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News: 2010年3月アーカイブ

March 31, 2010

フェスタサマーミューザKAWASAKI 2010記者発表

フェスタサマーミューザ

●毎夏ミューザ川崎で開催されている「フェスタサマーミューザKAWASAKI 2010」の記者発表へ。壇上は阿部孝夫川崎市長(左)と大野順二東京交響楽団楽団長。
●フェスタサマーミューザKAWASAKIは首都圏9つのプロ・オーケストラが、7/25~8/15にかけて、それぞれミューザ川崎で公演を行なうフェスティバルで、今年で6回目。通常より短めな70分程度のプログラム、夜8時からの公演あるいは平日の昼間の公演など、いくつか特徴を打ち出している。チケット価格は3000円中心とかなりお得な設定。手ごろな価格、同じホールで、首都圏の気になるプロオケを聴き比べることができるのが吉。同ホールをフランチャイズとする東響の大野楽団長によれば「ヨソのオーケストラと比較されるので、東響はホスト・オーケストラとしてなにがなんでも良い演奏をしなければならないという気持ちになる」とのこと。
●ここはホールの音響が非常に良い。先日「ホール建設検討する独バイエルン州議らがミューザ川崎を視察」というニュースがあった。「ヤンソンスがミューザ川崎と同じものを作ってほしいと要請している」(阿部市長)のだとか。
●あと、これはサマーミューザとは別の話題で、MUZAランチタイムコンサート&ナイトコンサートっていう月イチ開催の気軽なコンサートがあるんだけど、4月の公演からSuicaまたはPASMOで入場できるという(笑)。これはなんだかスゴい。
●もう一つ。秋の来日オーケストラとして、小澤征爾指揮ウィーン・フィルがマーラーの交響曲第9番を演奏するということも発表されていた(11/3)。ということは、サントリーホールにも同じプロがあるのかなあ。

March 29, 2010

「東京・春・音楽祭」動画配信中

サクラ●ブルブル。なんですか、この寒さは。そして寒い割には桜が意外と咲き始めている。三分咲き、くらいかなあ。たまに先走って八分咲きくらいの木も。花見は容赦なくもう始まっている。
●春が来つつあるけど、まだ春じゃない、でも「東京・春・音楽祭」は始まっている。26日(金)は小菅優ピアノ・リサイタルへ。シューマンのダヴィッド同盟舞曲集、ショパンのピアノ・ソナタ第2番「葬送」他。5月の「ラ・フォル・ジュルネ」ではメンデルスゾーン中心のプログラムだが、なぜかこちらではショパンを弾いてくれたのだ。圧巻。どうしてLFJでは弾いてくれないんだろう、っていうくらい。
●で、この「東京・春・音楽祭」、いくつかの公演について演奏会の動画配信を行なっている。快挙なり。すでに先日触れた中野振一郎さんのトーク付きコンサート(すごくおもしろい)などが配信開始されている。この後、小菅優リサイタル、児玉桃のバッハなどが掲載予定。これはスゴい。どうしてこんなことが可能なんでしょう、という猛烈な気前のよさ。

