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2009年6月アーカイブ

June 30, 2009

南アのコンフェデ杯で予習

●南アでコンフェデレーションズ・カップ終了。この大会の位置づけは、ずばり、ワールドカップ本大会のリハーサル。本大会の一年前に各大陸王者が集まって、本番と同じ会場でミニ大会を行なうことで、移動、宿泊、試合運営、メディア対応、ボランティア等々について予行演習を行なうことができる。今回は初めてのアフリカ大陸での開催、しかも治安が悪いとかインフラが整っていないとかあれこれ言われる南アということもあって、いろんな意味で注目されていたはず。
●でもニッポンは出てないんすよね。アジア・チャンピオンにならなければ出場できないわけで、今回は王者イラクが出場。彼らはワールドカップには出場できないんだが……まあ、しょうがない。
●で、テレビ中継は何試合か録画したけど、ぜんぜん見れない(ら抜き)まま決勝戦が終わってしまった。決勝はアメリカvsブラジルという意外な組み合わせで、アメリカが2点リードしたが、ブラジルが3点を獲って逆転するという派手な試合。でもこれ、先に結果を知っていたからテンションは上がらず。
●今回地上波は生中継じゃなかったようだが、仮に生だったとしても、テレビ観戦は厳しい。というのも南アとの時差は7時間。つまり前回のドイツと同じ(そうかー、南アだと欧州のテレビ局には都合がいいわけだ)。欧州のゴールデンタイムに行なわれる試合は、日本では真夜中から早朝にかけてだから、フツーの人は生中継はほとんど見れないし、しかも朝起きたらYahoo!等のトップページで思い切り結果バレするという悪夢のパターン。なんていうか、ワールドカップ報道に関しては「結果バレ禁止」の作法が必要な気がする、ネットだろうと新聞だろうと。夕刊一面には「アメリカvsブラジルの結果、2面で速報!」みたいに報道するとかできないものか。っていうか、試合結果ってのは「報道」の対象じゃないんでは。「リアル」にはちがいないんだけど、本質的には「人口現実化したファンタジー」(?)なんだと思う。
●と、寝言はほどほどにすることにして、ニッポンのサッカーファンとしては、まずは録画しておいて、早起きして他のメディアに一切目を通さずに追っかけ再生するとか、いろんな工夫が必要になる。コンフェデはサッカーファンにとっても本大会の予行演習になるなあ~。

June 29, 2009

週末フットボールTV~連続黒星編

マリユニ●珍しくマリノス戦はテレビ中継あり。マリノスvsガンバ大阪。ここのところなぜか調子がよかったマリノスが(逆俊輔効果なのか?)、調子を落としているガンバと対戦。期待したがホームで1-2の逆転負け。悔しすぎる。
●前半20分、ベテラン松田が先制ゴール。この日、復帰した中澤と栗原がセンターバックを務め、松田を中盤の底に上げていたのだが、前半までの守備は最強に強まっていた。中澤一人でどれだけ止めたか。このパワフルな守りがこのクラブ本来のスタイルというか、強いときはいつもこれで勝ってきた。
●でも後半にあっさり崩壊。ガンバは押されてても焦らないし、基本的にパスを回す能力はウチよりずっと上。後半7分に遠藤のやたら落ち着いたゴールで同点にされ、その直後、サッカーでもっとも見たくない悲しいシーン、つまりゴールキーパーのつまらないミスで逆転ゴールを奪われた。キーパーはユース出身の飯倉大樹。新米キーパーは必ずといっていいほど、こういうミスをする。通過儀礼みたいなものなので、ここで下を向いていてはいけない。終盤、センターフォワードの渡邉千真のヘッドがポストを叩いたのが惜しかった。ちなみに「千真」と書いて「カズマ」と読むんすけど、なんかスゴいっすよね。「一真」なら読めるけど、「一」じゃなくて「千」。渡邉家では1000を1と数えるみたいな、K単位でのカウントが基本なのだろうか……。
●それからJFL。横河武蔵野FCも負けてしまった。アウェイのV・ファーレン長崎戦で0-2と完敗。でもJFL前期3位を確保したので、天皇杯出場権は獲得。ほかにJFL枠で出場権を獲得したのはSAGAWA SHIGA FC、ガイナーレ鳥取、ジェフリザーブズ。JFL上位の実力はJ2下位と比べてまったく遜色ないと思うので、本大会でのジャイアント・キリングを期待したい。

June 27, 2009

25世紀のスーパーダンサー、スペースマイケル

スペースチャンネル5 パート2●マイケル・ジャクソン急死。死因はまだわからないまま。ワタシが唯一マイケルと接点があるとすれば、このゲームくらい。SEGAの「スペースチャンネル5 パート2」。いわゆるリズムゲーなんだけど、これは信じられないくらいセンスがよくて愉快なゲームだ。デモをプレイして「こんなハッピーなゲームはない」と気に入ったマイケルが、本人の希望により「スペースマイケル」役で出演している。この突き抜けたバカバカしさ、明るさ、レトロでイカしたノリノリのダンス。今プレイしてもまったく古びていない。
●昨日、テレビのニュースでマイケル・ジャクソンの死について一般の人がコメントを求められていた。「えーっ、信じられません。本当に残念です……」。でもなぜかそう答えている人の口元が緩んでいるんすよ。二人出てきて、二人とも軽く笑っていたように見えた。これは日本人だからテレビに映っているという照れ隠しの笑いなのかなと思った。続いてカメラはニューヨークに切り替わり、アメリカ人にコメントを求めると、二人の一般人が「とても残念です」といってるんだけど、やっぱり口元にはスマイルが見える。この口調ってなんていうかな、たとえばディズニーランドのなんとかっていうアトラクションが今月で終了ですと告げられて、「えー、残念です」って答えるみたいな反応に似てる。マイケルはぜんぜんハッピーそうに見えなかったし、しかも亡くなったのに、(特にファンではない)街を歩いている普通の人々は、なにか楽しいことの思い出と一緒にしかその名を思い出せないかのような反応をする。これもマイケルの偉大さなのか?

