薄れていたし、今だからわかることも多数。有名な話だが、「シャイニング」の原作者スティーヴン・キングは、キューブリックの映画にまったく納得がいかず、ついには自身の脚本でテレビドラマ版「シャイニング」を作っている(これはこれで秀逸)。ワタシはキングの初期傑作群に対してシンパシーが強いため、「シャイニング」についても原作の肩を持ってしまうのだが、それでもキューブリックの映画がまれに見る傑作であることはまちがいない。
●なんといっても映画には映像による直接的な表現があるので、オーバールックホテルがどんな立地にあるのか、雄大な大自然の光景からはっきり伝わってくる。例の双子の女の子の怖さも映像ならでは。で、今回改めて思ったのは、映像に加えて音響もとてもよくできているということ。冒頭の「怒りの日」のテーマや、バルトークの「弦楽器と打楽器とチェレスタのための音楽」など、音楽の効果的な使用に加えて(使用曲一覧はこちら。ペンデレツキやリゲティ等)、ダニーが乗っている三輪車がキコキコと鳴る音とか、ジャックがタイプライターを打つ音とか、壁にボールをぶつける音とか、どれもこれも音が不穏で怖い。斧を扉に振り下ろすジャックよりも、三輪車のキコキコのほうがよっぽど怖い。
●「シャイニング」は原作と映画で肝心の部分が違っているのに、どちらも歴史的傑作になった珍しい例だと思う。キングの原作は父と子、夫と妻といった家族の物語であって、善であろうとする父が次第に悪に蝕まれていくところに真の恐怖がある。亡霊から酒を勧められるのもアルコール依存症という設定があるからで、これも人によっては相当に生々しい話なんじゃないだろうか。

参照:キングのTV版「シャイニング」その1その2

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P.S. 昨日で当サイトの開設28周年だった。多謝。実はここはGoogleよりもAmazon.co.jpよりも古くからある。

August 21, 2023

マリノスvsFC東京 渡辺皓太のスーパーミドルで勝利 J1リーグ第24節

●久々にJリーグの話題を。週末のマリノスvsFC東京をDAZNで観戦。この試合は兄弟対決みたいなもの。マリノスの監督は前監督ポステコグルーのオーストラリア時代の右腕、ケヴィン・マスカット。一方、FC東京の監督はポステコグルーのマリノス時代の右腕、ピーター・クラモフスキー。ともにポステコグルーの薫陶を受け、アタッキング・フットボールの哲学を持つ者同士の対決。そして、師匠ポステコグルーはといえば、マリノスからスコットランドのセルティックに移り、さらに今季からはイングランドのトッテナム・ホットスパーを率いるという大出世。アジア(日本も豪州も含む)から欧州のビッグクラブへと羽ばたいた。
●で、マリノスだが、ただでさえ薄くなった選手層が、マルコス・ジュニオールや藤田譲瑠チマの移籍でさらに薄くなり、おまけに絶対的主力のエウベルが出場停止。キーパーも一森不在でバックアッパーの飯倉が先発(オビはベンチ入り)。エウベルの代役に宮市亮先発。FC東京では元マリノス仲川輝人の先発がうれしい。試合は序盤から引きしまった展開で、前半はおおむねマリノスが試合をコントロール。こぼれ球から永戸勝也の技巧的なループシュートで先制、しかしカウンターからディエゴ・オリヴェイラに決められて前半は1対1。後半に入ると東京がゲームを支配する時間帯が長くなり、終盤はマリノスが走り負けている感があった。東京のシュートがバーやポストを叩く場面があり、負けていてもおかしくない展開だったが、アディショナルタイムに入ったところで、渡辺皓太の地を這うようなミドルシュートが炸裂、2対1で勝利した。このシュートはすごすぎる(上のハイライト映像で見てみて)。渡辺皓太、ぱっと見は目立たないが、技術が高く、ハートも強い。ゴールパフォーマンスでボールをシャツの下に入れてみせたのは、現在、奥さんが第3子を妊娠中だから。まだ24歳。偉大だ。
●ところでマリノスは途中出場で待望の新戦力、ナム・テヒがデビュー。32歳のベテランで韓国代表歴もあるようなのだが、Kリーグ経験はなく、長年カタールで活躍してきたという選手。となると、いかにも年俸が高そう。やはり年俸の高そうなマルコス・ジュニオールを放出したから獲得できたのかも。マリノスのスタイルに適応してくれますように。

