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October 22, 2025

東京都美術館 ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢

東京都美術館 ゴッホ展
●作品さえ鑑賞できればいいというガチ勢ではないので、混雑していそうな展覧会は避けてきた。ぎゅうぎゅうの人が横並びになって進むベルトコンベア鑑賞はぜんぜん楽しくない。となると、ゴッホとかモネは諦めるしかないわけだ。全時間帯で混雑必至。なので、東京都美術館のゴッホ展は見送るしかないな~、と思っていたのだが。

ゴッホ 画家としての自画像
●おそらく美術展でいちばん空くのは金曜日の夜間開館。そこで、この夜間開館の時間帯を狙って行ってみた。金曜夜は演奏会の率も高いのだが、なんとか機会を作って訪れてみたところ、これならぎりぎりセーフかなという程度の混み具合。正解だったと思う。いや、夜間開館でもこんなに人がいるのかと驚くべきかもしれないが……。上は「画家としての自画像」。すごい色彩感。撮影はすべて禁止なので、これは拾い物。著作権はもちろん切れている。

ゴッホ 耕された畑(畝)
●こちらは「耕された畑(畝)」。畝がウネウネとうねっているだけではなく、青空もウネウネとうねっている。すごい迫力。

ゴッホ 農家
●こちらは「農家」。すべてがウネウネとうねっている。これも好き。この展覧会、「家族がつないだ画家の夢」と副題にあるように家族がテーマになっていて、展示にストーリー性があるのが吉。ゴッホの弟テオの妻ヨーの活躍ぶりがすごい。ゴッホの作品は30点強で、関連する他の画家の作品もけっこう多いのだが、そこも含めて楽しめる。

October 21, 2025

ショパン・コンクールの第1位はアメリカのエリック・ルー

●21日、朝起きたらショパン・コンクールの結果が出ているかなーと思ったら、まだ審査が続いていたみたいで(前回もそうだった)、日本時間9時半過ぎにようやく結果が流れてきた。第1位はエリック・ルー(アメリカ)。27歳。2015年の同コンクールで17歳で第4位に入賞し、2018年にリーズ国際ピアノ・コンクールで優勝。ワーナークラシックスへの録音もあり、すでに実績のある人が勝者になったという印象。協奏曲は第2番、ピアノはファツィオリを選択。
●第2位はカナダのケヴィン・チェン(カナダ)、第3位は中国のZitong WANG。カタカナ表記はどうなるんだろう。第4位に日本の桑原志織と中国の16歳Tianyao LYU。
●大量に動画が配信されていて、ほとんど見ていないのだが、ファイナルの演奏を少しだけ聴いたマレーシアのヴィンセント・オン(Vincent Ong)の動画も貼り付けておきたい。第5位を受賞。

October 20, 2025

Jリーグは残り4試合、マリノスの残留争いと、流行のキックオフ戦術

●さて、世間はショパン・コンクールの話題で持ちきりだが、ここでわれらがJリーグのことも振り返っておきたい。今季、残り4試合。降格ライン上をさまようマリノスは浦和レッズ相手にまさかの4対0で完勝。同じ勝点で並んでいた横浜FCは引き分けたので、これで勝点2差で17位。ギリギリ残留できる順位だが、横浜FCはすこぶる好調であり、まったく予想がつかない。マリノスか横浜FCのどちらかが残り、どちらかが降格する可能性が高い。
●ちなみにマリノスだが4点獲ったといっても、とっくにアタッキングフットボールは捨てている。今はボールを持たない、パスを回さない、手数をかけないサッカーが基本。この試合のボール保持率はわずか38%。パスは237本で往時の半分以下、しかもパス成功率は59.9%しかない。これもかつては80%くらいだった。ゴールキーパー(朴一圭)はディフェンスにパスをつながず、大きく蹴る。
●サッカーはこれがいちばん効率がいい。今はもう夢を追っている場合ではないので、こうするしかない。一般論として、ボールをつなぐ攻撃的なサッカーよりも、安全第一のサッカーのほうが勝点を得やすい。だが、前者は楽しく、後者は退屈だ。この大いなる矛盾にサッカーの核心があると思う。
●で、この試合、マリノスはキックオフ時にボールを大きく蹴って、故意に敵陣深くのタッチラインを割るようにしていた。キックオフで自分たちがボールを持って攻撃するよりも、わざわざ相手ボールのスローインにしたほうが有利だ、と考えているのだ。最近の欧州で流行しているキックオフ戦術を取り入れたようだ。
●これがなぜ有利なのか。おそらく、緻密な分析を基にした統計的な裏付けがあるのだと思う。相手の布陣が完全に整った状態では、自分たちがボールを持ってもまず得点にはつながらないのに対して、敵陣深くであれば相手のスローインからボールを奪ってチャンスになる可能性が少しはある、ということなのか。以前、オシムが「自分たちのスローインではピッチ内は常に数的不利になる」と指摘していたのを思い出す。
●これほど退屈なキックオフはないと思うが、このキックオフ戦術はどんどん広がると思う。