June 26, 2009

小さいカバン

こんな感じのカバン●あの、セカンドバッグっていうのかなあ、男物の小さいカバン。いつの間にか男があれを持つのは最凶にダサいっていうことになってるっぽいんだけど、じゃあ代わりになにを持てばいいんすかね? 「ちゃんとしたビジネスバッグ」と「手ぶら」の中間に相当するカバンで、特にオシャレじゃないフツーの大人の男が持っておかしくないもの。ケータイと手帳と文庫本でマックスになるサイズ。
〈東京の夏〉音楽祭、第25回の今年で終了(asahi.com)。ちなみに今年のテーマは「日本の声・日本の音」。公式サイトはこちら

June 25, 2009

ベルリン・フィル デジタル・コンサート・ホール、来季のパスは149ユーロ

デジタル・コンサート・ホール。もう少し明るい雰囲気のデザインでもいいような気もするが。●ベルリン・フィルのネット・ライヴ中継Digital Concert Hallだが、今季のシーズン・パスが8月27日で切れる。なので、それまでに全部のアーカイブを一通り見なければとあわてていたのだが、どうやら来季のシーズン・パスを購入すれば、今季の分も全部アクセスできるようだ。なるほど、そりゃそうか。ベルリン・フィルからすれば、すでに収録してあるアーカイブをわざわざ出し惜しみする必要はないよなあ。
●ただし、来季のシーズン・パスは149ユーロなんである(これはサービス開始の時点ですでに発表されていた)。今季は89ユーロだった。これが微妙なところで、今季はシーズンの半ばから始まったから安価だったんだろうが、アーカイブにはシーズンのはじめの頃の公演もちゃんと含まれていた。89ユーロというのは超お買い得設定だったんである。今季分をすでに全部見ちゃった人には、来季の149ユーロはやや割高に感じられるかもしれない。
●国内市場はまた別だけど、1アルバム10ユーロ(または10ドル)を音楽配信の標準価格と考えて、ベルリン・フィルの最新30公演が何アルバムに相当するかという話だな。
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●東急のフリーマガジン「SALUS(サルース)」7月号、ワタシの連載はヴェルディの「アイーダ」の凱旋行進曲がお題。沿線各駅、Bunkamura、東急百貨店、東急ストアで配布中。

June 24, 2009

さらば中村俊輔。エスパニョールに移籍決定

●ああ、やっぱり。横浜M幹部粛正も…俊輔エスパニョール決定。中村俊輔は帰国したがってたから、最後の最後で本人の希望によりマリノスに復帰するかもと淡い期待を抱いていたが、結局スペインのエスパニョールに行くことになってしまった。
●マリノスの社長が暴走する前の段階で、俊輔は「オレの移籍って毎回自分の希望通りになってない(だから今回もどうなるかわからない)」と言ってたが、まさか「後はメディカルチェックだけ」というところまで進捗していたマリノスとの契約が撤回されるとは。いちばん残念に思っているのは俊輔自身だろう。これまでに「(当たりの激しい欧州では)もうこの足が耐えられない」「家族と日本で暮らしたい」「W杯に向けて代表に集まりやすいJリーグでプレイしたい」といったことを公言してきただけに、もう一度チャレンジャーの気持ちになってレベルの高いスペインで戦うのは並大抵のことじゃないと思う。
●それにしても報道通りだとすると、社長の要求は恐ろしく非フットボール的だなあ。そして、いかにもありそうな話。サポ的にはまったく申し訳ないことをしてしまったと俊輔に謝りたい気分。もしこれで俊輔がエスパニョールで活躍できなかったり、W杯に出場できなかったりしたら、ひどく気がとがめることになりそう。

June 23, 2009

昼から「チェネレントラ」

こちらがわが家……じゃなくて、シンデレラのお城●先週、新国立劇場のロッシーニ「チェネレントラ」に出かけた。平日午後2時からの公演。新国立劇場に限らず、平日昼の公演って増えてる気がするし、お客さんもよく入っている印象がある。新国の昼公演はこれで2度目なんだけど、太陽が頭の上にあるのに暗い劇場にこもるってのが不思議な気がする。まあでもそれは週末の昼でも同じか。いや、なにか違うな。
●そのうち平日午後公演ではなくて、平日午前公演が増えると予想。午前10時開演とか。そのほうが足を運びやすい人が多いと見てるんだけど、どうっすかね。リタイア世代も現役世代も。
●公演のほうはいろんなブログで絶賛されている通り、大変すばらしいものだった。アントニーノ・シラグーザとヴェッセリーナ・カサロヴァが登場、ジャン=ピエール・ポネルによるバイエルン国立歌劇場のプロダクションをレンタルして上演(再演演出グリシャ・アサガロフ)。オケはデイヴィッド・サイラス指揮東フィル。シラグーザのスターぶりを満喫。
●オペラ・ブッファで苦手なのは舞台から客席への「笑いの強要」。ワタシがオペラの文法に慣れてないからなのかな、あまりにくだらない「コミカルな仕草」とかで笑わされそうになるとそれまでの愉快な気分がさっと吹き飛ぶことがあるんだけど、そういう笑えるか笑えないか、レイジ・ウィルスに冒されてゾンビになるかどうかという点で言えば、ギリギリ笑えるほうに分類される舞台。危険な瞬間はあってはらはらしたけど、セーフ。ワタシの周囲にもゾンビになっていたお客はいなかった。オペラ劇場って、日常にひそむゾンビ化しやすい場所トップ5に入ってると思う。実際、よく見かけるし(←それ何の話?)。
●「チェネレントラ」すわなち「シンデレラ」。これはだれに対してもあらすじの説明が不要なオペラっすよね。イジワルな継母がいて、可憐な娘がいるわけだ。継母は毎日鏡に向かって言う。「鏡よ鏡、世界でいちばん美しいのはだぁれ?」。あっ、ちがった、これ「白雪姫」だ!
●いや、「チェネレントラ」って継母じゃなくて継父になってるんすよね。あと「魔法」っていう要素がないので、カボチャの馬車が出てこないのが惜しい。ガラスの靴も出てこなくて、代わりにブレスレットを片方残していく。魔法使いじゃなくて哲学者が出てきて、微妙にお説教くさい。継父が「チェネレントラの財産に手をつけてしまったのに」的なことを言う。つまりファンタジーよりもリアリズムなんだなと実感。
●ワタシが王子なら、決してアンジェリーナ(チェネレントラ)を選ばない。アンジェリーナには「カルメン」のミカエラと同じ匂いがする。つまり、一見そういう役柄ではないようでいて、実はヤな女。オペラ界のヤな女トップ3はだれだろう。ミカエラ、アンジェリーナ、あとは……そうだなあ、「トゥーランドット」のリューとか? アンジェリーナの「感じの悪さ」は、冒頭の「♪昔あるところに王さまが~」の歌とか(そんなの歌うかフツー)、初対面の王子(従者と偽っている)に真っ先に身内の悪口を言い出すところからも伝わってくる。大声で「わたしは正義~」とか叫ぶ人を信じてはいけない。一方、クロリンダとかティーズベは若いからバカなだけで、大人になって地位を得たり責任を背負ったりすれば成熟した優しくて賢い女性になりうる。あの哲学者にはどうしてそれがわかんないのかなあと全力で歯ぎしりしてみた(←どんなオペラの見方だよ!)。