August 18, 2023

「新訳 オセロー」(シェイクスピア著/河合祥一郎訳/角川文庫) その2

●(承前)先日、ヴェルディの「オテロ」をきっかけにシェイクスピアの「新訳 オセロー」(河合祥一郎訳/角川文庫) の話を書いたが、その続きを。デズデモーナとオセローは肌の色が違うことに加えて、年齢差もかなりあるというが、実際どれくらいの差かというと、訳注によればデズデモーナはおそらく10代、オセローは40歳近いと推定されている。当時の記述では「40歳は老年の始まり」だという。で、ヴェルディのオペラ「オテロ」で考えてみると、オテロが老年の始まりにあるというのは、まあそうかなと思うのだが、デズデモーナが10代という感じはまったくしない。むしろ成熟した女性というイメージ。「柳の歌」にティーンエイジャーの雰囲気はない。
●シェイクスピア「オセロー」で、いよいよデズデモーナがオセローに殺されそうになる場面で、デズデモーナは「まだ死にたくない」「殺さないで!」と命乞いをし、さらに「殺すのは明日にして、今夜は生かしといて!」とお願いし、それも許されないとなると「30分でも!」と懇願する。それまで本気では自分の身を案じていなかったデズデモーナが、「えっ、この人、マジだったんだ!?」と動揺している様子が想像できる。このあたりに10代女子感があるかも。
●もうひとつ。フォークナー「響きと怒り」(平石貴樹、新納卓也訳/岩波文庫)の第3章でジェイソンはこう語る。

俺は一人前の男なんだし、我慢だってできるんだ、面倒を見てるのは自分の血を分けた肉親なんだし、俺がつきあう女に無礼な口をきく男がいたら、どうせ妬んで言ってることは目の色を見りゃあわかるのさ

この目の色とは緑だという話を以前に書いた。嫉妬する者は緑色の目をしているというのは「ヴェニスの商人」が出典だということだが、「オセロー」でもイアーゴーの台詞にこの表現が出てくる。

ああ、嫉妬にお気をつけください、閣下。それは緑の目をした怪物で、己が喰らう餌食を嘲るのです。

●じゃあ、なんで嫉妬する者の目の色は緑なのか。それが引っかかっていたのだが、河合祥一郎の訳者あとがきで、これが古代ギリシャの四体液説に由来するとあった。人間は血液、粘液、黄胆汁、黒胆汁の4つからなるとされ、嫉妬は不機嫌さを司る黄胆汁から生まれるというのだ。黄胆汁が多すぎると、人は短気で嫉妬深くなる。それで黄胆汁が緑がかった黄色であることから、嫉妬する者の目の緑になるという理屈らしい。
●でも、だったら緑じゃなくて黄色でよくない?と思わんでもない。

August 15, 2023

「君のクイズ」(小川哲著/朝日新聞出版)

●この小説、めちゃくちゃおもしろいんすよ。「君のクイズ」(小川哲著/朝日新聞出版)。生放送のクイズ番組でクイズプレーヤーである主人公はライバルと決勝戦を戦うが、まだ問題が一文字も読まれていないのにライバルがボタンを押して正答し、優勝する。なぜそんなことが可能だったのか。クイズ小説であり、上質のミステリーでもあって、読みだしたら止められない。長くないので一気に読めるのも吉。小気味よく、読後感もいい。
●で、これは話の本筋には影響しないエピソードなので紹介しちゃうけど、クイズの回答としてトルストイの「アンナ・カレーニナ」が出てくる場面がある。有名な書き出し(幸福な家庭はみな~)を出して、作品名を答えさせるといういかにもクイズらしい問題。主人公はそこから思いを巡らせ、中学生時代に考えた古い物語を呼び起こす。あるところにカレー屋のインド人がいたが、店に客が入らず困っていた。そこで伝説のスパイスを探す旅に出かけた。インド人は命がけでようやく伝説のスパイスを手に入れた。そしてこのスパイスを用いて新たなカレーを作る。一口食べて、インド人は言葉を失う。ぜんぜんおいしくない。「あんなカレーに……(命をかけるなんて)な」。
●それで思い出したのだが、以前ワタシが人から聞いた「アンナ・カレーニナ」の話は少し違う。美貌のアンナは政府高官の妻だったが、ある若い将校と出会い、熱愛する。アンナはすべてを捨てて、将校のもとに走る。しかしやがて将校と気持ちがすれ違うようになり、ほかの女に愛情が移ったのではないかと疑う。どうやらこの男は最初に自分が見込んだほどの男ではなかったようだ。絶望したアンナはつぶやく。「あんな彼になあ……」
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●世間は夏休みなので、今週は当ブログも不定期更新で。