「東京・春・音楽祭」動画コーナー
http://www.tokyo-harusai.com/news/movie.html

March 25, 2010

「神々の黄昏」@新国立劇場

ヤバい指環●昨日は「神々の黄昏」。休憩込みで6時間を越える長丁場。感覚としては昼頃に出かけて、夜中に帰ってくるという丸一日鑑賞。これで2年かけて「ニーベルングの指環」4部作完結。これだけの大作だと、トラブルなく最後まで見れた(ら抜き)こと自体が嬉しい。一日もチケットをムダにせずに済んだし、遅刻もしなかったし、爆睡もしなかったし(ウトウトくらいはしたけど。笑)、劇場内で鑑賞の致命的な妨げになるようなゾンビの攻撃もなかった(ゾンビそのものは見かけました)。安堵。そして深い感動。打ちのめされた気分で世界の崩壊を見て聴いた。
●キース・ウォーナーの演出はホントに楽しい。
●「ジークフリート」は明快なボーイ・ミーツ・ガールだった。しかし「神々の黄昏」はわけのわからん話である。そして長い。序幕だけで2時間超えるってどういう序幕だ(笑)。幕が上がって、ジークフリート(クリスティアン・フランツ)とブリュンヒルデ(イレーネ・テオリン)が愛を歌う。平和なのはここまで。ブリュンヒルデは胸に「S」のマークを付けたTシャツを着ている。SはスーパーマンのSで、ジークフリートのSだ。ジークフリートのTシャツにはブリュンヒルデのBが。なんというバカップルぶり。
●ジークフリートが忘却のクスリを飲まされてからの乱暴狼藉がスゴい。グートルーネに一目惚れして、軽率にもグンターと義兄弟の契りを交わす。岩山のブリュンヒルデをグンターの嫁にするために、隠れ頭巾でグンター(アレクサンダー・マルコ=ブルメスター)に化けて、ブリュンヒルデを陵辱する。本当は夫婦なのに。この時点で呪いの指環を持っているのはブリュンヒルデだ。生まれは神聖だったのに、いまや指環に執着してこの有様。元同僚の説得も効かない。ジークフリートはもっとひどい。彼のは天然だから。他人に嫁を与える方法論としてもおかしいし、ブリュンヒルデに告発されてからの態度はさらに悲惨だ。「あー、メンドくさいな女のヒステリーは。でもあんなものは放っておきゃすぐ収まるんだ、それどころか今にグンターにくれてやったことを感謝するぜ、あの女」みたいなことを歌う。
●これがジークフリートなんだろう。忘れクスリを飲んではいるが、頭がおかしくなったわけでもなんでもない。そういう本性。無双の戦士だが、彼には大人になるチャンスが与えられなかった。自分を賢いと思っているあたりは育ての親ミーメそっくり。ジークフリートとブリュンヒルデ、まさにどっちもどっちで、似合いのカップルだ。あるのは力と欲だけ。そういえば二人とも巨体である。ブリュンヒルデの愛馬グラーネは、「ワルキューレ」で最初に登場したときはブリュンヒルデが小さく見えるほど巨大だった。それが「神々の黄昏」では旅行カバンに収まるくらいコンパクトサイズになっている。ブリュンヒルデが大きくなったのだ。ジークフリートも太っている。神性を失い、力と欲だけで生きる男女が描かれている。
●ハーゲン(ダニエル・スメギ)はアルベリヒよりもミーメよりも陰険なヤツである。またストレッチャーが出てくる。「ワルキューレ」では、ワルキューレたちがストレッチャーを愛馬として駆け巡ったが、今度は本来の用途で、病人となったアルベリヒを乗せて出てくる。ハーゲンは枕で父アルベリヒの顔面を押さえて、無感情に軽く窒息死させる。アルベリヒのためのモルヒネを自分の腕に注射して、陰気に薬物に浸っている。淡々と他人の破滅だけを目指し、むしろ指環への欲望は他の登場人物より薄めなくらいだ。
●2幕の終わりじゃブリュンヒルデとハーゲンとグンターと3人で「ジークフリートを殺せ!」で意見が一致する。ええっ、正気の沙汰じゃないよ、ブリュンヒルデ……。それが3幕でジークフリートが殺されちゃうと、「どうしてこんなことになったのか、おわかりですか」とか手のひらを返したように説教くさくなる。はあ? あんただって加担してるだろが、この自己犠牲娘がっ!(意味不明)
●3人のラインの乙女たちも、いつの間にか醜くなっている。指環は乙女たちのもとに返るが、だからと言って世界はもとの秩序を取り戻すわけではないのだろう。4作のモチーフとなっていたジグソーパズルの最後の一片が収まり、映写機とその映像を見ていた非神話的な現代人の観客の姿があらわれ、幕を閉じる。
●あれ、こうして書いてみると、いったい何にワタシは感動したんだ(笑)。神の世界がグダグダに崩壊するから? ワーグナーは別格の存在で、これから一生毎日ワーグナーを聴いて過ごしたいと思うくらいの(過ごさないけど)破壊力があったのに。
●「グートルーネ」は英語なら「グッド・ルーン」なんすよね。ワーグナー業界では「ルーネ文字」だが、一般に日本のファンタジー業界では「ルーン文字」だろう。グートルーネ役はセクシーな雰囲気の歌手が似合うんじゃないかな。グートルーネは美しく、グンターも金持ちのイケメンで、でも二人とも内心では自分が見かけ倒しの人間であることを知っている。その点に関してはミーメやジークフリートよりは賢い。
●この演出、少しだけ映像を使う。CGだ。初演から何年経ったかな、そのときの映像をそのまま使っているんだろうか。演出は斬新なままだが、唯一映像だけが古びていた。新しいものは古びやすい。
●エッティンガー指揮東フィルは大健闘。たまたまワタシが行った日のめぐり合わせにもよると思うんだけど、昨年の「ラインの黄金」「ワルキューレ」は客席が大いに熱狂していた。それが先月の「ジークフリート」では少し寂しい雰囲気になってしまった。昨日の「神々の黄昏」はさすがに完結編ということもあって、お客も相応にわいていた。
●みんな、どうしてあんなに指環に執着するか、共感できますか? ワタシはよくわからない。呪われてるって知ってるのに。でもなぜわからないかと言えば、それは本物の権力を手にしたことがないからだろう。こんど、リアル権力を有した人に尋ねてみたい、指環の魔力について。