June 22, 2009

日焼けして武蔵野

横河武蔵野FC●すっかり日焼けして、腕時計のあとがくっきり。これはサッカー焼け? いや観戦しただけだからサポ焼けなのか。梅雨の晴れ間にラブ太陽な気分、武蔵野陸上競技場で芝生席に陣取って観戦したJFL、実は天皇杯出場をかけた一戦。横河武蔵野FC対MIOびわこ草津。
●説明しよう! 日本サッカーの3部リーグであるJFLは、前期と後期にシーズンが分かれている。分かれているといっても、これは前半戦と後半戦くらいの意味であって、順位は通算の勝点で決まるから、ほとんど意味はない。ただ、前期で4位までに入ると天皇杯出場資格が得られる(前年は1位チームだけだったから門戸が広がった)。この試合の時点で武蔵野FCは首位と並ぶ勝点30をゲットしており、勝てば前期1節を残して早々に天皇杯出場が決定したのだ。
●もう一つ説明しよう! MIOびわこ草津はその名の通り草津市にある。そして草津市というのは滋賀県にある。ザスパ草津とはぜんぜん関係ないぞ!……たぶん。
●そんなわけで、こちらも相当に期待をしていたのだが、なんと、試合が始まるとMIOびわこ草津が武蔵野を圧倒したんである。ポゼッションでも運動量でもびわこが上。10番とか4番とか巧い選手が多い。前半15分で早くも失点。ただ、向こうもかなり序盤から飛ばしてきたんだろう、後半になるとぐっと運動量が落ちて、武蔵野がペースを取り戻す。67分に左サイドのテクニシャン、斎藤がゴール前のワンツーからきれいに抜け出て鮮やかな同点ゴール。このまま逆転するのではないかという試合の流れだった。
●なのに、82分、83分と連続して失点。びわこは後半途中からブラジル人のアランを投入。まだ若い選手なんだけど、パワーもスピードもJFL離れしたレベルで、これで明らかに武蔵野のディフェンスは浮き足立った。悔やまれる83分の3失点目、ディフェンスがキーパーに弱気のバックパスを出したところを、アランにかっさらわれて、無人のゴールに流し込まれるという、最悪の形。1-3で勝点ゼロ。
●出しちゃいけないバックパスを出すのがサッカーの怖さ。これはよくわかる、心情的に。気持ちで負けるとプレイが萎縮してミスが増える。初心者草サッカーからワールドカップまで共通した真理なんじゃないだろか。
●崩されてやられたときと、自分らのミスで負けたときではサポの気分はぜんぜん違う。でもそこで選手を拍手で迎えるスタンドの暖かさはすばらしい。どんなサポでも、本当は心の中はバックパスした選手と同じ気分なのだ。オウンゴールだろうが5人抜き神ゴールだろうが、あらゆるプレイについて仮想的に身に覚えがある(笑)。
●天皇杯出場決定は次の前期最終戦に持ち越し。アウェイの長崎戦だ。さすがに長崎までは行けない。勝点ゲットを東京から祈るしか。

June 19, 2009

新しいポストとか移籍とか

●新聞報道が出てすっきり。

樫本大進さん、ベルリン・フィルのコンサートマスターに内定(読売新聞)
樫本大進さん:ベルリン・フィルコンサートマスター就任へ(毎日新聞)

●例のベルリン・フィルのライヴ中継Digital Concert Hallで、5月のペトレンコ指揮の演奏会を見てたら、コンサートマスターのブラウンシュタインの隣に見慣れない(いや見たことのあるというべきか)日本人らしい男性が座っているなーと思ってたら、次の小澤征爾指揮のメンデルスゾーン「エリア」ではコンマス席に座ってて、あれれ、これは樫本大進氏では?と驚いてたんである。
●これもびっくり。新日本フィル、ダニエル・ハーディングが2010-2011シーズンより指揮者陣に加入。スゴいなあ。年間4プログラム6公演振る。普通なら首席客演指揮者くらいの呼び名になりそうだけど、タイトルは Music Partner of NJP。
●その前の2009/2010シーズン詳細については、こちらに詳細あり。個人的に気になる名前はジャン=クリストフ・スピノジ(6月)。ハイドンとロッシーニ。
●あとは中村俊輔のエスパニョール行きが今日にでも発表されるんじゃないかという雰囲気なんだが、内心大逆転もありうると思ってる。

June 18, 2009

オーストラリアvsニッポン@ワールドカップ2010最終予選

オーストラリア●これ、消化試合だし、思ったより相手はメンバーを落としてこなかったとはいえ、お互いにナチュラルに落ちてる試合でもあって、「まあ、この試合の結果はどう出ても参考にならんな」と思っていた。が、なんじゃこりゃ。プレッシャーがないがゆえに、意外にもオープンな好ゲームになってて、しかもこの試合展開! 猛烈に猛烈に猛烈に悔しい。
●トゥーリオのヘディングで先制したまでは良かった。でも後半に2点セットプレイから奪われて、パワーに屈した。1-2。またケイヒルかよ、2点とも。ああっ、もうこれってすごい既視感あるんだけど、ワタシがタイムスリップしたのかな!? なんかゴールして喜ぶケイヒルの姿とか、ボールを見送る楢崎の姿とか、もう何度も見てる気がするんデスけど。ケイヒル、いやデス、嫌いデス、見たくないデス、街を歩いてて雑踏の中にケイヒルの顔を見かけたら追いかけて110番してしまいそう!
●オマイブッッダ、ケイヒル、仏の顔も三度まで、てめーがもう二度とニッポンのゴールを破らないように、イワシの頭に向かってお祈りするぜ、ナム~。ケイヒル、ケイヒル、ケイヒル、ブチッ、ウキーッ!(←猿に退化)。
●はぁはぁ。いや、なにがワタシを興奮させるかといえば、オーストラリア代表のゴール裏のサポどもが出してくれやがった垂れ幕だ。きったねー字でこう書いてあったの、見たでしょ、テレビで。