October 17, 2025

チョン・ミョンフン指揮東京フィルのバーンスタイン、ガーシュウィン、プロコフィエフ

チョン・ミョンフン 東京フィル
●16日はサントリーホールでチョン・ミョンフン指揮東京フィル。10月28日からのヨーロッパ・ツアー(7か国8公演)に持っていくプログラムのひとつで、バーンスタインの「ウエスト・サイド・ストーリー」より「シンフォニック・ダンス」、ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」(小曽根真)、プロコフィエフのバレエ音楽「ロメオとジュリエット」より。「ウエスト・サイド・ストーリー」は「ロメオとジュリエット」の翻案なので、ダブル「ロメジュリ」プログラム。コンサートマスターの席に近藤薫、隣に三浦章宏、後ろに依田真宣が座って、楽団の3人のコンサートマスターがそろい踏みという全力布陣。気合十分で、持ち前の明るく華麗なサウンドが炸裂。すこぶるパワフルで、サントリーホールが飽和するほどの音圧を浴びた。
●バーンスタインの「シンフォニック・ダンス」では指パッチンあり、「マンボ!」の発声ありでハイテンション。ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」は冒頭のクラリネットのグリッサンドがかつて聴いたことがないほどソリスティックで、たっぷり。ぞくぞくする。この曲で小曽根真がソロを弾くのを聴くのは何度目だろうか。毎回そうだが、即興マシマシのロングバージョン。初めて聴く曲のように向き合う。アンコールは自作のAsian Dreamで、しっとりと。後半のプロコフィエフはいろいろな抜粋がありうる作品だが、「モンタギュー家とキャピュレット家」でスタートして、「ジュリエットの墓の前のロメオ」「ジュリエットの死」で終わる全10曲、約45分。こちらも力感みなぎる演奏で、造形は端正、熱量は高い。バーンスタインとの組み合わせの妙も楽しめた。
●カーテンコールの写真を撮っていたら、予想外のアンコールあり。「シンフォニック・ダンス」の「マンボ」を本編よりもさらにはじけて。アンコールもツアー仕様なのか。客席は大喝采。ツアーの大成功を祈りつつ拍手。

October 16, 2025

全国共同制作オペラ「愛の妙薬」(杉原邦生演出)記者会見

全国共同制作オペラ「愛の妙薬」 杉原邦生 記者会見
●遡って9日午前、東京芸術劇場で2025年度全国共同制作オペラ「愛の妙薬」(ドニゼッティ)記者会見へ。毎回、演出をいろいろな分野の人が務めることで話題のシリーズだが、今回は演出家の杉原邦生がオペラに初挑戦する。自らを「悲劇の演出家」と位置付ける杉原は、初めてのオペラ演出が喜劇であることに驚きつつも、挑戦しがいがあると語る。杉原「大学に入って演出を始めた頃から、欧米の著名な演出家たちがオペラを手がけていることを知って、いつかはオペラをと考えていたので、ついに来たかと思った。映像で『愛の妙薬』を見て、シェイクスピアの喜劇みたいだなと思いつつ、『カワイイ』と感じた。今回の演出は『カワイイ』がキーワードになる」
●写真は左より、糸賀修平、宮里直樹(以上ネモリーノ役)、高野百合絵(アディーナ役)、杉原邦生(演出)、大西宇宙、池内響(以上ペルコーレ役)、秋本悠希(ジャンネッタ役)。東京芸術劇場、フェニーチェ堺、ロームシアター京都の3都市での開催。11月9日の東京芸術劇場を皮切りに堺、京都と続く。高野「お客さまが心温まる舞台にしたい。アディーナ役は軽さだけではなく力強い声も必要な役」、宮里「『愛の妙薬』はぼくのいちばん好きな作品」、大西「シカゴにいた頃もシェイクスピアの演出家やミュージカルの演出家といっしょになった。異種格闘技的な舞台は楽しみ」と、それぞれが抱負を語った。なお、ドゥルカマーラ役はセルジオ・ヴィターレ、指揮はセバスティアーノ・ロッリ。オーケストラは各地で異なり、東京はザ・オペラ・バンド。ダンサーも登場する。
全国共同制作オペラ「愛の妙薬」●で、今回のフライヤーのデザインはこんな感じで、彩度の高いピンクが目に眩しい。「愛の妙薬」って本当によくできたロマンティック・コメディだけど、いかにも農村の素朴な人たちの物語という感じで、都会人から見た農村ファンタジーになっていると感じるが、このデザインからも察せられるように、舞台はバスクの農村ではなく、特定の土地や時代を示さない模様。大胆演出が売りのこのシリーズだが、今回はジェンダーレスな要素が加わるというヒントがあって、なるほどと膝を打った。期待大。