March 24, 2010

オーケストラ・アンサンブル金沢の東京定期

●ドイツグラモフォンのDG Radioが、いつの間にか「β版」から正式版になっていた。中身のCDがもっと頻繁に入れ替わってくれることを期待しているのだが、どうか。ラジオというよりは気前のいい試聴機といったところか。
●ヴォルフガング・ワーグナー死去。ちょうど新国立劇場で「神々の黄昏」を上演しているという奇遇。
●昨晩はオーケストラ・アンサンブル金沢の第26回東京定期公演へ(サントリーホール )。井上道義指揮、小曽根真(ピアノ)、ルベン・シメオ(トランペット)、ルドヴィート・カンタ(チェロ)で、ものすごいプログラム。ヘンデルの合奏協奏曲とタルティーニのトランペット協奏曲、アウエルバッハ:フラジャイル・ソリテュード(弦楽四重奏とオーケストラのための)、休憩を挟んでショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第1番(トランペットが活躍するあの曲です)、そしてグルダの「チェロとブラス・オーケストラのための協奏曲」。小曽根さんのショスタコが猛烈に楽しい。特にこの曲の終楽章って、シニカルなものであるにせよ、とにかく笑いたくなる曲じゃないっすか。小曽根さんは笑ったし、オケのメンバーも笑ったし、たぶん客席も笑った。吉。
●もっともショスタコもグルダに比べたら行儀のいい音楽か。グルダの「チェロとブラス・オーケストラのための協奏曲」はパロディだらけのハチャメチャな怪作(YouTubeでもとりあえず見れてしまうかな)。金沢での定期公演で同曲が演奏された際は、石川県立音楽堂でミラーボールが回ったらしい(笑)。この曲、演奏機会は結構多いんでは。作曲者本人が死んだ後もあちこちで曲が繰り返し演奏されるっていうのは、それが「クラシック」になりつつあるってことか。いずれピアニストとしてのグルダが忘れられて、作曲家として名が残る?