August 14, 2023

欧州フットボール新シーズン開幕、マリノスはマルコス・ジュニオールが退団

●まだ8月も前半だというのに、ヨーロッパのフットボール・シーズンが開幕。Jリーグも欧州に合わせて秋春制に移行しようとしているが、そうなっても真夏の試合がなくなるわけではなく、開幕直後から猛暑の試合が続くことになる。そもそも「秋春制」ではなく「夏春制」と呼ぶべき。今は真夏だ。
●で、開幕戦、日本代表勢はレアル・ソシエダの久保建英、スタッド・ランスの伊東純也がゴールを決めるなど活躍。ボーフムの浅野拓磨はカップ戦のDFBポカール1回戦でゴール。この試合、1部リーグのボーフムは3部リーグのビーレフェルトを相手に戦ったのだが、PK戦の末に敗退してしまった。ハイライトを見たところ、ビーレフェルトの中盤に知らない日本人選手がいてびっくり。水多海斗という選手で、1部のボーフム相手にキレのあるドリブルで相手を翻弄したり、巧みなパスワークを見せるなど活躍ぶりが光っていた。しかもPK戦で最後に決めてヒーローに。いったいどういう選手なのかと思い検索してみると、Jリーグ経験はなく、前橋育英高校からドイツの5部リーグに渡り、3部リーグのビーレフェルトまでステップアップを果たしてきた23歳。まだまだ上を目指せそう。
●Jリーグではマリノスのマルコス・ジュニオールが広島に完全移籍。マリノスはシント=トロイデンに完全移籍した藤田譲瑠チマに続いて、またも選手を欠いてしまった。マルコス・ジュニオールは現在の超攻撃型マリノスの躍進を支えた立役者なので移籍は残念だが、一方でJリーグに残ってくれてうれしいという気持ちもある。もし広島戦で対戦することになったとしても、マリノス・ファンはマルコス・ジュニオールにエールを送ると思う。
●なぜマルコス・ジュニオールが移籍することになったかといえば、もとはといえば、名古屋のマテウス・カストロ(一時期マリノスにもいた)がサウジアラビアに移籍することになったから。名古屋はその穴を埋めるために広島から森島司を獲得した。そして広島はその穴を埋めるためにマルコス・ジュニオールを獲得した。まさに玉突き。それぞれ移籍金が必要だったはずだが、最初の一歩は中東マネーの流入。海外からのオファーがもとで、シーズン真っ最中にどんどん選手が動くのは、今のJリーグの春秋制の泣きどころではある。

August 10, 2023

フェスタサマーミューザKAWASAKI 2023 カーチュン・ウォン指揮日フィルの「展覧会の絵」

muzakawasaki2021.jpg
●9日はまたもミューザ川崎へ。フェスタサマーミューザKAWASAKIでカーチュン・ウォン指揮日フィル。今回も平日昼公演だが客入りはしっかり。プログラムはヴェルディの歌劇「運命の力」序曲、菅野祐悟のサクソフォン協奏曲「Mystic Forest」(須川展也)、ムソルグスキー~ラヴェル編曲の組曲「展覧会の絵」。なんでもカーチュンが初めて買ったCDは、須川展也がコンサートマスターを務めた東京佼成ウインドオーケストラのアルバムだったとか。学生時代の憧れのヒーローとの共演が実現したというプログラム。
●冒頭、ヴェルディの「運命の力」序曲はパワフルで雄弁。菅野祐悟のサクソフォン協奏曲「Mystic Forest」では須川のソロが圧巻。菅野祐悟作品は録音で交響曲第1番と第2番を耳にしたことがある程度で、ライブでは初めて。劇伴風で明快な作風、オーケストレーションが巧みで華やか。なんというか、きらきらしていて眩しい。第2楽章中盤がストラヴィンスキー「春の祭典」を連想させる。ソリストアンコールに真島俊夫「シーガル」より。後半の「展覧会の絵」はカーチュンの豊かな語り口によるダイナミックな演奏。前半のソリスト須川が後半も残ってオーケストラのなかで吹いてくれるのがうれしい。「古城」のサクソフォン・ソロはさすがの絶品。「キエフの大門」では思い切りよくオーケストラを鳴らして壮大なクライマックス。カーチュンの音楽は豪快だが、細部を疎かにせず、力任せにならない。アンコールにはエルガーの「ニムロッド」。平和への祈りの音楽として受け止めた。