Nippon: forever in our shadow

 オーストラリアのサポどもにワタシは一言いいたい。「君らは本物のサッカーファンになってしまった!」。ほんの少し前までは、オーストラリア開催の代表戦だと、ずいぶんとんちんかん(死語)なところで「ウォー」とか盛り上がってて、この人らはサッカー見慣れてないなあと思ってた。でも今日、試合中にも9番の選手のがんばったポストプレイに歓声が起きたりして、もはやみんなフツーにサッカーファン。こんな垂れ幕まで下げれるようになってしまって。
●2010年に世界を驚かすのは、オーストラリアでは。でなきゃアメリカ。
●特にベストメンバーのオーストラリア代表は、多くが毎週マンチェスター・ユナイテッドとかチェルシーとかと試合してるわけで、一方ニッポンは現在だれ一人三大リーグ(プレミア、セリエ、リーガ)でレギュラーポジションを獲ってないし、過去に遡ってもレギュラーだったのは2人のみ(俊輔とナカタ。どちらもレギュラーは短期間だけど)。ワタシたちは世界を驚かす前に、もっと世界に驚く必要があると思うんだ……。
●だけど、ここで負け惜しみを言っておく。特にウチのブログを愛読してるそこのオーストラリア人のサカヲタである君に対して(いるの?)。これですんなり世界で戦えるほどサッカーは甘くないし、現在のアジア・チャンピオンは君らではなくイラクだ。ニッポンは過去3度アジア・チャンピオンになっている。君らはまだなってない。偉そうな垂れ幕を下げるなら、まずアジアで勝ってみれ!

June 17, 2009

「夜想曲集~音楽と夕暮れをめぐる五つの物語」(カズオ・イシグロ著)

カズオ・イシグロ「夜想曲集」●予約して発売日にゲット、すぐ読んだ。カズオ・イシグロの最新刊「夜想曲集~音楽と夕暮れをめぐる五つの物語」(早川書房)。短篇集だが、それぞれ題材はある程度共通している。副題にあるように「音楽」と「夕暮れ」をめぐるわけだが、言い換えれば「ミュージシャン」と「(夕暮れを迎えた)夫婦」がテーマ。あとドロップアウトした(しつつある)若者/元若者。
●「美しく切ない物語」みたいな意匠の中に、可笑しくて苦い真実を描くという点では、カズオ・イシグロのほかの長編と同じ。5つの作品の内、特に感銘を受けたのが「モールバンヒルズ」と「チェリスト」。別に「ネタバレ」を気にするような話じゃないけど、これから読もうという方は以下は読後に目を通したほうがいいかも。
●「モールバンヒルズ」の題からエルガーを連想する方は鋭い。ギタリスト志望の若い主人公が、ロンドンを離れてモールバンヒルズのカフェで働いていると、スイスからの観光客の夫婦に出会う。ダンナのほうは上機嫌だ。

「エルガーについてのいいドキュメンタリ映画を見ましてね、それからずっと来たいと思っていました。エルガーはモールバンヒルズが大好きだったのでしょう? 隅から隅まで自転車で走り回った、とありました。そして、私たちもついにここに来た」

 ダンナは休暇を楽しむ観光客にふさわしい快活な態度で「イギリスはすばらしい国」「みんな親切」と喜んでいる。でも奥さんのほうはずっと不機嫌。ひょんなことから、二人は実は音楽家だとわかる。といっても、コンサートホールの舞台に立つ音楽家ではなく、観光地のレストランで民族衣装を着て演奏して、お客を喜ばせるような仕事だ。主人公から「どんな音楽をやるんですか」と問われて、ダンナは「一番やりたいのはスイス民謡で、これを現代風にアレンジしてやる。時には過激にアレンジする。ヤナーチェクとかヴォーン・ウィリアムズからインスピレーションを受けることが多い」みたいなことをいうが、奥さんは「でもいまはあまりそういう音楽は、やらないわね」という。実際にはビートルズやカーペンターズとかABBAをやってるわけだ。口では尖がったオリジナルの音楽をやりたいとかいってても、レストランで演奏できるのはみんながよく知ってるヒット曲。そう、それが仕事というものの現実だろう。
●ダンナはなんだって物事をポジティブに捉えて喜ぶ。人生、物事は万事喜びを持って向き合えば喜ばしいものになるし、つまらないと思えば本当につまらなくなる、そういう価値観。これはまあ本当にその通りなわけだ。ワタシのような根っからネガティブな人間ですら、実はそう思っていて、さほどぱっとしないレストランでも「おいしいねえ」と言えば本当においしくなるし、ありきたりの観光地の風景でも「これは見事だ!」と言えば本当に見事になると知っている。そうせずにどうやって生きろと? おそらく奥さんのほうもそうやってダンナと喜びを共有してきたのだろう。でも「夕暮れ」を迎えて、もうそのダンナの「僕はラッキーだ」についていけなくなった。だって、そうしていっしょに暮らしてきたら、若い頃の志はどこへやら、あちこちの観光地のレストランでビートルズやABBAを演奏するばかりだし、たまに休暇をとっても冴えないカフェとかみすぼらしい民宿に甘んじてるわけで、それでもダンナは「僕はラッキーだ」って言い張ってる。はぁ、あたし、もう人生に疲れてきたわ……。
●カズオ・イシグロが巧いと思うのは、この夫婦を若い主人公の視点から描いているところ。この主人公は才能も野心もあるし、カバーバンドなんかやる気はなくてオリジナルの曲を作ってる。でもまちがいなく大人になったら、このダンナと同じになるよ、っていう話なわけだ。真実すぎる……。
●「チェリスト」も傑作。音楽家志望の若者は必読(笑)。若いチェリストが謎の女教師に出会い個人レッスンを受ける。女の批評は恐ろしく辛辣だが的確で、若者はレッスンにのめり込み、「生涯でこれほどうまく演奏できたことはない」と思うほど、成長する。で、どうなったかというと、不機嫌で凡庸なオヤジになったという話。イジワルだが、かなりコミカル。女教師に爆笑。