March 23, 2010

「続クラシック迷宮図書館」 (片山杜秀著)

片山杜秀の本 4 続クラシック迷宮図書館●えっ、もう出たの? そう、出たんである。片山杜秀さんの「続クラシック迷宮図書館」(アルテスパブリッシング)。以前に「クラシック迷宮図書館」をご紹介したのが今年の1月。あっという間に続巻が出た。「レコード芸術」誌連載「片山杜秀のこの本を読め!」の2004~2010(最近だ)までの回を中心に収録してある。書評なんていうのはどんな雑誌にもあるが、音楽書の書評がまとめて一冊になって(いや二冊だ)、それがとことんおもしろいというのは片山さん以外ではありえないこと。帯に「面白すぎて小説が書けない! 高橋源一郎(作家)」とあるのだが、これはTwitter上で高橋源一郎氏が本当にそう呟いていたんである、たしか。
●で、片山ファンに朗報。3/25(木)、というともう明後日なのだが、19時よりジュンク堂書店新宿店にて、片山杜秀さんのトークセッション「音楽は読め!」が開かれる。「続クラシック迷宮図書館」 刊行記念。詳細は版元のアルテスパブリッシングのこちらにてご確認を。片山さんはトークも味わい深いんすよ。これ、行けばそこで本を買ってサインしてもらったりできるんすよね? (→※サイン会あります)

March 19, 2010

ジュノム、ジュノム……

●昨日は小倉貴久子さん&大井浩明さんによる「モーツァルト/クラヴィア協奏曲全21曲演奏プロジェクト」第1回へ。自由学園明日館講堂で、第5番、第6番、第8番「リュッツォウ」、第9番「ジュノム」を一晩にという盛りだくさんなプログラム。おそらく作曲当時に実際的な要請からたびたび演奏されたであろうフォルテピアノ2台による演奏という形態で、小倉さんがソロ、大井さんが第2ピアノ。躍動する精気にあふれたモーツァルトを満喫。協奏曲なんだけど、2台ピアノでもなんの不足感も感じない。とういかむしろ新鮮。自由学園明日館講堂という趣のある会場もすばらしいので、たぶん6月の第2回以降もオススメ。コンサートホールで聴くよりも贅沢なんすよ、体験として。
ビバ、モツァルト●モーツァルトの「ジュノム」って、たぶん20番より以前の協奏曲の中でいちばん演奏機会が多くて、実際突出した傑作じゃないっすか。協奏曲とソナタは若い時期の作品でも全部すばらしい曲ばかりなんだけど、「ジュノム」は単にすぐれているというだけじゃなくて、成熟している。ホントにそんな若い時期に書いたの?みたいな。これはたぶん第2楽章が短調で、その憂いの深さみたいなものに引きずられて受ける印象なんだろうけど。あと終楽章のロンド、プレストで異様な躁状態ではじめておいて、途中でメヌエットなんていうギャップの激しいものを差し挟むというアイディアもわけわからんスゴさ。よく言われる第1楽章冒頭にオーケストラにこたえてすぐにソロが一言だけこたえるという趣向も謎。ベートーヴェンの4番、5番ですぐにピアノが登場するのは、定型を破ろうっていうことでわかるんだけど、「ジュノム」はなんかもっと身近に具体的な理由があってソロがすぐに出てくるのかなあとも想像しなくもない。たとえば、協奏曲はおおむねみんなソリストを聴くために来るとして、オケの提示部は退屈だからとマジメに聴こうとしない客がいるから、彼ないし彼らを一瞬驚かしてやろう、みたいな。
●フランスのジュノム嬢というステキな女性に献呈されたということで愛称「ジュノム」。ザスロー全作品事典でも日本語版グローヴでも、なに見てもそう書いてある。でも最近は、ジュノム嬢 Jeunehomme なんて存在しなくて、モーツァルトの友人である舞踏家のジャン・ジョルジュ・ノヴェールの娘、ヴィクトワール・ジュナミー Jenamy のことだって言うんすよ(Michael Lorenz: The Jenamy Concerto。←ちゃんと読んでないけど)。「ジュナミー協奏曲」。うーん、なじめん。長年「ジュノム」で親しんでいるので、新しい名称に慣れるなら反復して口にする必要があるだろう。「ジュナミー、ジュナミー、五劫のすりきれ海砂利水魚の水行末……」。