August 9, 2023

夏休み2023 諏訪湖

諏訪湖
●自主的にいくつか〆切を前倒しして、一足早く3日間の夏休みをとった。行き先は昨年に続いて諏訪湖。前回とても快適だったので。涼しくて、人が少ないのがいい。湖を眺めながら散歩するだけで娯楽になる……と言いつつも、結局、3日間連続してすわっこランドに入り浸ってしまった。ここのプールと温泉でのんびり過ごす。一切気取りのない地元市民の憩いの場。
●こういった車社会の街に行っても、自分は運転をしないので、移動は公共交通機関が中心。よく知らない街で1時間に1本程度の路線バスを駆使できるようになったのはIT化のおかげで、スマホアプリの信州ナビが便利。バスはどれもミニバスっていうのかな、ドアがひとつしかない小さなタイプで、乗車口と降車口が同じ。あと、Googleマップの経路検索をして、徒歩で20分くらいなら歩いてもいいかなと思える気候。今年はレンタサイクルも活用した。雨さえ降らなければレンタサイクルが最強かも。諏訪湖沿いのサイクリングロードが大吉。
ハーモ美術館
●レンタサイクルを使ったのは、下諏訪にあるハーモ美術館に行くため。アンリ・ルソー、グランマ・モーゼスら素朴派を中心とした立派なコレクションがあって驚く。建物も湖の絶景を生かした見事な設計で、気持ちよく過ごせる。

August 8, 2023

「マイ・ロスト・シティー」(スコット・フィッツジェラルド著/村上春樹訳/中央公論新社)

●少し前にNHK100分de名著「ヘミングウェイ スペシャル」について書いたが、そこで触れられていたフィッツジェラルドの短篇「残り火」が気になって、この短篇が収められている「マイ・ロスト・シティー」(スコット・フィッツジェラルド著/村上春樹訳/中央公論新社)を読んだ。「残り火」にはいろんな点で圧倒されるんだけど(あのビスケットのエピソードがすごい)、自分にとっては少し「手厳しい」タイプの話ではある。この一冊のなかでは「失われた三時間」がいちばん好きになれる。主人公の男は20年ぶりに故郷に立ち寄る。といっても、滞在時間は飛行機の乗り継ぎのための3時間のみ。そこで、思い切って、12歳の頃に会ったきりのかつての憧れの少女の家に電話する。女性はすでに結婚していたが、同じ街に住んでいることがわかり、再会する。気まずい雰囲気になるかと案じていたが、話は弾み、少しいい雰囲気になってくる。だが、かつての思い出をたどっていくと、思わぬ展開が待っていた、というストーリー。こちらにも手厳しさはあるのだが、ユーモアがある。良質の「苦笑い」というか。
●この「失われた三時間」を読んで思い出したのは、ジョー・ヒルの短篇集「ブラック・フォン」に収められた「ボビー・コンロイ、死者の国より帰る」(以前に当欄で紹介した)。これも再会系のストーリーなのだが、男女の再会にゾンビ映画の撮影というシチュエーションを絡ませたところに独自性がある。もしかしてジョー・ヒルはフィッツジェラルドに触発されてこの話を思いついたのかも、と一瞬思ったが、そんなことないか。これもほろ苦いのだけれど、切なさを振り切ってしまうポジティブなエネルギーがあって、幅広い共感を得られる物語になっている。

August 7, 2023

「軽やかな耳の冒険: 藤倉大とボンクリ・マスターズ」(藤倉大、他6名著/アルテスパブリッシング)

