●21日は昭和女子大学人見記念講堂で第34回出光音楽賞受賞者ガラコンサートの取材。このガラコンサートは毎回「題名のない音楽会」の収録を兼ねていて、ふだんは東京オペラシティで開催されるのだが、現在休館中ということで人見記念講堂での開催となった。この会場、番組の収録ではときどき使っているのだが、人によっては懐かしい会場かもしれない。サントリーホールの開館以前には、カール・ベーム指揮ウィーン・フィルの来日公演なども開かれていた。その名の通り、昭和女子大学のキャンパス内にあるので、日中は学生たちの姿を見かける。
●今回の受賞者はテノールの宮里直樹、チェロの北村陽、ヴァイオリンの金川真弓の3名。川瀬賢太郎指揮東フィルとの共演で、それぞれドニゼッティの「愛の妙薬」から「人知れぬ涙」と「ランメルモールのルチア」から「わが先祖の墓よ」、プロコフィエフの交響的協奏曲の第2楽章、コルンゴルトのヴァイオリン協奏曲から第2、3楽章を演奏。取材のためバックステージ側にいる時間が長かったので、ぜんぶは客席で聴けなかったのだが、こういった受賞記念演奏会でプロコフィエフの交響的協奏曲みたいな曲が演奏されるのは、なんだかうれしい。
●U23アジアカップ準決勝では、ニッポンが韓国相手に1対0で勝利。実質U21で大学生も参加しているニッポンが、本物のU23の韓国相手に勝ってしまった。この日は風が強く、追い風の前半でゲームを支配して小泉佳絃(明治大学)のゴールで先制、後半は向かい風に苦しみながら耐え抜いたという展開。向かい風ならロングボールの放り込みも一手だろうが、ニッポンはそういう戦い方をするチームではない。年長の韓国に勝ったのはすごいこと。フィジカルコンディションでニッポンが上回っていたとも思う。暑さ(サウジアラビア開催)と日程が厳しい大会で、ニッポンはずっと中二日で戦ってきて、この試合でようやく初めての中三日。一方、韓国は中二日で、体にキレがなかった。
●もうひとつの準決勝は、中国がベトナムに完勝。決勝戦の相手は中国になった。ついに中国が来た。ベトナムの大躍進も印象的。これまでアジアの中で出遅れてきた東南アジアが、本当に強くなってきた。アジアの大会なのに、ベスト4に地元の中東勢がひとつも残らず、オーストラリアも中央アジア勢も敗退して、東アジアと東南アジアだけでベスト4を占めたのはサプライズだろう。ベトナムはグループリーグでサウジアラビアを1対0で退けている。サウジは世界的スターを集めた国内リーグが発展する一方で、代表チームにかつての強さが感じられない。
出光音楽賞受賞者ガラコンサート取材、U23アジアカップ準決勝
新国立劇場 オペラ 2026/2027シーズンラインアップ発表会