March 18, 2010

日本の「三大……」

ベトベン●「三大B」とか、あるじゃないっすか。ベートーヴェン、バッハ、ブラームスとか。あれ?これであってるかな。ブルックナーは入らないんだっけ。あるいは20世紀版でバルトーク、ベルク、ブリテンでもなんでもいいんだけど。これってアルファベット圏だから「B」なわけで、やはりわれわれ漢字圏の人間には適用できないわけだ。やるなら、漢字だろう。
●たとえば、日本の「三大山」とか。山田耕筰、山田一雄、山本直純で「三大山」。どうか。
●どうかと言いつつ、実は他の例が出てこない。そうだなあ、日本の「三大服」なんてどうだろう。服部良一、服部克久、服部隆之。って親子三代だけど。
●「三大小」はできるかもしれない。小山清茂、小倉朗、えーと、小松耕輔? しかし「三大小」では大きいんだか小さいんだかわからない。
●もしマジメに日本の「三大B」を考えるとするなら、佐藤B作以外に誰が入るのかというのが問題。

March 16, 2010

ラジコ(radiko)はじまる

ラジオ●サイマルラジオ radiko がスタートした。「パソコンで民放ラジオが聞けるようになる」とニュースで話題になっていたサービスで、NHKは対象外。東京の場合、聞ける局は、TBSラジオ、文化放送、ニッポン放送、ラジオNIKKEI、InterFM、TOKYO FM、J-WAVE。
●で、これ、ためしに少しアクセスしてみたんだけど、ワタシらがなじんでいる「ネットラジオ」とは少々意味合いが違う。なんというか、全般にとても内向きなサービス。最大の特徴は、ネット配信なのに聴取エリアが限定されていること。つまり、前述の局はIPアドレス上、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県からアクセスしていると認められる人だけが聞ける。それ以外の地域からは聞けない。
●一方、大阪府、京都府、兵庫県、奈良県からアクセスする人は、朝日放送、毎日放送、ラジオ大阪、FM COCOLO、FM802、FM OSAKAといった関西の局を聞くことができる。これらの局は、東京からはアクセスすることはもちろん、存在してることすらわからない(サービス案内を読まない限り)。なんかそれって、ネットラジオというか、もとのラジオそのものでは?(笑)
●Twitter上からサービス開始日の反応を見てると、この地域判定がうまくいっていない例が目立った。関西なのに関東の局だけ聞けるとか、東京なのになにも聞けないとか。ああ、なんかすごくアンチ・ネット的なサービスだなあ。ネットラジオのおかげで、局の所在地が東京だろうとロンドンだろうとアメリカの片田舎だろうとみんな等距離になったと思っていたら、まさかこんな国内地域ブロックの壁が立ちはだかろうとは。あと、これってradikoのサイトに行って、そこのプレーヤーを立ち上げないと聞けないのも閉じている感じがする。
●と「大人の事情」仕様を嘆きつつも、歓迎、radiko。これは最初の一歩に過ぎないんである。こういうものはいったん動き出したら止まらなくなる。すぐにフツーのオープンなネットラジオになると期待。現状 HE-AAC 48kbps という寂しい音質もあっという間に128kbpsくらいになる(かもしれない)。NHK-FMもなんらかの形でネットラジオをはじめる(と、いいなあ)。あと、音楽を聴くためのネットラジオは世界中にもうあるんだから、「ラジオ番組」らしいラジオを聞ける局こそ欲しいっていう声もあるわけで(ていうかそっちがフツーだ)、その意味ではradiko最強。

March 11, 2010

「東京・春・音楽祭」3/14開幕、演奏会のインターネット配信も!