●「ボンクリ」といえば毎年東京芸術劇場で開催されている「新しい音」が聴けるフェスティバル。盆とクリスマスがいっしょにやってきたような目出度い音楽祭だから「ボンクリ」……ではなくて、人は生まれながらにして創造的である、という意味でボーン・クリエイティブ、略してボンクリ。そのアーティスティック・ディレクターである作曲家の藤倉大が、6人の音の匠を招いて講義をしてもらい、それを踏まえて対談した一冊が「軽やかな耳の冒険: 藤倉大とボンクリ・マスターズ」(藤倉大、他6名著/アルテスパブリッシング)。招かれているのは、映画「蜜蜂と遠雷」の監督である石川慶、舞台音響のデザイナーの石丸耕一、演出家の岡田利規、レコード・プロデューサーの杉田元一、数々の著名ホールの音響設計で知られる豊田泰久、箏奏者の八木美知依。どの章もその道の匠ならではの話が興味深く、しかも、すいすい読める。
●いちばんおもしろいと思った章をひとつあげるなら、石丸耕一と豊田泰久による「コンサートホールにおけるPAを考える」。電気音響と室内音響の微妙な関係性や、サウンドデザインの難しさなど、ためになる話ばかり。「クラシックはPAを使わないから関係ない」と思うかもしれないが、話はそう単純ではない。コンサートホールだと残響が豊かなので、トークになると言葉が聴きとれないという経験はみんなあると思う。そういう場合に、マイクのスイッチを入れて音量をただ上げるんじゃなくて、子音成分を足すって言うんすよ。これって納得じゃないすか。で、オペラなんだけど、芸劇で2020年に上演された「ラ・トラヴィアータ」について、こんなことが書いてあって、ええっ、そうだったのかとびっくり。天井から幅4cm、長さ2mの棒みたいなスピーカーが下がっていたそうで、その役割についてこんなふうに説明されている。

石丸 ここから歌い手の声の子音成分だけを出しています。このコンサートホールは母音成分が豊かに増幅されるので、舞台上にしこんだ拾いマイクから歌い手の声のうち子音成分だけを抽出して、舞台上から歌声が届いていく時間差のディレイをかけて、子音成分だけを出しているわけです。すると、お客さんには生にしか聞こえないけれども、歌がちゃんと聴きとれるようになるわけです。

芸劇のオペラ、なんども足を運んでいるけど、ワタシはPAの存在を感じたことは一度もない。そしてPAの役割を「マイクのスイッチを入れて音量を上げる」みたいな感覚で理解するのはまったくのまちがいだということがよくわかる。よくオペラ・ファンは「歌詞が聴きとれる/聴きとれない」といったことを話題にするけど、それは歌手の技術によるのか、サウンド・リインフォースメント(という言葉を石丸氏は使っている)のおかげなのか、そんなことも考えずにはいられない。
●ところでこの本、カバー挿画を見て「あ、これは!」と思ったら、やはり今井俊介作品であった。東京オペラシティアートギャラリーの「今井俊介 スカートと風景」展、演奏会の前になんども寄ったので。

August 4, 2023

Hyperionレコードのストリーミング配信がスタートしたので

●イギリスの中堅レーベルとして数々の名盤を世に送り出してきたHyperionレコードが、7月28日からついにストリーミング配信を始めた。開始時点では200作品ほどのタイトルが配信されており、以後、随時タイトルが追加され、来春までにはレーベルが保有する約2500点のアルバムがそろう予定だとか。今年3月にHyperionがユニバーサル・ミュージックの傘下に入ったと発表されたとき、残念がる声も聞こえてきたが、ともあれ配信が始まったことはよかったと思う。以前だったら、あえてストリーミングをしないという戦略も独立レーベルには一理あると思っていたが、ここまで世の中が変わってしまうと、あれだけのカタログを持つレーベルが丸ごとお蔵入りしてしまうんじゃないかと気になっていた(出版界でいえばデジタル化を拒んだ「写研」のように……と言っては大げさか)。
●で、せっかくなので、ご祝儀と言ったらヘンだが、この数日間、積極的にHyperionのアルバムをSpotifyで再生している。こういった配信サービスはユーザーの支払った金額の一定割合(Spotifyは70%だったかな?)を再生回数に応じてアーティスト側に分配する仕組みになっている。だから、クラシック音楽ファンである自分としては、なるべく好きなレーベルとかアーティストの音源をたくさん再生したいという気分になるわけだ。いや、わかってる、配信の世界ではクラシック音楽はマイナーな存在であり、1回再生したところでアーティストに入るお金は本当に微々たるものであることは。どうがんばったところで、ほとんどの売り上げはヒットチャート上位曲に持っていかれる。しかし、だからといって再生しなかったらゼロなのだ。多少、狂ってるかもしれないが、ワタシは過去にCDで購入したアルバムでも、なるべく配信で再生している……。選挙で一票を投じるみたいな感覚で。
●だからHyperion、聴こうぜー、配信音源一覧はここにあるよー、という話なのだが、気になるのはSpotifyで表示される各トラックごとの再生回数。今のところ、自分が再生したアルバムはどれも全トラック表示がない。まだ更新されていないということなんすかね。いったいどれくらい再生されているのか、気になるところではある。主要アーティストはマルカンドレ・アムラン、アンジェラ・ヒューイット、スティーヴン・ハフ、スティーヴン・イッサーリス、アリーナ・イブラギモヴァ他。