October 15, 2025

ニッポンvsブラジル 代表親善試合

●な、な、なんだこれはー! 東京スタジアム(味スタ)で行われたニッポンvsブラジル戦、テレビ中継で観たが、なぜこれを現地で見なかったのか。こんな世界線がサッカー界にあろうとは。前半にブラジルがポンポン~と2点獲った。後半にニッポンがガラガラポーンと3点獲った。ニッポンがブラジル相手に2点差をひっくり返して勝利したのだ。
●森保監督が敷いた布陣はいつもの3-4-2-1というか、3-2-4-1みたいな形なのだが、前半はブラジル相手にボールを持たれることを想定して、守備時は両ウィングバックが下がって5-4-1でコンパクトなブロックを築く。前線からのハイプレスは封印。しかもそれでいて守備一辺倒にならず、相手に決定機を作らせない。自陣でボール奪取に成功すると、そこからボールを巧みにつなげて、堂安や久保、中村敬斗の個人技でチャンスを作り出していた。ボール支配率はかなり低かったが、序盤はニッポンのペースで、おそらくこの戦術がブラジル相手の最適解だと思った、最初の22分くらいまでは。
●ところが、堂安のドリブル突破から南野を経て上田が決定機を迎える惜しい場面があると、ここで急にブラジルのスイッチが入った。あ、これは今までに何度も見たことのある王国特有の謎スイッチだ。そう思ったら、前半26分と32分にブラジルが立て続けにゴール。1点目はほれぼれするほど美しい形で、縦方向にパスを入れると、ワンタッチでこれを戻して、さらにワンタッチで縦にスルーパスを入れて、抜け出たパウロ・エンヒキがゴール。2点目は縦方向の浮き球のパスにガブリエル・マルティネッリが抜け出てボレーでゴール。ここまでニッポンは慎重にゲームを組み立てていたのに、いとも簡単に無効化してしまうブラジルの攻撃陣。見慣れた光景が広がっていた。
●が、後半に入るとニッポンは積極的に前からプレスをかける形に。これが狙い通りに機能したのが後半7分で、相手のディフェンスラインに対する連動的なプレスからファブリシオ・ブルーノのミスを誘発、パスミスを拾った南野が悠々とゴール。後半17分には交代出場した伊東が右サイドから鋭い高速クロスを入れ、ファーサイドの中村がボレーシュート、これをファブリシオ・ブルーノがクリアしたボールがそのままゴールに吸い込まれて同点。後半26分には伊東のコーナーキックを上田がニアで頭で合わせて、まさかの逆転。ブラジルもいくつかチャンスを作っているのだが、前半なら簡単に決めたであろうシュートを外す。終盤はニッポンが守備を固めて逃げ切った。ニッポン 3-2 ブラジル
●これまでブラジル相手に13回対戦して一度も勝てなかったニッポンだが、この試合は勝つべくして勝ったという手ごたえがある。ブラジル代表は初めての外国人監督としてイタリア人のカルロ・アンチェロッティを招聘しているのだが(ウソみたいな話だ)、アンチェロッティのもと、守備の立て直しに成功したと言われていた。それがまさかの3失点なのだからわからないもの。
●GK:鈴木彩艶-DF:渡辺剛、谷口彰悟、鈴木淳之介-MF:堂安律(→望月ヘンリー海輝)、佐野海舟、鎌田大地(→小川航基)、中村敬斗(→相馬勇紀)-久保建英(→伊東純也)、南野拓実(→田中碧)-FW:上田綺世(→町野修斗)。堂安のドリブルが異次元。久保、中村、伊東もキレッキレ。望月の一対一の守備にはらはら。鈴木彩艶はさすが。