東京・春・音楽祭●上野の音楽祭、「東京・春・音楽祭~東京のオペラの森」が3/14(日)に開幕する。この音楽祭、昨年から名前と中身が刷新されて、ずいぶん雰囲気が変わった。昨年は「オペラがないのにどうして『オペラの森』なんて名前が付いてるの?」なんていわれてたが、今年はワーグナー「パルジファル」(演奏会形式)がある。目玉公演は以下の二つ。東京文化会館。

ワーグナー「パルジファル」(演奏会形式) 4/2、4/4
ウルフ・シルマー指揮NHK交響楽団、ブルクハルト・フリッツ、ミヒャエラ・シュスター他

オルフ「カルミナ・ブラーナ」他 4/9、4/10
リッカルド・ムーティ指揮東京春祭特別オーケストラ、東京オペラシンガーズ、デジレ・ランカトーレ、マックス・エマヌエル・ツェンチッチ他

●実は上記二公演にも、文化会館小ホール、東京都美術館、国立科学博物館、東京国立博物館、国立西洋美術館といった上野の文化施設を用いて、たくさんの公演が予定されている。スケジュールを見てると、いくつも聴きたい公演が見つかる。
●で、その公演のいくつかが動画ストリーミングでインターネットで配信される。いやー、そう来なくちゃ、この音楽祭は。すばらしい。以下が中継予定のラインナップ。いずれも公演終了後、配信期間限定(都合により配信中止になることもあります。とリリースに書いてある、一応)。

■ 小菅 優 ピアノ・リサイタル (公演日:3/26)
■ ミュージアム・コンサート 「ボルゲーゼ美術館展」記念コンサートVol..1~3  中野振一郎 /他(公演日:3/16、17、18)
■ ミュージアム・コンサート 姜 建華(二胡)~日本の春・中国の春 (公演日:3/22)
■ ミュージアム・コンサート アミーチ・カルテット (公演日:3/27)
■ ミュージアム・コンサート 東博でバッハ Vol.4 児玉 桃 (公演日:3/28)
■ ミュージアム・コンサート The DUO(鬼怒無月+鈴木大介)~Jazz & シネマ・ナイト(公演日:3/30)
■ ミュージアム・コンサート 東博でバッハ Vol.5 & 6 佐藤俊介(ヴァイオリン)(公演日:4/1、4/6)
■ ミュージアム・コンサート ジャスパー弦楽四重奏団(公演日:4/3)/他

●すごいなー。これはなかなかできないっすよね。LFJでもできない?無理?
●あと、音楽祭のTwitterアカウントがあるので、ユーザーの方はフォローするが吉(@tokyo_harusai)。

March 5, 2010

METライブビューイングの2010-11新シーズン

●METライブビューイング2010-11新シーズンのラインアップが発表された。詳細はリンク先に……と思ったけど、以下にざっくり貼り付けておこう。日本での上演日は現地から3週間後以降。

第1作 ワーグナー「ニーベルングの指環」序夜「ラインの黄金」(新演出)
MET上演日:2010年10月9日
指揮:ジェイムズ・レヴァイン 演出:ロベール・ルパージュ
出演:ブリン・ターフェル、ステファニー・ブライズ、リチャード・クロフト、ウェンディ・ブリン・ハーマー

第2作 ムソルグスキー 「ボリス・ゴドノフ」(新演出)
MET上演日:2010年10月23日
指揮:ワレリー・ゲルギエフ 演出:ペーター・シュタイン
出演:ルネ・パーペ、エカテリーナ・セメンチュック、アレクサンドルス・アントネンコ

第3作 ドニゼッティ 「ドン・パスクワ―レ」
MET上演日:2010年11月13日
指揮:ジェイムズ・レヴァイン 演出:オットー・シェンク
出演:アンナ・ネトレプコ、マシュー・ポレンザーニ、マリウシュ・クヴィエチェン、ジョン・デル・カルロ

第4作 ヴェルディ 「ドン・カルロ」(新演出)伊語 5幕版
MET上演日:2010年12月11日
指揮:ヤニック・ネゼ=セガン 演出:ニコラス・ハイトナー
出演:ロベルト・アラーニャ、マリーナ・ポプラフスカヤ、サイモン・キーンリーサイド、フェルッチオ・フルラネット、アンナ・スミルノヴァ

第5作 プッチーニ 「西部の娘」 
MET上演日:2011年1月8日
指揮:ニコラ・ルイゾッティ 演出:ジャンカルロ・デル・モナコ
出演:デボラ・ヴォイト、マルチェッロ・ジョルダーニ、ユーハ・ウーシタロ