文庫化されました(2011年2月)。

June 16, 2009

来る、来ない、来る、来ない……

マリユニ●マリノスにもどってくると言われていたが、やはりこじれてしまったっぽい。この記事なんて、すでに「エスパニョール移籍が決定的なセルティックの日本代表MF中村俊輔」なんて書いている。でも、マリノスサポ的にはまったく驚かない。移籍金ゼロで、俊輔本人もマリノスを希望していて、年俸半減もOKしてても、うまく話が運べないというクラブ。
●どうやらマリノスは契約が決まったも同然ということで、すでに6/21の浦和戦から出場を予定していたとか、契約前にイベント出演を決めていたとか、スゴい話が報道されている。シーズンオフなしって、ありえんだろ……。
●日本のメディアの空気を読まずに先に契約発表するかもしれないから、一応リンクしておこう>エスパニョール公式サイト。
●俊輔ももう30歳なわけで、マリノスに帰ってボロボロに使われるのも困るが、しかし今からスペイン・リーグに移るというのも2010年W杯を考えるとなにかと心配。スペインはスコットランドほど大男はいないし当たりも激しくはないと思うが、レベルそのものはずっと上。うまい選手が1部降格ゾーンでもゴロゴロいる。エスパニョールから三顧の礼で迎え入れられたとしても、レギュラーポジションを獲れるかどうかは未知。いっそ、浦和とかガンバ大阪とか、しっかりしたJのクラブが獲ってくれないかと思うくらいだ(笑)。
●とか言いつつも、まだマリノス復帰の可能性はゼロではないとにらんでいる。いずれにせよ、クラブの体質がよくあらわれている騒動で、ある意味納得。近年の外国人選手の獲得なんかもひどいことになってるし。成績も低迷するばかり。すごいダメ感。でも、ほどほどによくも悪くもなくて、毎年ずっと成績は中くらいっていうクラブよりは、優勝したり降格しそうになったりするほうがサポになりがいがあるとも言える。俊輔復帰の破談が決定した瞬間のイヤ~な気分を味わい方は、今からでも遅くない、一刻も早くマリノスサポに! 「♪オレーたちーといっしょに~、鬱になろうぜ~」(←偽ゴール裏風チャント)

June 15, 2009

マルティン・シュタットフェルトの平均律

●初めて足を運んだ、所沢市民文化センターミューズアークホール。ウチからだと都心のホールより全然近いではないか。所沢航空記念公園に寄って満喫する濃やかな緑、なぜか一角にコスプレな人々がワラワラと集結してて、あれなんのキャラ、忍者?と謎に思いつつ、今日のリサイタルはコスプレ・デイであったか、どうしてワタシはバッハのカツラをかぶってこなかったのかと後悔したところで、ホールに着く。
●バッハを弾くピアニストでなにがイヤかって言えば「グールドの再来」という惹句。どんよりと萎える。で、シュタットフェルトは戦略的に「再来」しすぎてて、最初のアルバムがゴルトベルク変奏曲だったじゃないっすか、あれを一瞬耳にして、あまりにもグールドに似ている(けど別物もちろん)とショックを受けて以来、なぜか悲しい気分になり、このピアニストは隣の並行宇宙にしか存在しないことにしようと決めてしまっていたのだ、少し前までは。
●でもすごく上手い、CD聴くと、猛烈に。こんな人ほかにそうそういないわけで、誘惑に抗えずに聴きに行ってしまった、バッハの平均律クラヴィーア曲集第1巻全曲リサイタル。そしてこれを悶絶しそうなほどに楽しんでしまう無節操な自分。上手い、きれい、ビックリ箱満載の凝った表現、そうかこれどうしてグールドに似てるって思ったんだろ? 残響の豊かさでCDでのシャープで尖がった印象は相当後退する。
●平均律って「前奏曲とフーガ」ワンセット一曲完結の曲集のはずで、通して弾く必要も聴く必要もないと思うんだけど、でも通すとなんか筋の通ったドラマがあるように聞こえるのは気のせいなのか。はじめはハ長調とかハ短調の前奏曲みたいに無機的というか幾何学的な美しいパターンなんだけど、終盤になると変ロ短調の前奏曲は葬送行進曲だし、ロ短調のフーガを聴く頃には受難曲の終曲を聴いてるような気分になる。
●最近、このパターンでびっくりすることが多いんだけど、終演後にサイン会があって、長蛇の列ができるんすよ。でもこれって会場でCD買った人向けなんすよね。シュタットフェルトのファンはみんなすでに買って持ってるんじゃないか、いや持っててももう一枚買うのか、それにしても一公演でこんなに売れるのか。会場売り比率ってどれくらいなんだろ。

June 12, 2009

「リヒャルト・シュトラウス 『自画像』としてのオペラ」(広瀬大介著)

「リヒャルト・シュトラウス 『自画像』としてのオペラ」●これは大変な力作。あと少しで読み終えるところなのだが、「リヒャルト・シュトラウス 『自画像』としてのオペラ」(広瀬大介著/アルテスパブリッシング)が実におもしろく、ためになる。副題に「『無口な女』の成立史と音楽」とあることからもわかるように、この本はシュトラウスの後半生、それも台本作家ホフマンスタールを失った後についての研究書である。
●R.シュトラウスというと、一番人気のあるのは若き日に書かれた交響詩群だろう。オペラを聴かない人はもっぱらこのあたりを聴く。で、オペラ好きであれば、後の「サロメ」や「ばらの騎士」も聴く。うまくいけば「影のない女」や「アラベラ」も聴くだろう。が、シュトラウスは長寿なんである。「アラベラ」の後もまだまだ生きて、作曲も続けている。「英雄の生涯」とかを書いてた頃は19世紀だったのに、「無口な女」を書く頃にはもうナチスが台頭している!
●で、ワタシなんかにとっては、「アラベラ」より後のシュトラウスというのは、ところどころ見えてるところもあるけど、全体としては光の差し込まない鬱蒼とした森みたいなもので、特にシュトラウスの生涯、その社会背景といったものについてはさっぱり見えていなかった(世界が激動していた時代なのに)。それがこの本を読んで、ぱっと一気に明るく見通せるようになったような気がする。
●特に興味深かったのが第2章と第3章にかけての、シュトラウスとツヴァイク、そしてシュトラウスとナチ政府の関係。ツヴァイクはあの「マリー・アントワネット」の作者として知られていると思うが、ツヴァイクとシュトラウスの往復書簡に加えて、ツヴァイクとロマン・ロランとの往復書簡も残っていて、ツヴァイクのシュトラウス観、驚くほど確かな音楽観といったものもうかがい知れる。シュトラウスとナチスとの関係についても知らなかったことだらけで(特にゲッベルスとのやり取り)、これを読んでいなかったらうっかりするととんでもない誤解をしかねなかったなと思うところ多々あり。
●この「リヒャルト・シュトラウス 『自画像』としてのオペラ」は、もともと広瀬大介さんが博士論文として執筆されたもの。ミュンヘン大学に留学し、現地で一次資料をはじめとする多くの資料・文献に触れた著者にしか書けない本であり、広瀬さんのシュトラウスへの情熱や見識が300ページ以上にわたってぎっしりと詰まった好著である。でも研究書として立派だっていうこと以上にワタシが感心したのは、この本が実に読みやすく、読み手に対して「読書の楽しみ」まで与えてくれるところ。一ページ読んだら、次にどんなことが書かれているか、その先の一ページを読みたくなる。おもしろい本を読み慣れている方は「そんなのフツーじゃん」って思うかもしれないけど、そういう音楽書は決して多くはないし、書き手の側に立てば、これは全身全霊を尽くして一種の奇跡を起こしてようやく実現できることだと思う。