●20日は新国立劇場オペラ2026/2027シーズンラインアップ発表会。今回は大野和士オペラ芸術監督が欧州からオンライン登壇ということもあって、プレス側は劇場のホワイエとオンラインのどちらからでも参加できるハイブリッド方式。ありがたく、オンラインで参加させてもらう。ZOOMを使用。
●今シーズンは新制作が2本だけで寂しかったが、来シーズンはふたたび3本に戻る。開幕公演のロッシーニの「イタリアのトルコ人」、続くブリテンの「ピーター・グライムズ」(写真)、シーズン締めくくりのヴェルディの「マクベス」の3本。新味もあり楽しみな3本なのでは。「イタリアのトルコ人」はそうそう上演されない作品。テアトロ・レアル、リヨン歌劇場との共同制作で2023年にマドリードで初演されたプロダクションで、演出はロラン・ペリー。新国立劇場では「ジュリオ・チェーザレ」があったが、昨年のセイジ・オザワ松本フェスティバル2025でのブリテン「夏の夜の夢」が記憶が新しいところ。今回もおしゃれで、一工夫のある舞台になるようだ。作品自体にメタ視点があるゆえか、フォトノベル(写真や吹き出しの入ったメロドラマ風のロマンス小説)がコンセプト。アレッサンドロ・ボナート指揮東フィル。
●「ピーター・グライムズ」は2023年にミラノ・スカラ座で初演されたロバート・カーセンの演出。題名役はブランドン・ジョヴァノヴィッチ、大野和士指揮東フィル。新国立劇場の「ピーター・グライムズ」といえば、かつてウィリー・デッカー演出のすごい舞台があったが、あれはレンタルだったので再演ができなかった。ブリテン没後50年に待望の新制作が実現。自分はこの作品が20世紀オペラの最高傑作だと思っている。現代の社会そのものが描かれていると感じるので。
●「マクベス」はロレンツォ・マリアーニの演出。カルロ・リッツィ指揮東京フィル、マクベスにエルネスト・ペッティ、マクベス夫人にカレン・ガルデアサバル。ヴェルディ初期の傑作だが、なにしろ題材が「マクベス」なのだから、物語のおもしろさでは最高ランク。
●レパートリー公演には「フィガロの結婚」「トスカ」「サロメ」「カヴァレリア・ルスティカーナ/道化師」「ばらの騎士」「ファルスタッフ」「エフゲニー・オネーギン」といった名作がずらりと並んだ。「ばらの騎士」では脇園彩がオクタヴィアンを歌う。
「成瀬は都を駆け抜ける」(宮島未奈著)
●累計180万部突破の大ベストセラー、「成瀬は天下を取りにいく」「成瀬は信じた道をいく」に続くシリーズ完結編、「成瀬は都を駆け抜ける」(宮島未奈著/新潮社)を読む。滋賀県大津市に住むヒロイン、成瀬あかりを主人公とした青春小説。今回もこれまでと同様、連作短篇集であり、それぞれの短篇ごとに視点が入れ替わり、周囲のさまざまな人物から見た成瀬の姿が描かれる。成瀬は常に他人からの視点でしか語られず、その内面は決して描かれない。中学生時代から始まったシリーズだが、すでに成瀬は京都大学理学部の学生になっている。あいかわらず、自分をナチュラルに信じることのできる子で、他人の目をまったく気にしない。メンタル健康優良児とでもいうか。みんながこうありたいと望むような人物像なんだと思う。大人も子どももそれぞれの読み方で楽しめて、読後感は爽快。主人公がだんだん大人に近づくにしたがって、描き方が難しくなってくると思うので、これでシリーズ完結は納得。
●琵琶湖小説としても秀逸。読むと琵琶湖に行きたくなる。びわ湖ホールのコンサート予定を調べてみようかな。
U23アジアカップ 準々決勝 U23ニッポンvsU23ヨルダン 道脇豊のミラクルPK
●現在、U23アジアカップがサウジアラビアで開催中。U23ニッポンはグループリーグを3戦全勝で勝ち抜けて、準々決勝でヨルダンと対戦し、1対1のまま延長戦でも決着がつかずにPK戦になった。で、そのPK戦で勝敗を分けたのが上の動画の道脇豊によるミラクルPK。強烈なシュートをヨルダンのGKアルタラルガが右手一本でファインセーブ。渾身のガッツポーズをとる。が、大きくバウンドしたボールは、バックスピンがかかってワンバウンドしてゴールへ。キーパーがガッツポーズをとっている間に後ろでボールがゴールに吸い込まれていた珍場面。カメラもボールを追ってなかったので、なぜ日本の選手たちが喜んでいるのかわからなかったが、リプレイを見て事態を理解できた。
●グループリーグでは圧勝していたU23ニッポンだが、この試合ではヨルダンが先制して苦しい戦いに。ずっと中二日で4戦目という無茶苦茶な日程が続いていたので、いくら選手をターンオーバーしているとはいえ、微妙なところでプレイの質が落ちていたのかもしれない……が、ヨルダンがかなり強かったこともたしか。試合内容でも五分だったのでは。
●U23ニッポンを率いるのは大岩剛監督。U23代表といってもニッポンは2028年のLA五輪を見すえて実質U21で参加しており、Jリーガーも大学生も海外組もフル代表経験者も混在している。現在、欧州はシーズン中、Jリーグは貴重なシーズンオフ。現時点でのU23でベストメンバーを組むのは不可能だし、そうする理由もないように思える。が、他国はU23で参加している模様。本当にU23のチームを組んだ場合は、選手が次々と卒業して入れ替わる形になる。どっちがいいんでしょうね。
ダニエーレ・ルスティオーニ指揮都響のリムスキー=コルサコフ、レスピーギほか