August 3, 2023

フェスタサマーミューザKAWASAKI 2023 出口大地指揮東京フィルのベルリオーズ他

フェスタサマーミューザKAWASAKI 2023
●2日はミューザ川崎へ。フェスタサマーミューザKAWASAKIで出口大地指揮東京フィル。平日昼間の公演だが客入りはしっかり。プログラムはハチャトゥリアンの組曲「仮面舞踏会」からワルツ、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番(清水和音)、ベルリオーズの幻想交響曲。出口大地は2021年ハチャトゥリアン国際コンクール第1位の若手。昨年、東フィル定期に大抜擢された際はオール・ハチャトゥリアン・プログラムだったが、今回もハチャトゥリアンの「仮面舞踏会」のワルツで幕開け。この「仮面舞踏会」には、夫が妻の不貞を疑って殺すが、実は妻は無実だったというストーリーがあるわけだが(先日からここで話題にしている「オテロ/オセロー」とたまたま共通している)、これは後半の幻想交響曲でふられた芸術家が恋人を殺すというストーリーと呼応している。猛暑の真昼間にドロドロの愛憎劇がくりひろげられるという趣向。しかしサウンドは華麗で爽快。
●チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番では清水和音が風格漂う貫禄のソロ。着実に大きなドラマを組み立てる。超名曲なのに近年は意外とライブで聴く機会が少ないので、改めて作品の魅力に浸る。ソリスト・アンコールにラフマニノフ~ワイルド編の「何という苦しさ」。後半のベルリオーズ「幻想交響曲」は若さと熱量で押すのかと思いきやむしろ端正。ロマン派側から遡って作品を眺めるのではなく、古典派交響曲の延長上にある作品として見つめ直した感。第1楽章、第4楽章のリピートがあったのも形式感の尊重か。白眉は第3楽章。描写性にベートーヴェン「田園」を連想する。オーケストラはよく鳴っており、金管セクションは猛烈。この音圧の強さは意図したものなのだろうか。第4、第5楽章は豪壮な音響で盛り上げた。アンコールにハチャトゥリアンの組曲「仮面舞踏会」よりマズルカ。
●出口大地は珍しいサウスポーの指揮者。左手に指揮棒を持つ指揮者というと、先達はドナルド・ラニクルズ、パーヴォ・ベルグルンドあたりか。