第6作 グルック 「タウリスのイフィゲニア」
MET上演日:2011年2月26日
指揮:パトリック・サマーズ 演出:スティーヴン・ワズワース
出演:プラシド・ドミンゴ、スーザン・グラハム、ポール・グローヴス

第7作 ドニゼッティ 「ランメルモールのルチア」
MET上演日:2011年3月19日
指揮:パトリック・サマーズ 演出:メアリー・ジマーマン
出演:ナタリー・デセイ、ジョセフ・カレーハ、ルドヴィック・テジール

第8作 ロッシーニ 「オリー伯爵」(新演出)
MET上演日:2011年4月9日
指揮:マウリツィオ・ベニーニ 演出:バートレット・シャー
出演:ファン・ディエゴ・フローレス、ディアナ・ダムラウ、ジョイス・ディドナート、ステファン・デグー

第9作 R・シュトラウス 「カプリッチョ」
MET上演日:2011年4月23日
指揮:アンドリュー・デイヴィス 演出:ジョン・コックス
出演:ルネ・フレミング、サラ・コノリー、ジョセフ・カイザー、ラッセル・ブローン

第10作 ヴェルディ 「イル・トロヴァトーレ」
MET上演日:2011年4月30日
指揮:ジェイムズ・レヴァイン 演出:デイヴィッド・マクヴィカー
出演:マルセロ・アルヴァレス、ディミトリ・ホヴォロストフスキー、ソンドラ・ラドヴァノフスキー、ドローラ・ザジック

第11作 ワーグナー 「ニーベルングの指環」第1夜「ワルキューレ」(新演出)
MET上演日:2011年5月14日
指揮:ジェイムズ・レヴァイン 演出:ロベール・ルパージュ
出演:ヨナス・カウフマン、ブリン・ターフェル、デボラ・ヴォイト、ステファニー・ブライズ、エヴァ=マリア・ヴェストブルック

●「指環」2作の新演出がある。ロベール・ルパージュ演出、レヴァイン指揮。東京は今月の新国立劇場「神々の黄昏」で一通り再演が完結するが、今度は秋に映画館で新しい「指環」を観ることができるわけだ。ゲルギエフが「ボリス・ゴドノフ」、ルイゾッティが「西部の娘」を指揮。
●メトロポリタン・オペラそのものの来シーズンのプログラムは公式サイトのこちらに。

March 3, 2010

METライブビューイング「シモン・ボッカネグラ」

メトMETライブビューイングでヴェルディ「シモン・ボッカネグラ」。ドミンゴがタイトルロール、バリトン役を歌った公演。朗々と歌うシモン。このオペラ、序幕で若き日のシモン・ボッカネグラが出てきて、続く第1幕で25年後にジャンプするんすよね。ドミンゴだと本当に25年老けたって感じになる。宿敵役フィエスコのジェイムズ・モリスとともに、熟してて渋い。ドミンゴはなんか幸せそうに老いててステキだなあ、METライブビューイング得意の舞台裏ショットで出てくるとそう思う。
●それにしてもヴェルディの「シモン・ボッカネグラ」って作品は! これ、スゴくない? この台本が生まれるにあたって紆余曲折はあったみたいだけど、ヴェルディはこれを台本作家から受け取ったときに頭を抱えなかったんだろうか。二人の男が宿敵で、ヒロインがいて、そのヒロインは実は片方の男の娘であり、もう片方の男の孫娘であるという基本設定もどうかと思うが、ヒロインのアメーリア(エイドリアン・ピエチョンカ)もかなり不思議ちゃんだと思う。1幕のグリマルディ伯爵邸でシモンと会って、なんか唐突に自分の身の上話をはじめて出生の秘密を明かしちゃう。パオロと結婚したくないからということなのかもしれんが、対立する側の権力者にそんなことまであっさり話すなんて。
●でももっと驚くのは1幕第2場の議会の場。アメーリアが誘拐されたぞ!大変だ、犯人は誰だ、お前だ、許さん!とやってるところに、いきなり当のアメーリア本人が現れて「みんな、止めて~」みたいなありえない展開。おいっ、あんたさっき誘拐されたんじゃなかったの! 小娘一人に逃げられるってどんな緩い誘拐犯なの……。このアメーリアが出てくる場面はなんど思い出しても笑う。
●と、ワタシにはこの台本は筋が通っているようには思えないんだけど、でもヴェルディはものすごい情熱を注ぎ込んで音楽を書いた。奇跡のような瞬間がいくつもある。特に議会の場の重厚さ、高揚感は圧巻。話の筋がどうなっていようとも、音楽と舞台がすばらしければオペラはいくらでも人を感動させることができるのか。ヴェルディって天才、というかほとんど神! メトの舞台もゴージャスで見ごたえがあった。オススメ。
●ところで、序幕でマリアが死んだのはあれは自然死でいいんすよね、病気かなんかで。シモンが死体を発見したのは偶然? 第一発見者なの? フィエスコは娘の死ついてはどうなのよ(←まだ話に納得してない)。