June 11, 2009

ニッポンvsカタール@ワールドカップ2010最終予選

●まずはお知らせ。本日6/11のTOKYO FM「DIARY」 (14:00-16:00) にて、辻井伸行さんの帰国後初の演奏となるミニコンサートが生中継されるとのこと。15:15から師匠横山幸雄さんと対談して、2台ピアノでラフマニノフのピアノ協奏曲第2番から第1楽章を演奏するそうです。よろしければどぞ。番組情報等詳細はTOKYO FMへ。(なお番組はネット上では聴けませんので、ラジオ受信機が必要です、念のため)
カタール●さて、ニッポンvsカタール戦である。いやー、久々に酷い試合を見てしまった。なにが酷いかといえばいくつもあるが、まずこれだけコンディションの悪いニッポンに勝ち切れなかったカタールも酷い。彼らはこれが最終戦なので、3位に入るためにはどうしても勝点3が必要。なのに主審からアウェイのPKという砂漠のオアシスのごとき恩恵を授かっておきながら(ありゃエリア外だろう)、1-1のドローとは。セバスティアンがいないとカタールの攻撃力は半減する。
●ニッポンは体も気持ちも試合についていけない感じ。でもこれはしょうがない。ずっと厳しい最終予選を戦ってきて、ついに本大会出場を勝ち取った後に、15時間飛行機で移動して中3日で試合。これでいつもと同じだったら人間じゃない。途中出場した松井や興梠のように、出場機会に飢えていた選手だけが積極的にプレイできた。俊輔はまたミスが多かったし、ケガを恐れるかのようにプレイが軽い。
●欧州で長いシーズンを戦った選手は今しか休めないので、すぐに休暇に入ったほうがよかったのかも。次のオーストラリア戦は完全な消化試合なので、お互いに控え選手のテストになるんだろう。順位が1位でも2位でもなにも違わないんだし、Jリーグはシーズン中でもあるので、とにかくケガ人がでなければいい。いずれにせよ結果は意味レス。
●それにしてもマレーシア人主審はひどかった(またか)。アウェイのウズベキスタン戦ほどではないが、まさかホームでもあんなジャッジに悩まされるとは。日本やオーストラリアを相手に戦うチームは、体を寄せられたらすぐに転べばファウルをもらえる。そして相手には悪辣なタックルをしても大目に見てもらえる。でも「弱者のサッカー」で得をできるのはアジアの試合だけ。一歩アジアの外に出て戦うとなれば、相手は猛然とプレミアリーグやセリエA標準のタックルを仕掛けてくる。もちろん主審は笛を吹いてくれない。止められない相手を後ろから削ればすぐにカードを出されてしまう。こんなのやってて、もしワールドカップ本大会に出れちゃったらどうするつもりなの?
●と、問いつめたいところだが、少し昔まではニッポンもこういう「弱者のサッカー」で強国に対抗していたので、偉そうなことはいえない。カタールはこれで敗退が決定したが、バーレーンと(現在最下位だが)ウズベキスタンにはまだプレイオフのチャンスがある。
●もう一方の組はサウジアラビアが韓国(出場決定済み)になんとか引き分けたので、2位が大混戦になった。北朝鮮、サウジアラビア、イランまで可能性がある。17日はこのサウジアラビアと北朝鮮の直接対決があるので、オーストラリアvsニッポンを見ている場合ではないかも。

June 10, 2009

とりぱん 7 (とりのなん子)

「とりぱん 7」●今回も好調。「とりぱん」第7巻(とりのなん子/講談社)。前巻も思ったんだけど、初期の頃よりマンガとして進化してる気がする。「庭のエサ台に鳥が来てかわいい!」的なところから、東北地方都市のナチュラル田舎暮らしの身辺雑記ネタまで、猛烈に楽しい。今回は虫ネタが冴えてて、「野菜に付いてた弱ってるトンボ」の話は何度読んでも笑える。あまりにおもしろくて、つい前巻、前々巻と読み返してしまって寝不足に。
●あと感動したのが、バリケンが初登場したこと。バリケンって言ってもあまり通用しないだろうが、アヒルよりでかくて羽が白と黒で顔が赤いという南米産家禽で、視覚的なインパクトが相当ある。実はこいつはワタシがよく行く公園にも一羽生息していて、いつも見かけるおなじみさんなのだ。↓こんな鳥で、割とオッサンくさい感があると思う。
bariken.jpg
●こいつはもう年なのか、「とりぱん」で登場したヤツほど活動的ではなく、おおむねいつもジッとしている。たまに妙に元気になってあちこちウロウロすることもあるが、ほとんどはこの姿勢で思索に耽っており、「やぁ!」と挨拶をしても特に反応はない。

June 9, 2009

「路上のソリスト」/「クラシックかわらばん」

●映画「路上のソリスト」絶賛上映中!……と言いたいところだが、なんと、都内での上映館が日比谷TOHOシネマズシャンテのみ。ええっ、それはないだろう。ドリームワークス製作でジェイミー・フォックスとロバート・ダウニーJr主演なのに。
●これ、メルマガのほうでも少し紹介したけど、エサ=ペッカ・サロネンとロサンゼルス・フィルが本人役で出演してるんすよ。実話がもとになってて、壊れたヴァイオリンを弾くホームレスがいたから、たまたまロサンゼルス・タイムズの記者が話しかけてみたら、彼はジュリアード音楽院に在籍してたという。しかもヴァイオリニストじゃなくてチェリストだったと。ジュリアードに通うような才能ある(元)若者がなぜホームレスに?……という映画。
●ベートーヴェンの音楽が全編に使われてて、「英雄」だとか後期の弦楽四重奏だとかがガンガン流れてくる。シリアスなネタだから一般受けはしないだろうとは思っていたが、まさかこんなに上映館が少ないとは。やれやれ。
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●楽しいサイトをひとつご紹介。オペラDVDでおなじみのクリエイティヴ・コアさんの情報サイト「クラシックかわらばん」。ここのオペラ・コラム道場がスゴく充実している。広瀬大介さんがオペラの日のあたらない脇役になりきって語る「なりきりオペラ・ガイド」(笑えます)、片山杜秀さんの「新オペラ演出論 歌劇場、爆破したのはいいけれど」他。吉田光司さんの「オペラ・ニュース月報」もファン必読かと。

