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2025年7月アーカイブ

July 2, 2025

山田和樹指揮バーミンガム市交響楽団、バーミンガム現代音楽グループ

●30日は東京オペラシティで山田和樹指揮バーミンガム市交響楽団。プログラムはショスタコーヴィチの「祝典序曲」、エルガーのチェロ協奏曲(シェク・カネー=メイソン)、ムソルグスキー~ヘンリー・ウッド編の組曲「展覧会の絵」。開演直前に山田和樹が登場して短いトーク。ショスタコーヴィチの「祝典序曲」でバンダに千葉県立幕張総合高校の生徒たちが登場するという案内あり。日本ツアーの各地でそれぞれの地元の生徒たちと共演するそうで、「外国からオーケストラが来て、ただ演奏会を開いて帰るだけの時代は終わりつつある」といった趣旨の話があった。「祝典序曲」のおしまいでオルガン席のあたりに高校生たちのバンダが登場。立派な演奏で、終わると大喝采。高校生たちにはとてつもない貴重な音楽体験になったはず。感動的な光景。
●エルガーのチェロ協奏曲では、噂のチェリスト、シェク・カネー=メイソンが登場。イギリスではジャンルの枠を超えたスターのようだが、日本で協奏曲を弾くのはこれが初めて。山田和樹が熱望して今回のツアーに参加。まだ26歳。髪を短くしたことを知らなかったので、「アー写」との違いにびっくり。深く温かみのある音色がすばらしい。決して派手ではないのだが、歌心にあふれたまっすぐな音楽。アンコールはピッツィカートのみの曲で、なにかわからなかったのだが、ボブ・マーリーの She used to call me dadaという曲だと後で知る。シェクがボブ・マーリーを弾くという、このあたりの文脈が自分には見えないところ。
●メインはムソルグスキー~ヘンリー・ウッド編の組曲「展覧会の絵」。ヘンリー・ウッド卿といえばプロムスの創設者であり、音楽祭の顔。一種の「お国もの」という選曲。有名なラヴェル版よりも先に作られた編曲。編曲のコンセプトはラヴェルとはまったく違っていて、まずプロムナードが冒頭にしか出てこない。絵と絵の間をそぞろ歩く様子として曲間になんども姿を見せるという趣向がカットされているのだ(プロムナード・コンサートの創始者なのに!)。金管合奏で始まり弦楽器が受け継ぐプロムナードは、ラヴェル版ともストコフスキ版とも違ったテイスト。全体に饒舌というか説明的で、オルガンまで入った大編成のオーケストラのあらゆる機能を使わずにはいられないといった様子。作曲家よりも指揮者の発想なのかなと感じる。ラヴェルの洗練度を痛感するが、一方でヘンリー・ウッド版ならではのワイルドなおもしろさがあって、ところどころで「そう来たか!」という驚きがある。アンコールにウォルトンの戴冠式行進曲「宝玉と王の杖」(宝玉と勺杖)。これは本当の「お国もの」。この曲、前回に聴いたのは山田和樹指揮日本フィルだったと思うが、今度はバーミンガム市交響楽団の演奏で聴くことになるとは。勢いがあって、格調も高く、高揚感あふれる幕切れ。
●ところで、これは書き留めておく必要があるのだが、本公演の開演に先立って、東京オペラシティの地下のリサイタルホールで山田和樹指揮バーミンガム現代音楽グループのミニコンサートが開かれた。扱いとしては別公演で、オーケストラの公演が19時開演なのに対して、こちらは18時開演。30分予定の公演なのだ。これはおもしろいアイディア。しかも、藤倉大の「アンセム」(2023)日本初演、レベッカ・サンダースの「スターリング・スティル」(2006)、藤倉大の笙協奏曲(2024)日本初演の3曲も。笙は出会ユキ。「アンセム」はわれわれのアンセム、つまり「君が代」の再構築。しかしどんな形であらわれようとも、「君が代」に対しては条件反射で心のなかで歌ってしまう自分を発見。心はスタジアムでの代表戦。笙協奏曲では笙の表現力の想像以上の高さに感嘆。また聴いてみたい。この公演でも冒頭に山田和樹が短く話した。公演が終わると18時40分くらいだったので、その後、ほとんど間を置かずにコンサートホールの開演前トークに出てきたわけで、ノンストップ山田和樹劇場だった。ずっと走り続けている。

July 1, 2025

調布国際音楽祭「鉄道×音楽 Take the“KEIO”Train!」

調布市グリーンホール
●28日は調布国際音楽祭で調布市グリーンホールへ。「鉄道×音楽 Take the“KEIO”Train!」と題されたまったくユニークなコンサート。筋金入りの鉄道ファンとして知られる上野耕平のサクソフォン、鈴木優人のピアノ、トークゲストの市川紗椰による熱い鉄道トークに、廣津留すみれのヴァイオリンと森下唯のピアノが加わる。演奏曲はすべて鉄道由来の曲ばかり。ブルートレインのチャイムに用いられたハイケンスのセレナーデ、上野耕平の特殊奏法が炸裂する「電車でGO!」サクソフォンによるモーター音演奏(運転席からの映像付き)、森下唯のアルカン「鉄道」(最強の鉄道名曲だ)、多梅稚~山中惇史編「鉄道唱歌-900番台」、サクソフォンとピアノによるドヴォルザークの「新世界より」第2楽章などなど。鉄道ファンはもとより、鉄道ファンでなくても大笑いしてしまうような熱のあるトーク。調布駅が地上駅だった頃の話題など、地元トークも満載。
●驚きは黛敏郎作曲の0系新幹線車内メロディ(黛敏郎チャイム)。車内メロディとしていったん使われたが苦情が多くて短期間の使用に終わったという、モダンなチャイム。これを実用した国鉄はすごい。おしまいは挾間美帆編のTake the "KEIO" Trainで華やかに。「A列車で行こう」 Take the 'A' Train ならぬ「京王電鉄で行こう」。さらにアンコール代わりに客席もいっしょに歌う「線路は続くよどこまでも」。もちろん帰宅は京王線で。

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