March 1, 2010

東京バレエ団「シルヴィア」

踊りながらどこまでも飛んでいける●東京バレエ団の「シルヴィア」へ。26日(金)東京文化会館。バレエはまるっきりの門外漢なのだが、後学のためにと思って足を運んでみた。すると、これが期待以上におもしろいんだな、見方がわかってないなりに。フレデリック・アシュトン振付、ドリーブ作曲、ベンジャミン・ポープ指揮東京ニューシティ管弦楽団。
●舞台があってピットがあってオケが入っていて物語があって、形態的にはオペラに近いんだけど、中身はぜんぜんちがう(そりゃそうだ)。幕が上がってパッと序曲みたいなのが始まるんすよ、で、こう音楽が「さあどうぞ」と来たときに、舞台の人は歌わないんすよ! 歌うんじゃなくて、その代わりに踊る!! いかにも歌ってくださいのところで踊る、この衝撃。そして登場人物もストーリーもあるけど、舞踊で進行していくからセリフがない、字幕もいらないという言語障壁レスな舞台。感動。えっ、そんなの当たり前すぎる? いや、これは正確じゃないな、踊るからすばらしいんじゃない。ずばり、美しいからすばらしい、人間が。人間離れして美しい人工的な人間以上のなにか。
●シルヴィア(ポリーナ・セミオノワ)とアミンタ(マルセロ・ゴメス)が美しいだけじゃなくて、舞台上に存在する人間ぜんぶが美しい。ワタシの知っている舞台というものとかなり違う(笑)。オペラ歌手にも見目麗しい人はいなくはないだろうけど、なんか比較の対象になりようがないというか、歌手をたとえに出すのはなんだから、このワタシだな、仮にワタシがバレエダンサーと同時に舞台に立ったとしよう。そのときの光景をたまたま通りかかった地球外生命体が観察したとしたら、おそらくワタシとダンサーたちは同種族の生命体とは認識されないはずだ。「あ、なんか一匹ブタみたいな生物が混じってるぜ」くらいに思われても文句は言えない。それほど違う。
●人類ってこんなに優美な動きができる種族だったのですね……と感動しつつ、ワタシはこう思わずにはいられなかった。彼ら彼女らは歌をうたえないのか! あのシルヴィアにイゾルデを歌わせ、アミンタにトリスタンを歌わせるというのは人類の見果てぬ夢なのかっ! ああ、もう遺伝子工学でも何でも使って視覚と聴覚を同時に美であふれさせる新型人類を誕生させてくれ。
●が、ムチャである、それは。のび太が泣いてドラえもんに懇願しても不可能なレベル。オペラが観たいし、すばらしい音楽を聴きたい、しかしバレエの美しさを目の当たりにすると、オペラの舞台が色褪せる。せめてオペラにバレエを入れよう。19世紀のオペラ座の聴衆がグランド・オペラに対してバレエ・シーンの挿入を求めたのは、こんな気分になったからなんだろうか。

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