June 8, 2009

鬱々と「暁の歌」~アンデルシェフスキ

●少し前にムストネンがN響でアンコールとしてシューマン「暁の歌」から一曲弾いてくれたんだけど、一ヶ月も経たない内にまた「暁の歌」。サントリーホールのピョートル・アンデルシェフスキのリサイタル。プログラムからしてすばらしいんだが、シューマン「暁の歌」、バッハのパルティータ第6番ホ短調、休憩をはさんでヤナーチェクの「霧の中で」、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第31番変イ長調。ああ、これは鬱々として聴くには最強。
●プログラムに注意書きの紙がさしはさまれていて、「暁の歌」はシューマンが精神を病む直前に完成させた最後の作品だから、拍手はご遠慮くださいみたいに書いてある。それだけでホントに拍手しないお客さんの行儀のよさに驚く。
●ピアノに向かってブツブツと独り言を繰ってるとそれがぜんぶ詩になってた、という演奏。満喫。特に後半。
●機嫌の良し悪しとは無関係に放っておくとナチュラルに鬱々しがちな人っているじゃないですか、根っこが暗めの人。つまりワタシなんだけど(笑)。そういう人間の魂をグワシッとつかんでくれる音楽をたっぷり浴びて、一通り聴き終わった後に思ったことは、もう一回最初からぜんぶ弾いてくれないかなあという無理難題。これから梅雨入りもするだろうし、雨の日にジメジメしながら引きこもってCDで聴くか。
●カーネギーホールで弾いたライヴCDは微妙に東京と曲目が違ってて、バッハのパルティータが第2番で、シューマンが「ウィーンの謝肉祭の道化」。ヤナーチェクとベートーヴェンは同じ。「ウィーンの謝肉祭の道化」は、「あまりにも自分の内面に近すぎるから、今後はもう演奏しないだろう」って言ってるそうで、それもなんだか饒舌な気がするけど、カッコいいからいいか。

June 7, 2009

ウズベキスタンvsニッポン@ワールドカップ2010最終予選

ウズベキスタン●「んなの、サッカーじゃねーだろっ!」とフォースの暗黒面にどっぷりと堕落しながらシリア人主審を罵倒し続ける90分間を耐え切ったみなさま、おつかれさまでした!
●はー。後で主審の名前調べとかなきゃ。いくらアジアの審判がひどいとはいえ、あそこまでやるかね。この人の対ニッポン基準の笛だと、プレミアリーグやセリエAは全タックルがファウルになる。カードの出し方もムチャクチャ。ニッポンのゴールを取り消すし。こりゃ最後まで11人で戦うのはムリだろうと覚悟してたら、案の定、長谷部が一発レッドになったし、岡田監督まで退席処分になった。
●こういう不条理ってものに対して、ワタシは平静ではいられない。でもいまどきの代表選手はホント偉いっすよね。自分を律して決して暗黒面に堕ちない。タックルが全部ファウルなら、タックルしない守備を目指す。大人だ。試合終了する頃にはワタシはテレビの前ですっかりダースベイダーと化していたのに、ピッチ上の選手たちはヨーダのごとく冷静だった。
●アジアでアウェイで勝とうと思ったら、4-0くらいの地力の差があってやっと1-0になるくらいのつもりでいなきゃ。ピッチもデコボコ。技術や戦術よりも、精神的肉体的なタフネスがものをいうと改めて実感。
●ってわけで、1-0で勝利、祝! 猛烈に祝、ニッポン代表ワールドカップ2010南ア大会出場決定! 最終予選をあと2試合残して決まるとは。アジア枠4.5で、グループ2位でも通過決定っすからね。これが1位抜けで決定だったら、オーストラリアより上にいかなきゃいけないわけで、4.5というのは大きい。
●岡崎のゴールにはゴン中山テイストが漂っていた。ついに代表に9番らしい9番が誕生したのかも。出れば出るほどたくましく成長するこの感じは、久しくニッポン代表にはなかった気がする。
●一応メンバーを。GK:楢崎(ファインセーブあり)-DF:中澤、トゥーリオ、駒野、長友-MF:遠藤、長谷部、中村俊輔(→阿部)、中村憲剛(→本田)-FW:大久保(→矢野)、岡崎。やや俊輔のミスが目立った。駒野と長友はよく走った。長谷部と遠藤はガマン強かった。
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●岡田監督って人、どうっすかね。1997年、フランスW杯予選のアウェイ・カザフスタン戦で加茂監督が更迭されて、次のアウェイ・ウズベキスタン戦から思わぬ形で監督人生がスタートしたわけで、それが2009年にまたニッポン代表を率いてアウェイ・ウズベキスタン戦でW杯出場を決めるという奇遇。97年時点じゃそんな人生、誰一人想像もしてなかっただろう。もしあのとき加茂監督が勝ってたら、岡田氏はそのままコーチをしてただろうし、大会終了後はJEFにもどってたはず。監督になったかどうかすらわからない。フロント入りしてオフィスの中でサッカー人としての成功を収めていたかもしれないし、JEFの監督になって失敗したかもしれないし、どんな道もありえた。
●でも現実には、札幌やマリノス時代も含めて、日本人監督としては最高の実績を残した。スタート地点での厳しい環境が、その後の結果至上主義的なスタイルに結びついているとしか思えないし(マリノス時代の勝負強さは異常なほどだった)、「外れるのはカズ」がどこまでも付いて回ってて、いずれどこかでその応報が待っているんじゃないかという気がしてしょうがない。だから、この試合の前も圧倒的に日本が有利な状況にあるにもかかわらず、ここから悪夢のような試合が続いてまさかの予選敗退があるんじゃないかという不吉な予感をぬぐいきれなかった。
●悪い予感は気のせいだった。だからもう手放しで喜んでいい。ビバ代表、岡田ジャパン。なのにワタシはなにを恐れているのか。

June 5, 2009

須栗屋敏先生リターンズ

須栗屋敏●久々に須栗屋敏先生のお仕事を告知。「作曲家占い2009」が、ケータイ着メロサイト「音友クラシックコンサート」にて掲載中。簡単な設問にYes/Noで答えていけば、あなたにぴったりの作曲家と着メロを教えてくれちゃいます! 以前も同様の企画をやったけど、新バージョンを一から作成しなおした。なんか、このYes/Noクイズっていうの?、これ何度か作って少しコツを覚えてきたんだけど、こういうスキルって今後のワタシになにか役に立つのかなあ(笑)。いや、いま役立ったんだからそれでいいのか。
●アクセスはケータイサイトなので以下のQRコードから。会員登録に100円必要なのが申し訳ない。QRコードがわかんない人はケータイのトップメニューから「着メロ」→「クラシック」をたどって「音友クラシックコンサート」へ。今月いっぱい期間限定公開。