●15日はサントリーホールでダニエーレ・ルスティオーニ指揮都響。ルスティオーニはこの4月から都響の首席客演指揮者に就任する。プログラムは前半がブラームスのヴァイオリン協奏曲(フランチェスカ・デゴ)、後半がリムスキー=コルサコフの「スペイン奇想曲」とレスピーギの交響詩「ローマの祭」。後半のお祭プログラムは新年っぽいと思ったが、それ以上にルスティオーニがパッと舞台を明るくするタイプで、祝祭感があふれ出ていた。
●前半のブラームス、第1楽章カデンツァに入るところでティンパニが轟いてびっくり。これは以前にもイザベル・ファウストで聴いたブゾーニのカデンツァ。フランチェスカ・デゴはChandosレーベルでの録音でもこのカデンツァを使ったうえで、カップリングにブゾーニのヴァイオリン協奏曲を演奏している。アンコールは2曲も。パガニーニの「24のカプリース」第13番「悪魔の微笑み」、バッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番よりサラバンド。
●後半は一大スペクタクル。リムスキー=コルサコフの「スペイン奇想曲」もレスピーギの「ローマの祭」も威勢がよく、大いに盛り上げてくれた。決して力づくではないが、思い切りがよく、ダイナミック。ルスティオーニは華があって、エネルギッシュ。背中で客席とコミュニケーションがとれる指揮者というか。都響の指揮者陣としては意外なタイプで、おもしろくなってきた。「ローマの祭」のどんちゃん騒ぎを聴いていると、この作曲家、天才だなと思う。ルスティオーニは、曲の終わりでくるりと客席に向いて「ドヤッ」。足を滑らせかけるヒヤリハットもあってドキドキ。暴れる40代マエストロに客席は大喝采、ソロカーテンコールに。
セバスティアン・ヴァイグレ指揮読響のオール・ブラームス・プログラム

●14日はサントリーホールでセバスティアン・ヴァイグレ指揮読響。オール・ブラームス・プログラムで、悲劇的序曲、ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲(林悠介、遠藤真理)、交響曲第3番という名曲ぞろいのプログラム。どれも大好きな曲ばかりなので、ぜんぜんそう謳われてないけど、心のなかで自分にとってのニューイヤーコンサートだと思って楽しむ。ゲストコンサートマスターとして小森谷巧が帰還。楽団の名誉顧問である高円宮妃久子さま臨席。テレビカメラあり。
●悲劇的序曲は冒頭から気迫のこもった鋭い音。曲が渋いからなのか、演奏会では意外と聴けない曲。さらに渋味が魅力の二重協奏曲へと続いて、漆黒のロマンティシズムを堪能。二重協奏曲では第1コンサートマスターの林悠介、ソロ・チェロの遠藤真理がソロを務めた。ともに楽団員とあってオーケストラとの調和はさすが。大きな室内楽を聴くかのよう。ソリストアンコールではコントラバス用の椅子が指揮台の前に置かれ、なにが始まるのだろうかと思ったら、なんと、ブラームスの間奏曲作品118-2。晩年のピアノ曲のなかでもとりわけ憂愁の色濃い名曲だが、ソリストふたりに少人数の弦楽器が加わった編曲で。だれの編曲なのかと思って休憩中にアンコールの掲示を見たら、首席第2ヴァイオリン奏者の石原悠企編。絶品だった。
●後半、交響曲第3番はすべての楽章が静かに終わる交響曲。質実剛健とした造形ながら、ここぞという場面ではヴァイグレがオーケストラを煽り立てて、熱風を吹き込む。この日、珍しいことに前後半とも客席でスマホの音が長く鳴るアクシデントが頻発して、会場全体の落ち着かないムードがもしかしたら舞台にも伝播していたかもしれないのだが、ともあれ、おしまいはしっかりと静寂が保たれて余韻が残った。スマホにかんしては、いつ自分が失敗をする側に回るかわからないので他人事ではない。いつも電源を切るように気を付けているけど、うっかり忘れることもあるし、マナーモードでもアラームは鳴る。
東京都現代美術館 ソル・ルウィット オープン・ストラクチャー