August 2, 2023

トーマス・ダウスゴー指揮PMFオーケストラのブルックナー9番補筆完成版

●1日はサントリーホールでトーマス・ダウスゴー指揮PMFオーケストラ。世界中から集まった若いアカデミー生たちによるオーケストラが、札幌での公演を終えて、パシフィック・ミュージック・フェスティバル札幌(PMF)の締めくくりとして東京にやってきた。今回のPMFには22の国と地域から74人が参加したそう。前半がメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲(金川真弓)、後半がブルックナーの交響曲第9番(第4楽章SPCM補筆完成版)。ブルックナー9番の補筆完成版は以前にラトル指揮ベルリン・フィルの演奏を録音やDCHで聴いたが(→過去記事)、ライブでは初めて。よもやアカデミー生のオーケストラでこれを聴くチャンスが訪れるとは!
●前半は小泉&都響でも聴いた金川真弓のメンデルスゾーン。つややかな音色で情感たっぷり。オーケストラは予想以上にまとまっていて、温かみのあるコクのあるサウンド。後半のブルックナーでは一気に大編成になったこともあり、サウンドの方向性は曖昧になり、全体に粗削りになってしまった感は否めないが、ダウスゴーの棒のもと、若者たちの意欲と真摯さが伝わる力強いブルックナーを披露してくれた。ダウスゴーは第1楽章から速めのテンポで、緩急をかなり動かしつつも、前へ前へと進む。第4楽章まであるという前提で作品を見つめ直すとこうなるのかも。第3楽章で終わる作品だと思うと、なんとなく全体を「緩─急─緩」でとらえて、第1楽章に幽玄さみたいなものを求めてしまうのだが、この曲がベートーヴェン「第九」リスペクトな4楽章のニ短調交響曲だと思うと、第1楽章はダウスゴーみたいなテンポ感で嵐のように突き進む峻厳な音楽であるのは納得。そこからスケルツォ、アダージョと続いたとき、アダージョは消え入るような彼岸の音楽ではなく、続く壮大なフィナーレへの入口へと導く音楽であるべきなのだろう。実際、ダウスゴー指揮のアダージョに「ここで終わってもいいのでは」とはぜんぜん感じなかった。
●で、補筆完成された第4楽章だが、これが物議を醸すのは当然だと思う。ラトルの録音が出たとき、何パーセントだったか、ほとんどはブルックナーの草稿にもとづくもので、想像以上に真正性は高いのだというような話を聴いた記憶があるけど、どんなに草稿を探し出しても、最後はどこかで芸術的な創造性が求められるはず。でも、その点でもこの補筆完成版はかなりいい線まで行っているんじゃないだろうか。作品の構成要素が不足して薄くなっていたり、つながりが不自然だったりするところはあるけど、このうえもなく美しい瞬間もたびたび訪れていて、これを「なかったことにする」のはあまりに惜しい。なにより終楽章があることで、前の3楽章の聴き方が変わる。イタコにブルックナーの霊を呼び出してもらうことができない以上、この曲は後世の人間が少しずつ知恵を寄せ合って、ガウディのサグラダファミリアみたいに作り続けるしかないのかも。

August 1, 2023

映画「君たちはどう生きるか」のレビューをAIに書いてもらう

●一切内容が明かされないまま始まった宮崎駿監督の映画「君たちはどう生きるか」だが、自分の周囲ではすでにたくさんの人たちが観ている。でも、みんなネタバレへの配慮がすごくて、いろんなことを語りたそうにしているのに語らない。おかげでいまだにどんな話なのかまったくわからないのだが、かといってうっかり検索などすると、不要なネタバレが目に入ってしまうかもしれない。こういうときこそAIの出番のような気がする。Microsoft Bing AIに映画のレビューを書いてもらうことにした。

ワタシ:あなたは映画評論家です。映画「君たちはどう生きるか」について、400字程度のレビューを書いてください。文体は軽快な「で・ある」体で。作品の核心にかかわるネタバレは避けてください。

Bing:「君たちはどう生きるか」は、宮崎駿監督の最新作であり、約15年ぶりの長編アニメーション映画である。原作は吉野源三郎の同名の児童文学で、戦争と平和、人間と自然、生き方と死に方という普遍的なテーマを描いている。映画は、原作の主人公である少年・コパンドの成長物語を軸にしながら、現代の日本と架空の国・ウリアネシアの二つの世界を交互に描く。宮崎駿ならではの豊かな想像力と美しい映像が満載で、見る者を魅了する。特に、ウリアネシアの自然や文化、人々の暮らしぶりは圧巻である。一方で、戦争や環境破壊といった現実の問題にも目を背けず、深く考えさせられる作品でもある。コパンドが自分自身や周囲の人々と向き合いながら、「どう生きるか」という問いに答えを探していく姿は、多くの観客に共感や感動を与えるだろう。この映画は、子供から大人まで楽しめる傑作であり、宮崎駿の集大成と言えるだろう。

●えっ……これ、合ってるの? それともぜんぜんデタラメなの? どっちなのか、さっぱりわからない。このAIレビューを頼りに、映画を見に行くのか行かないのかを決めるという闇鍋感。こうして自分の知らないものについて使うとよくわかるが、生成系AIは対象について十分な知識がないと、その成果物にどれだけ信頼を寄せていいのか、見当がつかない。
●ついでにEdgeのImage Creator(画像生成AI)に「宮崎駿監督の映画『君たちはどう生きるか』のポスター」を描いてもらったのがこれだ! なんだか得体の知れない生命体がたくさんいて、賑やかな感じがするぞ。ワクワク。
AIが勝手に考えた映画ポスター

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