October 14, 2025

ニッポンvsパラグアイ 代表親善試合

●10日はニッポンvsパラグアイの代表親善試合(パナソニックスタジアム吹田)。テレビ中継あり。今回の代表ウィークはホームでパラグアイとブラジルの2連戦。強豪相手の理想的なマッチメイクに成功した。が、ニッポンはけが人が続出、主力を多く欠くことに。遠藤航、三笘薫、守田英正、板倉滉といった大黒柱が招集外。久保建英は招集したがけがで使えるかどうかはわからず。さらにディフェンスラインは町田浩樹、伊藤洋輝、冨安健洋が長期離脱中。さすがに選手層が薄い。いつもの森保監督ならパラグアイはBチームで、ブラジルはAチームで戦うところだが、パラグアイ戦にも主力をそこそこ使わざるを得なかった様子。
●布陣は3バック。3-4-2-1。メンバーはGK:鈴木彩艶-DF:瀬古歩夢、渡辺剛、鈴木淳之介-MF:伊東純也、佐野海舟(→藤田譲瑠チマ)、田中碧(→町野修斗)、中村敬斗(→斉藤光毅)-堂安律(→相馬勇紀)、南野拓実(→鎌田大地)-FW:小川航基(→上田綺世)。よかったのは佐野海舟。遠藤航の後継者。しかし、試合は苦戦。ボールは持てるが、さすがにパラグアイは堅守。一対一、球際が強い。ふだんからブラジル、アルゼンチンと戦っているパラグアイにすれば、相手にボールを持たせておいて、隙を突いて手数の少ない攻撃で得点するのはお家芸だろう。前半21分、浮き球の縦パスがミゲル・アルミロンにドンピシャで渡って、キーパーとの一対一を決めて先制ゴール。こういったゴールに直線的に向かう縦パスから得点が生まれる確率はかなり低いはずだが、パスの出し手にノープレッシャーとなると、マークを振り切って走り込んだ前線の選手にぴたりと合ってしまう。全般にプレスのはまりはもうひとつ。
●この直後に、小川がペナルティエリア内から豪快なシュート、キーパーは弾いたが、ボールが高く上がってそのままゴールに入って同点。後半19分にパラグアイがクロスボールにディエゴ・ゴメスが頭で合わせてふたたびリード。パラグアイが逃げ切りそうな展開だったが、後半44分に入った上田綺世が終了間際に同点弾。右からの伊東の速いクロスがファーまで抜けて上田が倒れ込みながら頭で決めた。これはいい形。ほぼ負けゲームだったが、ドローに。2対2
●代表デビューの斉藤光毅が果敢にドリブルで仕掛けていたが、まったく相手に脅威を与えられず。でも好感度大。
●さて、今晩はブラジル戦。できれば万全のメンバーで対戦したかったが、どうなることやら。

October 10, 2025

ヘルベルト・ブロムシュテット指揮NHK交響楽団のシベリウス他

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●ヘルベルト・ブロムシュテット、98歳(!)が来日。9日はN響との全3プログラム6公演の初日。舞台袖から登場しただけで、客席から熱烈な拍手が沸き起こる。みんな、ブロムシュテットが大好きなのだ。そして、なぜそんなことが可能なのかわからないが、前回、前々回の来日より体が動いている。両手の動きがしっかりしていて、それが音楽にも反映されていたと思う。統率力、音楽に込められた生命力という点でも近年で最上だったのでは。歩行車を押しながら自力で袖と指揮台を往復する。さすがに指揮台はバリアフリーではないので、昇り降りだけははらはらしたが、98歳で大陸間を移動して指揮活動ができていることに驚嘆するほかない。
●プログラムはグリーグの組曲「ホルベアの時代から」、ニールセンのフルート協奏曲(セバスティアン・ジャコー)、シベリウスの交響曲第5番。グリーグでは弦楽器の緻密なアンサンブルから、溌溂とした生気があふれてくる。ニールセンでのジャコーのフルートは軽やか。宙を舞うフルート。アンコールにドビュッシーの「シランクス」を吹いてくれたのだが、軽やかなのに濃密で、甘ささえ感じる。この音色表現はすごい。後半のシベリウスは近年に聴いたブロムシュテットのなかでも指折りの名演だったと思う。引きしまったサウンドで、音楽の流れがよどみなく、パッションも十分でみずみずしい。枯淡の境地ではまったくなく、生の賛歌になっている。「音楽が巨大化する老巨匠の晩年様式」とは無縁。
●今回はカバーコンダクターとしてエヴァ・オリカイネンの名が当初から発表されていたわけだが、無事にブロムシュテットの公演が実現して本当によかった。残念ながら自分は今回はこの一公演しか聴けないのだが、続くAプロ(ストラヴィンスキー「詩篇交響曲」&メンデルスゾーン「讃歌」)ではミシェル・タバシュニク(82歳)、Cプロ(ブラームス)では下野竜也がカバーコンダクター。前回は全公演ゲルゲイ・マダラシュだった。
●N響は来年、創立100年を迎える。創立100年記念事業が発表されているが、そのなかにはブロムシュテット99歳のブラームスもある。つまり、ブロムシュテットとN響は一歳差なのだ。

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制作者

飯尾洋一(Yoichi Iio)

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