●東京都現代美術館の「ソル・ルウィット オープン・ストラクチャー」へ(~4/2)。ソル・ルウィット、どこかで名前を聞いたぞ……と思ったら、東京国立近代美術館で常設展示されてるウォール・ドローイングの人だ! 一定パターンにもとづく指示書を作り、実際のドローイングは他人に任せるというのが、おもしろいなと思っていた。今回の展示でも6点のウォール・ドローイングをはじめ、さまざまな作品が広々とした空間に展示されている。上は「ウォール・ドローイング #312」(1978初回展示)。黒い壁に白いクレヨンで、正方形、円、三角形、長方形、台形、平行四辺形が重なって配置される2部作。でかい。

●こちらは立体物で「ストラクチャー(正方形として1, 2, 3, 4, 5)」(1978-80/滋賀県立美術館)。よく見ると明快なパターンにもとづいて立方体が組み合わされている。リズミカルで心地よく、無機的なパターンの集積のはずが、どこか有機体を思わせるところがおもしろい。

●こちらは「シリアル・プロジェクト#1(ABCD)」(1983/千葉市美術館)。まるで都市みたいに立方体、直方体、そのフレーム状の物体が並んでいる。これも明快なパターンがある。そのパターンがなんだか子供時代に遊びで思いつきそうなものだったので、微妙にノスタルジーを喚起する。あと、この形状は「スター・ウォーズ」第1作のデス・スターを連想させる。気分はルーク・スカイウォーカー。

●さらに同じ作品を別の角度から。こっちは疎の側。両側に相補的な関係があることを想起させる。

●こちらはウォール・ペインティングなんだけど、幾何学的なパターンの成分が薄めで、色彩の要素が目を引く。「ウォール・ドローイング #770 カラー・インク・ウォッシュを塗り重ねた非対称のピラミッド」(1994初回展示)。非対称の形状も色彩も、一瞥してすぐわかるような規則性は見出せないのだが、なにかルールがあるのかもしれないし、ないのかもしれない。いくぶん、肩の力が抜けた感じではある。
SpotifyのマイライブラリをApple Music Classicalに移行する

●ようやくApple Music Classicalを使ってみようという気になった。かつてはApple Musicも使っていたのだが、Windowsでの使い心地がよくないので見限ってしまい、近年はSpotifyとNaxosを併用していた。が、Spotifyの検索機能があまりに非力なのに業を煮やして、Apple Music Classicalを試すことに。Apple Music ClassicalをWindowsで使う場合は、ブラウザからログインして使うことになる(ウェブアプリとしても使える)。以前のWindows版iTunesよりずっといい。低機能だがシンプル。なお、Androidの場合は、ふつうにアプリをインストールすればオーケー。
●で、こういう場合、Spotifyで築いたマイライブラリ、つまりプレイリストやらアルバムをApple Music Classicalに移行したいわけだが、ちゃんとそのあたりのことは考えられている。方法はふたつある。ひとつはApple Music(Apple Music Classicalではない)の公式機能を使う。Windowsの場合は右上のユーザーアイコンから「音楽を転送する」を選ぶ。Androidであれば、Apple Musicを開き、「設定」→「ライブラリ」→「他のサービスから音楽を転送する」を使えばオーケー。Apple Musicに取り込めば、Apple Music Classicalにも入るようになっている。もうひとつの方法として、サードバーティのサービスを使う手もある。代表的なのはTuneMyMusic。ウェブ上で転送できる。
●自分はAndroidから公式機能を使ったが、ほとんどのアルバムは問題なくインポートできたものの、一部は「ご利用いただけません」となってしまった。ただ、これも手動で検索してみるとちゃんとAppleにあったり、やっぱりなかったりもする。
●しばらく使ってみないとなんとも言えないが、わざわざクラシック専用に設計されたサービスなのだから期待したいところ。日本語対応もうたっている。以前に取材したプレス発表会では、プレゼンテーションがライト層向けでどうもピンと来なかったのだが、当面は先入観なしで使ってみたい。