音友クラシックコンサート

●須栗屋敏公式サイトとか作ったほうがいいんだろうか……。名刺は作ってません。

June 4, 2009

永遠の27歳

黒田恭一さんの訃報を耳にして驚いた。親しみを込めてみんな「黒恭さん」とよく言うが、ワタシにとっては「黒田先生」。以前、編集者としてずいぶん先生にはお世話になった。が、20代後半から30代前半だった当時のワタシはあらゆる意味でダメすぎて、一から十まで仕事のことがわかっておらず、せっかくいろいろなことを学ぶよい機会をいただいていたのに、それにまるで応えられなかった。経験も社会性も不足していて、今にして思い返せばもったいないことばかり。
●雑誌のレギュラーのコーナーを担当していたので、当時は先生に飲みに連れて行ってもらうことがよくあった(ワタシは飲まないのだが)。あるとき、年齢の話になって、「自分がもうこんな歳になっているということがとても信じられない」とおっしゃる。「じゃあ、自分の中では何歳のつもりなんですか」と尋ねたら、「27歳。僕は前からずっと27歳のままだね」と答えられた。リアル20代だったワタシからすると黒田先生は当時すでにお年を召した偉い先生なわけで、いくらなんでも27歳はムリありすぎだろうと内心のけぞった。
●なのに、本当はもう71歳だった。それにしても、あまりにも早すぎる。謹んでご冥福をお祈りします。

June 3, 2009

コンサートホール未体験

●いつの間にか登録していたヴァン・クライバーン・ファウンデーションのメール・ニュースで、現在開催中のヴァン・クライバーン・コンクールの途中経過が出ていた。ファイナリストに辻井伸行さんの名前発見。まだ20歳なのかー。いや、サイト上の写真を見ると、すっかり大人になっているというべきか。
●ファイナルの模様はネット中継されるそうなので、聴きたい方はどぞ。放送スケジュールは「おかか since 1968 Ver.2.0」を参照するのがわかりやすくて吉。
●暮らしに役立つ豆知識。「東京エレクトロンホール宮城」は仙台にある。欧文表記だとTokyo Electron Hall Miyagi。
●暮らしに役立つ豆知識その2。「コンサートホール自由が丘」は演奏会場ではなくパチンコ屋さん。どうやら「コンサートホール」という大手のパチンコ・チェーンがあるみたいなんだけど、ひょっとしてお店に入ると弦楽四重奏とかの演奏があったりするんだろうか……。

June 2, 2009

「時をかける少女」(アニメ版/細田守監督)

「時をかける少女」●アニメ版の「時をかける少女」。これ、映画館で公開されたときにすごく評判になってたのを見逃してたんだけど、ようやく見て驚いた。こんなにも傑作だったのか。たしかにこれは「時かけ」ではあるが、子どもの頃に読んだ筒井康隆の原作(ジュブナイル)とも、原田知世主演の映画(大林宣彦監督)とも違ったタイプの青春物語になっている。原作に古典的な要素があったということだと思うんだけど、演出の力によってまた新たな命が吹き込まれたというか。リメイクというより、オペラの新演出みたいなもので、時代や設定を上手く読み替えて、現代に通用する物語として「時かけ」が生まれ変わっている。
●なにしろ原作は1967年っすよ。もう40年以上前。中三の主人公たちの名前が「和子」と「一夫」と「吾朗」だ。和子と一夫なんて今ならオバサンとオッサンの名前で、とても中高生には思えない。で、細田アニメ版ではヒロインが「マコト」(名前の通り男のコっぽい元気なコ)、男子二人組は「チアキ」と「コウスケ」。年齢は17歳の高校生と設定。あと現代版演出に欠かせないように、ちゃんとみんなケータイを持ってる。「コクる」っていう文化もできてる。
●マコトとチアキ、コウスケはいつも3人で一緒にいる。放課後にはゆるーく野球したりする。毎日が楽しい。こんな日々が永遠に続くんじゃないかって気がする年頃だ。でもこれは17歳の一瞬にしか成立しない居心地の良さで、誰もが大人にならなければならないし、この男女3人の関係はそのままというわけにはいかない。マコトがいくらタイムリープで都合よく過去を書き換えたりしたところでその事実に変わりはない。タイムリープなんてできてもできなくても、結局は一度しかないその時はその時にしか味わい尽くすことができないものだということ、そして人生はリセットはできてもセーブはできないという真実が甘酸っぱく描かれる。あちこちに笑える場面が盛り込まれてて、ジャイアント・スウィングやってる男子の絵とか、それだけでもバカすぎて猛烈に可笑しい。しかも絵柄も美しくて完璧。

June 1, 2009

ニッポン代表vsベルギー代表@キリンカップ2009

●キリンカップ第2戦はベルギー代表と。これ、29日にチリvsベルギーがあって(結果は1-1)、ベルギーは中一日でニッポン戦というムチャクチャなスケジュール(チリのほうも日本戦の後、中一日でベルギーと試合してるわけだ)。なので、「キリンカップ優勝」とか「三連覇」とかを見出しにするのはまったく意味レスだと思うんだが、それでも4-0と快勝したのは立派。一方的にニッポンだけが攻めているという試合だった。岡崎がエースストライカーぽくなっている。中盤はみんないい。長谷部、本田、中村俊輔、中村憲剛、遠藤、これにウズベキスタン戦では松井も加わるんだが、先発は4人。豪華。
●なんか4-0の試合を2試合も続けてみてしまうと、「これなら来週のウズベキスタン戦は楽勝では?」という気になりがちなんだが、そんなわけない。ワールドカップ予選なんだから。しかもアウェイ。6日の夜は、フランス・ワールドカップ予選のアウェイ・ウズベキスタン戦の気分を思い出して観戦したい。選手もぜひそのつもりで(←誰に言ってるの?)
●一応メンバーを。GK:楢崎-DF:中澤、田中トゥーリオ(→山口智)、長友、内田-MF:長谷部(→橋本)、遠藤(→阿部)、中村俊輔(→本田)、中村憲剛(→興梠)-FW:大久保、岡崎(→矢野)。そのままウズベキスタン戦の先発メンバーになるのかも。
●ゴールは長友、中村、岡崎、矢野。岡崎のダイビングヘッドがゴン中山っぽい。

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